榛葉賀津也の発言 (本会議)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○榛葉賀津也君 私は、国民民主党・新緑風会を代表して、ただいま議題となりました帰朝報告に対し、菅総理大臣に質問します。
今回のバイデン大統領との日米首脳会談は、日本を取り巻く安全保障環境において歴史的な会談となりました。
しかしながら、菅総理がバイデン外交の一番乗りとなったことは評価に値しますが、これを対日重視の表れと手放しで喜ぶのは誤りです。バイデン大統領が日米会談を最優先したのは、ひとえに米中対立の構図の中で地政学的要因も含め鍵となるのが日本であり、日本が覚悟を持って同盟の羅針盤を共有できるかを迫るためです。中でも、安全保障上のリスクは深刻で、台湾海峡や尖閣諸島を含む我が国周辺の軍事的緊張はかつてないほど高まっています。共同声明に台湾を五十二年ぶりに明記したのも、我が国を曖昧戦略から決別させるためにほかなりません。
首脳会談と時を同じくして、岸防衛大臣は、陸上自衛隊の与那国駐屯地を視察しました。日本最西端の与那国島は台湾から百十キロ、尖閣から百五十キロに位置し、沿岸監視隊百六十名が任務に当たっています。防衛大臣は、国際社会の安定には台湾の安定が重要であると訓示をし、南西地域の防衛強化を約束しました。中国に言うべきことははっきり言っていくと総理が明言した日米首脳会談に合わせた防衛大臣のこの行動こそが、菅内閣の覚悟の表れだと認識します。
しかし、同時に、それはかつての西欧の同盟国が米ソ冷戦の最前線に立たされたように、今度は日本が米中対立の第一線に立たされることを意味すると思いますが、総理の御認識をお伺いします。
米国のデービッドソン・インド太平洋軍司令官は、今年三月九日の議会証言で、インド太平洋の軍事バランスは極めて厳しい状況にあり、中国が一方的に現状変更を試みるリスクが高まっている、台湾への脅威は今後六年以内に明白になると危機感を示しました。米国防省の調べでは、四年後の二〇二五年には中国軍の戦闘機は米軍の八倍、空母は三倍、潜水艦は六倍、戦闘艦艇は九倍に増えるとされているのです。
さらに、近年、我が国固有の領土である尖閣諸島において、中国海警船などが独自の立場を主張し、領海に頻繁に侵入、日本漁船を追尾するなど、主権の侵害を繰り返しています。本年二月一日には中国海警法を施行させ、海警局は準軍隊組織へと変容し、中央軍事委員会の指揮の下、武器の使用を含む防衛作戦を遂行することが可能となりました。専門家からは、中国が尖閣諸島を簒奪する計画の実行段階に入ったと警鐘が鳴らされています。総理の御認識をお伺いします。
中国は、日本の事情や法解釈に沿った行動は取りません。日本にとっては主権の侵害であっても、中国にとっては、たとえそれが国際法に反する暴挙であっても、主権の回復なのです。目的実現のためには全ての手段を取る相手にどう対処するのか、現実的な具体策を検討すべきです。
厳しい現状下でも、海上保安庁は高い士気を保ち、日々最善を尽くしてくださっていることに心から敬意を表します。しかし、中国の可能行動に対し、現在の海保に与えられた権限で日本の主権を本当に守り切れるでしょうか。例えば、現行法による海保の中国船への対応は、警察権に基づくものに限られています。中国の海警船は七十六ミリ機関砲を搭載し、一万トン級の船舶も確認されています。もはや軍艦です。また、現行では、相手の水中侵攻上陸や空からの降下着陸には対応できません。日本の手のうちを研究している中国が、集団漁船や海上民兵などを使ってグレーゾーンをついてくる可能性が大です。海上保安庁に求められている任務と実態の乖離を認識し、海保、国境離島警備隊、そして自衛隊との連携のシームレス化が極めて重要です。総理、海保の任務実態への認識と、シームレス化への具体的な対応策をお示しください。
今年の夏までに、米国は、世界的な米軍の配備態勢を見直すグローバル・ポスチャー・レビューを発表します。二〇〇六年にライス国務長官、ラムズフェルド国防長官、麻生外務大臣、額賀防衛庁長官の2プラス2で承認された在日米軍のための日米ロードマップから十五年、また、在日米軍再編のうち、沖縄県内における土地の返還の行程を示す統合計画から八年が経過しました。
当時は、世界の関心が中東やアフガニスタンに集中していましたが、今や国際状況は一変しています。沖縄の基地負担軽減のためには統合計画の実施は必須です。他方、激変するパワーバランスや中国の拡張主義を見れば、必然的にロードマップの中身や行程が変わってくるはずです。
GPRの作成と並行して、日米がより連携を密に、新たな日米ロードマップを検討する段階に入っていると思いますが、総理の御認識をお伺いします。
米中の新冷戦と叫ばれていますが、かつての米ソと決定的に異なるのが経済です。米ソの冷戦時代と異なり、米中、日中共に経済的な相互依存は広範囲で深層的です。そのことをまざまざと認識させられたのが今回の新型コロナのパンデミックでした。
マスクやガーゼ、医療品や医療用防護服ばかりか、日用雑貨から自動車部品に至るまで、日本のサプライチェーンの過度な中国依存が露呈しました。以来、多くの業界で、生産拠点の国内回帰などでサプライチェーンを短くしたり、拠点をASEAN諸国に分散するなど多元化を進めてきましたが、中国の産業集積は非常に深く厚く、中国に代替する国を見付けるのは容易ではありませんし、市場としての中国の重要性は全く変わらないなど、厳しい現実に直面しています。
また、深刻なのは、レアアースなどのレアメタルの分野です。レアアースは脱炭素に関連する素材としても需要が急激に高まっています。日本は、かつて九割あったレアアースの対中国依存率をこの十年間で何とか六割まで下げましたが、米国に至ってはいまだ八割の依存です。レアアースの脱中国依存に日米豪印のいわゆるQUADで協力を強化することが各国の首脳会談で確認されていますが、今後の具体的な見通しについて総理にお伺いします。
あわせて、半導体やAI、量子コンピューターや5G、6Gなどの技術開発や基準の管理もQUADなどの民主主義国家が戦略的に主導していくとの声明がありましたが、その具体策をお示ししてください。
今回の声明には、中国との信頼醸成のためのメッセージも数多く含まれています。例えば、台湾の平和と安定に言及する一方で、両岸問題の平和的解決を促すとされています。総理、両岸問題の平和的解決とは何を意味し、具体的に何をされるのですか。また、共通の利益を有する分野で中国と協働することが必要とありますが、どの分野で、どのような協働をされるのか、具体的にお答えください。
人類は、これまでに幾度も戦争を繰り返してきました。尊いあまたの命を犠牲にしながらも、その教訓を生かせずに戦争を繰り返してきたのです。今は亡き私の両親も戦争遺児でした。二度と戦争はしない国にしてほしい。戦争未亡人であった祖母の遺言です。この今を戦前と呼ばせないためにも、非現実的な理想論に拘泥せず、また勇ましいだけの過度な武装論にも流されず、我が国の領土、領海、領空と国民の生命と財産を守るために、政治が冷静に現実を分析し、リアリズムを追求することが大事です。台湾、尖閣、コロナ、人権、地球温暖化、そして科学技術などの様々な分野で日米同盟のきずなをより強固にし、さらに、日本こそが国際法を遵守していることを世界に広く知らしめ、日本国民からの信頼と納得を得ることが平和の礎となるのです。
我々野党にもその責任があることを強く申し上げ、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣菅義偉君登壇、拍手〕