磯崎仁彦の発言 (本会議)
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○磯崎仁彦君 自由民主党の磯崎仁彦です。
自由民主党・国民の声を代表し、ただいま議題となりました少年法等の一部を改正する法律案について質問いたします。
質問に先立ち、昨日の気候変動サミットにおいて、菅総理が、二〇三〇年度の温室効果ガス削減目標を、二〇五〇年カーボンニュートラルと整合的で野心的な目標として、従来の二〇一三年度比二六%から四六%に引き上げ、さらに、五〇%の高みに向け挑戦を続けていくと表明されたことを高く評価することを申し上げ、質問に移りたいと思います。
来年から民法の成年年齢が十八歳に引き下げられます。選挙で投票できる年齢は十八歳に引き下げられ、既に実施されています。
今回の少年法改正はこれらの改正が契機となって検討されたものですが、少年法については、これまでも凶悪な少年事件が発生するたびに、また、少年事件を引き起こした少年が、犯罪を犯すなら未成年のうちにといった供述をするのを聞き、未成年ゆえになぜ保護されるべきなのかと、少年法改正の声が高まったことが何度となくありました。
再犯防止は国の最重要課題の一つです。今回の少年法改正を検討するに当たり、法制審議会においては、非行少年を含む犯罪者に対する処遇を一層充実させるための刑事の実体法及び手続法の整備の在り方が検討されたと聞きます。
総理は、再犯防止という大きな枠組みの中で少年法はどう位置付けられるとお考えなのか、お伺いをいたします。
少年法を考える場合においては、どういった立場に立つか、また、どういった視点を重視するかで内容は大きく異なります。
民法上の成年となれば、監護権などの親権が適用されなくなります。一人前なのだから全部自分で決めなさい、自らの行動を抑える能力もあるのだから自分の行ったことに責任を取りなさいと考えることができます。
他方、法はそれぞれの立法趣旨や立法目的があり、民法の成年年齢がそのまま少年法の少年年齢の引下げにつながるわけではないとの考え方もあります。また、被害者や被害者家族の感情や、処罰、謝罪、贖罪をしてほしいという思いを考えるべきとの声も強くあります。
二十歳未満の者は可塑性を有し、更生や再犯防止のための教育的処遇が有効であることから、その者の健全な成長発達、非行のある少年の立ち直りや育ち直りを図ることが少年法の目的であることに鑑み、十八歳、十九歳の者への扱いを、二十歳以上の者、十七歳以下の者とのそれとどうバランスを取れたものとするかが重要です。
総理は、民法の成年年齢引下げを踏まえ、国民の中には様々な立場、考えの人がいる中、今日の少年法はどうあるべきとお考えでしょうか、御所見をお伺いいたします。
次に、特定少年に関して伺います。
本改正では、少年は二十歳に満たない者としており、現行と変えていません。その上で、十八歳及び十九歳の者を特定少年とし、それ以外の少年と異なる措置としています。
二十歳未満による事件では、これまでどおり、捜査の結果、犯罪の嫌疑があるときは、事件は家庭裁判所に送致されます。ただし、特定少年は、死刑又は無期若しくは短期一年以上の懲役、禁錮に当たる罪の事件、つまり強制性交等や強盗などが原則逆送の対象に加えられます。ただ、原則逆送の対象となる強盗罪について見れば、同罪は窃盗と暴行の併合罪に近い類型であることから、犯情の幅が極めて広いという特徴があります。
今回の改正前から、原則逆送に当たる事件であっても、家裁の調査で事情を考慮し、刑事処分以外の措置が相当か否かが判断されます。改正後も、特定少年で原則逆送の対象に加えられた罪の事件でも、これまで同様、家裁で調査が行われた上で判断がなされることとなります。
そこで、犯情が広い強盗犯についても、家裁での調査を踏まえた判断が適切に機能するように、どのような運用がなされるべきとお考えでしょうか、法務大臣の御見解を伺います。
少年法では、交友関係に問題があるなど、犯罪につながるおそれもある虞犯は家庭裁判所に送致されますが、今回の改正法では、特定少年は虞犯の対象外です。民法等で自らの判断により社会生活活動を行うことができるにもかかわらず、犯罪に着手していない特定少年を虞犯とすることは人権的にどうなのかという見方からすれば、虞犯の外に置くべきとなります。
一方、十八歳や十九歳は民法上の成年ですから、契約などができることに目を付けて、詐欺組織へと誘われるなどの懸念もあります。また、厳しい生活環境から犯罪に手を染めかねない十八歳、十九歳の者が、児童相談所に一時保護を求めたとしても、児童福祉法では十八歳未満を対象としています。
児童福祉法などの関連する法令との連携により、法のはざまを塞いで一枚岩の行政支援体制を構築する、あるいは、未成年にはふさわしくない仕事をする者やインターネットに潜む闇をうろつく者に救いの手を差し伸べるNPOとの協力を強化することなど、少年法の枠の外でも特定少年が犯罪に手を染めてしまうことを未然に防ぐ対応を強化する必要があるのではないでしょうか。法務大臣の御見解をお伺いします。
少年による犯罪では、不定期刑、そして二十歳以上の者との収容や懲役、禁錮の執行の分離、資格制限の緩和など、幾つかの特例があります。しかし、今回の改正案では、特定少年に係る事件が検察官に送致された後は、刑事事件に関するこれらの特例を原則として適用しないこととしています。
このうち、資格制限の緩和については、刑事処分に付された特定少年の社会復帰を妨げるものになるのではないかと懸念する声があります。資格制限の在り方については、引き続き、今回の改正がもたらす特定少年の更生状況や犯罪行為の推移、あるいは世論などをしっかりと検討した上で、早急に結論を得るべきではないでしょうか。さらに、資格制限が適用されたとしても更生の道が断たれないように、職業訓練や制限解除後の資格取得に向けた教育支援など、行政的な後押しを抜本的に強化することも必要ではないでしょうか。総理のお考えを伺います。
少年法六十一条は、「当該事件の本人であることを推知することができるような記事又は写真を新聞紙その他の出版物に掲載してはならない。」という、いわゆる実名報道を禁ずる条文があります。しかし、少年の実名が報道されないから非行に走るという意見、さらに、幾つかの少年事件では少年の実名や顔写真が報道されることがあり、そのたびに少年法六十一条はどうあるべきかとの議論がなされてきました。
今回の法改正では、十八歳及び十九歳の者、すなわち特定少年が犯した罪により公訴を提起された場合には、略式手続による場合を除き、記事等の掲載の禁止に関する少年法の規定が適用されません。この推知報道の制限の解除は、社会復帰の可能性あるいは表現の自由、知る権利とのバランスなど、様々な角度からどのような議論を踏まえた上で設けられたのでしょうか。
また、刑事裁判において家裁への移送が決定されたときには家裁手続に戻りますが、それにもかかわらず、既に報道されてしまっているという事態に陥ります。この場合、特定少年の権利とのバランス、さらに、インターネット上に個人情報がいつまでも残りかねないことも考慮し、対応を考えるべきではないかと思いますが、法務大臣の御所見をお伺いいたします。
最後に、保護司について伺います。
本年三月に開催をされた国連犯罪防止刑事司法会議、京都コングレスにおいても、保護司に代表される我が国の更生保護制度の意義が世界に紹介され、高く評価されました。しかし、犯罪を犯した人や非行のある少年の立ち直りを地域で支えている保護司の数は減少傾向にあり、保護司法で定められた定数を下回る状況が続いています。高齢化の進展も顕著です。
少年法の最も大切な理念である更生を担っておられる保護司として身を粉にして取り組んでおられる方々への思い、さらに、保護司をめぐる体制の強化についての御所見を総理にお伺いして、私の質問を終わります。
ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣菅義偉君登壇、拍手〕