岡部信彦の発言 (厚生労働委員会)

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○岡部参考人 おはようございます。川崎市健康安全研究所の岡部と申します。
 私は、もともと小児科医なんですけれども、そこで予防接種を経験していますけれども、その後、WHOでやはり予防接種の担当をしていたり、前任が国立感染症研究所の感染症情報センターにおりましたので、そのときに各種の対策の矢面に立っていたというようなことがございます。
 きょうは、予防接種法改正で、もちろん新型コロナに関連することだと思うんですけれども、それについて、私のふだん思っているようなこともあわせて述べさせていただければと思います。
 お手元に資料がございます。
 一番最初の一枚目の下の方は、これは一八〇〇年代ですけれども、蝦夷、北海道で初めて天然痘のワクチン、種痘を始めたときですけれども、まさに緊急時のワクチン、それから、急遽海外から入ってきたというようなことだと思うんですけれども、まさに集団接種でアイヌの方々を集めてやっているというのがあります。
 この絵でおもしろいのは、絵の後ろの方に、上の方になりますけれども、お土産をいっぱい置いてあるんですね。やはりそういうことをやるときのインセンティブがあったということではないかと思います。
 ページを開いていただきますと、右下にページが書いてありますけれども、スライドで四となっていますけれども、上の方が、スマトラ島沖の地震のときに、これは自衛隊が医療援助で行っているわけですけれども、そのときに、はしかのワクチンの集団接種をやっております。これも緊急接種であります。
 右側は、つい最近、二〇一七年ですけれども、ロヒンギャキャンプでジフテリアという病気が発生したことがあります。日本ではずっとゼロが続いていますけれども、やはり、こういったような病気が発生したときにワクチンを使って一斉に投与をするということがございます。これは、日本人がこの中には写っていませんけれども、日赤のチームがこれにはかなり応援しているということがあります。
 下のスライドですけれども、そうすると、平常時、私たちは、例えば日本ですと定期接種というような形でワクチンを使うわけですけれども、これは、日本では感染症が蔓延しているという状態ではないんですけれども、しかし、その状態を維持する、あるいは場合によっては強化するということでワクチンが必要になり、大きくは、例えばポリオの根絶であるとか、はしかの排除、風疹の排除、そういったようなものに平常時のワクチンとして使います。
 一方、ワクチンは、先ほどちょっと例にお示ししましたように、危機管理としてワクチンを使うことがございます。これは、既に手持ちのワクチンであれば、例えば誰かがどこか危険な地域を含めて渡航をするとき、オリンピックも一つのマスギャザリングですけれども、人が多数集まるようなイベントのとき、それから、上のはしかであるとかジフテリアのように、わかっている疾患だけれども、それがアウトブレーク、集団で大きい発生を起こしたとき、こんなようなときが危機管理のワクチンとして、しかし、これを本当はストックをしておかなくちゃいけないわけです。
 それから、今回の新型コロナもそうですけれども、未知あるいは新規感染の場合にも、感染症がアウトブレークを起こしたとき、そのようなときもワクチンは求められますが、これまでも、二〇〇三年のSARSであるとか、あるいは二〇一二年から現在に至るまで病気が出ているMERS、エボラ出血熱、ブラジルのオリンピックの前に発生したジカ熱、こういったようなものもやはりワクチンは求められるわけですけれども、残念ながらこれは実用化に至っていないということがございます。
 パンデミック、新型インフルエンザが発生するのはいつか。これは二〇〇九年に発生したわけですけれども、それについては我が国も随分準備を行っていますが、しかし、これはいつ起こるかわからないということでその準備が進められております。
 そのような中で発生した新しい疾患がCOVID―19、新型コロナになるわけで、通常、ワクチンの開発は少なくとも五年、十年かかる、つまり、ウイルスあるいは細菌が見つかってから、それを大量にふやさないとワクチンのもとができないんですけれども、今回は一年足らずで治験という段階まで来ているというのは、これはすばらしい科学の進歩ではないかというふうに思います。
 左の方に行きまして、五、六と右側に番号を振ってありますけれども、その未知・新規感染症がアウトブレークが起こったときは、いずれもそのワクチンというものに期待があるわけですけれども、それが既知の手法でできるものであればかなり様子がわかるわけですけれども、新たな手法で製造すると、今回はまさに新たな手法になるわけですけれども、そうすると、動物を使った非臨床試験、あるいは人の臨床試験、小規模から中規模、大規模まで、これをどうやってやっていいか、あるいは、それこそ製造、販売のための認可、その方法、これが、新しいワクチンですとそこが追いついていないというか、新しいものですから、そこら辺の議論が十分に行われていないことがあります。
 それから、我が国でありますと、予防接種は、予防接種法という法律に基づいてやっているものと、それから、定期接種としては入っていないけれども、やはり認可としてはきちんとしたプロセスを経ているんですけれども、そのワクチンを実際に人々に接種しようとするときは、どういう根拠でやるか、これが定期接種なのか、任意接種なのか、あるいは臨時接種なのか、特措法によるものなのか、新たな枠組みが必要なのか、私は今自治体の方にいるんですけれども、やはりそこら辺を早く決めていただかないと、実施主体は往々にして、国が決定しますけれども、実施をするのは自治体になりますので、また、実際にそれを患者さん、その人たちを目の前にして接種するのはやはり医師会の先生であるとかあるいは医療機関になるので、基本的な方針を早く決めていただかないと、やるにしてもやらないにしても、あるいはどういう工夫をしたらいいのかというのがわからないので、これは要望をしていたところであります。
 また、そのために、今回の予防接種法改正がワクチンそのものが目の前にある前に行われているわけですけれども、そういう意味では、自治体側あるいは実際に接種する、後で釜萢先生がお話しになると思いますけれども、極めて重要になります。
 というのは、実際に搬送するのはどうしたらいいのか。今回、超低温冷凍庫が要るというようなことも新たにわかってきているわけですけれども、その問題。あるいは、対象をどなたにしたらいいのか。これは、世界じゅうで誰を対象にしたらいいかというのは議論をしているわけですけれども、いつ、どのようにやるか。それから、通常の定期接種は個別接種というふうに、以前、ここにおられる方は多分インフルエンザの接種は学校でみんな一斉にやった方が多いと思うんですけれども、そういうようなやり方をとるのか、それぞれの方がかかりつけの先生ないし地域の先生に来てやっていただくのか、こういったような工夫も要ります。
 ここに集団的接種と書いてあるのはわざわざ入れてあるんですけれども、以前のインフルエンザに見られるような一斉に人を集めて片っ端からばっとやっていくというような集団接種ではなくて、今行われようとしているような集団接種は、やはりきちんと話を聞いて予診をして説明をして、更に何かあったときの対応をするというような形をとる必要があるので、パンデミックインフルエンザワクチンのときから集団的接種という言い方をしております。
 もちろん有効性を確認するのは重要でありますけれども、更に必要なのは安全性に関するチェックを行っていくということ。それから、残念ながらワクチンは一〇〇・〇%安全というわけにはいきません、いろいろな潜り込み等々がありますので、そういったような方が生じたときの対応もやらなくてはいけない。
 これらは全て法律に基づいてやることになるので、ぜひ、こういうものに対する改正といいますか、実情に合う形をやっていただきたいというのがこれまでのお願いでした。
 ただ、下の方に行きますけれども、あらわれてまだ一年足らずの病気です。いろいろな病気は、やはり、免疫状態、どうやってその病気が動くかというようなことがわかって初めてワクチンを使って、ワクチンというのは免疫機構をいじるわけですから、そのためにはある程度免疫状態が解明されていないといけないわけですけれども、これはどんなに急いでも一年では経過がよくわからないというので、免疫機構がわからないまま使用するというところも基本に考えておく必要があります。
 したがって、効果ももちろんですけれども、安全性を確認する、あるいはモニターしながらやっていくということと、ただ、それは、許容できる範囲の例えばちょっと痛いとかちょっとだけ熱が出るというのは、やはりちょっと我慢していただければ本物の病気が防げるというような、そのバランスをちゃんと考えなくちゃいけないということがあります。
 それから、日本の予防接種は、定期接種にしろ、任意接種はもちろんですけれども、個人の意思を尊重するということが前面に出ております。やはり、海外からそんなことで公衆衛生が求められるのかというのが予防接種法改正の以前のときに議論がありましたけれども、これは非常に成熟した社会では私は重要なことだというふうに思っています。
 ただ、できるだけいいものはやはりお勧めしなくちゃいけないので、それが勧奨という言葉にもなっていますけれども、過剰な勧奨にならないようにということもこの予防接種法の改正については重要ではないかというふうに思います。
 それから、万が一、有害事象、有害事象というのは必ずしもそのワクチンによるものだけではなくて、紛れ込みと言われるようなものも含まれるわけですけれども、しかし、それが起きたときには、やはりどなたかが説明をして、なおかつ、場合によってはそれに対する健康被害の救済とかいうことにもなるので、そこをどこがやるかというのは、いわば、ここに司令塔と書いてありますけれども、予防接種を担当するところはいろいろなところにあるので、そういうところがどこが中心になってこれをやるのかということはぜひ明確にしておいていただきたいというふうに思うわけです。
 ページを繰っていただきまして、下に七、八というふうに書いてあるのは、それで、今回は一連のどういう位置づけでやるのかというのが、臨時接種に近い形といいますか、それを少し変更した形というふうになりますけれども、明確にされているのは、これは、費用がかからないように、自治体の方ではなくて国の負担でやる、しかし実施主体は都道府県、自治体になるわけですから、こういう情報がやはり早く入ってこないと、自治体の方は、自治体は自治体なりに予算も組まなくてはいけないですし、一線の先生方との相談もありますので、これはやはりぜひ早く決めていただきたいというのがございます。
 下の八と書いてある方の図ですけれども、今回のワクチンについては、従来の方法で使われていたワクチンではなく、極めて新しい、これはまさに科学の勝利と言っていいぐらい急速には進んでいるんですけれども、この三、四に書いてあるようなDNAワクチンとかmRNA、メッセンジャーRNAワクチンであるとか、遺伝子をつくったようなワクチンが既に研究がされているので、これらを新しく導入するということに急速に動いているのが現状であります。
 左側の方の上下の方にありますが、パンデミックインフルエンザ、新型インフルエンザが世界じゅうに流行したようなとき我が国ではどうしたらいいか。
 これは、枠組みとしては、私もこれの委員長をやっていましたけれども、長く議論をして、特定接種というような形で、医療機関を始めとするライフラインを保つような人、あるいは患者さんの治療に携わるような人を優先的にやって、そうこうしているうちに新しい病気のウイルスがとれればそれで新しいワクチンをつくるので、備蓄をしておいたワクチンから新しいワクチンに使えるというような枠組みは、これはパンデミックの場合にはできております。
 下の方は、このパンデミックのときの応用でもありますけれども、今回は、例えば一億二千万人分が一、二の三でぼんと入ってくるわけではないので、それを入っていくためには、どういう順番で誰が優先かというようなことは、これはあらかじめ議論をしておく必要があります。
 ただ、いずれも、自分が大切だ、あるいは私の職業は貴重な職業だというような議論が必ず起こるんですけれども、一定の制限があるものを使う以上は、やはり優先順位というのは決めざるを得ない。そのことを多くの方々に納得していただかないとスタートしないと思います。
 ページを繰っていただきますと、次に、上と下に分かれていまして、上は、パンデミックの新型インフルエンザの場合は、既に住民接種をどうするかというようなことは国の方も手引を出して、下の方は、その手引のもとは私が班長をやっていた研究班で既にでき上がっているんですけれども、そういったようなものの応用は多分可能だろうというふうに思います。
 左側の方に行きますと、その中にいろいろな実施要領もできているんですけれども、第二、基本的な考え方、それから、対象者をどうしたらいいか、接種体制の構築。ですから、各自治体は一応この体制は持ってはおりますけれども、しかし、全く同じように今回のCOVIDに利用できるかというと、例えば、赤字で書いてありますけれども、ワクチンの流通、特に冷凍庫というようなものをどういうふうに配備しなくてはいけないか、これも、もし導入するのであれば早くから準備をしておく必要があろうかと思います。
 下は、二〇〇〇年前後だったと思いますけれども、石川県ではしかが大流行したときの大学生に対する集団接種。集団接種の会場というものはこういうものなんですけれども、以前は、皆さん方は経験もされているように、学校でずらっと並んでやるというのがあったんですけれども、今は行政側も医師側も、あるいはほとんどの人がこの集団接種になれていないので、慌てて集団接種をやると、異なった人で集まってチームをつくるので、非常に混乱が多いということが危惧されるわけです。
 それで、次のページを繰っていただきますと、例えば川崎市、私の市の場合ですけれども、接種体制を一応こんなことを考えております。これはパンデミックインフルエンザの場合ですけれども、応用として考えるんですが、一部については個別接種、一人一人の患者さん、接種される方にやる。あるいは、場所によっては、例えば小学校は小学校の体育館でやった方がいいというほかに、地域の先生方の御協力をいただいて、そこで自分の患者さんだけではなくて周辺の方々を一斉に診ていただくハイブリッド型のような集団接種といったようなことも計画をしております。ただし、これも、流通であるとか、あるいはどういうワクチンを使うかによっても違ってきますので、ここら辺の応用問題を今検討しているところであります。
 ワクチンの発生がありますと、必ずその副反応、副作用という言葉の方がおわかりしやすいと思いますけれども、我々は副反応という言葉を使いますが、副反応は、明らかにワクチンが悪い場合。しかし、そのほかに何だかよくわからないけれども一斉に起きるようなものがあるので、有害事象というような言葉を使います。
 それで、ページをあけていただきますと、ワクチン接種後の有害事象というのは、ワクチンの成分による反応の場合、品質が悪い場合、接種の手技が悪い場合、そのほかに、不安ということによる生体の反応が強く起きることがあります。
 例えば、ワクチンを集団で接種すると、どなたか何人かはひっくり返っちゃうということがあるので、下は川崎市における訓練風景ですけれども、右の下にありますように、この訓練の中でも、どなたかがぐあいが悪くなったときは救急の用意をしておくといったようなことも訓練の中に入れてあります。こういうものの準備に取りかからなくちゃいけないというのが、これはワクチンが目の前にあるなしのほかに、やっておかなくちゃいけないことであると思います。
 こういうようなものについて、ページを繰っていただきますと、細かい話は省略しますが、WHOでは、この右の上にあるようなワクチンにかかわるような不安、痛みに対してどういう備えをしたらいいのか、それについては全ての医療従事者、関係者がこういう状態があるということを知って、なおかつ丁寧な接種、それから丁寧な説明、そして丁寧な科学的根拠に基づくワクチンが必要であるというようなマニュアルを出しております。私はWHOの委員としてこのドラフティングにも関与をしております。
 次、お願いします。次のページ、最後のページになりますけれども、したがって、予防接種のリスクは必ず、ぽちっとですけれどもあるわけですけれども、そのときのリスクに対して、個々の人への対応のリスクをきちんとする。それから、もし個々の人だけに向き過ぎてしまうと全体を見失ってしまうことがあるので、全体の対応もやらなくちゃいけない。このバランスが非常に重要であります。
 最後は、私が少し強調したい点なんですけれども、今回のワクチンは、ただいま治験、そのようなデータがちらちらと漏れ聞こえてはおりますけれども、悪い方のシナリオで、もし今回のワクチンが利用できないというふうになったとしても、このワクチンの研究開発というのは必ず次の何かしらの病気の発生について備えとして重要になると思います。
 それから、二番目は、仮に今回のワクチンが利用できないというふうになっても、現在二百種類ぐらいの候補のワクチンがあるので、この新型コロナウイルスのワクチンが悪いんだという評価にならないように、そこは冷静な判断が必要になります。
 それから、もし今回のワクチンが使えないというようなことになったとしても、ワクチン全体の信頼が落ちないというようなことを、ぜひこの予防接種法の改正ということを機会に念頭に置いていただければと思います。
 以上です。ありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 岡部信彦

speaker_id: 21694

日付: 2020-11-17

院: 衆議院

会議名: 厚生労働委員会