水野勝之の発言 (財務金融委員会)

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○水野参考人 明治大学商学部で教鞭を執っている水野と申します。
 専門領域は計量経済学という分野です。財政学ではありません。本日は、経済学を少しかじった一国民として話をさせていただきたいと思います。
 現代経済の現象は分かりにくいことばかりで、自分で習った経済学ではおかしいと思われるにもかかわらず、ほかの誰も何も異を唱えない状況になってしまっています。いま一度、基本的な経済学に立ち返り、王様は裸だ、おかしいものはおかしいと考え、経済の状況を点検してみる必要があるのではないでしょうか。
 おかしいと思いながらも誰も言わないことに、なぜプライマリーバランスが必要なのか、なぜ赤字国債が問題なのかという単純な問いがあります。
 もし赤字国債で賄うことができると国民が認識し始めたら、皆が税金を納める意欲を失っていくおそれがあります。今は血税という思いで国に貢献していますが、赤字国債を発行して済むならば、それで済ませてほしいです。国のために税金を納めるという意欲が薄くなってしまいます。税金を納めないで幸せを味わえるならば、働きたくもなくなります。
 かつてレーガノミクスが基礎としていた基本的サプライサイド・エコノミクスは、税率を高くすると国民が働く意欲を失い、逆に税収が減ってしまうという考え方でした。赤字国債の話に当てはめれば、赤字国債依存を高めれば高めるほど国民は労働意欲を失い、税収が減るという悪循環になりかねません。
 我々労働者は、働いて、税金を納めて、日本国に貢献しているという誇りを持ってきました。国にとって最も重要なことは、国民が心から支えてくれることだと思います。赤字国債がマンネリ化したら、十年後、二十年後の国民の意識は、今の我々ほど納税の意義を真摯に受け止めてはいないのではないでしょうか。
 さて、本日は、十年後、二十年後もそうならず、国民が生きがいを持って働きたい、納税したいという気持ちになるような日本経済づくりの提案を行いたいと思います。
 経済では、一方的な思考がなされがちです。景気がよいと、永遠にその状態が続くと皆が錯覚してしまいます。それに警鐘を鳴らしたのが、かつてのサローのゼロサム社会という考え方でした。結局経済はとんとんという考え方です。光と影のように、プラスがあれば他方でマイナスが存在するという警鐘です。我々は、プラスに浮かれてマイナスを見損ないがちになりますが、プラスとマイナスをしっかりと捉えていかなければなりません。
 まず、株価について触れます。
 株価が異常な値上がりをしています。誰もが異常な高値と認識しながらも、なお上昇しています。人の欲の堰ができて、金融市場から実物市場にお金が流れなくなっています。
 かつての経済理論では、金融市場を動かせば実物市場も動き、金融市場で均衡すれば実物市場でも国際収支の市場でも均衡するという考え方でした。現在は、この市場の連動性が崩れています。それは、今話した、人の欲が形成した堰のためです。日銀や年金資金が株を買い支えて堰が形成されてきました。お金がその堰をなかなか越えられません。株を購入する側も、昨年の二月、三月のように株価が下落しても、どうせ日銀が買い支えてくれると考えてしまいます。その安心感がお金を株式市場にとどめ、結局、不況なのに株が上がるという事態を発生させてしまっています。
 このことは世界にも当てはまります。市場として、調整機能が欠けてしまっています。金融市場と実物市場が別々に均衡してしまっています。
 その第一の問題は、富める者はますます富む、貧しい者はますます貧しくなるというプラスとマイナスの同時発生です。これこそが現代の経済格差の原因となっています。
 第二の問題は、株価が上昇しているからといって、アメリカや中国のような世界を牽引するような企業が日本に生まれていないことです。日本では、昭和や平成の企業の活躍が今なお真っ盛り、世界を牽引するイノベーション大企業が生まれません。
 第三に、コロナ禍が終わり実物経済がプラスに動き出したときに、株価の上昇する余地がなくなってしまうことも問題です。バブル崩壊という大きなマイナスの事態が待っている可能性があります。
 経済を一方的に見て慌てないことも重要です。
 コロナで飲食店がピンチです。大学生もアルバイトができず困っています。飲食店を救うべく、政府も給付金を出しています。
 ただ、ここで一つ考えてみたいことがあります。新型コロナが起ころうが起こるまいが、日本人の胃袋の大きさは一定です。飲食業がピンチですが、そこの消費が減った分、増えているところもあるはずです。胃袋に関してのゼロサムだからです。外で外食しなければ、巣ごもりで飲食をします。実際、売上げを伸ばしている企業もたくさんあります。
 シュンペーターという経済学者が、創造的破壊という言葉を使いました。イノベーション期には、マイナスになる企業での失業者の発生は、新たなプラスとなる企業の雇用で賄われるという考え方です。イノベーション期には創造的破壊があります。ピンチの方ばかりだけでなく、チャンスの方も見ながら着地点を考えられる目が必要です。
 さて、水野の最大の主張の点です。
 景気は必ずよくなったり悪くなったりします。景気循環です。通常、景気循環は、設備投資や建設投資を要因としています。これまでの政策で設備投資や建設投資が促進されたために、もし多少需要が増えても、企業設備やホテル等に関して、稼働率で調整できます。したがって、次々に新たな投資がなされるような状況にはありません。
 そのために頼るべきは、技術革新に基づいた景気循環です。技術革新をイノベーションといいます。ICTにしても、AIにしても、イノベーションの真っただ中です。自動運転、ドローン、ロボットなど、幾らでも可能性があります。
 近年、日本の技術はガラパゴス化しがちでした。世界をリードする技術力を持ち得る日本として、イノベーション力で景気循環を動かすべきです。イノベーションは、ゼロサム状態の全体を底上げしてくれます。
 水野の独自の研究の一つに、技術進歩のラチェット効果という理論の開発があります。ラチェットというのは歯止めという意味です。景気後退期には技術進歩率が向上するということを経済モデルを使って証明しました。景気後退期には、資本設備や投入する労働力を減じなければならない反面、企業は生産性を上げるために技術開発を行います。つまり、景気後退期には技術開発が進むと言えます。
 次の独自の水野の研究は、防衛についてです。政治的に中立的立場として説明します。
 アメリカ、中国等、経済大国となると、軍事技術の向上に力を入れます。その軍事技術が民間に開放されると、民間力で大きなイノベーションが巻き起こされます。かつてのインターネットも冷戦終結後に民間開放されて、世界経済は大いなる発展を遂げました。
 結論から先に言うと、日本でも国内防衛産業の技術を民間転用し、国全体の経済イノベーションに役立てられるような仕組みをつくるべきだということです。
 水野は、日本の防衛産業の経済的効率性の分析を行いました。水野が開発した産業間取引の効率性を測定する指標で計算しました。その結果、日本の防衛産業は効率的産業ではないという結論になりました。防衛産業の技術が伸びるどころか、産業自体がままならないという状態であることが分かりました。
 現状、日本は、アメリカから防衛装備品を言い値で押しつけられてしまっています。日本の防衛産業の国際共同研究も遅々として進んでいません。日本の代表的な防衛企業でさえ国内民間航空機が開発できない、大型クルーズ船を造れば大赤字というのでは、防衛技術に関してはより一層貧弱であるという想像がついてしまいます。
 どっちみちそろえるべき防衛装備品ならば、国内産業の技術力を向上させるようなことを配慮すべきです。アメリカ頼みにならず、防衛産業の技術力を向上させ、その技術の民間転用で日本全体のイノベーションを引き起こす状況づくりが重要です。
 水野独自の研究によれば、産業間の取引が閉鎖的である、非効率的であるという例は、日本の各産業で見られる現象です。私が計算した林業も閉鎖的でした。計算していない産業の幾つかは同様でしょう。他産業との交流を閉鎖してしまったら、イノベーションなど本格的に進むはずがありません。産業間の閉鎖性の打破を呼び起こし、イノベーション力を強めていく産業構造をつくってほしいものです。
 特例公債との関連でお話しします。
 赤字国債のシステムづくりが巧みにでき上がってしまうと、それに気づいたとき、国民は他人任せ、政府任せになってしまうおそれがあります。国民の労働、納税があっての日本経済です。我々労働者は、自分のためと国のために働いています。赤字国債を発行すれば解決してしまうという認識を持ったとき、税金が無用に思え、労働意欲が減退してしまいます。
 提案です。
 第一は、プライマリーバランスの必要性を常時国民に訴え、赤字国債は一時的現象である旨を国民に伝えることが重要ということです。
 今でさえ、何かあるたびに世論は、政府が補助すべきというように、政府のお金は自分たちが出しているという実感はなく、どこか他の人が出しているという他人事のようになってしまっています。国債を発行して、日銀が買って問題が解決するなら、誰もがそうしてほしいです。
 なぜプライマリーバランスが必要なのか。プライマリーバランスこそが、国民が労働意欲、納税意欲を持つための分かりやすい目標なのです。国民が、自分たちで自分たちの国づくりを行うという責任感を持てる目標なのです。赤字国債を発行するにしても、原則毎年審議にかけて、国民に、なぜ赤字国債の発行が必要なのか、納得のいく説明をいただきたいと思います。毎年が無理でも、せめて二、三年に一度は審議を通して国民に説明してほしい。なぜ納税が必要なのかを理解したいためです。
 第二は、もし赤字国債発行を慢性化させるならば、政府がイノベーション社会を実現し、そのイノベーションを享受するために国民が働きたくなる、そうした社会をつくってほしいということです。
 若い人が総保守化してしまい、今の就職人気企業が昭和のときとさして変わらない企業ばかりというのでは、新たなイノベーション企業に優秀な人材を回せません。世界的なイノベーション企業があっての今後の日本経済です。この技術革新期に、日本に世界的イノベーション企業を誕生させてほしいと思っております。
 いずれにしても、国民が納得いく説明を審議を通して欠かさないでほしいです。もし今回特例公債の法案を通したとしても、国民が、どうせ赤字国債が助けてくれると織り込んで勤労意欲、納税意欲を失ってしまったら、経済効果が思ったように伸びない可能性があります。まず、ここで挙げた疑問や課題を解決すべきだと考えます。
 以上です。(拍手)

発言情報

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発言者: 水野勝之

speaker_id: 9300

日付: 2021-02-22

院: 衆議院

会議名: 財務金融委員会