大山一誠の発言 (法務委員会)
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○参考人(大山一誠君) よろしくお願いします。
今日は、神奈川県から来た大山一誠です。現在四十二歳です。自営業です。仕事は水道の仕事を十九年やっています。国家試験にも合格し、茅ケ崎市の上下水道指定工事登録店をしています。
私は、二十五歳の頃から少年院での講話をしてきて、運動会や盆踊り大会の行事にも参加し、そのたびに少年たちに頑張れよと声掛けし、固い握手をしてきました。出院後の少年と関わることもありました。二十か所に及ぶアメリカの刑務所やNGOなどの民間団体の視察で、二度にわたり渡米もしました。現在、妻子いる身なので、静かに生きたい、そう思えば今回の少年法改正を黙って見ていればいいのですが、これまで会った少年らに顔向けができません。そういう思いで今日は来ました。
私は、まさに今議論されている十八歳から十九歳の頃に少年院に入っていました。
私の両親は沖縄県の出身者で、父は本島北部の小さな部落、母の両親は奄美大島と徳之島の出身で、母方の祖母は本土の人と区別するため一文字姓を名のらされていました。私は両親が上京したときの子供で、弟がおなかにできたとき、両親は沖縄へ帰ります。両親の間でいろいろとあって、私が三歳の頃、離婚します。乳飲み子の弟と私を連れ、母は姉さん夫婦を頼り、再度上京します。それからが地獄の始まりでした。
着るものはいとこのお下がり。電気、ガス、水道は止まり、次の母の給料日まで止まったまま。食事もろくになく、抜きになるのも日常的にあり、学校や、いとこの家に行ったときの夕飯が楽しみでした。今でも覚えているのが、食べるものがないときに母にかびたパンを出されたときです。そのカビだらけのパンを言われたとおりカビの部分をちぎって食べるんですが、酸っぱくてとても食べれません。飲み込もうとしても喉を通らない。要らないと言えばたたかれて。
母は、生活苦で姉さんからお金を借り、それでも足りなければ消費者金融からお金を借りていました。母は私や弟によく暴力を振るいました。しつけとは程遠い、殴る蹴るの暴行。木の棒や布団たたき、ベルトなどでもたたかれました。後に自分が働くようになって気付きましたが、母はお金のなさに苦しみ、おかしくなって自分の子供に当たっていたのです。それが許されるかは別にして、母もかわいそうでした。
私は、そのような家庭環境から、小学校に上がる頃から同級生に暴力を振るってばかりいました。幼い頃から、両親を恨み、貧乏を恨み、金持ちを恨み、社会を恨んでいたからです。中学生になると非行は進み、喫煙、飲酒をし、暴走族の先輩らと遊ぶようになります。高校は県立に進学しますが、高校にも入れないばかだとは思われたくなかっただけのこと、すぐに暴力事件を起こし逮捕され、高校は退学になります。そして私は更に荒れて次々と事件を起こし、暴力団の人たちとも関わるようになっていきます。
二度目に逮捕されたのは十七歳の頃で、鑑別所に送致されました。しかし、私は更生しませんでした。それは、私の心の中の様々な恨みが根深いのと、鑑別所が少年を鑑別するところで、教育を受ける場ではなかったからだと思います。
それから十八歳になってナイフを使用した事件で逮捕され、少年院に送致されます。相手の方は亡くなってはいません。少年院に送致され、初めの頃は院内の生活の仕方や行動訓練を学び、私語は禁止、私語は懲罰の対象になり、刑務所とは違い進級制なので、問題を起こせば一か月単位で出院は延びていきます。そして徹底した体育。社会にいると喫煙や飲酒、薬物に手を染める者も少なくありません。健全な心は健全な体からということです。毎日日記は大学ノート一ページ分が課せられ、週二回の課題作文、裏表のある八百字詰め原稿用紙の裏半分まで書くことも課せられます。そして内省です。壁に向かい正座して黙想するのを一回三十分、日に五、六回行います。こうして社会の誘惑や劣悪な家庭環境、不良交友や暴力団と切り離し、罪と向き合い、自分と向き合っていくのです。
私の考えを一変する出来事がありました。単独室で内省していたときの話です。幼少の頃からの自分の人生を振り返っていました。怒りや悲しみに満ちた人生です。二つの考えがありました。一つは、もう少年院まで来てしまったじゃないか、もう後戻りはできないぞ、あんなにみんなを恨んでいたじゃないか、社会に戻ったらやくざにでもなろうぜという考えで、もう一つは、まだ戻れるぞ、本当にそれでいいのか、自分の人生もっと自分を大切にしろよと、いろいろなことが頭の中をよぎり、気が付けば涙を流し、おろおろと泣いていたのです。
自分はこの先どうすればいいのか、考え過ぎて頭がおかしくなっていたのかもしれませんが、そのときに耳元で、何のために生まれてきたんだという声が聞こえたのです。ほかに誰もいない単独室です。私は心を入れ替える決意をします。これまでの自分は間違っていたと思うと、少し楽になった感じを覚えています。
私は、少年院に入ってあの経験がなければ今の自分はないでしょう。十八歳、十九歳という年齢は、確かに少年でもない、大人でもない年齢です。しかし、私のように、まさに人生の岐路であり、見えない境界線があります。その見えない境界線を本人が越えないように我々大人が目を見張り、教育していくのが明るい社会づくりだと思います。
続きまして、今回の少年法等の一部改正について三点申し上げます。
まず第一は、少年院のことです。
これは私の経験から今まで申し上げてきましたが、改正案は、犯罪の軽重を考慮して三年以下の期間を定めるとなっています。犯罪の軽重というのは素人の私にはよく分かりませんが、犯罪のいきさつや手段がひどいとか被害が大きいとかだと思います。
ここで気になっているのは、初めに期間が決められたら、その期間が来たら出院できるということです。少年院は進級制度もあり、努力して改善したと認められなければ出院できませんでした。面接や作文などいろいろな働きかけがありました。もし期間が決まっていると、しんから改善をしないで出院を待つようにならないか心配です。そうなると再犯防止の点からも危うくなると思います。
二つ目の点です。原則逆送の対象事件拡大について。
二〇一九年のデータになりますが、少年院に送致された少年は千七百二十七名で、男千五百九十四人、女百三十三人です。それから十年遡りますが、二〇〇九年では三千九百四十二名で、男三千五百四十四人、女四百十八人で、十年で半分以下になっています。少子化ではないのかという声もあると思いますが、少年人口比で見ても犯罪は減っていて、少年法が有効に機能していると言えます。
厳罰化賛成の方々が言う抑止力になるという意見があると思いますが、刑務所の方が再犯が多いと聞いています。刑事犯で検挙された人員のうち再犯者は四八・八%で、ほぼ半分を占めています。少年院では三四%です。少年院の方が有効に機能している証拠ではないでしょうか。
民法で成人年齢が引き下げられ、選挙権が与えられるようになりますが、社会において責任ある主体として積極的な役割を果たすことが期待される立場と言われますが、高校生や大学生の年齢で一体どれだけの少年が自立しているのでしょうか。
また、少年院収容人数のうち六四・五%が中卒、高校中退者です。また、その少年らのうち、知的障害、発達障害、その他精神障害が含まれます。そして、虐待された経験を持つ者は、男子三四・六%、女子五四・九%です。多くの少年は家庭の状況によって勉強に動機付けられておらず、知的能力に比し学力が低いのです。同じ十八歳、十九歳の高校や大学に通う少年らとは明らかに大きな差があるというのが私の主張で、その大きな差が責任能力にも影響されると思っています。
重大事件については、被害者が死亡した場合ですが、それ相応の罪を受けるべきだと思います。その中で、原則逆送致制度の導入、刑の緩和の制限、刑の引上げなど、これまでの法改正で相当程度対応されており、拡大する必要性はないと思っております。
三つ目、最後になります。推知報道についてです。
昨今のSNSの普及により個人の意見を発信できるようになり、それ自体はいいことですが、長引く不況、政治不信、コロナ禍により人々は疲弊し、怒りや悲しみに満ちた世の中で、復讐心が入り交じる正義感で誰かを攻撃する人たちがたくさんいます。報道の過熱ぶりも問題です。芸能人が一度問題を起こすと社会全体でこれでもかとこてんぱんにするさまが見受けられます。気分のいいものではなく、私はそれが嫌です。
加害者は、社会の根強い偏見や悪意のあるうわさのため、住宅の確保や就職など基本的な生活基盤を築くことが難しく、本人に真摯な更生意欲があっても社会復帰が厳しい状況にあります。また、加害者本人だけではなく、その家族も社会からの偏見や差別を受けることがあります。加害者家族の自殺も起きています。そんなの当たり前じゃないかという声もありますが、それでは汚れ多き、人にあらずという意のえた非人であり、江戸時代の身分制度と同じです。
死刑にでもならない限り、加害者は社会に戻ってきます。社会の一員として生活をするためには、真っ当な仕事に就き、本人の強い更生意欲とともに、家族、職場、地域社会など周囲の人々の理解と協力が何よりも必要です。犯罪から社会を守り、安心して暮らせる社会を築くためには、警察や司法が犯罪の取締りを強化し、犯罪者を罰するだけでは十分ではありません。罪を犯した人が再犯しないよう温かく支援する地域社会づくりが重要なのです。
そういう理由により、推知報道の解除に反対です。
二〇一六年、平成二十八年施行の再犯の防止等の推進に関する法律第三条、基本理念にはこう書いてあります。犯罪をした者等の多くが定職、住居を確保できない等のため社会復帰が困難なことを踏まえ、犯罪をした者等が、社会において孤立することなく、国民の理解と協力を得て再び社会を構成する一員となることを支援すると書いてあります。今回の特定少年の取扱いによる改正は矛盾し、行き過ぎた改正だと思っています。
これまで、少年法の改正が沸き起こるたびに加害者と被害者遺族の意見が衝突するように思います。その一番の問題は、被害者、被害者遺族を救済する制度がないことです。これはつくらないといけません。
最後に、国には、現在の少年法を維持していただきつつ、被害者、被害者遺族を救済する施策を総合的に策定していただき、実施していただきますようお願いし、終わりにしたいと思います。
ありがとうございました。