有村治子の発言 (文教科学委員会)

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○有村治子君 今御言及いただいたように、そもそも従軍慰安婦という言葉はいつ頃出始めたのか。(資料提示)一九七三年に出版されました作家千田夏光氏の著作にタイトルとして従軍慰安婦という言葉が使われるなど、一九七〇年代から出始めた造語でございます。慰安所が実際に使われていた戦中には存在せず、終戦時から四半世紀以上もたってから作られた新語であります。その後、多数の著述家、報道機関、活動家が日本軍の残虐さを強調する際に多用した言葉です。このような言葉で往事を表現することが果たして適切なのかどうかという率直な疑問が湧いてまいります。
 従軍慰安婦という造語は、この三十年間続いてきた慰安婦問題に関する論争の中核を成す肝の用語であるにもかかわらず、政府としてこの語句に向き合う定見がなかった、結果として、明確に否定してこなかったことが教科書に載り、事実に基づかない情報が世界各国にいまだに広がり続けている一因だと私は考えております。
 先月行われた衆議院の予算委員会において、加藤勝信官房長官が、最近、政府においては、慰安婦という語を用いており、従軍慰安婦という用語は用いていませんと政府を代表して明確に発言されています。その一方で、政府の一員である文部科学省を代表して萩生田文科大臣は、教科書検定が適切に行われた結果、従軍慰安婦の記載がある図書が検定に合格したものですと、その御認識を答弁されています。これは非常に分かりにくいジレンマでございます。一方は従軍慰安婦という言葉を使わない、しかし、一方では従軍慰安婦という言葉の教科書検定は適切だったと、非常に分かりにくいことでございます。
 大臣は、教科書検定は政治的、行政的意図が介入する余地のないものであって、文科大臣は審議会の審議結果に基づいて検定教科書を決定する仕組みとなっていますと過去御答弁をされています。文部科学大臣が預かられる職責と検定制度の趣旨に照らせば、確かにこれは妥当な御答弁になっていくものと理解をいたしております。
 しかし、同時に、今回のことが先例となり、従軍慰安婦と記述した教科書が検定に合格したことによって、一度は全ての教科書から記述が消えた従軍慰安婦という語句がまたぞろ検定のたびに増えていく可能性が拭えません。従軍慰安婦という言葉は、政府が事実に反すると繰り返し否定してきた強制連行、性奴隷、二十万人説などと連動して使われることが多いため、また教科書が従軍慰安婦のオンパレードとなり、国際社会に間違った情報が喧伝され、日本が不当におとしめられることにならないか、非常に心配をしております。
 そもそも、吉田清治なるうそにうそを重ねた詐欺師が、朝鮮半島で暴力の限りを働いて、幼子から母親を引っ剥がし、千人近い慰安婦の人狩りをしたなどという完全な作り話の数々を創作し、これらの情報が朝日新聞によって長年にわたり何度も喧伝されてきました。
 平成二十六年、二〇一四年に朝日新聞が十八本、少なくとも十八本の記事を取り消すまで、実に三十年以上もの間、日本を不当におとしめる虚偽情報を放置してきたのであります。吉田清治を担いだ北海道新聞も、裏付け取材ができていなかったことを認めて謝罪し、八本の記事を取り消しています。新聞赤旗も、記事三点を取り消し、謝罪をしています。これだけの謝罪して取り消された記事がございます。
 何年もの間虚偽を喧伝し、放置してきた報道の大失態によって、また、千田夏光氏が著書で示した根拠のない慰安婦の数が検証もされずに学者や研究者に引用をされ、孫引きをされ、韓国世論に火を付け、国連や国際社会にばらまかれるなど、史実に基づかない偽情報によって日本が不当に非難し続けられたこの国際政治の損失をもう一度再現させるようなことは許されないと考えます。
 今や慰安婦問題は完全に政治問題となっており、この三十年間、日韓関係を揺るがし続けた主要課題であります。事実上ここまで大きな社会的影響力を持ってしまっている慰安婦の教科書記述において、今回、従軍慰安婦という表記に対し調査官による審査で全く意見が付けられずに検定を通ったこと自体、大変驚いております。報告を聞かれた大臣も当初はびっくりされたのではないでしょうか。
 そもそも、教科書調査官は教科書に記載させるべき情報の的確性を審査する専門家ではあっても、これほどまでに国際的にも政治問題化してしまった慰安婦問題に向き合い、神経をすり減らしながら高度な政治判断を迫られてきた日本政府の往年の経過と重圧をあずかり知る立場にありません。自ら決断を下さねばならない政治的リスクやそれによる国家的代償を計り、日本の尊厳や外交政策に責任を負える方々でもありません。政治の決定権者ではないのに、事実上、中学社会科教科書の執筆者や検定調査官が慰安婦問題に向き合う国家の方向性を決めてしまう、その上で極めて大きな役割を制度上担ってしまっているところに深刻な構造上の問題があるのではないでしょうか。
 この構造的ジレンマと国家的リスクを最もよく把握していらっしゃるのが、ほかならぬ萩生田大臣だと私は思っています。萩生田大臣が大臣御就任前に政治家として大変大きな思いと信念と熱意を持ってこの慰安婦問題や河野談話に長年向き合ってこられたこと、その一端を存じ上げているつもりでございます。大臣がこれまで発信されたこの分野の論考も国会図書館で取り寄せ、文芸春秋も含めて全て拝読した上でこの場に立たせていただいております。
 責任感と正義感が強く、官邸と本質的な議論、さしの渡り合いができる大型の文科大臣でいらっしゃればこそ、この際、従軍慰安婦と慰安婦はどこが違うのか、日本政府としてしっかりと語句を整理し、政府としての統一見解を打ち立て、文部行政においても従軍慰安婦なる用語についてどのような定見を持つべきなのか、しっかりと揺るぎない原則を打ち立てていただくことを謹んで提案をいたします。
 大臣の御所見をお聞かせください。

発言情報

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発言者: 有村治子

speaker_id: 22113

日付: 2021-03-22

院: 参議院

会議名: 文教科学委員会