浦郷由季の発言 (地方創生及び消費者問題に関する特別委員会)

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○参考人(浦郷由季君) 一般社団法人全国消費者団体連絡会の浦郷と申します。
 本日は、特商法、預託法の改正の審議に関し意見を申し述べる機会をいただき、ありがとうございます。
 私ども全国消費者団体連絡会は消費者団体の全国的な連絡組織で、全国四十七の団体が緩やかにつながりながら、消費者問題、食品の安全や表示、環境、エネルギーなど、暮らしに関わる様々なテーマについて消費者の立場から意見発信を進めています。
 私からは、この間の消費者運動の経緯とともに、意見、要望を述べたいと思います。
 今回の特商法、預託法の改正については、昨年の八月に消費者庁の検討会において報告書がまとめられました。
 大きな社会問題となった豊田商事やジャパンライフなど、多くの消費者に多額の財産被害を及ぼしてきた悪質な販売預託商法について、本質的に反社会的な性質を有し、行為自体が無価値であると捉え、原則禁止として明記されました。また、消費生活相談で増加している詐欺的な定期購入についても規制強化が記載され、消費者の不安に付け込む送り付け商法についても何ら正常な事業活動とはみなされないとして制度的な措置を講じる必要があるとされ、画期的な報告書となりました。
 こうした報告書がまとめられた背景には、四つの消費者団体、それは、主婦連合会、日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会、通称NACSと呼ばれている団体です、そして全国消費生活相談員協会、日本消費者協会が委員として参加し、消費者の立場や消費生活相談の現場の声から、健全な市場を願い、最後まで悪質商法の規制や撤廃を強く求めたことが大きな力となりました。
 また、河上正二委員長の、悪質な事業者は消費者にとっても健全な経済活動を行う事業者にとっても共通の敵であるという認識の下、議論が進められ、様々な立場にある委員をまとめられたということも大きく寄与しました。
 この検討会に関わった委員と消費者庁の事務局の努力により画期的な報告書が出されたことを踏まえ、全国消団連では、この報告書に沿った実効性のある法改正を進める旨の意見書、それを九月に提出するとともに、改正を進めている消費者庁の後押しをする、その意味も込めて、全国的な消費者運動の展開に向けて取り組むこととしました。
 十月に消費者庁取引対策課の笹路課長をお招きし、オンラインで、北海道から九州まで百名を超える参加者の下、学習会を開催、検討会報告書の内容を学ぶとともに法改正の実現を求め、参加者や会員団体に向けて、地方議会から国へ意見書提出を求める取組を呼びかけました。このとき、笹路課長からも、必ず報告書どおりの改正を目指すと強い決意を述べていただきました。そして、呼びかけに応じて各地域で活動している消費者団体、適格消費者団体、生協連、弁護士会など、連携、調整を図り、地方議会への働きかけを進めてくださいました。
 十二月八日にはシンポジウムも開催し、再び消費者庁の笹路課長に登壇いただくとともに、日弁連消費者問題対策委員会の弁護士の方々に協力いただきまして、法改正について地方議会の議員へ説明する際のポイントなどを説明、解説していただきました。このときの参加者は約百五十名となり、報告書に沿った実効性のある法改正を実現しようと心を一つにし、本格的に各地で働きかけを進みました。
 しかし、その頃、消費者庁では、書面の電子化について改正案に盛り込むことを検討していたようです。シンポジウムでは、笹路課長はそのことには一切触れませんでした。
 書面の電子化が改正案に盛り込まれようとしていることが事実と分かり、大変重大な問題であるということから、全国消団連では、十二月二十五日に、法改正における契約書面等の電子化は拙速であり、慎重な論議を行うよう意見書を提出しました。このときは、特商法におけるオンライン完結型の特定継続的役務だけであると認識していました。
 しかし、年が明けて一月十四日の消費者委員会での消費者庁の報告により、通信販売を除く全ての取引類型や商品預託取引も含めて電子化の検討を進めていることが分かり、全国の消費者団体、弁護士会、司法書士会などからも、書面交付の電子化に反対する意見書が次々と出されていく状況となりました。
 また、一月二十日の消費者委員会のヒアリングでは、日本訪問販売協会より、書面の電子化の検討について、青天のへきれきみたいなものであって、従来そういったものの現実感がない中で、そういった議論はしてきた経緯はございませんという発言もありました。
 意見書の発出状況を私どもで把握できる範囲で取りまとめ、一覧にしていますが、五月十二日現在で百六十二団体となっています。本日、日本退職者連合も意見書を出されたということをお聞きしましたので、本日時点で百六十三団体となります。
 提出団体の大まかな内訳は、弁護士会三十三、弁護団等が九、司法書士会等九、生協連等六、自治体が五、全国知事会一、それから消費者団体、労働団体等が百となります。消費者団体の中には、日頃消費生活相談の場で相談業務をされている相談員の方々の任意の団体グループも含まれています。これほどの短期間でこれだけの団体の意見提出があった。つまり、電子化による消費者メリットより、電子化による消費者被害の拡大の方が大変懸念されているということです。
 実は、この書面の電子化問題により、地方議会からの意見書提出の取組を断念したという地域もありました。しかし、預託法の販売預託取引の原則禁止、詐欺的な定期購入契約や送り付け商法の規制強化についてはもう是非とも改正を進めてほしいということで、地方議会への請願、陳情に取り組んでいただき、全国三十の自治体において意見書が採択されています。中には、書面の電子化について、拙速な導入を避け、慎重な検討を求める旨を意見書に加えた自治体が四つありました。
 今回のような消費者保護に関わる重要な論点の、済みません、そもそも、今回の書面の電子化については、検討会の報告書にもなく、話題にもならなかった事項です。それが、いつどこでどのような議論があって今回の改正に盛り込むことになったのでしょうか。消費者庁は検討したと言いますが、例のあの規制改革推進会議の成長戦略ワーキング・グループや内閣府の規制改革推進室からの要請から本当に短い期間で、それも消費者庁内だけでの議論ではとても十分な議論とは言えません。今回のように消費者保護に関わる重要な論点の改正であれば、まず検討会を立ち上げて、消費生活相談員や専門家なども含め、慎重かつ十分に議論を積み重ねるべきです。
 私は、社会のデジタル化が進むこと全般に反対しているわけではありません。社会のデジタル化が進み、消費者の暮らしがより便利になることは大変良いことだと思います。ただし、便利になる一方で、個人情報の流出やインターネット上でのトラブルなど、デジタル社会における新たな問題への対応を同時に行わなければなりません。特に、高齢者など社会のデジタル化に対応できていない方々への対応を丁寧に行っていく必要があると思います。
 五月十二日に参議院本会議で可決、成立されたデジタル社会形成基本法の第七条には、デジタル社会の形成は国民が安全で安心して暮らせる社会の実現に寄与するものでなければならないとあります。特商法は、消費者トラブルが多発している販売類型を特定して、消費者保護を目的に規制を掛けている法律です。特商法において安易に書面交付を電子化すべきではない、このことは本当は消費者庁が一番よく分かっているはずです。消費生活相談現場を持つ消費者団体からは、もうとんでもない、電子化が可能になったらますます消費者被害が増えると懸念の声が上がっています。
 消費者庁のホームページには、「消費者庁の使命」として、「消費者行政の「舵取り役」として、消費者が主役となって、安心して安全で豊かに暮らすことができる社会を実現する。」と掲げられています。消費者庁はもっと消費者に寄り添ってください。
 契約書面の電子化については、きちんと議論、検討してから改正しても遅くありません。電子化の必要性や規制の実効性、消費者保護の確保、電子書面の交付を認めた場合の弊害など、それらについて慎重に検討してからにしてください。
 衆議院の審議では、電子メールでのクーリングオフについて、メールを発信したときに効力が生じることを明記する修正がありました。これにより、効力が生じるタイミングが明確になり、消費生活相談の現場では大変有効に機能すると期待しております。
 一方、書面交付の電子化については施行期間が一年延長されましたが、被害が大きい訪問販売や連鎖販売取引などを含め、通信販売を除く全ての取引類型が対象となる点については修正されませんでした。これだけ多くの消費生活相談員、消費者団体、弁護士会などが消費者被害の増加を危惧し、書面交付の電子化の条文削除を求めているのに、残念でなりません。この参議院の審議の中で改めて検討していただくことを心よりお願い申し上げます。
 今回の特商法、預託法の改正は消費者庁の検討会の報告書に沿った内容となっており、その趣旨の改正の実現については強く願っています。しかし、書面交付の電子化に関しては、これまで述べた経緯や各地からの意見を踏まえ、改めて条文から削除すべきであるということをいま一度申し上げ、私からの発言を終えさせていただきます。
 ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 浦郷由季

speaker_id: 2789

日付: 2021-05-26

院: 参議院

会議名: 地方創生及び消費者問題に関する特別委員会