小倉康嗣の発言 (文教科学委員会)

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○参考人(小倉康嗣君) 皆さん、こんにちは。国立大学法人東京工業大学監事・国立大学法人等監事協議会会長の小倉康嗣です。監事協議会は、八十五の国立大学法人と四つの大学共同利用機関の監事の集まりで、そのまとめ役を務めさせていただいています。
 本日は、国立大学法人法の一部改正する法律案の御審議に当たり、このような機会を与えていただき、誠にありがとうございます。太田委員長を始め、文教科学委員の皆様に厚く御礼申し上げます。
 資料に沿って説明させていただきます。
 国立大学法人法は、国立大学の自律的な運営と民間的マネジメント導入を基本として制定され、運用されてきていたと認識しています。このような中、自律的な運営といえども、中期目標、中期計画による目標管理については、単に既成の枠内のみ事業の効率化と質の向上を目指すものとなっているのではないかとの意見や、学長選考会議及び監事が持つ牽制機能について実効性のあるものとすべきとの意見もあります。一方では、様々なステークホルダーから納得が得られる財務諸表を載せた統合報告書を作成する大学や産業界との共同研究を拡大している大学、また大きな大学改革を断行している大学など、法人法制定により年々開かれた国立大学に近づいていると感じています。
 本来、大学の使命は、教育と研究、すなわち社会人として世の中に役立つ人材を育成すること、そして優れた研究を行うことによって世の中に貢献することです。世界のトップグループに入る大学になることはその結果得られるものだということです。この原点に基づいて、現法律が成り立っているのかを常に確認する必要があると考えています。
 今回の法律改正内容の方向性については納得できるところが多いと考えています。中期計画の策定、監事の体制の強化、そして出資の範囲の拡大について意見を述べさせていただきます。
 最初に、中期計画の策定についてです。
 次期第四期であります六年間の中期計画において、今回の改正により、毎年度行っていた年度計画及び各事業年度に係る業務の実績等に関する評価がなくなることは、事務負担の軽減の観点から評価できます。年度計画、年度評価の廃止によって法人運営は大丈夫なのかという意見があります。中期計画は年度計画の積み上げから成り立っておりまして、最終年度の目標のみでは運営できません。大学によっては差異があるかもしれませんけれども、各法人は毎年ごとの計画を作っていると考えています。この年度計画を法人自身が自由にマネジメントすることで、より一層の自律的運営ができるものというふうに考えています。
 一方では、中期計画を作るに当たって、中期目標に基づく必要があります。第四期から国立大学法人に求められる役割や機能に関する基本事項として示された中期目標大綱の中から選択する方式に変更されています。国立大学法人の戦略的経営実現に向けた検討会議の最終報告には、国は、従来の中期目標のように個々の大学に対して経営全般にわたり細分化された目標をあらかじめ設定して国立大学法人の活動を管理するものではなく、国立大学法人の多様性にも十分配慮して、大学政策上必要な方針を大枠として示すことが必要であるとあります。選択項目の趣旨は踏まえるとしても、自主的な中期計画の策定ができるような柔軟な対応をお願いしたいと思います。
 次に、監事の体制の強化についてです。
 監事の少なくとも一人は常勤化を義務付ける件についてです。
 監事は、財務会計だけではなく、法人の経営全体が適切かつ効率的に機能しているかについて監査することが求められています。監事は、学外からの人材を求めており、弁護士、会計士、地方自治体、企業経営者など様々な業種から選ばれています。大学運営を企業経営に近づけるとの意見があります。企業経営者や企業の会計士から見ても大学運営は企業経営とは異なるものであるために、大学の業務を理解していなければ間違った判断をしてしまいます。したがいまして、大学の業務を知る上でも常勤であることが望ましく、国立大学法人等監事協議会としても、全ての大学や機構の監事は少なくとも一人は常勤化すべきであると求めていたところであります。今回の改正において、法人の長が不正行為や法令違反等があると認められるときは、学長、機構長選考・監察会議に報告しなければならないと義務付けられているため、その役割の重要性においても常勤化は必要であると考えています。
 しかしながら、監事の業務が多くなっているにもかかわらず、大学における監事業務のサポート体制は必ずしも十分とは言えません。監事の業務をサポートする体制をつくるための経費についても十分考慮するようお願いしたいと思います。
 また、学長、機構長選考・監察会議のメンバーは経営協議会と教育研究評議会のメンバーから選ばれることになっておりまして、間接的ではありますが、学長が指名したメンバーで構成されています。こうした環境の中で、法人の長が不正行為や法令違反等があると認められる場合、学長、機構長選考・監察会議に報告することは、学長本人への報告ではないとはいえ、抵抗感があることは否めません。そのため、監事の資質として、バランス感覚を持ち、多角的な視点で事実を確認し、合理的な判断を行うとともに、臆せず発言できる能力、また質問力、分析力、説得力、さらには人間力といった能力も求められます。資質向上のための研修などのサポートが必要と考えています。また、状況によっては調査費用も必要になります。この点の経費についても十分考慮するようお願いしたいと思います。現在、監事協議会は法人からの会費で成り立っていますけれども、国からの直接の補助としての考慮もお願いしたいと思います。
 監事の常勤化については、適正人材をどのように探すのかという課題があります。特に地方においては集まりにくいとの意見があります。
 さきにも述べましたように、監事の責務が重くなっており、大学の様々な教員からのヒアリングや様々な会議への出席も行わなければなりません。したがいまして、業務を全うするには専任としての時間が必要であると考えています。監事も役員であり、勤務時間が決められているわけではなく、必要とあれば二十四時間体制で勤務に当たり、結果責任を持つのが役員です。常勤といえども毎日出勤する必要があるわけではありませんけれども、その責任の重さを考慮して、今後とも原則専任との考え方でお願いしたいと思います。
 また、大都市においても非常勤しか置いていない大学もあれば、地方大学においても常勤監事を置いている大学もあります。地方においても工夫次第で人材確保はできるものと考えています。大学として公募することや、国や自治体、地域の様々な組織から推薦をいただくことなどが考えられます。大学が適正な監事候補者を確保できるように、こうした監事の推薦について各方面からの御協力をお願いいたします。常勤監事の候補者の選択幅を持たせるという意味では、年齢制限を緩和するということも考慮願います。
 最後に、国立大学法人等の出資の範囲の拡大についてです。
 出資活動は、国の予算を活用した法人の成果として、広く国民に還元していくという意味で有意義なことだと考えています。今回、指定国立法人にのみ限定している研究成果活用事業者への出資を全ての国立大学法人等に適用することとなっています。一方、ベンチャーへの出資は、実態面においてベンチャー企業の業態が様々であり、経済的リスクが高いことから、まずは指定国立大学法人から始めることは正しいやり方だと思っています。その後、実績を見て良いとなれば、全ての国立大学に適用していくようにお願いします。また、出資がベンチャーのみならず、ベンチャーインキュベーション法人への出資も幅広く可能となるような柔軟な解釈もお願いしたいと思います。
 研究機関における公的研究費の管理・監査のガイドラインの改正においても、監事に求められる役割の明確化が明記されています。大学職員自身が立ち上げたベンチャー企業の場合、利益相反の観点から十分注意を払っていく所存です。
 以上、ここまで意見を述べてまいりました。国立大学法人の改革はまだ終わりではなく、国内外の大学等から優れた教員等を戦略的にリクルートする取組や、博士課程の進学率の伸び悩みへの対応、年度を越えた戦略的積立て可能な仕組みの拡充など、これからも検討すべき課題があると認識しています。今後も、検討会議における議論を通じて、国立大学法人法が実情に合った改正になることを望んでいます。
 また、今回の改正の重要な部分として監事体制の強化が盛り込まれたことにより、監事協議会としては監事の役割の重要性に鑑み、身の引き締まる思いで対応していきたいと考えています。
 以上、意見を述べさせていただきました。
 ありがとうございます。

発言情報

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発言者: 小倉康嗣

speaker_id: 1757

日付: 2021-05-11

院: 参議院

会議名: 文教科学委員会