小池俊雄の発言 (国土交通委員会)

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○参考人(小池俊雄君) お願いいたします。
 土木研究所水災害・リスクマネジメント国際センターの小池と申します。略称ICHARMと言っておりますが、センター長をしております。
 本日は、気候の変化の下でいかに水災害リスクを軽減し、持続可能な開発を進め、質の高い成長を目指すかについて意見を申し上げたいと思います。
 お手元に資料があるかと思いますが、二ページ目を御覧ください。
 これは、近年の水害の概要でございます。伊豆大島、広島での土砂災害に続きまして、平成二十七年に関東の鬼怒川が決壊いたしました。真昼の災害でありましたが、逃げ遅れで千三百名余りの方がヘリで救助されるという事態になりました。
 翌平成二十八年には、台風が幾つも北海道、東北を襲い、高齢者のグループホームでの被災を始め、地域経済に大きな打撃が与えられました。
 平成二十九年には九州北部で豪雨が発生いたしまして、写真にありますように、谷間の平地部が、地形が一変するような様相となってしまいました。
 翌平成三十年、さらに令和元年には、いわゆる西日本水害、東日本台風災害が起こりました。この図にございますように、それぞれ西日本、東日本、約一割のアメダスの観測地点で過去最大を記録しました。その結果、無数とも言える土砂災害、それから、百四十二か所での堤防決壊に続きまして、昭和五十七年の長崎豪雨以来、二百名を超える被災者が出るという事態にもなりました。
 さらに、昨年は、熊本県の球磨川で、梅雨前線豪雨によって大きな災害が起きました。圧倒的な水量で都市が冠水し、土砂災害が起こり、橋がなくなりました。ここでも、グループホームが被災して、十七人の高齢者の方が亡くなりました。非常に痛恨の極みでございます。
 これらの豪雨によって、洪水のパターンも変化してきております。三ページを御覧ください。
 まず、①、バックウオーターというのは、一般には、河川が合流するときに最初は支川の洪水が流れ、本川の洪水が流れるのですが、豪雨が長期化しておりますと、本川が洪水を迎えたときに支川が依然としてまだ水位が高いという状態で、支川で氾濫するということでございます。平成三十年の真備町での災害はこのパターンでございますし、その後、それに前後して多くの災害が起こっております。
 ②は土砂・洪水氾濫というものです。強い雨で上流で土砂災害が起きますと、その土砂が豪雨による洪水で流れてきて、勾配が緩くなったところで川にたまります。そうすると、川を埋め尽くしますので、洪水流は、行き場を失って平地いっぱいに流れます。この図にカーブミラーとありますが、これは、県道の上に立っているカーブミラーがこのように土砂で埋まってしまう事態になってしまっております。
 ③は異常洪水時防災操作ということで、降雨が長時間継続いたしますと、大容量によって、これは、ダムというのは貯留施設でございますので、その貯留量を超える事態が発生し、流れてきた水をそのまま出さざるを得ないという操作になってしまいます。これは、ダムの水位が上昇する速度と競争で放流量を増やさないといけないというような規定になっておりますので、こういう異常洪水時防災操作がこの昨今増えてきております。
 この三ページの下は社会の変化でございます。
 ④は、数字が書いてございますが、高齢者一人当たりの、十五歳から六十四歳のいわゆる生産者数というものが、二〇〇〇年の三・九人から二〇一五年二・三人、二〇六五年には一・四人に下がるというふうになっておりまして、支援ができる人が減って支援を要する人が増えるということになります。
 ⑤は、この図が、階段のような図がございますが、このオレンジ色と赤色の線は、昨年までのマニュアルに記されております。これだけの浸水深があるとどれだけ事業の日数が止まるか、事業活動が止まるかということを記したマニュアルでございますが、実際には、それよりもはるかに多くの日数を事業復活までに掛かっております。そういうことを受けて、昨年、この数字がほぼ倍に改訂されました。日本の経済は持続的な発展性を失いつつあります。
 コロナの影響も顕著に出ておりまして、⑥で見ますと、この青色のところはコロナの感染の方が自然災害のリスクよりも多いと考えている人で、それは四二%にも達しております。その一方で、自然災害の方が大きいと言われる人は二二%で、倍ほどの人の方がコロナの方が怖いと思っているわけです。こういう中で災害に対する避難活動を確実に行わないといけない事態です。
 一方、少し明るい兆しもございます。⑦は、特に都市圏の若い人たちが地方移住への興味を、関心を高めていることです。この図にございますように、東京二十三区の二十歳から三十代の方々の地方移住の関心が高いというのは三五%にも達しているということでございます。
 このような変化を受けまして、社会資本整備審議会から国土交通大臣に、新たな治水の政策が提言されました。四ページを御覧ください。
 基本的な観点として三つ設定されています。
 まず第一に、甚大な被害を回避し、早期復旧復興までを見据えて事前に備える強靱性というものです。英語でレジリエンスと言います。それから、右側に行きまして、将来にわたり継続的に社会や経済を発展させる持続可能性、サステナビリティーと言います。さらに、これらを進めるために全ての主体が協力して取り組む包摂性、これが真ん中に置いてありますが、この三つを基本的な考え方といたしまして、新たに二つの取組を行うことを提言しております。
 一つは、気候変動を踏まえた河川計画の見直しであります。それから、これがピンク色ですが、ブルーのところが、流域全体のあらゆる関係者が協力して流域全体で取り組む治水計画として位置付けられる流域治水へ転換することです。これ、英語では、リバー・ベースン・ディザスター・レジリエンス・アンド・サステナビリティー・バイ・オールと言います。要するに、全ての関係者の皆さんの協力を得てこれを進めるということです。
 下に、ピンク色のところに河川計画の変更が記されておりますが、治水計画に用います計画の雨量は、従来は観測値を基にして、それを百年に一度というような確率的に評価して使っておりましたが、このほど、気候変動予測モデルによって推定される現在と将来の変化倍率をこれに乗じるとしております。二度上昇ということを対象といたしまして、この変化倍率は、北海道では一・一五倍、その他の地域では一・一倍になります。計画降雨で一・一倍というのは、洪水のピーク流量で一・二倍になります。百年に一度の水害が二度起こる、被害が倍に増えるということを意味しております。
 こういうことを受けて、流域治水への転換として、①、②、③と書いてありますが、赤字で小さく書いてありますが、氾濫をできるだけ防ぐ、②として、被害対象を減少させる、③として、被害の軽減や早期復旧復興を行うということを柱としております。これらは河川だけでなくて様々な主体によって初めて実現できるものでありますから、今回御審議いただいております流域治水関連九法案の改正というのは、このガバナンスの構築と制度設計が目的と私自身は考えております。
 この後、まず、このガバナンスと制度設計について述べさせていただきまして、その後、今後の方策として、科学技術と経済評価、人材の育成について述べさせていただきます。
 五ページを御覧ください。
 この五ページの右下のところに図が出ておりますが、この座標軸のところに黒い四角で書いてあるところがこれまでの施策でございます。主として河川区域、横軸を見ていただきますと、そこに河川区域とありますが、主として河川区域を対象としており、一部、都市化が進展した鶴見川などで、そういうところでは集水域にまで出て流出抑制をすると。それから、氾濫域においては、これまで、主として住民等の主体的な避難ということを進める、そういう施策を水防災意識社会の再構築というような政策の下で進めてきました。これを、この黒く囲ってある四角をそれぞれの矢印方向に広げ、点線のところまで延ばすというのが流域治水の枠組みでございます。
 ここで、縦軸のところに赤で書いてありますが、あらゆる関係者が協働して行う、これを赤字で、それから集水域のところで、全国で流出抑制対策を実施、これをピンクで、それから氾濫のところで書いてありますが、住民等の主体的な避難を推進、これを青で、それから氾濫の右側のところに書いてありますが、よりリスクが低い地域へ誘導、住まい方の工夫を推進というのを緑で書きますと、この五ページにございます九つの法案のそれぞれの項目がこの色で表せるような構造として改正を今回御審議いただいているということがお分かりいただけると思います。こういうことによって、各部局、あるいは国、都道府県、市町村、さらには民間、住民の皆さんと相互に連携できるガバナンスをつくる制度がこの法案の改定で提示されていると考えております。
 これによって関係者、全ての関係者の皆さんがいわゆるバイ・オールの体制を目指すわけでございますが、この横軸で、この河川区域から氾濫域に、特に緑の部分ですね、②被害対象を減少するというところがございますが、そこまで踏み込んで浸水被害防止区域というものを設定したことに大きな意義があると考えております。
 次に、これから進めるべき方向性について述べます。
 まずは、この図の③の、黄色の利水者への協力依頼と②の浸水範囲の限定についてですが、資料六を御覧ください。
 簡単に述べますが、緑色で描いているものは、電力会社との協力で進めています洪水の制御と電力発電量を増やす同時最適化の研究事例でございまして、①、②のピンクで記されているように、オレンジ色の実際のダムからの放流量を制限六百トン以内に確実に一〇〇%カットし、かつ発電量を増やすというような最適化操作が確立しております。
 ピンク色のところは、伝統的な河川技術、野越しといいますけれども、これは佐賀県で残っているものですが、これを近年実際に破堤氾濫したところに仮想的に適用して、どれだけ浸水面積、最大浸水深、排水日数が減るかということを試算したものでございます。非常に大きな効果があるということが分かっておりまして、こういうことを実行するためには経済評価が必要です。
 この一番下には、台風二十一号の関空が沈んだ絵が描いてありますが、このとき、実際には過去の最大潮位を三十センチ以上上回っておりましたが、浸水面積、浸水戸数はゼロでした。このときの投資効果は十七兆円と試算されておりまして、こういうような経済効果を併せて行い、合意を図っていくことが必要と考えます。
 最後に、人材の育成でございますが、七ページを御覧ください。
 この真ん中の方の図の左側にピンクで三角形が描いてありますが、平常時から、発災して社会の機能が低下し、それが戻っていくところ、この面積が災害のリスクでございますが、それを、避難、応急措置、復旧復興で、真ん中の図にあります紫色のように減らすことができますし、さらに、より良い復興や事前対応をいたしますと、更にリスクを軽減できます。
 こういうようなことを、いろいろな情報の提供だとか、上に描いてございますが、仮想現実の訓練システムで高めることと同時に幾つかの施策を連携させるということが必要ですが、そういうことを特に市町村レベルでリードしていく人材の育成が必要と考えております。
 最後に、もう一度四ページを戻っていただきますと、今申し上げましたように、こういうガバナンスの構築と制度設計、それから革新的な科学技術と定量的な経済評価による官民の投資の促進、さらには社会の行動の変容と政策の連携を促進する人材の育成を通して、強靱性、包摂性、持続可能性を兼ね備えた成長戦略としての質の高い成長を目指す、こういうような施策の推進を是非お願いしたいと思います。
 どうもありがとうございました。

発言情報

speech_id: 120414319X01120210420_003

発言者: 小池俊雄

speaker_id: 582

日付: 2021-04-20

院: 参議院

会議名: 国土交通委員会