山下一仁の発言 (予算委員会)
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○山下参考人 山下でございます。今日は、このような機会を設けていただきまして、どうもありがとうございました。
私、三十年間農林水産省に勤務していまして、その頃、大変温かく、時には厳しく御指導をいただいた先生方もたくさんいらっしゃるので、そんな中で、笑いが起こるというのは、多分思い出があるんだと思うんですが、その中でこういう私の意見を陳述させてもらうことは大変光栄だというふうに思っております。
若干緊張していますけれども、農林水産省の公式見解とは全く百八十度異なる見解かもしれませんけれども、ちょっと我慢してお聞き願いたいというふうに思っております。
まず、一ページを開きまして、私、これは農政のアンシャンレジームと呼んでいるんですけれども、戦後農政が決めたことがずっと続いている。
三つの柱です。一つは米価政策です。一つは農協政策です。もう一つは農地政策です。この三つの柱で今まで農林水産政策は運用されてきたということです。
米価政策です。
六〇年代に米価を上げたわけですね。当時は食管制度があって政府が買い入れた。需給均衡価格よりも超えて米価を設定するので過剰が生じる。そうすると、政府在庫が膨れて過剰米処理をせざるを得ない。したがって、政府買入れによる財政負担を軽減するために始めたのが一九七〇年の減反政策だったわけです。
ところが、一九九五年に食管制度が廃止されました。となると、今では生産者に補助金を与えて米の生産を減少させて米価を高く維持する、こういう米価維持政策が唯一の米価のための政策になってしまった。したがって、農協がこれを推進している、こういう構図になっているということなんです。
したがって、今年も四十万トン近い米を減産する、こういうことにみんな一生懸命になっているということです。
もう一つは農協制度です。
農協制度というのは、これは農林省が実は大恐慌のときにつくった組織です。
欧米では専門農協しか認められていません。専門農協というのは、端的に言えば、信用事業だけ、金融事業だけやる、あるいは農産物の販売事業だけやる、そういう専門農協なんですけれども、日本のJAという総合農協は、金融も、それから共済も、農産物の販売も、あるいは肥料、農薬の販売も全部やる、こういう総合農協ということでやってきました。
それを、米価が上がったので、零細な兼業農家が滞留した。零細な兼業農家は、兼業所得をJAバンクに預けてくれた。それで、今ではJAバンクの預金額は百兆円を超える日本第二のメガバンクになったわけです。
ところが、農業は衰退していますから、その百兆円のうちの一%ぐらいしか農業には融資できない。したがって融資先がないわけですね。
それでどうしたかというと、これまた農協に特殊な准組合員制度というのがあります。地域の人であれば農業者じゃなくても組合員になって、農協の意思決定には関与できませんけれども、農協のローンを受けたり、あるいは共済に加入したり、そういうことができる特殊な准組合員制度というのがあります。
この准組合員制度を利用して、百兆円のうち約三割ぐらいのところを、住宅ローンとか、教育ローンとか、車のローンに融資している、これが今の農協です。
この准組合員制度については、今年見直しをされるということになっております。
それから、最後は農地政策です。
農地政策というのは、農地法というのがあるんですけれども、これはどういう考え方で成っているかというと、自作農主義なんです。
戦後、農地改革で自作農をつくりました。それを維持、固定しようとして作ったのが一九五二年の農地法なんです。
これはどういうことかといいますと、自作農というのは耕作者イコール所有者ですから、株式会社の場合は、耕作者は従業員になる、所有者は株主だ、この等号関係が成立しない、したがって株式会社は認めない、こういう整理になってきたわけです。
したがって、農業、農家とは関係のない若い人が、例えば東京の若い人が農業に関心を持って、例えば茨城で農地を取得して農業に参入したい、そのためにベンチャーの株式会社を立ち上げて、親とか友達とかそういう人たちから出資をしてもらって、その金をもって農地を取得して農業に参入する、そういうふうなことが認められないというふうなことになっているわけです。
ところが、農家の子供であれば、東京に住むサラリーマンも大阪に住むサラリーマンも、みんな農地を取得できるわけです。
ということは、今までの農政というのは、農家の後継者しか農業の後継者にしなかったわけです。したがって、農業に関心を持つ都会の人が農業をやりたくてもできない。つまり、農業の後継者を抑制しているのが、この農地制度ということでございます。
以下、ちょっと詳しく、次のページから申し上げたいと思います。
まず、減反政策です。
減反政策というのは、実は、戦前もそういう構想を農林省は持ったことがあります。でも、潰したのはどこか。陸軍省だったわけです。米の生産を減少させるなんて安全保障上とんでもないというので潰されたわけです。
その下のところを見ていただきたいと思います。
米というのは、小麦と比べて、一粒の米からできる米の量というのは、物すごく、はるかに小麦をしのぐわけです。しかも、水資源の枯渇とか、それから土壌流亡とか、そういうこともない、持続可能な農業なわけですね。しかも、水田を水田として利用することによって、水資源の涵養とか洪水の防止とか、そういう多面的機能を発揮しているわけです。
そういうすばらしい世界に誇る水田を、五十年以上にわたって水田を水田として使わないという政策に補助金を出している政策、これは本当にいいんでしょうか。持続可能な開発目標、この国連の目標に反するんじゃないかなというふうに思います。
次のページ、四ページをお願いしたいと思います。
これまた特殊な政策ですね、減反政策というのは。
普通なら、先ほど来からありますように、例えば医療政策を取りますと、財政負担をすると国民に安く財とかサービスを提供する、これが普通の政策なんです。
ところが、この減反政策というのは、財政負担をして農家に米の生産を減少してもらって米の値段を高くする、つまり、財政負担をして消費者負担を高めるという異常な政策を随分やってきたわけですね。
その左の下を見ていただくと分かるんですけれども、米価を高くしたので零細な兼業農家が滞留した、したがって、専業農家の人が農地を買い入れて規模を拡大して、コストを下げて所得を上げようとしても、それはできなくなってしまったということです。
それから、農林省とか都道府県の試験場の職員、技術系の職員の人たちは、増産のための品種改良というのを禁じられたわけです。物すごく悔しい思いをしました。いまだに私に、よくぞ言ってくれたというふうなことを言っている技術者の人もいるわけです。
つまり、これによって、今では、空から飛行機で種まきをしているカリフォルニアの米の面積当たりの収量は日本の米の収量の一・六倍もある、こんなことになっているわけです。六十年前は、中国の米の収量は日本の半分だったわけです。これが今は追い越されてしまった。
さらに、右の方を見ていただきますと、米価を高くしたということで米の消費が減少して、麦の消費が増えました。パンの消費が増えた。五百万トン相当の米を減産して、八百万トンの麦を輸入している、こういう状況になっているということです。
済みません、ちょっとスキップさせていただきまして、七ページを見ていただきたいと思います。
これは日米の米価の推移の比較なんですけれども、実は、二〇一四年、日米の米価が、これはちょっと分かりにくいんですけれども、逆転しました。日本の米価の方が安くなったんです。面白いことが起こったわけです。
ところが、その後、減反を強化したので、また内外価格差が広がっています。しかし、この高い方の国産の米価も、減反によって維持されている米価なんです。減反をやめると、すとんと七千円ぐらいのところに落ちます。
では、七千円になると農家が困るじゃないかと。そんなことはないんです。七千円になります。アメリカ産の、カリフォルニア産の米価が一万三千円だと何が起こるか。消費者が米を七千円で国内で買い付けて一万三千円で売ると、必ずもうかるわけです。国内の供給が減ります。米価が上がります。どこまで上がるかというと、少なくとも一万三千円のところまでは上がるわけですね。それを見て、翌年に生産者が増える、生産を増やす。となると、今の八百万トンじゃなくて、千二百万トンぐらいの米の生産ができるということになると思います。
済みません、農協問題なんですけれども、十ページに行っていただきたいと思います。
先ほど、准組合員の話をさせていただきました。今は、実は正組合員も、本当に正組合員なのかよく分からない人が、農家戸数をはるかにしのぐ正組合員数で、実は組合員の組織率一八〇%ぐらいの、組織として信じられないぐらいの組織なんですけれども、その正組合員数を准組合員が上回って推移しているという状況になっています。つまり、准組合員の方が正組合員、農家よりも多いという状況になっています。
その次を見ていただきたいと思います。
一番上のところなんですけれども、准組合員制度というのは、組合を利用できるんだけれども意思決定には関与できない。つまり、利用者なんだけれども管理できないというのが准組合員制度です。これは、世界的な協同組合の基本原則、利用者が所有し、管理し、利益を受ける、こういう原則から大きく逸脱しているわけです。
その次のページを。
独禁法の問題もあるんですけれども、最終的な私の意見としては、今のJAというのは、確かに地域にとっては大きな貢献をしているところもありますので、これは農業を切り離して、信用事業とか共済事業とかを専門に行う地域協同組合として再編して、農業は自主的に設立される専門農協に任せるのがいいんじゃないかなと思います。
次の十三ページにもありますように、実は今、JAの農業関連事業は大きな赤字で、これを共済事業、信用事業の黒字で補填しているという状況にありますので、農協としてもそうしたことが受け入れられやすいんじゃないかなというふうに思います。
それから、最後に、十四ページですけれども、農地問題です。
株式会社に農地を取得させると、農地を転用するんじゃないかとか、あるいは耕作放棄するんじゃないかというふうなことを言われていますけれども、上から二つ目のところを見ていただくと、実は二百八十万ヘクタールの農地を半分は転用、半分は壊廃してしまったというのは誰なんだろうかと。株式会社がやったわけじゃないんです。これは農家がやったわけです。
もし、食料安全保障上、農地が必要だということであれば、一番下に書いてありますように、抜本的な改正案というのは、農地法なんか外して、確固たるゾーニングをやって、農地は絶対守るんだという気概を示すことが必要ではないかなというふうに思います。
私は、ブラッセルに、EU代表部というところに三年間勤めていたんですけれども、時々パリに買物に行きます。そうすると、フランスの新幹線に相当する列車で行くんですけれども、一面の小麦畑を列車は走ります。もう小麦畑しかないんです。ところが、パリに近づくと、パリがふわっと浮き上がるんです。都市的利用地域と農地的利用地域、この区別がヨーロッパは確実にあるわけです。だから、日本のように、東京から博多まで行ってもどんどんどんどん家が続く、そういう醜い田園都市風景ではないわけですね。そういうことを是非とも見習っていただきたいなと思います。
済みません、いろいろ勝手なことばかり言って、怒られることがあるかと思いますけれども、一つの元農林省担当者の意見としてお聞きいただきたいと思います。
今日は、どうもありがとうございました。(拍手)