飯島滋明の発言 (憲法審査会)
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○参考人(飯島滋明君) この度は貴重な機会を与えていただきまして、誠にありがとうございます。
経済学部の教員ですけれども、憲法を専攻しています名古屋学院大学の飯島と申します。
資料の方をお配りさせていただいていますけれども、これ多分、授業でも多分九十分で収まらないのを作ってしまったなと思いましたので、かなりはしょって話の方はさせていただきたいと思います。
今回、私は七項目の、限定して話をさせていただきたいと思っていますけど、関連することについては発言の方はさせていただきたいと思います。
この七項目に関してなんですけれども、例えば、五月二十六日、憲法審査会ではですけれども、投票環境の向上だと、あるいはメディアでは、利便性の向上、そのために変えるんだということが言われることがございます。五月二十六日の憲法審査会でも、その外形的事項については公選法並びとすることが合理的だという発言があったと思います。
ただ、確かに向上する側面もあるかと思いますけれども、やはりここで先生方に考えていただきたいなと思いますのが、人を選ぶ選挙と憲法改正というものの是非を問うやっぱり国民投票には制度的あるいは趣旨に根本的な違いがあります。そういった違いもやっぱり適切な配慮をしないで、単純に同じ投票だからということで横並びにしてしまえということでは、やはり投票環境の悪化あるいは利便性の悪化をもたらす可能性がございます。
結論からいいますと、繰延べ投票の告示期間の短縮あるいは期日前投票の弾力的運用に関しては、明らかに投票環境を悪化させる、その可能性というのがございます。
本当、十五分でかなりはしょって話をさせていただきますけれども、法案の説明もちょっとできないところというのもございますけれども、御了解いただければと思います。
例えば、この繰延べ投票の告示期間の短縮ですけれども、これこそまさにやっぱり選挙と国民投票の違いというのが明確に表れる項目ではないかと思います。
結論からいいますと、日曜日に投票できないと、だけれども、まあ台風が来て投票ができない、今までの憲法改正国民投票であれば木曜日以降になるんですけれども、公職選挙法に合わせて翌日の月曜日投票できるようになってしまうと。これも考えていただきたいんですけれども、日曜日が台風です、あるいは大地震です、投票できません、翌日の月曜日投票できる制度、これが果たして投票環境の向上になるのかというと、私はそれはならないんだと思います。ですので、この項目に関しましては削除あるいは修正というのが必要ではないかというふうに考えます。
あるいはですけれども、選挙の際の繰延べ投票、これは例えば小選挙区とかであればそこだけやればいいのかもしれませんけれども、憲法改正国民投票のとき、一か所だけ繰延べ投票になりましたといったとき、やっぱりこれ全国に及ぶ可能性があるんじゃないでしょうか。そこもやっぱり先生方に御議論いただきたいというふうに思っています。
次ですけれども、期日前投票の弾力的運用ですけれども、これも例えば朝六時半から夜十時までできるという意味で向上になる可能性もないわけでもないですけれども、ただ、今の実際の運用を見ていますと、むしろ悪化する可能性の方が高いかと思います。
これ、本多平直議員が衆議院の憲法審査会で、二〇二〇年の十二月二日と二〇二一年の四月十五日にパネルなんか示して紹介されていたかと思いますけれども、やっぱりこの弾力的運用というのをやると五十一時間三十分から五十時間三十分に減ってしまうような事例があると。
私、現状を前提とすればという話をさせていただきましたけれども、例えば二〇一九年の七月の参議院選挙では、約三人に一人、三三%が期日前投票しているんですよね。三人に一人、三三%が期日前投票をしているにもかかわらず、期日前投票の時間を少なくしてしまう可能性があると。やはりこれ、投票環境の悪化の可能性があるんではないかと。
ですので、少なくとも一か所に関しては朝八時半から二十時までずっと開いているという仕組みというのはやっぱり残しておくべきだと思いますし、衆議院でもやっぱり議論がございましたけれども、確かに地域の実情というのはいろいろ違いますので、弾力的に運用するというのは必要がないとは言いません、合理性はあるんでしょうけれども、ただ、全体としてその時間が短くなってしまうようなことがないように、そういったためのやっぱり法案の何らかの手当てというのは必要じゃないかと思います。
あと、今回の七項目の改正に関して申し上げさせていただきますと、期日前投票の事由として、天災又は悪天候により投票所に投票することが困難であること、これが期日前投票の事由として追加されます。自然災害で、言い方は悪いですけれども、投票できない、じゃ、期日前投票行こうというときに、その期日前投票の時間が短くなってしまうということであれば、やはりこれ投票環境の悪化になるということが言えるんではないかと思います。
そういった意味で、期日前投票の弾力的運用でありますとか、繰延べ投票の告示期間の短縮に関しては、投票環境の向上どころかむしろ悪化をもたらす可能性があるということを申し上げさせていただきたいと思います。
じゃ、その次ですけれども、憲法上問題がある問題ということについて話をさせていただきます。
二〇〇五年の九月なんですけれども、最高裁判所が、外国にいる日本人が投票できない、こういった公職選挙法は憲法違反だというふうに最高裁判所が判示しています。つい最近、最高裁判所の事例ではないですけれども、最高裁判所の裁判官の国民審査に関しまして、外国にいる日本人が投票できない、こういった事例に関しまして、二〇一九年の五月には東京地方裁判所が、二〇二〇年の六月には東京高等裁判所が憲法違反という判断を下しています。投票できない国民がいるということ自体、それが主権者の権利である参政権を侵害するということで憲法違反だというのが最高裁判所以下の裁判所の基本的な立場です。
これも後で、もしかしたら時間があれば申し上げたいと思いますけれども、やっぱり憲法というのはもしかしたら一回国民投票になってしまえば一生国民投票はないかもしれない。その効力というのはずっと続くわけですけれども、そういった国民投票のときに投票できない人たちがいるというのは、これは普通の選挙以上に憲法違反となる可能性、最高裁判所の二〇〇五年の在外投票のものを見ても憲法違反となる可能性というのは否定できないんではないかと思います。
そうした観点からですけれども、洋上投票の問題と、あと不在者投票の問題について先生方に提示させていただきたいと思います。
衆議院選挙あるいは参議院選挙の場合ですと、船員というのは洋上投票を行う場合には事前に選挙人名簿登録証明書というのをもらいます。例えば、急遽ですけれども、衆議院が解散されましたということになったとしてもですけれども、その選挙人名簿登録証明書の有効期間というのは七年間ですので、それは投票用紙があればという条件になりますけれども、対応できます。
ですけれども、これ、横並びにすればいいのかという話なんですけれども、憲法改正国民投票のとき、実は法の二十条一項を見ますと、国民投票が行われる場合に投票人名簿というのは作られるというふうに条文では書かれています。もっと言いますと、憲法改正手続法五十三条一項を見ますと、投票人名簿又は在外投票人名簿に登録されていない者は投票することができないというふうに書かれています。この規定を見ますと、じゃ、洋上にいて、いきなり憲法改正の発議になりました、投票もそのとき行われますと。これ、先生方はよく御存じだと思いますけれども、この国民投票の期間というのは六十日から百八十日間、ある意味で非常に短いです。その間に国民投票が行われてしまう可能性があると。
ですから、船に乗っかっている間に実は憲法改正の発議がされて投票ということもあり得ると。そのとき、この投票人名簿というのはどうやって作るんですかと。この手当てが実は法でなされているのかどうかといいますと、私、ちょっと何回も見たんですけど、よく分かりませんでした。ですから、これ、参議院の先生方にはちょっとここら辺も御審議いただければというふうに考えています。
私、ここでちょっと例を挙げさせていただきたいんですけれども、海上自衛隊員はどうなんですかね。今、政府の命令で例えば半年間洋上に出ているような場合があると。その出ているときですけれども、憲法改正の発議がされました、国民投票もその間に行われますと。そのとき、この海上自衛隊員というのは果たしてこれ、できるのかどうか。そこら辺に関しては、本当に先生方に参議院で十分な審議というのを尽くしていただければと思います。
これができないということになりますと、先ほど最高裁判所の私、裁判例というのを紹介させていただいたかと思いますけれども、投票できない主権者がいるということであれば、やはり最高裁判所の判例に照らしても憲法違反の可能性というのは出てきます。もっと言いますと、今、憲法改正のいろんな議論がされているかと思います。自衛隊を明記するんだと、それが自衛隊員のためなんだということを言っていらっしゃるかと思いますけれども、じゃ、その当の自衛隊員が投票できないということになれば一体何のためなんだと、そういう話になりかねないんではないかと思います。
ですので、そうであれば、結局、憲法改正のために自衛隊員を口実にしただけか、そういうことがないようにしていただきたいと思いますので、ここに関しては、本当、そういった仕組みがあるのか、あるいは私の見落としなのかというのを先生方に御検討いただければというふうには思います。
次に、不在者投票になります。
二〇一六年の十一月二十五日の参議院の倫選特ですけれども、要介護五に限定している郵便等による不在者投票に対して、当時の高市早苗総務大臣は、やっぱりこれは不十分だということをおっしゃっていました。今ここにいらっしゃる浅田先生も、これに関しては賛意を示されたと思います。私もそうだと思います。
個人的な体験になりますけれども、つい最近要介護三という方に接していますけれども、一人で投票行くなんてやっぱりむちゃです、見ていて。その方は働いているということで、要介護二にされるかもしれないということも言っていました。そうであれば、本当に要介護三でもいいのかどうか、ここはやっぱり認識、議論する必要があるんだと思います。
ましてや、今コロナ感染が拡大する中、投票できない人がいるという状況に拍車が掛かっています。保健所の指示で、宿泊療養あるいは自宅での療養を余儀なくされて投票できない人たちというのがいるわけです。この人たちが放置されているということであれば、先ほど申しました二〇〇五年の最高裁判所の判例に照らしても、やはり憲法違反ということになるかと思います。
今、急遽特措法を作って、七月の都議選にという話ありますけれども、確かに法的な手当てというのは私は必要だと思いますけれども、ただ、選挙の要請というのは不正な投票というのも防ぐと、これは民主制の根幹に関わります。ですから、余りいいかげんなものを作ってもらっても正直言って困ると。
ですので、もちろん投票できない人がいるというのはまずいんですけれども、不正投票を防止するという観点からも、そういった観点からも適切なものをしっかり時間を掛けて作っていただければというふうに思います。
時間の関係がありますので、あとのことに関しては簡単に申し上げます。
例えば、公選法並び七項目に関して言えば、投票人名簿の閲覧の導入というのがございます。これに関しては私、評価できる点はあるかと思います。ストーカーやDV対策ということで、やっぱり簡単に個人情報を渡さない、それは評価できる点はあるんだと思いますけれども、これも実は宿題があるんではないかというふうに考えています。
衆議院がですけれども、二〇一八年六月に作成した資料ではですけれども、実は受刑者に関しては、要するにそれを見られることによってどこにいるということが分かってしまうと、刑務所にいるということが分かってしまうということで、結局は受刑しているんだということが分かってしまうと、これに対する対応が必要だということが書かれているんですけれども、衆議院の憲法審査会でそれが議論された形跡というのはございません。衆議院の憲法審査会で検討が必要だと言われたことを衆議院でやっていないというのは果たしてどうなんだろうかという辺りも、やっぱり検討の課題として残るんではないかと思います。
今度、ほかに必要なことということで紹介させていただきますけれども、在外投票、これ、今数字見ていただければ、参議院の資料も出て、先生方も御覧になったかと思いますけれども、百三十万人ぐらい日本人がいて、大体二万人ぐらいしか投票していないと。二%弱です。これでいいんですかね。むしろ、やっぱり、何でこんな少ないんだと、こういった辺りを検討するということが非常に必要なんじゃないかと思います。
ホームページ見ていただければ分かるかと思いますけれども、正直言って、投票制度分かりづらいです。憲法改正国民投票法ではちゃんと何時から何時までって書いてあるんですけれども、この外務省のホームページ見ますと、朝九時半から七時だったかな、五時だったかな、ちょっと正確な時間忘れましたけれども、そこに投票します、場所によってはもっと短い可能性がありますとしか書いていないんですよね。外国にいて、ただでさえ大変なときに、日本よりか短い時間で投票なんかできるのかと。
そういった辺り、実はいろいろ、もろもろあります。むしろ、外国にいる日本人が投票しやすい環境というのをしっかり調べた上で対応するべきだと思います。出国時の申請制度を簡単にしましたという、そういう小手先だけではやはり問題ではないかというふうに思います。
今度、共通投票所の話もさせていただきますけれども、今年の四月十五日、憲法審査会で本村伸子先生が指摘されたかと思いますけれども、七か所あった投票所が結局三か所に集約されてしまうと、そうすると、投票所に行く距離というのが長くなってしまう、こういった事例があるということを本村先生は紹介されているかと思いますけれども、これで果たして投票環境が良くなったと言えるのかどうか。むしろ投票環境が悪化しているんじゃないかということが言えるかと思います。そこでやっぱり十分な検討というのが必要ではないかというふうに考えます。
簡単にあと、まとめの方をさせていただきます。
公選法並び七項目の目的というのは投票環境の向上でありまして、確かにそういう側面がないとは全く言いませんけれども、繰延べ投票の告示期間の短縮、あるいは期日前投票の弾力的運用に関しては、かえって投票環境を悪化させる可能性があると。洋上投票や不在者投票に関しては、これは先生方に十分御検討いただきたいと思いますけれども、投票できない人がまだそのままになっている可能性があると。そうであれば、最高裁判所の判例に照らしても憲法違反状態が放置されている状況でありまして、この状況で国民投票なんていうのはもってのほか、憲法違反になる可能性もございます。在外投票や共通投票所に関しても、投票環境の向上という視点からやはり検討すべきことが検討されていないと言えるかと思います。
これもちょっと、まあ過ぎてしまうのでやめます、短くしますけれども、私、二回の先生方の審議見させてもらって、非常にやっぱり先生方がいら立っている、頭に来ているの分かりました、衆議院は何でこんなもの送ってくるんだという。法の専門家から見ても、今申し上げましたとおり、やっぱりちょっと問題多過ぎますよ、これを通すのかどうか。
実は、これを通してしまうということは、先生方が感じたのと同じこと、衆議院が何でこんなの通してくるんだというのを感じたと思うんですけれども、それを国民に対して先生方がやることになるかもしれないと。そうならないようにするために、しっかりした審議、場合によっては衆議院に反省を迫る意味で、何だ、これと送り返すぐらいのこともやっていただければというふうに思います。
ありがとうございます。