山冨二郎の発言 (資源エネルギーに関する調査会)
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○参考人(山冨二郎君) 皆様、こんにちは。今日は、鉱物資源開発というテーマでお時間をいただきます。(資料映写)
まず、冒頭のスライドですけれども、四枚の写真があります。
一番左下は、埼玉県秩父にあります武甲山というところで、ここでは、大正年間から石灰石の採掘が始まって、現在三つの鉱山会社が年間六百万トンほどの石灰石を掘り出しております。その一つの会社、武甲鉱業に、私、技術顧問として非常勤で勤めております。
日本の石灰石は非常に良質で、国産で唯一自給できる資源というふうに言われてきました。そして、百年以上の量があると言われておりましたけれども、最近は五十年を切っております。そして、石灰石の半分はセメントの原料として使われます。
セメントは、年間六千万トンほど国内で生産されておりますけれども、セメント工場は、一トンのセメントについて約四百七十キログラムの廃棄物を原料として、燃料として受け入れております。
右上の写真は、スーパーカミオカンデという、岐阜県神岡鉱山に設置されておりますニュートリノの観測施設です。東京大学宇宙線研究所が神岡鉱山の坑内に五万トンの水をためるタンクを造りまして、その写真にありますオレンジ色のミカンのようなものがたくさん出ておりますけれども、それがニュートリノを捉えるセンサーです。
現在、宇宙線研究所では、このスーパーカミオカンデの五倍の規模のハイパーカミオカンデの建設に取りかかっておりまして、四月に迎える新年度、掘削工事が始まり、二〇二七年度にハイパーカミオカンデを使った観測が予定されています。私はこの仕事のお手伝いもしておりますけれども、総額六百五十億円の予算、そのうち百四十七億円が海外からの貢献分となっております。
左上は、南アフリカのウエスタンディープという金鉱山であります。世界で一番深い金鉱山の一つなんですけれども、ここに潜りますと空気の重さを感じます。
右下は、チリにありますカセロネスという銅鉱山、露天掘りの銅鉱山です。アルゼンチンの国境に近い標高四千メーターの高地にありまして、ここは逆に、平地の空気圧に比べて六〇%というものです。そして、二〇一三年に操業を始めましたけれども、一〇〇%日本の資本で賄われています。総額四十二億ドルが投資されています。
次のスライドは資源開発のプロセスを表しておりまして、鉱床の探査、探鉱から、そのプロジェクト評価、そして鉱山に必要なインフラを建設する開発工事、そして生産という段階に至ります。
私は、採鉱という、鉱床から鉱石を採掘することに関して主に関心を持っております。採掘の終わった鉱石は選鉱というプロセスに入りまして、鉱石の中から有用な鉱物を分離します。ここは、隣におられる所先生の専門分野と重なります。
そして最後に、有用鉱物を製錬所に送りまして金属を抽出いたします。製錬と呼ばれていますけれども、こちらは岡部先生の主に担当されている領域であります。
鉱物・エネルギー資源は非常に多様です。そこにある四つの大きな分野に分類いたしました。そして、今日はそのうちの金属鉱物資源についてお話をいたします。
金属鉱物資源といいましても、元素周期表のリチウムから始まる金属元素がたくさんありますように、これも多種多様で鉄からレアアースまで含まれています。
左下の図一は、アメリカの地質調査所のデータ、USGSのデータと、イギリスのブリティッシュ・ペトロリアムのデータを使って作ったものですけれども、縦軸に資源の価格、横軸に生産量、両対数のグラフですけれども、貴金属類を除きますとほぼ直線に右下がりの傾向となります。これが何を意味するか、それは私にもちょっと分かりません。
それで、右側のグラフは生産額の多いものを左から順番に並べています。原油、石炭、天然ガス、鉄鉱石と続いております。そして、もう一つのオレンジの折れ線は可採年数を表しておりまして、現在分かっている埋蔵量を現在の生産量であと何年もつかということを表しています。レアアースとバナジウムにつきましては、USGSのデータを使いますとスケールアウトします。百年以上の可採年数を持つものが石炭、アルミ、白金族、そして我々にとってなじみの深い銅、金、鉛、亜鉛といった金属類は、実は原油や天然ガスよりも可採年数が短いというのが現状です。
次に、露天掘りか坑内掘りかという話でありまして、右下にあります図四をまず御覧いただきたいんですけれども、これはオーストラリアの鉱山コンサルタントが作りましたもので、一九〇〇年から二〇一三年まで、いつ頃どれぐらいの深さで新たに鉱床を発見したかというものをプロットしたものであります。彼は、これを使って、探査技術の進歩により千メーターよりも深いところでも鉱床が見付かるようになったということを言いたいわけであります。
私は、このグラフを使いまして、露天掘りか坑内掘りかを説明させていただきます。地表に近い、あるいは深くてもそんなに深くないというような鉱床は、地表からの採掘を進めていきますので露天掘りと呼ばれます。英語ではサーフェスマイニング。そして、地下深くに鉱床がある、あるいは大きな山の中に鉱床があるというような場合には、アンダーグラウンドマイニング、坑内掘りと呼ばれています。
左側にあります図三は、二〇一〇年ですけれども、石炭と銅鉱石、鉄鉱石、金鉱石などについて露天掘りと坑内掘りの比率を表したものです。青が露天掘り、グリーンが坑内掘り、そして明るいグリーンがハイブリッド、すなわち一つの鉱山で露天掘りと坑内掘りを行っているというものです。そして、赤い折れ線は、比較的大きな、三百万トン以上の鉱石を出す鉱山について露天掘りの占める比率を表しています。これらから、大規模な鉱山は露天掘り、中小の鉱山は坑内掘りが多いという傾向にあります。
では、露天掘りと坑内掘り、どっちが優位かという話になるんですけれども、露天掘りの場合、空間の制約がございませんので、大型の機械を入れることができて大規模な操業に適しております。したがって、生産性、効率が高くコストも安い、さらに、エネルギー消費も少なく保安成績もよろしいということになって、唯一制約になりますのは環境でありまして、景観の問題、騒音、粉じんの問題などがあります。
露天掘りは、このように坑内掘りよりも優位なんですけれども、深くなりますと、露天掘りの採掘場、ピットを安定に保つために周辺のズリ、岩石も採掘しなければいけなくなりまして、深くなればなるほどズリ採掘の負担が増えて優位性が失われます。現在、世界的に大規模と言われているインドネシアのグラスベルグ鉱山、チリのチュキカマタ鉱山が坑内掘りへの移行を準備しております。
次は、カットオフグレードという話なんですけれども、図五の棒グラフは、二〇一〇年時点で操業している世界の銅鉱山の鉱石の銅品位の分布を表したものでありまして、露天掘りと坑内掘りで分けています。
御覧のように、露天掘りの鉱石は低い品位でも採掘できるということを表しています。そして、平均的な銅品位は世界平均で〇・七二%ということになるわけなんですが、銅鉱石の品位が平均値である〇・七二%を上回ったとしても、そこから銅を抽出して銅地金を造るコスト、それが高い場合には採算が取れませんので、銅鉱物、銅鉱石ではなく鉱物というふうにみなされます。
すなわち、カットオフ品位は、鉱石と鉱物を分ける品位であります。このカットオフ品位に及ぼすファクターをその左下に示しましたけれども、まずコスト、コストが安ければカットオフ品位が低くなります。次に建値、金や銀などの貴金属類はロンドンの金市場で、銅、鉛、亜鉛などの金属はロンドンにあります金属取引所、LMEで取引された価格が世界標準の価格となります。したがって、建値が上がればカットオフ品位が下がるということになります。さらに、副産物やヒ素、水銀などの有害元素があるかどうかも関係してきます。
資源は、こういった経済的なファクター以外に、技術的な要因、環境的な要因、法制度などのものをクリアして初めて採掘が可能となって、埋蔵量というふうに呼ばれるわけです。
次の六枚目のスライドはオーストラリアにおける探鉱プログラムの事例を表しておりまして、二百九十件の案件が手元にあったと、そのうち最終的に開発に至ったのは十二件であるということを示すものでありまして、AからFまでステージを踏みながら開発に進んでいきます。
開発には、それまでと違う桁違いの経費が掛かります。右側のグラフにありますように、これは対数軸で表しておりますけれども、経費が後ろのステージに行くほど増えてまいります。ですので、なるべく早い段階で余り有望じゃないものはどんどん落としていくと、そして最後に十二件に絞ったということを表しているものです。
次に、カーボンニュートラルな社会を実現するためには、バッテリーが欠かせないものとなります。バッテリー原料として注目されておりますニッケル、コバルト、リチウムについて現状をお話しいたします。
左上、ニッケルですけれども、ニッケルの鉱石には硫化鉱と酸化鉱がございます。硫化鉱は品位が高く、坑内掘りで採掘されています。それに対して酸化鉱は品位が低く、露天掘りで採掘されていると。このグラフの中、字が小さくて申し訳ございませんけれども、カナダやロシアにありますニッケル鉱山は坑内掘りの鉱山です。
ニッケルの価格は二〇〇七年にピークを記録しましたけれども、その後低迷が続いています。そのため、坑内掘りの硫化鉱を掘る鉱山からのニッケルの産出量が伸び悩んでいます。その一方で、インドネシア、フィリピン、ニューカレドニアは品位の低い酸化鉱からニッケルを掘り出しておりまして、着実にその生産量が増えておりまして、特にフィリピンとインドネシアでその傾向は顕著です。
右上はコバルトです。現在、世界のコバルトの生産量の約六〇%以上をDRコンゴ、コンゴ民主共和国が占めております。コバルトは、銅鉱石の副産物として、あるいはニッケル酸化鉱の副産物として取れるわけなんですけれども、DRコンゴの銅鉱石はコバルトに富んだものでありまして、二〇〇〇年頃からコンゴは銅鉱山の生産量が増加しまして、現在、世界四位となっています。それに歩調を合わせるように、二〇〇〇年頃にはコバルトの占有率は二〇%程度だったんですが、現在は六〇%を超えています。DRコンゴは、政情不安に加えて紛争鉱物の問題が国際社会から指摘を受けておりまして、供給先としてのリスクを抱えています。
一方、ニッケルのラテライト鉱、酸化鉱からもコバルトは取れます。住友金属鉱山は、低品位のニッケルからニッケルを採取するのに、HPALと呼ばれる高温高圧下で硫酸を掛けてニッケルを抽出するという手法を世界に先駆けて商業化に成功しました。現在、住友金属鉱山では、ニッケルの約十分の一の量のコバルトが付随しているんですが、そのコバルトをHPALによって回収しています。今後、HPALの動向でコバルトの市況も変わってくると思われます。
最後は、リチウムです。リチウムは、鉱石起源のものとかん水、すなわちミネラルに富んだ塩水から取れるものの二つがあります。前者は普通の露天掘りで採掘され、後者は塩の湖から天日乾燥によってリチウムを濃縮します。何もエネルギーが要りませんので低コストなんですけれども、乾燥させ濃縮させるのに一年あるいはそれ以上の時間が掛かりますので、生産の拡大が難しい。
そこで、最近リチウム価格は高騰しましたので、露天掘りのリチウムの鉱山がたくさん出現しました。特にオーストラリアですけれども、そこにありますように、オーストラリアはリチウムの生産に関して首位と今なっております。
ちょっと時間が掛かって申し訳ありませんけれども、話題は変わりまして、海洋鉱物資源ということです。
表一は、国とJOGMEC、石油天然ガス・金属鉱物資源機構が海洋鉱物資源と考えている四つのものであります。今日は、主にこのうちの海底熱水鉱床についてお話をいたします。
コバルトリッチクラスト及びマンガン団塊は、コバルト及びニッケルの資源として今後大いに期待されるものです。レアアース泥は、重希土を含んだレアアースの資源として重要なものであります。しかし、このマンガン団塊とレアアース泥は水深が四千メーターを超えますので、それを上に揚げる技術、揚鉱と呼んでおりますけれども、それを開発するのはまだまだハードルがあると思います。
二〇〇九年度の補正予算によって白嶺という名の新しい調査船の建造が認められまして、この調査船に採掘要素技術試験機とかの予算も付きまして、二〇一二年夏、沖縄近海の海底熱水鉱床において世界で初めての掘削試験を行いました。そして、その下の表二、この掘削試験を行ったHakureiサイト以外に幾つか有望な海底熱水鉱床は見付かっております。非常に品位が高いのですが、これはROVという無人潜水艇が拾ってきたサンプルの品位分析の結果でありまして、高いところを選んでいる可能性があります。ですので、今後、ボーリング調査などによって資源量を確定していく必要があると考えています。
次のスライドの左側の図をまず御覧いただきたいんですが、こちらは、二〇一七年度にJOGMECが実施いたしました海底熱水鉱床のパイロット試験の様子を表すものです。
白嶺という船から集鉱機を下ろしまして、もう一隻の作業船からは水中ポンプを下ろしまして、集鉱機で集めた鉱石を水中ポンプで水深千六百メーターから持ち上げる、ポンプアップするということに成功いたしまして、十六・四トンという数字でありますけれども、鉱石と模擬鉱石の回収に成功しております。その後、このパイロット試験の結果を使いながら、二〇一八年度には総合評価、経済性評価についても考慮する総合評価を行いましたし、その後も引き続いて商業化実現に向けた調査研究、技術開発を実施しております。
また、JOGMECは、二〇一九年度より、南鳥島沖EEZ内に賦存しますコバルトリッチクラストについても調査を始めまして、この北西太平洋の海山には平均で〇・六四%のコバルト、ニッケル〇・五四%があって、少しプラチナも付くというような結果が出ておりますので、将来のバッテリー原料として無視できないものと考えております。二〇二〇年の七月、昨年の七月、コロナ禍ではありましたけれども、水深約九百三十メーターの拓洋第五海山において掘削試験を行って、六百四十九キログラムのコバルトリッチクラストを掘削しております。
海洋鉱物資源開発の商業化への課題ということで、技術的な課題と非技術的な課題があります。
まずは、二〇一七年度に実施したパイロット試験なんですが、商業化規模では一日に五千ウエットトン、ウエットトンというのは、海水から引き揚げたぬれたままの鉱石で五千トンという意味です、を行うことが必要というふうに想定していました。したがいまして、パイロット試験は、使った試験機は実用機の約十分の一程度ですし、揚鉱に使ったパイプの直径も半分で、そのスケール感を拡大したときに適用できるかどうか、そういったこと、あるいは、長時間の稼働性、耐久性、パイロット試験では測れなかったものをどうするかという課題が残っております。
それから、ポンプの中で閉塞が起こる可能性がありますので、鉱石を破砕する必要があるのではないか。それから、鉱石のスラリー濃度、スラリーというのは、海水の中に鉱石の破片が混じった状態のものをスラリーといいますけれども、そのスラリー濃度を安定することが非常に重要なんですが、そのためには濃度調整用のタンクが必要なのではないかということで、現在検討を続けております。
そして、一番大きな技術的な課題が揚鉱水の問題でありまして、鉱石の数倍の海水をくみ上げる必要があります。これを船上で処理できるか。海外のベンチャーは、この揚鉱水を海底に流す、排出するということで計画を立てておりましたけれども、そんなことが許されるのだろうかというようなことの検討も必要になります。
非技術的な課題といたしましては、国内の法制度の未整備、社会的な受容性を得られるか、海域を利用する他産業との共生、こういったものが残っております。
そして、商業化に当たっては、いい資源量といいますか、鉱床が何よりも商業化に必要だと思いますので、今後も資源調査を精力的に行うことが必要だと私は考えております。
最後のスライドになります。
私は、約半世紀前、鉱山開発論という講義を取りました。そのとき冒頭で、一に鉱床、二に建値、三、四がなくて五に技術と先生から言われました。それほど鉱山ビジネスには鉱床と建値が重要であるということをおっしゃりたかったんだと思います。でも、今は人材も必要です。
資源・素材学会、我々、今日の三名の参考人が共通で所属している学会ですけれども、学生を対象とした資源・素材塾というのを開いておりまして、二〇〇八年から、最初は経産省と文科省の補助金によってスタートいたしましたけれども、二〇一二年度からは自前の資金で自立化を行っています。二〇一九年度までに四百八十名余りが修了し、うち二百二十名は海外研修を体験しております。
もう一つの人材育成が国際資源開発研修センター、JMECというところでありまして、入社数年の日本人の社会人を対象とした資源開発研修、製錬・リサイクル研修を行っております。こちらも二〇〇八年からスタートいたしまして、昨年までに三百三十三名が資源開発で修了し、四百一名が製錬・リサイクルの研修を受けております。
また、このJMECは、非鉄金属資源生産国で開発途上にある国から政府関係の人たちを研修生として招きまして、三週間から三か月の研修を二十八年間にわたって行ってまいりました。延べ九百四十七名が修了しております。二〇一八年度に一度中断いたしましたけれども、今年度はリモートで研修を再開しております。
このように、小坂町、町民の温かい支援を受けながら研修生が順調に育っておりまして、彼らが卒業後もネットワークをつくって、特に日本人の研修生は多くが海外の現場に赴任し、資源・素材塾やJMECの講習の講師も務めております。
JMECは、また、東京で二〇一四年度から海底鉱物資源開発基礎講座と、一週間のものですけれども、こういったものも行っておりまして、五年間で五十二名が参加いたしました。
次は、このスライドは引用に使った資料の出典を示すものであります。
どうも御清聴ありがとうございました。