石井夏生利の発言 (内閣委員会)

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○石井参考人 おはようございます。中央大学国際情報学部の石井と申します。
 本日は、貴重な機会を賜りましたことに感謝申し上げます。
 本日は、内閣官房で開催されておりました、個人情報保護制度の見直しに関する検討会の委員として議論に参加してきました立場から、改正個人情報保護法案の要点とそれに対する評価を申し上げたいと思います。
 簡単なレジュメを御用意しておりますので、そちらを御覧いただければと思います。
 具体的には、三点の改正事項について意見を申し上げます。
 まず第一は、民間部門を対象とした個人情報保護法と、公的部門を対象とする行政機関個人情報保護法、独立行政法人等個人情報保護法を一本の法律に統合し、個人情報保護委員会の監督権限を及ぼすという点にあります。
 現行法制では、設置主体によって適用法令が異なりますので、官民の法律で個人情報の定義に違いが存在し、個人情報の取扱いに関しても異なる規律が適用されてきました。
 このことは、特に、設置主体に関わらず共通の業務を行っている医療分野ですとか学術研究分野において不均衡をもたらしてきたところでありまして、官民のデータ利活用の妨げになるものでありました。
 また、日本の個人情報保護法制におきましては、公的部門に対する個人情報保護委員会の監督権限が、マイナンバーや非識別加工情報に係るものに限定されており、民間部門への監督権限の範囲との間で違いがございました。
 他方、個人情報保護制度の先進地域である欧州連合におきましては、古くから官民一体的な法制度を設け、独立監視機関を設けてきたという歴史がございます。
 ヨーロッパ、欧州では、各国の独立監視機関において、個人データの適正な取扱いがなされているかどうかを監督するという仕組みが採用されております。ヨーロッパでは、独立監視機関の存在が最も重視され、また、当たり前のものとされてきました。
 独立監視機関の制度は、個人データという高い価値を持つものの目に見えない性質のものについて、適切な取扱いがなされていることを担保し、かつ、対外的にも独立監視機関のチェックを用意しているということをもって信頼を獲得していく、それによって個人データの保護と利活用を適切な形で図っていくということを意図した制度であると見ることができると思います。
 今回の改正案では、先ほど申し上げました現行法の課題を解決すべく、官民一体的な規律を設け、かつ、行政機関には、民間部門に合わせる形で、不適正な利用の禁止、適正な取得、漏えい報告、外国にある第三者への提供制限等、新たな規律を取り入れたことで、保護レベルを向上させるものであると認識しております。
 そして、何より重要な点としましては、個人情報保護委員会の監督権限、より具体的には、報告、資料提出の求め、実地調査、指導助言、勧告の各権限が公的部門に広く及ぶようにすることで、越境データ移転に係るいわゆる十分性認定の対象範囲を広げるための制度的基盤が整備されたということを積極的に評価しております。
 また、保有個人情報の開示請求等を行使した際の不服申立ての場面では、客観的な判断を保障する観点から、行政機関、個人情報保護審査会への諮問制度が用意されております。
 これまでの制度では、審査会の諮問を受けて行政機関が裁決を行ってきましたが、今回の法改正によって、個人情報保護委員会が勧告権限を行使することができるようになります。より個人の権利を担保するための法執行の制度が手当てされたということを意味します。
 以上に加えまして、官民で法律を統一化するということによって、個人情報の定義、匿名加工情報の取扱いの規律を明確化するということにもなりますので、円滑なデータ流通を図る上で適切な改正であると考えております。
 第二は、地方公共団体の個人情報保護制度についても、統合後の法律において全国的な共通ルールを規定し、全体の所管を個人情報保護委員会に一元化するという点です。
 これは、以前からいわゆる二千個問題として議論されてきた論点であります。
 地方公共団体では、一九七〇年代から個人情報保護条例の制定が始まりまして、全国的に広がりを見せるようになりました。
 そうした地方の努力が国の立法化を推し進めることにもつながったと理解しておりますが、それぞれの地方公共団体の定める条例は、例えば、民間部門の規律に近いものであったり、行政機関の規律に近いものであったり、ルールが異なっている上、かつ、オンライン結合の禁止といった旧態依然とした制度を残している自治体も相当数あると承知しております。
 また、地方公共団体では審議会ないしは審査会の制度が設けられており、個別の個人情報の取扱いについては、おおよそ数か月に一度程度のペースで審議を経るという仕組みが取られてきましたが、この手続を経ることがかえってデータの適切な利活用を妨げるという問題をもたらしてきた面もあろうかと思います。
 さらには、地方公共団体によって条例の解釈も異なり得る、運用が異なるという点もあったということを課題として挙げることができようかと思います。
 そこで、今回の改正によりまして、国の規律に合わせた統一ルールを適用し、かつ、統一的な法解釈を個人情報保護委員会に委ねることができるようになるということが期待されますので、保護レベルの適正化とデータ移転の円滑化を図ることに資するものと考えております。
 なお、今日の社会におきましては、個人データは一瞬で大量に地域を超えて移転していきます。そのため、保護という要請だけではなく、利活用という要請からも、国内法のルールを統一し、国外の法制度と調和を図っていく必要性が一段と高まっております。
 したがいまして、個人データに関する適切なルール形成の文脈におきましては、地方公共団体が個別にルールをつくるのではなく、国の統一ルールを適用することを大前提とし、条例の制定はあくまで法律の範囲内で認められるという考え方を貫くことが重要であると考えております。
 第三は、医療分野、学術分野における規律の見直しについてです。
 今回の見直しによりまして、国公立の病院、大学等には、原則として民間の病院、大学等と同等の規律を適用するとともに、一律の適用除外から、義務ごとの例外規定として精緻化することになります。
 現行の個人情報保護法では、憲法の定める学問の自由を保障する観点から、民間の事業者については、学術研究機関が学術研究目的で個人情報を取り扱うときには個人情報取扱事業者等の義務が及ばないものとされております。
 しかし、先ほども申し上げましたとおり、特に学術研究機関や医療機関は、設置主体で規律を変える必要はない上に、民間部門だけ学術研究目的の場合に義務が包括的に適用除外されるという点において不均衡が存在しておりました。
 そこで、今回の改正によって、独立行政法人等のうち、国立研究開発法人や国立大学法人等、民間に類する立場で、民間のカウンターパートとの間でデータを利用した共同作業を継続的に行うもの等を規律移行法人と位置づけ、民間と同様のルールを適用すること、また、見直し後のルールについては、一律の適用除外ではなく、安全管理措置や保有個人データの開示請求等、一定の規律については学術研究機関にも義務を課すということで、医療分野と学術分野における規律の不均衡を是正するということが期待されます。
 他方、学問の自由を保障するという観点からは、学術研究機関が自主規範を策定、公表し、それにのっとった個人情報の取扱いを行う場合には、個人情報保護委員会は原則としてその監督権限を行使しないということが、そういう考え方が整理されておりまして、国家機関による過度な干渉を防止するための配慮というのもなされております。
 なお、国外の状況を見ますと、例えば、イギリスのデータ保護法などでは、報道、学術、芸術、文学目的による個人データの取扱いについて、監督機関の監督権限の行使を制限するような規定も設けられているところであります。
 最後に、課題を申し上げます。
 今回の個人情報保護法制の見直しによって、個人情報保護委員会の果たすべき役割は一層拡大していきます。それによって業務量が相当程度増えることが予想されますので、個人情報保護委員会の体制強化が急務であると考えております。
 全体的に申し上げますと、今回の改正法案は、高い保護レベルを誇る欧州地域の規律に一層近づけるための大きな改正でありまして、国際的な基準から見ても望ましい方向性を打ち出す内容のものであると考えております。
 以上で私の意見表明とさせていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 石井夏生利

speaker_id: 21140

日付: 2021-03-18

院: 衆議院

会議名: 内閣委員会