河上正二の発言 (消費者問題に関する特別委員会)
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○河上参考人 河上と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
本日、このような形で意見陳述の機会をいただけたということで、お礼を申し上げます。
私は、消費者庁で開催されておりました預託法・特商法等の在り方検討委員会というところで座長を承っておりまして、報告書を取りまとめました。本日、この内閣提出の法案につながっているということもございますので、そのような立場から意見を述べさせていただきます。
まず、意見書の核になっているものについて簡単にお話しいたします。
第一は、これは共通の敵というものを想定いたしまして、この共通の敵である悪質事業者を市場から排除するために、報告書では、あらゆる手法を総動員せよということを求めました。特に、消費者の脆弱性というものにつけ込む巧妙化、複雑化した悪質商法には、断固とした対応をするということが必要であると考えております。
具体的には、法執行の強化はもちろんでございますが、消費者利益の擁護それから消費者取引の公正確保推進のために、消費者被害を発生させ続けている悪質事業者に共通の敵という名前をつけて、これをターゲットに絞った実効的な規制等を新たに措置する抜本的な制度改革をお願いしたということでございます。
それから、もう一つ核になるのは、具体的な方策と狙いの要点というところがどういうところにあるかというわけですが、特に、新型コロナの感染拡大防止ということのために現在も自粛が要請されているわけでございますが、そうした消費者の新たな日々、新たな日常の中で、消費者が巻き込まれやすいトラブルというものに対応して、消費者を支援するということを求めました。
具体的には、幾つもあるんですが、七点ほどございまして、第一が、詐欺的な定期購入契約、これは、お試しのつもりで契約をしたら実は定期購入になっていたというようなタイプのものですけれども、そこに申込取消権制度を創設してほしいというのが一点目。
第二点目は、通信販売、これが非常に活発に行われているわけですけれども、このときに、場合によっては契約解除の妨害行為というものがありますので、これを禁止していただきたい。
第三番目が、いわゆるネガティブオプションと申しますけれども、物を相手に送りつけて、嫌なら返してくれ、そうではなくて黙っていたら買ったことにするという送りつけ商法というものが広くあったわけでして、これに対抗するための規定を整備して、顧客が送りつけられたものをいつまでも保管しなくちゃいけないという状況から救い出す、結果として、もう送りつけられてもそれを保管する義務はないというところまで持っていったらどうか。
第四番目が、行政処分等を更に強化する必要があって、そうした悪質業者を市場から追い出すというか撤退させるということのための行政処分をしっかりやってほしい。
第五番目が、預託販売行為と言われるものを原則的に禁止する、それは私法上も無効だということを明らかにした上で、これに違反する事業者に対しては罰則を科することによって実効性を担保してほしい。
六番目が、預託法の対象が今は後追いで、特定のものに限られていたということなんですが、そうした指定商品制といったものを撤廃するということで、預託の対象を拡大するということが六番目。
七番目が、消費者裁判手続特例法でもって行政処分をした官庁で作成した書類等を適格消費者団体がうまく利用できるように配慮してほしいというようなことを要点として求めたところでありました。
改めて、預託取引に対する対応について、もう先生方には釈迦に説法かもしれませんが、申し上げたいと思います。
物を預ける、預かるという行為との関係で、今、問題になっている不当商法がこの預託取引をめぐって存在しているわけであります。
かつて、豊田商事事件というのが世の中を騒がせましたけれども、あの豊田商事事件では、金地金、これを販売するんだといいながら、現物を交付しないで、そしてその金を預かったということにして、預かり証、これはただの紙切れですけれども、ファミリー証券という紙切れですが、そのような紙切れだけを交付して、更に別の顧客に対して同様の手口で販売と預託を繰り返した。そして、二万九千人という多数の被害者に二千億円という莫大な損害を与えたわけであります。
このペーパー商法、あるいは現物まがい商法というふうに呼ばれたものでありますけれども、この事件を契機として、特定商品の預託に関する法律という預託法、これが制定され、同法で規定する形で預託等取引というのが規制されていったわけでありますが、この法律は、三か月以上の期間、対象の物品を預かること、又は施設利用権を管理することというのが一つの要件、それからもう一つの要件は、当該預託若しくは施設管理に関し財産上の利益を供与すること、又は三か月以上の期間経過後に一定の価格で買い取るということを約束する、そういう定義がなされたわけであります。これは預託法の二条の第一項。
こうした販売と預託取引、つまり、預託といっても寄託とか賃貸借とか組合出資とかいろいろなものがあり得るわけですけれども、そういうものを組み合わせるということをしたときには、事業者が消費者に物品等を販売すると同時にそれを預かるわけですから、運用と称して配当金を払っているというときには、何となくシステムがうまく動いているかのように見える。そして、被害の顕在化が遅れる中で、次々と被害が発生し、やがて倒産という形になったわけであります。
預託法の制定後も、安愚楽牧場事件とか、これは和牛のレンタルオーナーですけれども、それからジャパンライフ事件、これは磁気治療器だったわけですが、ケフィア事業振興会事件、これは健康食品だったわけですが、それぞれ何千億円という形での被害が発生しております。特定の物の預託のみに着目した預託法では、被害抑止の機能を果たすことができなかったということが言えます。
高い利率による利益還元、あるいは後からの買取り、つまり実質的な元本保証になるわけでしょうが、そういうものをうたって高齢者を始めとする消費者から多額の金銭の拠出を募るわけですけれども、実際にはそのようなものを運用する事業は存在しないし、消費者から拠出された金銭の一部を別の消費者の配当に充てて問題の発覚を遅らせるということをやっていたわけであります。
こうした販売預託商法は、物品を販売すると同時に預かるんだというふうに説明しながら、実際には物品等がない、それを運用する事業実態もない、早晩破綻することが明らかにもかかわらず、高い利率による利益還元とか、あるいは販売価格と同額での買取りという元本保証のような説明をして取引に顧客を誘い込むという点で、消費者を二重、三重に欺いているということになるわけであります。
これは、主観的にも経済的実質においても、ある種の投資取引、しかも不当な投資取引の勧誘であるということでありまして、その形態は恐らく無限連鎖講に匹敵するような危険性を持っているということであります。
にもかかわらず、契約締結時に示されるこうした高利率の利益還元あるいは元本保証といったようなものを見ると、消費者は、小さいリスクで高い利益還元を確実に受けられるというふうに思って、次々と取引に引き込まれていく。出資者には他の出資者が拠出した金銭の一部が原資になって配当金が支払われるというわけでして、表面上はスキームは正常に機能しているかのように見えますために、被害が顕在しにくかった。しかし、結局はこうした事業が破綻に至る。
こうした販売と預託というものを組み合わせた取引は、取引の仕組み、内容面での違法性と、契約締結、勧誘方法の欺瞞性、これを併せ持つものでありまして、およそビジネスモデルとして成り立ち得ないというものでありますだけに、その問題性については、これはもう早くから消費者庁あるいは国民生活センターなどが警鐘を鳴らしてきたわけでありますけれども、結局、被害は収まらなかったという現状がございます。
少なくとも、販売預託商法が違法かつ無効であるということを法律の上で明言し、実質的には不当な投資勧誘取引であることを正面から認める、そして、各種の金融商品規制とか投資ルールなどと平仄を合わせて、民事、行政、刑事、こういったあらゆる手段を総動員の上で、これを市場から駆逐するということが必要であるというふうに考えております。
委員会報告書はこの点を明確に論じ、この委員会自体、消費者団体とか事業者団体、皆さんが参与してなされた取決めでありましたけれども、全員の一致を見てこのような形での報告書になったということを申し上げたいと思います。百点満点とは言い難いかと思いますけれども、私の見るところ、八十五点ぐらいにはなっているというふうに思っておりまして、とにかく一日も早い成立をお願いしたいというふうに思います。
内閣の方から提出されている法案を拝見したときの感触ですけれども、意見書の趣旨をよく酌み取っていただいて、法案化に尽力してくれておりまして、そのことに関しては、立案の担当者の方々に心からお礼を申し上げたいと思います。もちろん、意見書でも書いてありますように、残されている課題も結構あるんですが、これについては速やかに検討を継続していただきたいというふうに考えております。
預託販売取引については、被害の拡大が続いていますので、法律が成立した後の施行の時期、これは成立後一年以内という形になっておりますけれども、悠長なことを言っている場合ではないので、できるだけ速やかに施行を、期日を決めていただくというか、施行していただくということがお願いしたいことの一点であります。
残された課題はいろいろありまして、例えば、通信販売にクーリングオフを導入するかどうか。返品権というのは今でもありますけれども、返品特約というのがないものとあるものがあったりして、よく分からなくてトラブルになります。
それから、適格消費者団体が相手を訴えていこうというような場合、特定適格の場合は損害賠償になりますが、そのときに、相手の財産をいち早く差し押さえないと、その財産がいろいろなところに散逸してしまっているという事態があります。それで、適格消費者団体による破産申立て権の承認をお願いしたい。
それから、もう一つは、フリマアプリなんかもそうなんですけれども、中にデジタルプラットフォーマーが入る、そして、そのデジタルプラットフォーマーを介して、実は事業者なのか消費者なのかよく分からない人が物を売ったり買ったりしているという状況が現在ございます。
事業者対消費者に関してはBツーCと言いますが、消費者法の射程の範囲に今まで入っていたんですが、消費者対消費者というところになると、このCツーCのところまで消費者法が出ていくかどうかというのは、これは、実は消費者法そのものの体制を改めて考え直す契機になる問題であります。そのことは、やはり、しかし避けて通れない問題なので、今後の国のそうした議論の環境整備を求めたいと思っております。
それから、インターネットの普及に伴いまして、様々な不当広告とか勧誘というものが見受けられまして、トラブルに巻き込まれる消費者が増加していますが、これに対する対処というのはなかなか難しい。結局、それぞれの広告をちゃんとモニターして、たたいていくというためには、人的、物的な費用というものが壁になっていますので、そこは、やはり消費者庁に一定の人的、物的な支援をお願いできればということであります。
最後に、デジタルプラットフォーマーの責任との関係で一言申し上げておきたいと思います。
今回の内閣提出の法案では、DPF、つまりデジタルプラットフォーマーの責務というのは、単に努力義務というふうにとどまっております。これで十分であるかということに関しては、私は疑問を持っております。協議会を設置して、そこでやっていこうというのは一歩前進なんですけれども、やはりデジタルプラットフォーマーに一定の民事の義務を構築する、私は、システム構築責任というものを模索すべきであろうと考えております。
それから、もう一点。契約書面の電子化、それからクーリングオフ権行使をする際の電子化の問題、これがにわかに関心を集めているところであります。
契約書面というのは、実は、契約の目的あるいは条件を一覧するための確認をさせる機能、あるいはクーリングオフ権の起算点になるといったような重要な機能を有しておりますので、これを安易に電子化をするということは確かに危険なことであります。もっとも、消費者が、自分は紙は要らないから電子情報で欲しいというふうに言っているときに、どうしても書面でなければ駄目だということを言うのは、これは難しい。
書面主義というのは、これが原則であることは確かですが、消費者がどうしても電子情報の方が自分は管理がしやすいから欲しいというふうに言っているときには、これを認めるということが適切だろうと考えているわけであります。問題は、やはり、消費者が本当にそういうことを望み、実質的に電子情報の提供に同意したかどうかという点の確保にあるんだろうということになります。
それからもう一つ、来年四月からいよいよ成年年齢の引下げが施行されるわけでありまして、これもやはり何らかの対応が必要だということはいろいろなところから言われているわけでありますが、若いからというだけで介入の根拠にするのはちょっと難しいという点があるんですけれども、消費者の持っている脆弱性、誰にも脆弱性はあるわけですが、そうした脆弱性が著しく顕在化するというのは、やはり高齢者、それから若年成人ですね。十八、十九だけじゃないでしょう。恐らく、子供、さらに大学生でも二十一、二あたりになるとやはり経験が未熟だというようなことで、そこにつけ込んだ形で不当な利益を貪ろうとする不当勧誘行為について、何らかの形で、消費者取消権、これを例えば消費者契約法などに装備するということは是非必要なことであろうというふうに考えております。
以上でございます。ありがとうございました。(拍手)