榎本浩之の発言 (国際経済・外交に関する調査会)

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○参考人(榎本浩之君) 国立極地研究所の榎本浩之と申します。
 今日は、こういう機会を与えていただきまして、大変光栄に考えております。ありがとうございます。
 北極、南極をめぐる、極域をめぐる諸課題の取組というところで、今、池島参考人の方からは政策をめぐるお話がありましたけれども、科学、自然科学、社会科学、そういったところ、科学からめぐる北極への関わりというところを中心に、南極も関係するところあるんですが、北極を主にお話しさせていただきたいと考えております。(資料映写)
 まず、北極が最近どうしてこういう大きな話題になってきたかというところでは、背景には気候変動というものがあります。これが大きな背景になっております。
 国連気候変動に関する政府間パネル、IPCCというものがありますけれども、それが二〇一九年に最新の特別報告書というものを出しました。特別報告書というのは、定期的な報告書ではなくて、緊急の話題に対して、急にまとめて、必要が出たものを出します。
 COP21で一・五度Cか二度Cかということになりましたけれども、その話題を受けて、では、どういったことが現在起きているのか、はるか遠くの場所である極地、南極、北極、あるいは非常に広大で幾らでもキャパシティーがありそうな海、そういったものが限界に達してきている、どういったことが起きてきているか、そういったものをまとめるということでこの報告書は作られました。
 下の方にありますのはそこで報告された幾つかの内容ですけれども、海水の熱膨張、あと氷床、氷河、南極とかグリーンランドですね、そういったものが解けていて海水位が上がってきている。解けているのは極地なんですけれども、その影響を受けるのは中緯度あるいは島嶼国、そういった遠隔地にやってくるというところがあります。
 これがとどまるところを知らずにこのまま行きますと、現在の私たちではなくて、将来の、次世代の、あるいは家族、そういったところの、未来のところにも影響してくるというところで、時間を超えて、あるいは空間を超えて影響が及んでいるというのが気候変動だというところが、そういった警鐘が鳴らされました。
 その影響がどこで一番顕在化しているかというところでこのグラフをお持ちしたんですけれども、グラフの下の方にオレンジ色の線がありまして、これが地球全体の、例えば一・五度Cとか二度Cとか言っている気温の上昇カーブです。上に緑色で全然違う性質のようなものが描かれていますけれども、これは北極、北緯六十度以北の温度をまとめたものでして、全球、地球全体の平均に比べて二倍から三倍の速さで温度上昇が起きているということがあります。地球全体の影響を北極が受けているんですけれども、その影響を受けた北極がまた地球全体に影響を返してくるというところが大変危惧されているところです。
 見える形でその温暖化の影響が出てきましたのが、あるいは中緯度に影響が返ってくるということが危惧されていますのがこの北極海の海氷減少でして、左側が一九八〇年代の平均的な九月。九月というのは一番氷が小さくなる時期なんですね。当時は、夏になって一番小さくなってもこの程度は氷が残っていました。それが、二〇一二年、右側ですけれども、ほぼ半分ぐらいに減ってしまったと。左側の方にシベリア、ロシアがありまして、右下にアラスカ、あるいはカナダありますけれども、そちらの沿岸が氷がない状態になったと。これがとどまるところを知らないで今進行してきているというところがあります。
 この環境変化、温暖化を止めないといけないというところが一つの大きな課題ですけれども、何が原因で、何が分かっていて、これからどういう調査が必要かというところの科学的なことが求められています。また、こういった地域には人が住んでいまして、あと資源開発といったところも話題になっていますので、どういったところをそこをバランスを取っていくかというところも大変関心が高まっているところであります。
 これも温暖化の、北極圏における温暖化の影響の幾つかの例ですけれども、氷河が、陸上にある氷がどんどん解けてきている。積雪もそうなんですけれども、氷河というものがどんどん後退してきていると。
 右側の上の図は、海に面している氷、氷河が大変多いんですね、こういったところがどんどん崩れて、海に氷山という形でこれを出してきます。それが解けます。そういったことで、はるか遠くで起きているものなんですが、これが地球全体に影響を及ぼし始めている。見えないところから影響がやってきているということが言えます。
 左下も、黒くなった氷床の表面、日射を吸収しまして大変解ける。水流がたくさんできています。
 右下にグリーンランドが四つ並べていますけれども、赤で塗ってあるのが、二〇一二年のある時期に全域が解け始めてしまったと。全部消えてなくなるまではいかないんですが、ふだんは解けない内陸の方までも融解域が広がった。これが、氷が最小になった二〇一二年と同じ年にこういったものが起きました。北極に目が向いている間にグリーンランドがこういうことが起きていた。そういった連鎖、各地でいろんなことが起きるということがあります。
 さて、ここまでは北極の話題だったんですが、こういった高緯度の影響が中緯度に影響をしてくるというのがあります。
 これは既に解析が進んでいます二〇一八年の例ですけれども、二〇一八年、今年も話題になっていますが、新潟、富山など大変な雪の状況ですが、北極での氷の減少、そこの暖まり方、それが北半球の偏西風というものの流れを変えてしまって、寒気の吹き出し、そういったものに影響するということが最近分かってきました。はるか遠くから影響が日本列島までやってくるというところです。この左側にありますのが二〇一八年の例ですけれども、最低気温を更新、あるいは大雪ということを起こしています。
 右側の方、ちょっと分かりにくい図ですけれども、大西洋から北極に向かって流れ込んだ暖かい空気が北極の周りに、北極自体は暖まるんですけれども、寒気が右上のシベリアの方に出ていってしまう。それで、それが日本列島に吹き出してくるということで、大西洋、北極海、シベリア、日本という大きな連鎖が起きているということが言えます。こういった目で見ないと、問題の解決、そういったものができないという時代になってきました。
 さて、氷が減ることによって、ここがまた経済活動のチャンスと、気候変動としてはリスクなんですけれども、経済活動としてはチャンスというふうなことでも注目されています。よりエネルギー効率のいい輸送手段を使えば温暖化と対峙しないで両方ともが成立するような案も作られるかもしれないというところで、いい、スマートな環境保全と産業利用というところは今大変関心が高くなっているところです。日数や運航コストの大幅縮減につながるというところがあります。
 科学者はここで何をやっているかといいますと、安全航行のための航行支援システム、これは、気象データ、あるいは海の情報、海氷予測、そういったものがバックになってくるので、もう船は通り始めていますから、それを安全に通っていただくための予報情報を整えているというところをやっています。
 さて、少し北極海、北極全体の様子をここで簡単に御紹介します。
 右側にありますのは北極点を中心とした地図です。先ほどの池島先生の方からは色分けされた国ごとの範囲のことが示されたんですけれども、こちらは緯度的に見てみました。大変複雑な形をしていますけれども、北半球は、していますが、真ん中に北極海があります。黄色でラインが二本ほど書いていますけれども、六十度、七十度というところに黄色のラインを書きました。北緯八十度のところは赤丸にしています。この三つのゾーン分けによって、六十度と七十度の間に陸地が、北極海を巡る陸域がありまして、ここに環境変化が起きる、先住民の社会がここにある、あと資源開発もこのゾーンでということが言えます。
 次の七十度から八十度のゾーンは、海氷が先ほどお見せしましたように急速に減っているところ。ここの海がどう利用されるか、あるいはどう守られるかというところが大変な話題になっているところです。国際ルール作りもここで、このゾーンは大変急がれているところだと思います。
 最後の北緯八十度以北は、赤く書いていますけれども、ここも公海であるということで、どの国の船も入っていいのかというところでは、新しいルール作りというものが急がれています。漁業利用の凍結、無制限な漁業利用の凍結などもここで議論されているところです。
 御覧になっていただいているこの丸の中の世界、北極の世界が、南北を越えて、緯度を越えて、はるか南の方まで、気象、そこの食料、そういったものにも影響してきているというところがIPCCレポートですとか、あと北極評議会のレポートなどでも報告されてきているところです。これが背景というところで。
 さて、ここからは、国際的な取組、日本の取組というところで残りの時間を御紹介したいと思います。
 先ほど御紹介ありました北極評議会、AC、一九九六年に設立というところなんですが、下に国旗を並べていますが、メンバー国、左側にあります八か国、右側にオブザーバー国ということで日本がこちらに入っています。環境保全、持続的な開発というところは、もう御説明があったところです。そして、下の方には、北極評議会の構造というところで、トップの方に閣僚会合、次に高級実務者会合、SAOというふうに言いますけれども、その下に分野別作業部会、ワーキンググループというのがあります。
 実は、科学者は、日本の研究者とかもそうなんですが、ここに専門家として入ってきます。それで、上の会合で判断するためのいろいろな基礎資料、エビデンスをここで作っている。で、それを出せる、日本はそういった国であるということで、ここに招待されまして、一番下の作業部会では日本は活発に働いています。その情報が上に上がっていって、さてどういう対策にするかというところが一番トップのところで決められるというところがあります。
 科学が根元のところにありまして、その上に外交ですとか国際ルール、そういったものがあると。で、トップで決まって、これは大変ということになりますと、また、新しいテーマが決まりますと、一番下の作業部会、ワーキンググループに下りてきまして、しっかり調べてもらいたい、どういうふうになっているか調査が必要だと。北極はデータが大変少ないところなので、ここに来る依頼は大変多い、大きなものがあります。そこに応えていくということで、この北極評議会のシステムの中で日本の活動域、大切な情報を実は扱っている、そういったところをつくっているというところの活動ということが言えます。
 科学のお話をしましたので、もう一つ、国際北極科学委員会、IASCというふうに言いますが、これが北極の国際的な科学者の一番大きな組織です。これは実は一九九〇年に設立されました。先ほどお話ししました北極評議会よりも六年早くつくられました。科学者の方がまず何かやろうということで、これ動きを始めたんです。なぜ九〇年かというのは、後でまたお話ししますけれども、北極海、冷戦の終了から、科学的な場としての活動が可能になった時代、そういったところです。まず科学が入っていって情報をつくろうというところがありまして、IASCから、北極科学委員会からACへ科学的な情報の提供ということが国際的に行われています。
 日本の活動ですけれども、日本はこのIASCに、設立当初、設立九〇年で、その翌年の九一年からメンバーに入りました。ここでは、北極国である、非北極国であるという違いはありません。全ての北極の科学をやる国が共通に並んで体制をつくります。現在も、このIASCの議長、副議長の中に日本も入っていまして、実は私がその副議長をやっているんですけれども、ロシア、米国、フィンランド、ここまでは北極圏の国ですね、あと英国、日本というところで、このマネジメントの体制の中に入っていけてます。
 さて、もう一つの北極に関する科学の動きですけれども、北極評議会八か国、あと日本はオブザーバー国というところと、あとIASCという科学者の委員会、これは二十三か国ありました。さらに、これは今年の五月八、九と日本で開催されるんですけれども、北極科学大臣会合、第三回北極科学大臣会合というものがあります。
 これも右下にありますけれども、二十八か国ということで、これも北極圏の国と限らない、とにかく北極に関わる科学活動をしている国がここに関わります。日本とアイスランドが共同主催ということで大変大きなイベントが日本で開かれる予定で、今準備が進んでいるところです。
 これは、二十八か国や、世界のWMOとかそういった機関が参加するということはどういったことを意味していますかといいますと、北極がその現場にある八か国の世界ではなくなった、グローバルに考えていく必要がある、協力体制が必要であるということが大変認識されたというところです。それが持続的な北極をつくっていくと。
 いろいろな判断の下にその知識が使われるということで、左側に今回の北極科学大臣会合、ASMと略していますけれども、それの中心的なテーマ、持続的な北極のための知識、そこからどういったものが生み出されるかという科学の役割をここでは掲げておりますが、観測、それを理解すること、将来を予想すること。あと、それに対してどういう対処ができるか、対応。社会を強くしていくには何が必要か、市民への説明も必要ですし、教育、そういったものも必要になってきます。それを、一、二、三、四と書いていますけれども、これをシームレスにつないで一つのスタイルをつくっていこうというのが今回のASM3の準備になっていまして、各国の文科大臣、科学担当大臣がここに参加されるということで準備が進んでいるところです。
 先ほど北極海の地図を見ていただきました。北極の構造とそこの緯度別に見たいろいろな課題というものを見ていただきましたけれども、今度は時間的に別の切り口でまとめてみたものがこれです。南極観測は六十年以上の歴史があるんですけれども、北極が研究が活発化したのはこの三十年というふうに見ることができます。東西冷戦の終了というところが大きなきっかけであるんですけれども、一番上に気候環境の状況、温暖化、氷の減少やグリーンランド融解というのがあります。
 次の欄のところに、国際と書きまして、一九八七年、ゴルバチョフ、ムルマンスク演説というものがありました。これで、北極海を、軍事的緊張を緩和しようという言葉と、あと科学協力の提案というものもそこで行われました。新しい時代が実はベルリンの壁よりもちょっと前の八七年にスタートしました。
 これを受けて、数年後、九六年には北極評議会が設立しました。日本がオブザーバーになるという流れもありましたけれども、社会経済の中では、早速、九〇年代の初めにもう北極航路は使えるかどうかということを調査、行われています。これは、日本、ロシア、ノルウェーの共同調査チームが参加していました。残念ながら、当時はまだまだ氷が多い時代でして、すぐには使えないということになりましたけれども、もう調査が始まったと。
 次のカラムのところには、政府方針ということで、二〇一五年以降急速に固められた日本の北極政策、海洋基本計画、あと参与会議での意見書、そういったものがあります。非常に加速してきたというものがあります。
 一番下の欄は、それに対して科学活動は何をしてきたかというところで、一九九〇年に国際北極科学委員会が設立、日本は九一年に加盟と、下にアンダーラインがあるものが三つあります。横に並んでいますけれども、これが二〇一一年以降の日本の北極プロジェクト、自然科学から社会科学、政策ということで、参加者を増やしながら成長してきた、これ右上がりの大きなうねりがあります。ここで日本の研究グループから世界に発信するようなパワーを強くしていくということが目指されたんですけれども、その下のところにはコンソーシアムや北極研究船というものも書かせていただきました。
 北極政策は先ほどもう御紹介ありましたのでここでは簡単に済ましますけれども、研究開発、国際協力、持続的利用ということがその提言の中に入っています。
 次に移りまして、さて、日本の科学者は何をしているかというところで、二〇一一年以降の三つのプロジェクトをここにまとめました。だんだん守備範囲を広げながらメンバーを増やし、あと社会的なつながりを探しながら新しい課題に挑戦していっているという姿があります。
 一番上は二〇一一年からで、これは気候変動を中心にしました。そこから人間社会にどういう影響がするかというところでは、真ん中のレーン。最後のところでは、影響評価ですとか人間社会への影響をもっと強く調べる、あと法政策ですとか社会実装というふうなところで、社会へのサービスというものもここで増やすというプロジェクトが去年から始まったというところがあります。
 ここに北極をめぐる地図がありまして、周りに建物の絵があります。南極には昭和基地という日本の基地がありますけれども、北極は全て陸上はどこかの国の領土なので、そこの国との国際協力という場の実現として、こういった基地での日本人の活動というものがつくられています。幸いながら、幸いどの国からも歓迎されておりまして、日本人が参加することによって科学が進むといったところで、ここはいい関係をつくっていて、それを壊すことなく日本人が歓迎される北極の世界というものを是非持続したいというふうに考えています。
 国の政策ですとか、トップダウンの決定と別の動きも最近出ていまして、これはコンソーシアムといいまして、日本の研究者約五百人が集まって設立した、活動しているものです。北極の研究者、多様でして、自然科学だけではなくて、政策、人文、あと芸術関係、いろいろなところの分野が関わります。それを情報を共有できる場所をつくる、ここから、では何が問題かという提言を作っていって将来の北極の科学へのアプローチを生み出す、提案していくというベースをここでつくることができました。最近では、北極域研究船の建造に関する要望書と、これがあればこういった科学ができる、貢献ができるということをまとめたりしています。
 ここに示しましたのは、二〇二一年に建造着手、あとまだ就航するのは五年以上、五年先ですけれども、こういった更に日本の研究力を強化する、あるいは国際的なプラットフォームとして機能する研究船という構想が始まっています。右側の下の地図にありますけれども、北極海はデータの空白域で、どこかが頑張ってここに入っていってデータを取らないといけないという、そういう協力体制が望まれているところです。
 最後に、私のお話ししました内容を簡単にまとめましたけれども、是非、御質問いただければ更に詳細な御説明できますので、よろしくお願いします。
 以上で終わらせていただきます。

発言情報

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発言者: 榎本浩之

speaker_id: 16675

日付: 2021-02-10

院: 参議院

会議名: 国際経済・外交に関する調査会