江藤洋一の発言 (情報監視審査会)
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○参考人(江藤洋一君) 弁護士の江藤洋一でございます。
本日は、一党一派のみならず、また一選挙区のみならず、全国民を代表する諸先生方の前でこのように意見陳述の機会を与えていただき、誠にありがとうございます。厚く御礼を申し上げます。
本日の趣旨は、ただいま委員長よりお話ございましたように、主として運用状況、活動についての御下問かと理解をしておりますが、その前提として、まず私どもの基本的な立場を申し述べさせていただきたいと思います。
私、二〇一三年十二月三日にも、当参議院にお招きをいただきまして意見を述べたことがございます。そのときと現在、私の意見は変わっておりません。基本的に、この秘密保護法は廃止ないし抜本的な改正が必要であるというふうに考えております。これは本日のテーマではございませんので長々とは申しませんが、二点だけ、ちょっとこの点につき付言をさせていただきたいと思います。
まず、秘密保護法の第十条一項一号イを御覧いただきたいと思うんですが、そこには各行政機関が国会に特定秘密を提供できる要件が記載されております。その中で、もちろん秘密漏えいがないように当委員会において手当てをするということになっております。
例えば、参議院情報審査会における保護要綱というものがございますが、こういうものを定めてきちんと秘密漏えいなきようにしっかりやれと、こういう要件だけならばいいのですが、それに加えて、かつ、我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれがないと認めたときと、こういう要件が付加されております。認めたときというのは、ほかでもございません、行政機関の長がそう認めたときと、こういう趣旨でございます。
翻って、この法律の三条を見てみますと、特定秘密に指定される要件が記載されておりますが、その最後のところに、漏えいが我が国の安全保障に著しい支障を与えるおそれがあるため、特に秘匿をすることが必要であるもの、こういうふうになっておるのでございます。
この二つの条項の矛盾というものが最初から気になっておりまして、この当委員会に出すときにはそのおそれがないとき、一方で、指定するときにはそのおそれがあるときと、こういうふうになっておると。じゃ、当委員会に提出される特定秘密というのは一体どういうものなんだろうかと、これがいつも疑問に思っておるところでございます。当委員会、あるいは参議院に対して、あるいは国会全体に対してこの法律がどういう立ち位置に立っているかということをうかがわせる規定ぶりになっているのかなということを心配するところでございます。
そして、もう一つ、余りこのことばかり言っておれませんが、もう一つ、第九条を見ていただきたいんですが、これは外国政府又は外国の国際機関に情報を提供する場合の要件が定められておりますが、この要件が何と、どうも国会に提出される場合の要件よりもいたく軽くなっているようにお見受けをいたします。このアンバランスは一体どこからきているのだろうということが国民の知る権利というものから見た場合に大いに疑問になるところでございます。
もうこれ以上長くなると本題に入れませんので、これぐらいにさせていただきます。
さて、その上で、国民の知る権利との関係で幾つか気になる点を御指摘をさせていただきたいと存じます。
なお、日弁連がこれまで述べてきた意見等につきましては、お手元の日弁連意見書等一覧Ⅰにございますので、それを見ていただければというふうに思います。
さて、その上で、貴会の活動におかれましては、是非国民の知る権利に最大限の配慮をしていただきたいということでございます。
法律の二十二条一項にも類似の規定がございます。国民の知る権利の保護に資する報道又は取材の自由に十分配慮するようにと書いております。つまり、直接的には報道並び取材の自由について配慮せよと、こういう規定ぶりですが、その両方の自由が資する知る権利に対する配慮は欠けていてよいわけはございません。是非ともこの点を重視していただきたいというふうに考えるところでございます。知る権利は、政府その他の公的機関から情報を取得できる権利、また、情報元のいかんを問わず、国民が情報を取得することを政府その他の公的機関から妨げられない権利というふうに定義付けられると思います。
ただし、そうした実定的な権利義務の次元を離れても、国民が今切実に知りたいと考える情報を政府は適宜速やかに公開し、これを国民に伝える責務があるのではないかというふうに考えております。知る権利は、もとより幸福追求権が発展、開花したものでございますが、同時に民主主義社会における政治参加のための公民の権利という性格を持っております。政府と国民がより多くの情報を共有できた場合に政治的安定が得られると確信するものでございます。
なお、ツワネ原則では、国民が十分な情報を得た場合に正当な国家安全保障上の利益が最大に保護されると述べておりますが、私が今申し上げた考え方と全く同一でございます。
しばしば、多過ぎる情報は国民を混乱させるとの考え方はございますが、これは現代の民主主義社会にそぐわない考え方であるというふうに思っております。政治的指導者の失敗やスキャンダルが表沙汰になることは混乱とは申しません。ましてや、その違法行為はむしろ積極的に国民の目にさらされなければならないと考えます。そうしなければ、国民が政治的指導者を選ぶときに失敗することになるからでございます。知る権利は、政府と国民の情報共有を通じて政府を健全に監視することに寄与するものでございます。
情報公開法は知る権利の具体化であるとしばしば言われます。しかし、現行の法律、条例によって知る権利が全て完全に充足されたわけではない、現行の法律にも改正すべき点は多々ございます。また、知る権利は包括的、基底的な権利であって、情報公開法が定めていない領域、分野においても、その権利性を育む必要があると考えられるところでございます。知る権利は、しばしば抽象的権利であると評されることがございます。しかし、そのことは、具体的権利性がないという方向に萎縮させるのではなく、むしろ具体的権利性をつくり出す方向に発展させ、その社会的定着を目指すべきと考えます。
貴審査会は、国民の代表が集う国権の最高機関にあって、とりわけ政府を監視する機能を発揮することを法的にも政治的にも期待されております。監視機関は、その組織、運営、財政面での独立が求められます。これはツワネ原則三十一条でも述べられているところでございます。国会並びに貴審査会は、この独立性ということに関して最も適した監視機関であると考えます。
独立公文書管理監は、一定の意義は認められるものの、この独立性に関しては、また、ノーリターンルールのない人的供給の在り方に鑑みても不十分な機能しか果たせないのではないかと懸念されるところでございます。実際、公文書管理監の報告を見ましても、数少ない例外を除き特定秘密の指定を適正と評価しております。そのまさに適正という評価そのものが果たして適正なのか、妥当なものであるのかを吟味、審議していただくのがこの審査会であろうというふうに理解をしておるところでございます。その意味でも、当審査会におきまして、特定秘密に対するアクセスを積極的に求めていただきたいと考えるところでございます。
資料を拝見いたしますと、秘密指定書自体が黒塗りとなり、何が秘密指定されたのか、それも秘密であるという事態を幾つか見受けました。これは決して望ましい状態ではない、避けるべきであるというふうに考えます。
以上のように、貴審査会は、より多くの情報にアクセスし、より多くの特定秘密にアクセスし、また、その機会を増やすべきであるというふうに考えるところでございます。
時間になりましたので、あと二点だけ補足をさせていただきます。
この特定秘密の提供を受けるに際し、貴審査会で議決を採ったところ、否決された例というのを幾つかお見受けいたしました。これは、むしろ積極的に、そうではなくて、特定秘密の提供を受ける方に活動をしていただきたいというのが私の意見の眼目でございます。
確かに、それ以外の要素はいろいろあろうかと思いますが、冒頭申しましたように、やはり先生方は国民の代表である、何よりもまず国民の代表であると。その国民の知る権利を充足するという観点から、なるべく多くの特定秘密に接していただきたいというのが私の申し上げたいところでございます。
その際に一体どういう求め方をするのか。当審査会の報告書にもございますように、リスクベース・アプローチという法を取られているというのは理解をしておりますが、もう少しサンプリング的なアプローチということも可能であろうというふうに考えるところでございます。
また、行政機関から特定の秘密の提供は期待されないからといって、これに萎縮していただきたくないという点がもう一点。さらに、この状態が行き詰まったときに最終的に内閣の声明を発していただくと、こうなっております。こういう法律の立て付けになっております。
これは、むしろ積極的にそういう声明を出していただく方向に御活動をいただきたいと、こういうふうに思います。そうすることによって当審査会並びに参議院、国会と政府の間の緊張感が保たれる、その緊張感によって、国民ははたと国会の方を振り向く、それこそ国民が知る権利の第一歩、行使の第一歩であろうというふうに考えるところであります。是非これを回避しないでいただきたいと、このように思います。
さらに、もう一点……