大野英男の発言 (文部科学委員会)

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○大野参考人 皆様、おはようございます。東北大学総長の大野英男でございます。
 本日は、国立大学法人法の一部を改正する法律案の御審議に当たり、このような機会を頂戴し、誠にありがとうございます。左藤委員長を始め、衆議院文部科学委員会の委員の皆様に厚く御礼を申し上げたいと思います。
 私からは、まず、東北大学がそもそもどういう大学であるかを最初に御説明した後、意見を述べさせていただきたいと思います。
 東北大学は、今から百十四年前、一九〇七年、明治四十年でございますけれども、杜の都仙台の地に、東京大学そして京都大学に続く第三の研究型総合大学として創設されております。以来、研究第一、門戸開放、そして実学尊重の三つの理念を掲げ、世界をリードする研究成果を上げるとともに、多くの指導的人材を輩出してまいりました。
 研究第一の理念に関しましては、創設当時から、我が国の俊英を集める、それだけではなくて、世界からも広く優秀な人材を集めてきてございます。
 初代総長の沢柳政太郎は、新設された東北帝国大学理科大学に、実はアルベルト・アインシュタインをリクルートしようといたしました、破格の待遇で。残念ながらこれは実現しませんでしたが、アインシュタインがノーベル賞を取りました直後の一九二二年には、来日された折に本学を訪問して、愛知敬一あるいは本多光太郎といった本学を代表する教授たちと面談をしているところでございます。このスピリットが今でも生きているということでございます。
 第二の、門戸開放に関しましては、一九一三年に、本学は我が国の大学で初めて、女子学生を三名、入学を認めてございます。加えて、設立当初から、他の帝国大学が門戸を閉ざしていた、旧制高校以外の、例えば高等師範学校などの卒業生に門戸を開き、また、留学生も多く受け入れてまいったところでございます。
 このように、門戸開放の理念というのは、今の言葉で言えばダイバーシティーでございまして、本学はダイバーシティーを理念に掲げ、一世紀以上にわたって実践してまいったということでございます。
 第三の、実学尊重に関しましては、基礎研究から応用研究まで、研究成果を広い意味でのイノベーションにつなげてきた伝統、それを意味してございまして、社会を変革する駆動力が大学に期待される今、非常に、ますます重要になってきている理念だと考えてございます。
 東北大学は、現在、十の学部、十五の研究科、そして三つの専門職大学院、六つの附置研究所、そして病院で構成されていまして、学部学生が一万人強、正規学生の外国人留学生が二千人、大学院生も含めますと学生数は一万八千人、そういう規模の大学でございます。
 現在、日本を代表する研究大学には、世界の主要大学と伍して、グローバルな視点から更なる発展を遂げることが求められております。本学は、二〇一七年に、その第一陣となる最初の三つの指定国立大学法人の一つとして指定を受けているところでございます。
 この三月に、私たちは東日本大震災から十年を迎えております。東北大学は、東日本大震災の被災地の中心にある総合大学といたしまして、大震災からの復興を先導し、日本の再生の先駆けとなるべく、震災発生直後の二〇一一年四月には、いち早く災害復興新生研究機構を創設し、十年にわたって八つの大型研究プロジェクトや復興アクション一〇〇プラスなど、数多くの取組を推進してきたところでございます。東北大学にとってのこの十年間は、社会と共にある大学というアイデンティティーを確立した期間でもございます。
 このような社会課題に向き合う本学の成果を、持続可能でレジリエントなグリーン未来社会の構築に向けて生かすために、カーボンニュートラルもこれに含まれますけれども、この四月には、グリーン未来創造機構を創設してございます。二〇一五年には、国際社会では、持続可能な開発目標、SDGs、あるいはパリ協定、そしてそれに並ぶ世界の三大アジェンダの一つとして仙台防災枠組が制定されたところでございますけれども、これに関して、私ども、このグリーン未来創造機構において、人文社会科学も含めた総合知をもってアプローチし、多くのステークホルダーにも参画していただく、そういう機構にして、更にこの取組を発展させていきたいと考えております。
 震災復興は、元に戻すだけではなくて、若者の未来が輝くような形にしなければなりません。このために、この後で述べます成長する公共財としての研究大学が重要だと私ども考えるように至っております。
 私自身は、二〇一八年に第二十二代の東北大学総長に就任いたしました。それから三年間、特にこの一年余りは、コロナ禍の激動の中で、世界の研究大学に伍する研究大学として役割を果たすべく、日々取り組んでまいったところでございます。
 このような立場から、本日はお話をさせていただければと思います。
 さて、私が総長になって三年、今四年目でございますけれども、この間、私どものような研究大学は、成長する公共財になるべきであると常に考えて大学経営に当たってまいりました。それは、創立以来、未来社会に向けた変革とイノベーションを先導してまいりました東北大学が、成長する公共財として、持てる力を社会に役立て、社会からの支援も得て、我々自身も成長し、社会変革を先導する存在とならなければならないということでございます。
 世界に目を向けてみますと、研究大学がイノベーションを駆動する重要なプレーヤーやハブになっている例がございます。例えば、イギリスのケンブリッジ大学の周辺、あるいはアメリカのボストン、これはMIT、ハーバードが研究大学となるわけですけれども、そういう研究大学を中心としてライフ系のイノベーションエコシステムができ、大企業やスタートアップ、ベンチャーキャピタルも巻き込んで、大きなうねりが起こっているところでございます。
 このような社会との共創は、大学の規模の成長となって表れるわけでございます。実際、ケンブリッジ大学やオックスフォード大学は、過去十五年ほどでその予算規模を三倍程度に大きくしてきてございます。すなわち、社会との共創の拡大が大学の規模の拡大となって表れているわけでございます。これを、成長する公共財と私は呼んでいるところでございます。
 一方で、我が国の研究大学は、例えば本学は、この間に、十五年間で一三%の成長であって、このような役割を十分に果たせていないと考えております。日本の高等教育機関、特に研究大学の果たすべき役割についての認識がまだまだ変化をしていないということに加えて、様々な抑制的規制が課題であると考えてございます。
 私は、この知識集約型社会において、国立大学は、国のインフラとしての普遍的な教育、研究の使命に加えて、ポストコロナの予測困難な時代にあって、新たな価値を創造し、その応用展開によって社会変革、イノベーションを先導する、そういった新たな役割、これを、成長する公共財につながる大学の機能拡張と呼びますけれども、が求められていると考えてございます。
 国立大学法人が、そのような機能を拡張し、社会変革を駆動する成長する公共財となるには、迅速な経営判断に基づく自律的かつ戦略的な経営が必要になります。このために、多様なステークホルダーとの双方向対話を重視する、私の言葉で言いますと、エンゲージメント型経営を実現すべきだと考えてございます。そのような経営を進める中で、タイムリーに価値を創造して社会にお渡しし、その社会から相応の支援を得ることで、学生諸君も含めた一人一人の構成員が自由闊達に多彩な個性を発揮しつつ最大のパフォーマンスを上げ、更に大学自身も力強く発展していく、そういう好循環システムが実現されると考えてございます。そのための法的枠組みを是非実現していただきたいと考えています。
 今申し上げたエンゲージメントというものは、単なる対話という意味ではなくて、お互いがそれぞれに主体的に強く関与し、相互理解を獲得して責任を果たす関係を言っております。このような関係を構築していくには、法人としての積極的な情報公開や意思決定プロセスの可視化などを通じて、経営の透明性を高めるということを行うとともに、法人自身による是正の仕組みが内在化されたガバナンスを構築することが必要であると考えております。
 そのような観点から、今回、中期目標、中期計画に関しましては、簡略でストーリーを重視した公約にさせていただきまして、その指標の可視化によって結果責任を明確化するとともに、現在様々な形で行われている国による評価全体については、簡素化することが望ましいと考えてございます。今、実際、評価対応に費やしている法人のリソース、それを、多様なステークホルダーとの対話、エンゲージメントに振り向けることがこれによって可能となると考えております。
 より研究を志向する国立大学法人が、まず先頭に立って成長する公共財となり、世界の研究大学と伍していき、国立大学法人全体としての道を開いていく、そういうためには、法人の経営裁量を拡大する規制緩和、そしてそれに伴うガバナンス体制の整備、そして先行投資財源が不可欠であると考えています。
 従来型の共同研究を超えた他の組織との本格的共同事業や、そのためのジョイントベンチャー向けファンド、戦略的なアセットマネジメントなど、各種の社会共創事業に対して国立大学法人が出資可能になれば、国立大学法人の社会的貢献機能の大幅な強化による新たな社会価値創造につながり、さらには、これまで申し上げてきた、成長する公共財となるための財源の多様化にも資すると考えてございます。
 今回の改正により、この点が一歩前進いたします。積極的に未来を切り開く大学を後押しする、意義のある御提案と考えてございます。
 最後に、グローバルな視点について申し添えます。
 高等教育は、グローバルな視点で考えなければなりません。学生の獲得一つを取ってみても、世界からその大学に行きたいと思ってもらえるような教育と研究を行うことで、卓越した留学生を引きつけ、それがひいては我が国の若者たちにとって、その卓越した留学生がたくさんいるという環境を整えることによって、我が国の若者たちに格好の、切磋琢磨するグローバルな場の提供につながると考えてございます。
 その意味で、国立大学法人の環境を変える施策は、ポストコロナに向けて急激に変貌する世界の高等教育を見据えたスピードが極めて重要だと考えてございます。
 国立大学が、国内外の社会の変化に対応し、そして対応するだけではなくてその変化を先導できるように、今後も継続して、大学の変革や戦略的経営の観点から、必要な制度見直しを迅速に進めるべきだと考えております。
 以上、まとめますと、国立大学の自浄能力を高めるガバナンスの実現、そしてそのガバナンスを前提とした上で、自律性を高めた経営裁量の拡大により財務基盤強化を図ることを目指した今回の制度改革は、極めて時宜を得たものであると考えてございます。
 以上、本法案について、私の考えるところを申し述べさせていただきました。
 本日は、大変貴重な機会をいただき、誠にありがとうございます。(拍手)

発言情報

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発言者: 大野英男

speaker_id: 3404

日付: 2021-04-20

院: 衆議院

会議名: 文部科学委員会