石戸谷豊の発言 (消費者問題に関する特別委員会)
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○石戸谷参考人 弁護士の石戸谷です。
本日は、このような機会をいただきまして、ありがとうございます。
これまで預託商法問題に取り組んでおりまして、現在は全国ジャパンライフ被害弁護団連絡会の代表をしております関係で、意見は預託法改正法案を中心にしております。資料を配付していただいておりますので、ポイントについて述べてまいります。
まずは、紆余曲折ありましたが、抜本的な預託法改正法案の審議を迎えることができたことをうれしく思っております。特に、法案の確認制度は優れた仕組みであると高く評価いたします。
ただし、せっかくの制度も、適用対象に隙間がありますとそこで悪徳業者が暗躍しますので、重要な論点となります。
そこでまず、第一に、適用対象について意見を述べます。まず、役務と権利の関係です。
確認制度の対象となる取引は販売を伴う預託等取引ですので、前提として預託等取引に該当することが必要です。特商法の場合には適用対象が商品、役務、権利と幅広くなっていますけれども、預託法案の場合には物品と特定権利で、役務が入っておりません。また、特定権利も二種類に限定されており、狭く見えます。
そこで、例えば、アプリケーションをUSBに読み込んだものを預託すると物品に該当するけれども、データそのものを送信するような場合に適用できるのか等が問題になります。
この点について消費者庁は、大西議員の質疑で、適用対象となり得ると答弁しております。この積極姿勢は歓迎いたしますが、この点に限らず、万一運用の過程において適用に疑義が生ずるような事態があった場合には、速やかに法改正するなどして対応していただくことが必要になります。今回の法改正まで約三十五年の期間を要したという経緯を踏まえますと、迅速な見直しにつきまして附帯決議等で明確にしていただきたいと思います。
次に、ケフィアの類型と預託等取引の定義の関係について述べます。
法案の預託等取引は、内閣府令で定める期間が要件とされており、現在、この期間は三か月とされています。この関係で、ケフィア事業振興会のオーナー契約のような事案に適用できるのか、また、金融商品取引法の集団投資スキームに該当するのではないのか等が問題となります。
ケフィアの破産管財人は、このオーナー契約について、経済的な実質は資金調達であったと報告しています。そうすると、この実質を捉えれば、集団投資スキームに該当し得ることとなります。
集団投資スキームについて金融庁は、金銭の出資ないし拠出を原則としているとしつつ、脱法目的で物品拠出の形態を取る場合には集団投資スキームに該当するとしていますが、具体的な適用関係は明確でなく、むしろ、物品が絡む場合は消費者庁が対応すべきとしているようです。
この点について消費者庁は、預託等取引に該当するかどうか実質的に判断すると答弁をしています。この積極姿勢は評価いたしますが、預託期間は内閣府令で定める事項ですので、その期間を定める際に買戻し型の類型と商品を返還する類型を同一の期間とする必要はなく、その特質に応じて区分することによってより明確にできること、預託の概念についても同様であること等につきましては、配付資料四ページ以下で述べておりますので、御参照ください。
いずれにしましても、預託法と金商法の集団投資スキームとの間に隙間がないように、消費者庁と金融庁が調整ないし連携して対応していただくことが大変重要になります。しかし、省庁間の関係というのは難しいところがありますので、この連携の関係を附帯決議等によって確認していただきたいと希望いたします。
出資法との関係ですが、買戻し型の場合には出資法に該当する場合が多いと思われます。しかし、刑事捜査は時間がかかり、あくまで事後的制裁となりますので、破綻時の処理は、その対応は業法によることが重要です。
配付資料六ページで、巨額な被害が続いている実態にもかかわらず、出資法の罰則が軽過ぎる点も指摘しております。出資金、預り金に対する罰則は、出資法を制定した一九五四年以来、改正されておりません。これに対して、同法の金利規制に関しては、二〇〇三年改正、二〇〇六年改正で必要に応じて罰則が見直されてきました。この点につきまして、法務省は当委員会の質疑で業務実態等を直接把握していないと答弁していますので、出資法の罰則の引上げの検討を求める次第です。
第二点目として、悪質業者の破綻処理に関連する問題について述べます。
ジャパンライフの事案では、消費者庁は四回にわたって業務停止処分を行いましたが、破産申立て権がなく、被害の拡大、財産の散逸を防ぐことはできませんでした。また、VISIONについても、業務停止処分中であるにもかかわらず営業を継続していることが問題とされています。このような事態というのは、法治国家として絶対に許してはいけないことだと思います。この問題につきまして、牧原議員の質疑において停止の期間を二年に延長した等の答弁がありましたが、それでは不足だと考えます。
そこで、この点につきまして、業務停止命令違反における捜査当局との連携をまず指摘した上で、第二点目として、消費者庁の破産申立て権と解散命令申立て権について意見を述べます。
現行預託法では、業務停止命令違反に対する罰則は二年以下の懲役等となっています。ジャパンライフの事件において、コロナ禍の困難な状況下で捜査を遂げて、山口隆祥を詐欺で起訴し、その他の者を出資法で立件したことについては敬意を表しているところです。
しかし、それとは別の問題として、業務停止命令違反の罪に関して言えば、捜査当局は消費者庁と連携して速やかに対応すべきです。それがまた、業務停止処分の実効性を確保することになります。
関連して言えば、改正法案では、行政処分違反の罪の罰則に関して三年以下の懲役等に引き上げております。引上げには賛成ですが、確認を得ない勧誘や契約については五年以下の懲役等であるところ、業務停止命令に違反して営業を継続する行為の悪質性とその弊害はそれと何ら変わりはない、したがって、本来、同等の罰則に引き上げるのが適当だと考えます。また、そうすることによって、捜査当局の優先度が高まることにもなるというふうに考えます。
次に、消費者庁の破産申立て権です。
業務停止命令にも従わないようないわば極悪な不法業者というものは、法人格を否定する以外にないと思います。その一つの方法として検討課題とされているのは、消費者庁の破産申立て権です。
この問題については、平成二十五年六月に行政手法研究会の報告で検討課題とされたままになっております。早急に検討を遂げるべきです。現状では、法人を解散させて社会的に有害な活動を封じる役割を被害者に担わせていますが、本来、これは公益的な役割であって、行政が担うべきです。
また、被害者からの申立ての場合、予納金も大きな問題です。ジャパンライフの場合、申立て予納金は一千万でした。被害者がこうした多額の資金を拠出することは無理であり、緊急に全国の弁護団、研究会に志ある資金の拠出を呼びかけて、幸い用意して破産申立てすることができましたが、このような形で準備できるのは例外です。
さらに、解散命令について述べます。
私見としては、行政の公益的立場からは、解散命令の申立て制度を検討すべきだと考えております。会社解散命令については、会社法八百二十四条に一般的な規定があり、法務大臣その他利害関係人に申立て権を認め、裁判所に判断を求める仕組みですが、抽象的な規定であって、調査権限等の手続規定もなく、実際には使われていません。
これとは別に、行政庁が解散命令を発出するという類型の法律もありますので、資料十ページを御覧いただきたいと思います。
行政庁が解散命令を発出するというのではなくて、行政庁が裁判所に解散命令を申し立てる権限を持つという類型もあるわけでして、そういう類型で実際に運用されている例を見ますと、宗教法人法八十一条があります。裁判所は、所轄庁、利害関係人若しくは検察官の請求により若しくは職権で、一定の要件で解散を命じることができるとするものです。
業務停止処分にも従わないような極悪な業者については、公的インフラとしての会社制度の利用を許すべきではありません。しかし、会社法の解散命令の制度は、取締り法規における主務官庁の申立て権限が明記されていないばかりか、解散事由も具体性に欠けております。実際にも使われておりません。
そこで、主務官庁に申立て権があること、及び業務停止命令に違反して営業していること等を解散命令事由となることなどを明確にするという意味から、会社法の解散命令の特別規定として新たに創設することができると考えます。
預託商法の歴史を見れば、業務停止処分に従わない極めて悪質な業者が現実に存在するということが明らかなので、このような解散命令規定の必要性を示していると言えると思います。
また、解散命令は行政庁が公益目的で申し立てるもので、破産手続と違って私人間の権利関係に行政が介入するのはどうかといった問題は生じませんし、清算過程で破産原因が判明すれば破産手続に移行すればよいという関係になりますので、整理ができると思います。
破産申立て権については、特定適格消費者団体に破産申立て権を認めないと消費者裁判手続特例法が実際問題として使えないという点について資料十一ページ、それに関連しまして、違法収益吐き出し制度が消費者庁創設以来の宿題であり、MRIインターナショナルの事件では米国において違法収益吐き出し制度が実際に成果を上げているという例が具体的に見えまして、その必要性はますます明らかになっているという点について十二ページに記載してありますので、御覧ください。
最後に、三点目として、契約書面の電子化問題について述べます。
契約書面の電子化は、預託法改正法案にも規定があります。しかし、預託法の改正法案は、多大な被害を出してきた販売を伴う預託等取引被害を根絶するために、不適正な勧誘や契約をあらかじめ排除する仕組みとしていますので、こうした条件の下で消費者の承諾があるのであれば、特商法分野のような具体的な懸念は想定されないと考えます。これに対して、特商法分野の場合、事前確認制度を持つ預託法の場合と契約に至る前提条件の面で大きな違いがあります。
デジタル化社会あるいは経済の活性化との関係ですが、デジタル化によって利便性が向上し、しかも消費者被害も解消されるということは、条件を整備すれば十分実現可能と考えます。
金融分野の例を挙げてみます。
FX取引、外国為替証拠金取引は、今では顧客口座数がおよそ七百万口座という巨大な取引市場となっております。しかし、二〇〇四年三月末当時、わずか八万六千口座にすぎませんでした。そして、直接適用する業法がない状態で、電話、訪問勧誘によって消費者被害が多発し、社会問題化しており、消費者にとって避けるべき取引だったという状態でした。
そこで、同年十二月に金融先物取引法を改正して、不招請の電話、訪問勧誘の禁止ルールを導入いたしました。これによって、被害が解消したばかりでなく、取引が急激に拡大し続けて、今日に至っております。つまり、オンライン取引をビジネスモデルとする事業者が多く新規参入し、取引の信頼性と利便性が向上したことを背景に、自ら主体的に取引に参加する顧客が急増してきた、こういう経過です。
これに限らず、オンラインの金融取引は、自らオンラインで申し込むということから、勧誘起因のトラブルというのは聞きません。したがって、オンラインの取引への承諾というのは、こういう局面で客観的に判断されると思います。したがって、この意味では、第三回成長戦略ワーキング・グループで事業者から要望されている、完全オンライン型における英会話教室の書面デジタル化という点は理解できるところであります。
しかし、それ以外の、不当勧誘による被害が問題となっている訪問販売等というのは全く場面が違います。
消費者トラブル額、被害額は、二〇一九年では、契約購入金額ベースで約六兆円、既払い額では四・七兆円と推計されていて、極めて巨額です。こうした巨額な資金が健全な事業者による良質な商品、サービスに向かう、そういう仕組みを構築することが真の成長戦略と考えます。
その意味からも、デジタル化社会ということであれば、デジタル化社会に対応した特商法の在り方の全般的な見直しが求められているのであって、古い体質を温存したまま契約書面だけ電子化するというような部分的な対応では、真のデジタル化は推進されないばかりでなく、逆に弊害が際立つことになると指摘して、意見陳述を終わります。
御清聴ありがとうございました。(拍手)