水谷広の発言 (環境委員会)

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○参考人(水谷広君) おはようございます。
 私、社会地球化学研究所の水谷と申します。今日は、この委員会にお呼びくださり、本当にありがとうございました。
 今回の温対法の改正案は、実質ゼロに向けて最初の第一歩と言えるようなものでありますけれども、大変すばらしいものだと考えております。ここに御列席の皆様、そしてその周辺にいらっしゃいます関係者の皆様の御尽力に敬意を表したいと思います。
 さて、それで、私申しましたように、この改正案、実質ゼロに向けた第一歩であるという位置付けの一つのエビデンスといいましょうか、お手元の資料一ページ目にあります日本経済新聞の五月十一日の記事をちょっと御覧いただきたいと思います。
 タイトルが、「温暖化ガス四六%削減が迫る発想の大転換」。今までのものとは違うんだと。積み上げ式目標と決別するんであると。そのところから第三パラグラフのところを読ませていただきます。「積み上げ式の目標を達成しても、そのままのペースで減らし続けるだけでは五〇年に排出を実質ゼロにできないのは今や周知の事実だ。」。
 つまり、二〇三〇年四六%減らす、これは大英断だと思います。しかし、そういうことを続けていっても実質ゼロには届かない。どのくらい届かないのか。いろいろな推定がございますけれども、およそ一割ぐらいはどうしても減らせないだろうと言われております。どういう部門が減らせないのかと。よく代表的なこととして言われますのは、飛行機、船、海運ですね、それから鉄鋼、セメント、それから食料供給、食料の生産から配給、消費まで、それに安全保障、こういった部門はどうしても二酸化炭素の排出を減らすことが困難で、二〇五〇年までにどうしても一割程度の二酸化炭素が残ってしまう、排出が残ってしまう、実質ゼロにならないということなんですね。
 実は、私、こういう問題に関しまして十五年以上ずうっと考えてまいりました。それで、お手元の資料、二枚めくりますと、この「気候を人工的に操作する」という私の本がございます。これは六年前、ちょうど中身を書いているときはまだパリ協定が発効していない、後書きを書いたときにパリ協定の話が入ってきました。私は大変びっくりしました。もうこのパリ協定を本当にやる気であるならば、二度目標、できることなら一・五度と、これをやるならば、このなお残る排出実質ゼロ、一割を何とかやっていくという、このことはもう最初の一歩でやらなきゃいけないな、そう思いました。
 この私の本に関して書評を書いてくださった方の文章が、ちょうどこのページの左中央辺りにあります。その一部をちょっと読んでみますと、小惑星を砕いて宇宙にばらまいて日よけにする、人工衛星のごとき巨大日傘で太陽光を遮る、富士山よりも高いパイプで地表の熱を大気圏に逃がす、どれを見てもこれはとんでも本だというふうに皆さん思われるかもしれませんが、書いてあるように、これはとんでも本ではありません、科学的に、技術力を駆使して考案された対策ばかりなんです。
 ただ、こういうものを実際、現実にどれが実行可能かということは、この本を書いてから既に六年たちました、パリ協定発効して約六年、その間に、いろいろな技術の中の実行可能なものが絞られてまいりました。そして、その絞られたものの代表的なものが植林、木を植えるということなんですね。
 ちょっとページ、申し訳ありません、戻っていただいて、二ページ目、ゼロエミッション東京戦略というのがございます。これが一つの代表的な例として持ってまいりました。東京都、ゼロエミッションをすると。ちょうど中央辺りにこう書いてあります。二〇五〇年実質ゼロに向けて、なお残る排出量、先ほど申しましたようにおよそ一割だろうと推定されます。なお残る排出量については、植林などによる森林吸収やバイオマスCCU、更なる革新的技術の開発などにより相殺していくことを目指します。その下にてんびんの図がありまして、こうやって相殺するんですよと書いてありますけれども。
 さて、森林吸収、バイオマスCCU、星印、アスタリスクが付いていますけれども、これ、回収・利用付きバイオマス発電、何だろうと思いますね。こういったものについて、実は一番具体的に進んでいるこのものを五ページ目の図に載せております。五ページ目、これですね。これは、二酸化炭素を大気から捕集し地中や海底下に貯留する、BECCS、下に英語の略称だということが書いてありますけれども、回収・貯留付きバイオマス発電。二酸化炭素を森林に吸収させる。
 実は、この森林に吸収させるというのは大変いいアイデアだと思っております。他のいろいろな、先ほどのとんでも本と言われるようないろいろな技術、言わば心理的な、こんなのとんでもないんじゃないかということも含めて、大胆にいろいろなものをカバーした中で出てきたアイデアとしては、植林は大変いいものです。
 ほかにももっといろいろなアイデアありますけれども、植林はほかにもいろいろな多様な機能があり大変いいものなんですが、じゃ、パーフェクトかというと、やっぱり欠点もある。その欠点を補わなきゃいけないということなんですけれども、この場合は、植林して二酸化炭素を吸収させ、それをバイオ燃料として利用した上で、それを、もう一回出てきた二酸化炭素を捕集して圧注し、海底の下や地中に貯留するという考えです。
 これは国際的には大変実行可能性を今吟味されておりまして、例えばイギリスなんかですと、ハルという工業団地、そこから出てくる二酸化炭素を北海油田のところに埋め戻すと。油田ですと、油を取った後、隙間が言わばできるわけですね。その隙間の中に二酸化炭素を圧注すると。まあ言ってみれば好都合なんです。
 じゃ、これが日本で可能なのかといいますと、日本が消費しているほどの化石燃料、そこから出てくる二酸化炭素を埋めるほどの大きな油泉、油田はありません。どこにあるかといえば、地球をぐるっと回って北海油田にでも埋めてもらうしかないんですね。そこまで運ばなきゃいけない。それは、二酸化炭素、これは常温常圧では気体です、そして毒ガスです。こういったものを都市近郊にある発電所から輸送して、パイプラインでも船でも結構ですけれども、外国の持っている油田の中に埋めていただくと。そういうことが実際できるのかと。
 それから、二酸化炭素を樹木に集める件ですけれども、この樹木、大量に木を植えなければなりません。そうしますと、今度は土地の利用、木が育つ場所というのは植物にとっていい場所しかないわけですね。そのいい場所というのは当然食料生産、農地にも使われるわけです。その農地との競合、こういう問題も出てまいります。こんなことを考えますと、日本にどのくらいこれができるのかというのを改めて考えてみないといけない。いいことは大前提なんだけれども、欠点をちゃんとクリアしなければいけない。
 さて、そこで今一番大きな問題になるのは、出てきた二酸化炭素あるいは生産された樹木をどうやって、海や地中に埋めないで日本のところでできるものは何かないかという考えなんですね。それを考えますと、実は私、炭にしたらいいじゃないかという考えになります。
 次のページをめくっていただきます。そうすると、もくもく煙を出す炭焼き、炭にするとこの炭焼き小屋のイメージが皆さんお持ちだと思うんです。だけど、今は、これはこの大きな枝や幹を切ってきて炭にするというこの炭焼き小屋じゃ大気汚染にもなっちゃうじゃないか、こういうことなんですけれども、現在は、その下にあります炭化炉というものがございまして、ここで、炭を作る装置です。この炭を作る装置は、大きな枝や幹を炭にするだけではなく、家庭から出てくる有機廃棄物、生ごみ、食品残渣、こういうものを炭にすることが今はできるんです。
 この下の写真の右隅に、四つほど楕円形のものがございますね。これ、できた炭なんです。中に出す原料の種類によって、それぞれ異なる炭ができてきますけれども、まあ、何というんでしょう、アサガオの種みたいな、あるいはゴマ粒のような、こういった炭ができてきます。こういうものを利用して二酸化炭素の削減に使いたいと、こういうことでございます。
 実際に、スウェーデンのストックホルムでは、この芝刈りくずを市民が集めてこれを炭にするという、ストックホルム市がやっております。そして、その芝刈りくずを炭にして、芝刈りくずですからちっちゃな炭の粒になるわけですけど、それを鉢植えなどのポットに土壌改良材として使うと、こういうことをしている。大半の市民の協力が得られ、関心も得て、二酸化炭素の排出という問題にも非常に関心が持ってもらえた上で非常にメリットにもなっている、暮らしにも役立っていると。こういうことまでやっているところもあるんですね。
 そこで、これ、今までだと生ごみを燃やしていると、それは言わばカーボンニュートラルということで、二酸化炭素がそのまま丸々出てきてしまいますけれども、まあそれでもいいんだというふうに考えていましたけれども、これを二酸化炭素にするのではなく炭にするということによって、出てくる二酸化炭素が減るということになります。
 それで、申し訳ありませんが、ちょっと飛んで八ページ目、一枚めくっていただきますと、廃棄物中の炭素の何%が炭になるかという実データが実は関西で行われていまして、そこからのものを持ってまいりました。
 実際に食品廃棄物です。写真の左、中央ちょっと下ですか、食品廃棄物の写真があります。よく見る生ごみですね。プラごみ、プラスチックの中に入っている生ごみです。これを炭化します。炭にします。食品廃棄物中の炭素百キログラムの二十一キログラムが炭になります。こうやって、本来だったらば全部二酸化炭素になってしまうものを炭にすることによって、二酸化炭素の排出が、この場合ですと七十七キログラム、二酸化炭素の質量で七十七キログラム減る、こういうことになるわけです。
 そのページを一つ戻っていただきまして、その生ごみ、植林だけではなくて、生ごみについて、どのくらい、じゃ、今現在でも炭にして二酸化炭素の削減がどのくらいできるのかというのを試算してみました。
 その試算、藤沢市を取ってみますと、五百十八万トンの二酸化炭素が今排出されていますけれども、そのうちの八・一%、四十二万トンは炭にすることによって削減が既に可能だと、今でも可能だということなんですね。先ほど言いました、なお残る排出量一割、それに及ぶようなものが今現在でも可能であると。更に工夫すれば一割、二割ということが十分可能だろうと。
 下の方に細かく内訳が書いてございます。四十二万トンの削減できる量の、ちょっと、計画番号十四番、ごみ処理、現在焼却している可燃廃棄物、生ごみを炭化し、熱回収すると十一万トン削減できる。それから、一番最後の三十五番、市内で発生する未利用有機物、これは食品廃棄物と思ってください、これを炭化すると二十七万トンの削減になると。この生ごみ、食品廃棄物、フードロス、こういったものを炭にすることによって、この二つだけでほぼ四十万トンになります。そのほか、いろいろ小さく拾っていったり、ここにまだ実行されていない有機廃棄物の炭化を実行すれば、優に八%を超える量がカバーできるだろうと、こういうことでございます。
 最後に、その次の九ページをめくっていただきますと、実質ゼロ、大変です。でも、その実質ゼロは、この二酸化炭素の収支の図で御覧いただきますと、中央の小さな矢印、流入と書いてあります。人間活動による流入三百三十億トン、これをゼロにしようということなんですね。で、炭にするということは、実は、その右にあります流出、大きな下向きの矢印、毎年七千八百八十億トンあります。この一部が森林になったり、農業で食品になったりするわけです。この七千八百八十億トンをベースに炭にしていけば、三百三十億トンの残る三十億トンばかりでなく、もっと大量の二酸化炭素を大気から回収できる。
 実は、大気、三兆トン、現在二酸化炭素がございますが、このうちの一兆トンは産業革命以降に人間がためたものなんです。最初は二兆トンしかなかったところに、五割分の一兆トンを加えたものですから、温暖化がこれだけ進んでいるということなんですね。この一兆トンまで、人間が炭にすることによって回収する。
 最後の三行をちょっと読まさせていただきます。自然による流出七千八百八十億トンの一部を炭にするだけで、大気から大量の二酸化炭素を捕集し貯留することになる、剪定枝、作物非可食部、食品残渣・廃棄物、芝刈りくずなどもこの対象になると。
 こうやって、実質ゼロ、今は大変困難で、でもこの大英断をして第一歩を踏み出したからには、最終的にはこの実質ゼロを実現し、さらに、地球温暖化、気候危機から脱出するための炭のアイデアというのもお考えいただければと思います。
 以上です。どうもありがとうございました。

発言情報

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発言者: 水谷広

speaker_id: 19068

日付: 2021-05-18

院: 参議院

会議名: 環境委員会