福井淳の発言 (厚生労働委員会)
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○参考人(福井淳君) 御紹介にあずかりました全日本自治団体労働組合衛生医療局長の福井でございます。
本日は、法律案の審議の場に参考人として意見を述べる機会をいただきましたことに感謝申し上げます。
私は、地方独立行政法人静岡県立病院機構に所属する放射線技師であります。医療労働者の立場から、本法案について幾つか論点を絞って意見陳述させていただきます。
まず、医師の働き方改革です。
これまでも長時間労働が課題になっていた勤務医に対して時間外労働の上限規制を行うことについては、継続的な医療提供体制を確保する意味でも重要だと考えます。また、医師も医療従事者と同様の労働者です。医療提供体制の維持という課題はありつつも、医師の健康を確保する観点から上限時間については原則として一般の労働者に合わせるべきと考えますが、まずは、この法律案に基づき、各医療機関において改善計画の策定と実効性のある取組を着実に進めていくことが必要だと考えます。国においても、医療機関の自主的な努力に任せることなく、積極的なサポート体制の充実が図られるよう求めたいと思います。
一方、公立病院の重要な役割であるへき地医療においては地域偏在による医師不足が深刻であり、周産期や小児科などのいわゆる不採算医療は、診療科偏在による担い手不足が地域医療を維持、確保していく上で大きな課題となっています。医師の働き方と地域医療構想の実現、医師の診療科や地域偏在対策は、一体的な取組として早期かつ重点的な対応を進める必要があると考えます。
次は五ページになります。各医療関係職種の専門性の活用についてです。
医師の負担軽減を目的としたタスクシフト・シェアですが、最初に申し上げておきたいのは、タスクシフト・シェアの受皿となる診療放射線技師や臨床検査技師、臨床工学技士は、各医療機関において潤沢な人員配置がなされているわけではないという点であります。
医師の働き方改革と関連して、医療業務のタスクシフト・シェアすることはチーム医療の推進の観点からも必要と考えますが、本来業務に加えて医師の業務の一部をシフト、シェアされることは、他の職種に時間外業務を受け渡すことにすぎません。タスクシフト・シェアされる人材の拡充など、医師のみでなく医療機関全体の労働時間のマネジメントが行われなければ、実際の課題解決になり得ないと考えます。このことは、医師の働き方改革を進めるタスク・シフト/シェアの推進に関する検討会におけるヒアリングにおいても同様の指摘がなされていたと承知しております。
加えて、安心して医療を提供するためには、タスクシフト・シェアされる業務に対する十分な研修や研さんも必要と考えます。研修に係る費用や時間の課題、協働する他職種の理解や協力、また、新たに追加される業務に対する賃金面も含めた評価なども考慮する必要があると考えます。
新興感染症等の拡大時における医療提供体制の確保に関する事項の医療計画への位置付けです。
まず、現状の数字から申し上げますと、感染症指定医療機関の約六割を公立病院が担っております。また、厚生労働省の発表によれば、新型コロナウイルス感染症に当たっては、患者の受入れ可能医療機関は、民間の医療機関が二六%、公立医療機関が七三%、公的医療機関が八五%となっています。また、人工呼吸器やECMOを使用した重症の入院患者数の受入れ割合においても、公立・公的医療機関が多数を占める状況です。
こうした新型コロナウイルス感染症の経験を踏まえ、今後いつ起こるか分からない新興感染症への備えという観点において、公立・公的医療機関が対応すべき事項として感染症対応を医療計画に追加する改正案については評価できるものと考えます。
一方で、日本における医療機関の約八割は民間医療機関であり、二割にとどまる公立・公的医療機関ができることには限りがあります。新興感染症に備えるのであれば、医療計画への追加にとどまらず、日本の医療全体で果たしていくべき役割を考え、公立・公的医療機関の機能強化が必要と考えます。
さらに、今後、医療計画の変更に伴って、感染の拡大に対応する地域の医療提供体制について平時における基準病床数が検討されると思いますが、重要となる点は、病床数の確保とともに、感染拡大時を想定した人材の確保であると考えます。
一年半にわたる新型コロナウイルス感染症拡大の局面で、沖縄などに医療従事者が派遣され、今また大阪にも派遣されようとしています。感染症病棟の確保は一般病棟の一時的な変更で可能であっても、迅速な人材確保、特に感染症に対応できる人材の確保は容易ではありません。大阪の医療が逼迫した状況は、病床とともに人員が足りなかったことも理由の一つではないでしょうか。
感染は急拡大します。新たに位置付けられる新興感染症等の感染拡大時における医療を公立・公的医療機関で確実に提供するには、有事に備えて人員に余分を持たせる冗長性という災害対策の発想に基づいた人員の拡充と財政的支援が求められると思います。
地域医療構想の実現に向けた医療機関の取組の支援についてです。
今回の法律案は、再編を行う医療機関に対して税制優遇などを行い、地域医療構想の実現に向け再編を促していく取組です。新型コロナウイルス感染症の第四波が到来している中、またこれから新興感染症を医療計画の事業に加えることが法案で審議されようとしている中、現在が本当に医療計画の再編を促す時期にあるのでしょうか。また、地域医療を確保していく観点でいえば、医療機関の再編統合は住民がその地域で暮らし続けられるかどうかに直結する課題であります。そして、病院職員にとっても賃金削減や、場合にとっては職場を失うことにもつながるため、労働者の課題であるとも言えます。
病床機能再編支援事業を進めるに当たっては、地域の住民や職員への丁寧な合意形成が不可欠であると考えます。この間、一部の地域においては、地域住民の十分な合意形成がなされないまま、首長の決定において公立病院の再編が行われようとした事例もあると聞き及んでおります。本法案については、あくまでも自主的な病床削減や統合を行う医療機関への支援に限り、結果的に地域医療を損なうことにならないような国によるサポートや助言が必要だと考えます。
そして、二〇一九年九月に公表された公立・公的医療機関の具体的対応方針の再検証リストの扱いについては、一旦取り下げるべきと考えます。厚生労働省は、このリストの公表は地域の調整会議の議論を活性化するためであり、必ずしも統廃合を決めるものではないとしています。民間医療機関のデータは都道府県に提供しているとのことですが、なぜ公立・公的医療機関だけのリストを公表することが調整会議での議論を活性化させるのでしょうか。リストの公表は、単に地域住民の皆さんや公立・公的医療機関で働いている者を不安にさせたにすぎないと考えます。
最後に、私ども自治労が昨年末に実施した調査によると、コロナ対応した看護師の二割にうつ的症状が見られ、三割が差別、偏見に遭ったと回答いたしました。また、コロナ禍においては、保健所の機能の脆弱性も露見いたしました。入院調整や検体搬送などにより保健所職員は二十四時間対応を迫られましたが、私どもの調査によると、九割の保健所、保健センター、衛生研究所においては、待機手当等が整備されていなかったため、長時間拘束されていても手当が支払われない状態が発生しています。
コロナ禍において保健所や医療が逼迫したのは、それを支える職員が逼迫したからにほかなりません。その背景にある最も大きな原因は、平時における慢性的な人員不足です。感染症の医療計画への位置付けが始まるのは二〇二四年からとなりますが、それを待たずとも、医療や公衆衛生を支える職員の確保を進め、処遇等を早急に改善、整備することが重要と考えます。
いずれにしましても、本法案が現在約一年半にわたり医療の現場で頑張り続ける医療従事者を応援し、励ます内容となりますよう御審議いただくことを申し添え、私からの陳述は終わらせていただきます。
ありがとうございました。