小池俊雄の発言 (予算委員会公聴会)

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○小池公述人 土木研究所水災害・リスクマネジメント国際センター、これは、英語で、頭文字を取ってICHARMと言いますが、センター長を務めております小池でございます。
 私は、私の専門の観点から、近年打ち続いております水災害、それに対する対応と、これに対して科学技術がどういう対応ができるのかということを御紹介し、また、こういう防災、減災と科学技術の力をもって我が国はどういうふうな国際協力を展開できるかということについてお話しさせていただきたいと思います。
 お手元に資料があると思いますので、ページをめくっていただきながらお聞きいただければと思います。
 二ページを御覧ください。これは、ここ八年間の我が国における水災害でございます。
 伊豆大島、広島で大きな土砂災害がございました。その翌年、関東の鬼怒川が決壊いたしました。このとき、昼間の決壊でありましたが、逃げ遅れで千三百人を超す方がヘリコプターで救助されました。翌年には、東北の高齢者のグループホームでそこにおられる方が亡くなるとか、北海道の経済に大きな打撃を与えた台風災害が頻発いたしました。そして、平成二十九年には、谷の様相が一変する土砂洪水氾濫で、九州北部、筑後川の支流の赤谷川が大きな被災を受けました。
 そして、まだ記憶に新しい平成三十年、令和元年に、西日本と東日本で、日本全国のアメダス、約千三百ありますが、この一割の箇所でそれぞれの年に過去最大の豪雨を記録するという事態がございました。日本全国どこにでも大きな、今までにない雨が降るようになっております。これらの災害の結果、無数の土砂災害、百四十を超える河川が破堤をする。それから、昭和五十七年の長崎豪雨以来の二百名を超す犠牲者が出ました。
 そして、昨年であります。熊本県の球磨川、ここに人吉市の雨量と水位の図を載せておりますが、いずれも過去を大幅に上回る大きな雨と洪水になっております。
 三ページ目を御覧ください。
 こういう豪雨の変化によって、洪水のパターンに変化が出てきております。
 1に書いておりますのは、バックウォーター現象ということで、本川の水位が高い状態のときに、支川の水位が高い場合に支川で破堤するということです。この図には、岡山県倉敷市真備町の大きな浸水被害がございましたが、そのときのバックウォーターによる連鎖破堤の内容が記されております。
 二番目は、土砂洪水氾濫でございます。上流で豪雨によって土石流や土砂崩壊がございますと、それが洪水流によって流されます。勾配が緩いところで土砂が堆積いたしまして、川をまず埋めます。そうすると、水は流れ場所を失いますので、周りの土地いっぱいに土砂を含んで流れるわけです。これが土砂洪水氾濫で、写真にありますように、川と道路、周りの土地の区別がつかないほどに土砂が堆積するわけでございます。
 三番目は、長時間継続して豪雨が続きますと、ダムの治水容量を超える流入量があります。そうしますと、水位がダムを超えますと、コントロールを失って非常に危険な状態になりますので、水位の上昇と競争で放流をしなければならなくなります。これが異常洪水時防災操作と言われるものでございまして、こういう事例が増えてきております。
 一方、社会にも非常に大きな変化がございます。
 4のところを御覧ください。これは日本の人口構成でございますが、高齢者一人当たりの生産年齢者数、すなわち支援が必要な人に対して支援できる人が何人いるかということでございますが、二〇〇〇年から二〇六五年にかけて激減いたします。すなわち、支援できる人が減って、支援が必要な人が増える。これは、先ほど来も申しましたが、要配慮者施設の立地の見直し等を考えていく必要があることを示しております。
 5は、この図の中に赤い線と黄色い線が段階的にございますが、これは各業種ごとの業務の停止とかあるいは停滞の日数でございます。浸水深に応じて何日業務が停止するかというマニュアルの線でございます。この事例は先ほどの鬼怒川の決壊のときの事例でございますが、それを、マニュアルを超える、三倍から四倍超える日数が復旧にかかっております。経済が安定成長から低成長に入って、私どもは、元に戻れない状態というのが続き、持続的な経済発展に大きな影響を及ぼし始めていることに気がつかなくてはなりません。これを受けて、実は、今年度でございますが、この線を倍の値に変えるというマニュアルの改定が行われるに至ったほどでございます。
 人々の意識も変わってきておりまして、六番は、コロナの感染リスクと災害リスク、どちらが怖いかということを聞いたものでございますが、コロナの方が怖い、リスクが高いと答えた人が四割で、災害リスクの倍になっております。これは、災害を経験して、しかも避難を経験した人に聞いた調査結果でございます。
 一方、7では、感染症の影響下、東京、大阪、名古屋の特に若い方々が、首都、都市から地方移住したいという関心が高まっております。とりわけ、東京二十三区の二十代の人々からは、三五%を超える方々が地方移住に関心があると答えております。
 こういうことを基に、社会資本整備審議会では、新たな河川の、治水の在り方を考えまして、昨年七月に国土交通大臣に答申されました。
 四ページを御覧ください。
 基本的な観点としては、こういう災害に対して強靱な国土をつくること、それから、右側になりますけれども、将来にわたり継続的に経済、社会を発展させることができること、これは持続可能性でございます、そして、こういうことをやるためにはあらゆる主体が協力して対策に取り組むという、包摂性ということを基本的な観点に置きまして、気候変動を踏まえた治水計画の見直しと、河川流域のあらゆる主体の関係者が協働して流域全体で行う持続的な治水対策、これを流域治水と呼びますが、これへの転換を答申いたしました。
 この流域治水、英語では、リバー・ベースン・ディザスター・レジリエンス・アンド・サステーナビリティー・バイ・オールといいまして、オールは全ての関係者が協力するという意味でございます。
 計画の見直しでは、左側の破線の中に書いておりますが、これまでは観測値を用いて計画を立てておりました。これを百分の一とか二百分の一という確率評価をして計画を立てていたところに、気候変動予測モデルの結果から、現在と将来、どれぐらい変化するか、その変化倍率を掛けるという方式を入れまして、これは昭和三十三年以来の河川計画の基本的な見直しになっております。
 令和元年の十月に提言を答申した暫定値がここに記載されておりますが、黄色で、計画降雨、二度以上のところが一・一倍。ああ、そんなものかというふうにお考えの節があるかもしれませんが、計画降雨で一・一倍というのは、洪水のピーク流量で一・二倍。百年に一回の洪水は百年に二回起こる、要するに被害は二倍になるということでございます。こういう非常に大きなインパクトがございまして、現在、この改定作業を社会資本整備審議会では進めておりまして、年度末にはこの改定を終えるところでございます。
 一方、流域治水は大きな三つの柱がございます。赤い色で1、2、3と書いておりますが、氾濫をできるだけ防ぐ、あるいは減らす方策。2に、被害対象を減少させる、要するに住まい方の工夫とか、リスクの低いところに移住するということでございます。3は、確かな避難を行って被害を軽減し、早期復旧復興を実現するということ。
 こういうことを実現するためには、一番下に書いておりますが、各省庁、国、地方、それから官、民、コミュニティーの連携を強めて、統合的で先見的な政策の立案と実行が必要になってきます。
 それから、これまでは災害というのは直接の被害を対象としておりました。しかし、被害を軽減するということは持続可能な開発につながり、それは税収の増加にもなります。こういうことに視点を移して、災害を減らすということが質の高い成長につながるという視点を持っていくことが必要であると思います。
 それから、こういう地域ぐるみ、国ぐるみの対策には、それぞれの魅力とか誇りある、こういうのはシビックプライドと言われておりますが、こういうシビックプライドを持てる社会づくりというものも併せて取り組む必要があると思っております。
 災害関連で、最後に、国難級の巨大災害への対応を触れさせていただきます。
 五ページを御覧ください。
 平成三十年九月、台風二十一号災害のときには、この写真にありますように関西空港が冠水いたしまして、非常に大きなショックを受けました。このとき、大阪湾の潮位は、過去最大である室戸第二台風のときの水位を三十センチ以上も実は高回っておりました。しかし、その図にありますように、この高潮による浸水被害、戸数はゼロでありました。このとき、防潮堤であるとか防潮水門等の投資効果によって守られた資産は十七兆円と推計されております。
 中の段にありますのは平成二十九年の土木学会会長特別委員会から出された報告でございまして、ここでは、八つの巨大災害、一番大きいのが南海トラフ地震でございますが、首都直下地震と続きます。こういうものの経済被害や資産被害、財政的被害、これは税収の落ち込みです。こういうものを試算して、事業費として社会資本投資をしますと、どれぐらいの減災率があり、税収の縮小幅を回避できるか。税収の縮小幅を回避できるというのは、逆に言うと税収が増えるということになるわけですが、そういうことを試算しており、こういう社会資本投資というものが必要なことがうたわれています。
 一番下に三つの図を描いておりますが、黒い線、左から右に時間が流れておりまして、災害が発災しますと社会の機能が低下して、それが戻ってきます。オレンジ色の三角が被害のリスクということになります。
 私どもはこの面積をできるだけ減らすことが必要なわけで、避難とか応急、復旧復興で紫のように減らすためには、市民、コミュニティー、企業、地方自治体、国、こういう全ての関係当事者が行動を変えていく必要があります。
 また、防災、減災の投資、これを開発投資とも捉えていきますと、右側の青い線で描かれていますように、社会の機能が上がって、よりリスクを減らすことができます。こういう質の高い成長に結びつけるような施策の展開が必要であると思います。
 こういうことを進めるには科学技術はどのようなことができるかということについて、次に述べたいと思います。
 六ページを御覧ください。
 平成二十八年から令和二年、今年度までの第五期科学技術基本計画におきましては、ソサエティー五・〇という考え方が出されました。これは、データや情報を仮想空間で統合、解析して、現実空間に適用することによって社会のありようを変えるというものでございまして、左側の下段に丸と大きな皿が三段ありますが、この中ほどに、データベースとしまして、医療とか地球環境、エネルギーとか、こういういろいろな情報を統合化して、上段のいろいろなシステム、サービスにつなげていくということでございます。
 このページの右側には、文部科学省の施策で、地球環境データ統合・解析プラットフォーム事業というものが来年度予算に計上されております。これは、地球環境に関わるビッグデータを蓄積して統合、解析するシステム、これは頭文字を取ってDIASと呼ばれておりますが、これを更に開発して、こういう大規模なデータによる社会の価値創出につなげていこうというものでございまして、注目すべきことは令和三年から十年間の施策ということになっております。
 実は、このDIASというものは、下の方に、青い色がつけてあるところに記載しておりますが、一九八〇年から二〇〇五年、四半世紀にわたって、小規模な科研費だとかいろいろな経費を組み合わせて大学の研究グループで進めてきたものが、二〇〇六年から二〇一〇年の第三期科学技術基本計画で国家基幹技術の一つとして認定され、その後、五年、三期にわたって開発が続けられてきたものでございます。
 この緑色のお皿の図はそのときに作ったものでありまして、ソサエティー五・〇と同じような構造をしておりますが、データを統合、解析しまして、いろいろな科学技術の分野間連携や科学と社会の連携をつくっていくものでございます。
 実は、先ほど御紹介した国土交通省の新しい治水計画、その中に一・一倍とか一・二倍という数字を出しましたが、これは、文部科学省、気象庁、環境省がスーパーコンピューターで作成いたしました地球温暖化対策に資するアンサンブル気候予測データベース、d4PDFといいますが、この膨大なデータをこのDIAS上で蓄積して、更に高分解能化して、解析して出てきた数値でございます。
 こういうように、このシステムはソサエティー五・〇をもう具現化していっているものと考えられます。これは、世界でトップであることは間違いないんですが、また、世界で唯一の、こういう社会的価値を生み出している科学技術基盤でございまして、こういうものの発展というものが我が国にとっては必要だと思います。
 七ページはその応用的な例を記載しておりますが、このDIASのプログラムと、官民研究開発投資拡大プログラム、PRISMというものが内閣府によって進められております。
 その中で、全国市町村、千七百四十二の市町村に対しましてリアルタイムで災害の統合的な情報提供を行うシステムができ上がっておりまして、全ての、我々、日本で使える観測データ、これはいろいろな、カメラの情報も入っておりますが、公共で利用できるカメラの情報も踏まえて、実時間で皆さんが見られる形にしており、ハザードマップや避難所の情報も加えております。
 さらに、この枠組みの中では、中小河川の洪水予測というのは非常に難しく、また重要であるわけでありますが、それを二時間から四時間のリードタイムで予測するシステムを開発しておりまして、来年度二百か所完成を目指して進められております。
 さらに、4に書いておりますのは大分県の日田市の事例でございますが、市と地区と協力して、住民の方々が避難する、その実感をつかんでいただくためのバーチャルリアリティー、VRといいますが、こういうものを、実はこれはゴーグルでこうやるんですけれども、今、コロナの中ではそういう訓練ができませんので、こういうホームページで両方を比較して見ていただきながら進めるということもやっております。
 その上の5というのは東京の事例でございまして、二百五十メートル、一分ごとの、膨大な雨のレーダーデータがございます。これに、これも、膨大な、東京の下水道の情報を組み合わせて、リアルタイムで、下水道が満管になり、それがあふれてくるというのを算定するシステムが動いております。
 6は、昨今、電力あるいは利水ダムの事前放流というのが必要になっておりますが、それをしつつ、かつ発電量を増やすという、夢のような操作もこのシステムで研究的に開発されております。
 7は、これは南アフリカとの協力でございますが、マラリアの予測のために、現地の医療機関のデータと気象の季節予測、それとAIを用いてマラリアを予測して、消毒であるとか、あるいはその体制を事前に整える情報に使われております。
 こういうようなことが進められておりまして、防災、減災に関わる我が国のいろいろな知見それから科学技術を国際協力に利用していくことが重要と思われます。
 八ページを御覧ください。
 我が国は、平成二十七年二月に開発協力大綱を新たにいたしまして、質の高い成長というものを目指す大綱にしております。ちょうど、これは二十七年の二月でございますが、その年の三月に仙台防災枠組がまとまり、九月に持続可能な開発のための目標が定まり、十二月にパリ協定が結ばれました。
 こういうことに関連いたしまして、こういう防災と、持続可能な開発と、それを包摂的に加えながら質の高い成長を目指すということが必要なわけですが、外務省とユネスコのプロジェクトで、西アフリカ洪水予警報プロジェクトというのが平成三十年の補正予算で採択されました。ユネスコから私どもICHARMがこれを受けて実施し始めたのが令和元年の六月からでございます。現地から人を私どもの研究所に招聘いたしまして研修等を始めた、そのさなかにコロナが起きました。
 補正予算でございますので、短い期間で……

発言情報

speech_id: 120405262X00120210224_006

発言者: 小池俊雄

speaker_id: 582

日付: 2021-02-24

院: 衆議院

会議名: 予算委員会公聴会