小西雅子の発言 (環境委員会)
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○小西参考人 皆様、おはようございます。本日は、意見を述べさせていただく機会をありがとうございます。
私たちWWFは世界百か国で活動している環境保全団体でして、私はそこで二〇〇五年から、COP会議、昨年のCOP26でちょうど十六回目の参加になりますが、国内外の政策に環境とエネルギーの提言をしております。
実は、今もIPCC会議第六次評価報告書の第三作業部会中でして、今はオンライン会議になったので、この後、午後二時から夜中の四時まで参加するんですけれども、今日はせっかくですので、まずIPCCの最新の知見を踏まえた今までのおさらい、それから意見を述べさせていただきたいと思います。
まず、一ページ、おめくりいただいて、巨大に用意してきてしまったので、見開きで御覧いただければと思いますが、このままではこれから、十年後、二〇三〇年頃には平均気温の上昇は一・五度に達すると予測されています。
御存じのように、一・五度と二度の間で非常に大きな差があることが分かっております。例えば熱波ですが、一・五度だと大体、産業革命前に比べて九倍ぐらいなんですけれども、二度になるとそれが十四倍になる。それが、このまま政策を余り追加で入れないと、四度になると四十回になるということで、五十年に一度の猛暑が毎年のように起きるといったような世界が私たちが追加の対策をしなければ待っていることになるわけです。
今回、新しく分かったことが、海面上昇が一・五度と二度で差はあるんですけれども、実は、今後、一・五度、二度に抑えても海面は上昇していくんですね。ですので、六ページを御覧いただきますと、二三〇〇年には、たとえ二度に気温上昇を抑えたとしても最大で三メートルぐらい、もし四度になってしまうと七メートルぐらいまで上がっていくということが予測されています。
おめくりいただいて、今回の報告書の新しいメッセージとしては、既に私たちには、温暖化の悪影響に対して準備をすることを適応といいますが、その適応の限界を超える現象が起こっているということです。それを損失と被害というような形でパリ協定でもこれから対応することにはなっていますが、温暖化は既に私たちにとって非常に後戻りできないところまで来ている現象もあるということで、せめて一・五度に抑えようというのが今の現状ということになっています。
そのために重要なのが二〇五〇年カーボンニュートラルなんですけれども、今後十年、特に二〇三〇年までに、今大体、IPCCで、一〇年比で四五%、世界全体で削減が必要と言われていますが、この十年の削減ができなければ一・五度に抑えることは非常に難しくなるということが分かっております。
これを受けてCOP26は、これまでパリ協定は御存じのように二度未満が長期目標だったんですけれども、事実上、一・五度の方を目指すことになりました。カーボンニュートラル二〇五〇年ですね。この中でやはり石炭火力が一番の温暖化の最大要因ということで、国連の文書の中では非常に珍しいことなんですが、石炭だけを取り上げて削減方針が示されています。インドなどが二〇七〇年にゼロを言ったことによって、初めて二度未満も視野に入ってきたんですが。
次、おめくりいただいて十一、十二ページで、まだまだ二〇三〇年の各国の目標は、一・五度はおろか二度にも整合していません。ということで、これからも引上げを求められていくことになります。COP27においても今後継続的に引上げを求められるということがここで決まりました。
そして、十三ページ、温暖化の最大要因として石炭火力に言及されたんですけれども、岸田首相の演説では、日本も今回、二〇三〇年に四六%削減、さらに五〇%の高みを目指すと。しかも、途上国への追加の資金支援を表明して非常に高く評価されました。
しかし、残念なことに、次、おめくりいただいて十五ページ、再び環境NGOから化石賞というのを受賞していることを皆様は御存じだと思います。太陽光などの再生可能エネルギー普及のために火力発電が今後も必要として、アンモニアや水素などによって火力発電のゼロエミッション化を図って、それをアジアに展開していくといったようなことで、これはむしろ石炭火力を始めとする火力発電の延命策ではないかということで世界から評価されているわけです。
なぜ私がこれを説明しているかというと、次の温暖化の対策法の改正案で、事業の選定のときに非常に気をつけて国際的な基準に沿ったものを選んでいく必要があるからだと思うからです。
COP26で更に明らかになっているのが、金融界とか産業界とか、いろいろな非国家アクターの活躍です。それがあって、パリ協定がこれから推進されていくことになります。
ということで、次、十八ページからが今回の一部改正案に対する意見なんですけれども、三つ、主に述べさせていただきたいと思います。
おめくりいただいて、十九ページ。
まず、今回の改正案、これは基本的には地域の脱炭素ロードマップに沿って地域の脱炭素化の取組を財政的に支援する仕組みを立ち上げて、民間の資金を立ち上げて更に取組を強化していこうということなので、基本的に、どんどん早く進めてください、なるべく規模も拡大してと思うんですけれども、そのときにやはり気をつけていただきたいことは、二〇三〇年までに排出量をほぼ半減するということが非常に重要ですので、それに沿った事業を選んでいただくことが非常に重要になってきます。
そのためには、脱炭素化委員会の委員と事業の選定が重要になってまいります。特に、地域の脱炭素化事業というのは、今非常にゼロカーボンシティー宣言が増えて六百か所ぐらいになっているんですけれども、まだ具体策に結びついていないので後押しが必要なんですが、その後押しのときに方向性をきちっと、国際標準に沿った方向で選んで支援していただきたいなと思っております。
二十ページ、支援基準なんですが、事業の選定は脱炭素化委員会が環境大臣が定めた支援基準に基づき決定するとのことなので、支援基準を策定するのが非常にポイントになってくると思っております。
繰り返して申し上げますと、まず、二〇三〇年までに削減ができるかどうか。もちろん、今回、事業の拡大はいいことなんですけれども、これまでのエネルギー特会とは違いまして、基本的に、例えば森林とかに広がってまいりますが、基本はやはり省エネ、そして再エネ。もちろん地域の環境保全とのバランスも重要ですし、あと、適応。今、適応法ができて、地域は適応計画が進んで、私も環境省の適応の補助金の審査員をさせていただいているんですが、三年たってきて、どんどんどんどん自治体さんが能力が向上されて、適応計画が着々と進んでいくのを感じています。ですので、政策の後押しは非常に重要だと思うんです。
今、IPCCの新報告書でも言われますが、適応との、緩和とのコベネフィットのある事業というのがありますので、今日はちょっと時間がないので今詳しくは御説明しませんけれども、そういった適応とのコベネフィットでより地域にベネフィットが回るような、そういった事業を選定していける支援の基準が大事だと思っております。
もう一つ、日本の一つの課題だなと思っているんですが、日本はどうしても、温暖化対策というと革新的技術に頼る傾向があります。しかも、短期的対策と長期的対策というものが比較的タイムラインを考えずに話される傾向があることを非常に懸念しております。
二十一ページ、スライドを御覧いただきますと、例えばグリーン成長戦略なんですが、二〇五〇年の参考値として、例えば再エネは六〇%ぐらいが限界ですね、水素・アンモニア発電は一〇%みたいな、割と一つのシナリオに基づいた形で、二〇五〇年、ひいてはそこにつながる二〇三〇年というものがイメージされています。
ここで、二〇三〇年に向かって規制的措置と支援的措置が必要と書いてあって、今回の改正案で支援的措置は充実していくんだと思うんですけれども、規制的措置が日本はまだ十分に入っていないということも非常に懸念されています。ですので、やはり、二〇三〇年に向かっては、まず、今の既存の技術でできること、省エネを推進して可能な限り再エネを導入してということが基本になってくるのではないかと思っております。
例えば、二十二ページのIEAのネットゼロシナリオの技術シナリオを御覧いただきますと、IEAも、二〇三〇年半減までに必要な対策は、黄色で二〇三〇年に線を引かせていただきましたが、社会変革や既存技術の普及拡大と。例えば、建物の断熱化ですとか、車のEV化ですとか、石炭火力廃止などが挙げられます。
特に、日本でも断熱化は非常に重要なんですけれども、建築法のあれが今国会で、与野党共に反対はされていないと思うのに、是非、本当は早く、速やかに導入して省エネを進めるべきだと思うんですが、そういったことをやって、かつ、それに沿って地域も進めていくといった形が非常に重要だと思いますので、まず、そこの、今できることで半減をしていくということが非常に重要になってくると思っております。
今、日本がすごく一生懸命やろうとしている水素とかアンモニアとか、いずれ必要になってきますけれども、それは二〇五〇年に向かって必要な革新的技術ですので、それを今、強力にメインで進めることが二〇三〇年までの対策というふうには混同されないことが非常に重要かなと思っております。
続いて、おめくりいただいて、これはほんの参考までなんですけれども、二十三ページ、日本はかなり、技術に関しても国際標準からは少し離れているところがあるなと思われる例も挙げております。
例えば、トランジション戦略で、電動車というのは日本の場合はガソリン車が含まれますので、そこからの出口戦略をどう描くかといったことが示されていなかったり、あと、石炭火力にアンモニア燃焼をしていくというのは、既存の石炭火力を続けるということには役立つかもしれないんですけれども、今の水素というのは日本の場合はグレー水素で、CCUSでもなく、しかも、そのままオーストラリアとかで造って運んでくるといったような計画だとCO2削減にはつながらない、少なくとも二〇三〇年に向かってはつながらないといったことがありますので、やはり二〇三〇年までに半減していく事業の選定というところは非常に注意が必要かなと思っております。
二十五ページは、ネットゼロに向けたトランジションとしては、国際的な考え方では、今ある既存の技術で可能な限りリニアに減らしていって、でも、いずれ必要になる、除去ですね、大気中のCO2を除去する技術も必要なんだけれども、それは、今の削減を九〇%ぐらいまで可能な限りやって、残り大体一〇%ぐらいは炭素の大気からの除去でニュートラルにするというのが、カーボンニュートラルの考え方として今議論されている内容です。
ということで、事業の選定に非常に重要なのが、次、二十六ページ、脱炭素化委員会の人選でございます。お聞きすると、以前のグリーンファイナンス機構が恐らくそのままこの新しい機構になるというような話を聞いておりますが、脱炭素化委員会で事業の選定をしていくということですので、そこは非常に多様な人選が必要だと思っております。
特に、エネルギーが絡んできますので、日本の場合はなかなか、グローバルな知見を持った研究者が中央の中でなかなか数多くはいらっしゃらない状況ですので、是非、グローバルな基準で考えられる脱炭素知見に明るい研究者や、シンクタンク、NGOなども含めた人選が必要じゃないかと思っております。もちろん、地域おこしに詳しい有識者とかは当然。多様な人選が必要だと思っております。ガバナンスが非常に重要だと思っております。
続いて、二十七ページ。もう一つ、続いては、今回は国の必要な財政上の措置などに関する規定の追加ということで、自治体への支援ですね。
前回の改正のときもそうだったんですが、実は、再エネというのは自然豊かな中核都市未満の市町村に豊富にございます。本当は、再エネ目標を立てる市町村に対しては、努力義務ではなくいわゆる促進、再エネの促進区域というのもセットで設定されることが望ましかったとは思っているんですけれども、今回の支援の仕組みの中に、是非、都道府県において市町村の促進地域設定を奨励する要素を入れていただければなと思っております。
もちろん、再エネ特区においては地域の環境保全との両立を図ることも、これは、事業の選定のときにもそうですし、自治体の支援のときにも重要であるということはもう書かれていますので、これはそうだと思っております。
何よりもやはり、自治体の人材支援、これをどういうふうにサポートしていくかというのが非常に重要だと思っております。前の適応法のときもそうなんですけれども、既に人材がいらっしゃるところはすぐに立ち上がってどんどんどんどんレベルアップされていくんですけれども、全部が全部そういうわけではないので、そこにどのように人材支援をしていくかというのは、一つ、鍵を握る大きな要素だなと痛感しておりますので、脱炭素事業においても自治体の支援ということは非常に、その仕組みをつくることが重要だと思っております。もちろん、徹底してこういう支援の仕組みがありますよということをお知らせしていくということも重要だと思っております。
最後に、ちょっとここからは離れるんですけれども、本来は、温対法というのは基本的に環境省の足下でできることが書かれた法律で、各省庁の気候変動に対する施策を全体的にカバーしているものには残念ながらなっていません。御存じのように、日本の場合はエネ起源CO2が日本の温室効果ガスの九割を占めますので、重要なのは、エネルギー政策も含めた気候変動対策の政府全体での推進ができる基本法が本当は必要だと思っております。以前、基本法を各政党さんが出されていましたけれども、今こそ、パリ協定にふさわしい基本法というものも是非御検討いただきたいなと思っております。
中でも、今重要なのは日本の省エネを推進するカーボンプライシング。これがまだ、ちゃんと、規制的要素の排出量のキャップ・アンド・トレードとかが入っていません。炭素税も二百八十九円と非常に低い額ですので、国内外でこれから炭素国境調整措置とかが入ってくる中で、日本に明示的な炭素価格がないというのは日本の企業の国際競争力の方に影響すると思っています。ですので、そういったものも要るということが本当は入って、基本法というものが適応法と緩和法と併せてできるということが必要だと思っております。
中でも、次の二十九ページに基本法の中に盛り込むことが考えられる主な内容を入れさせていただいていますけれども、カーボンバジェットの概念もすごく重要だと思っております。
すなわち、CO2は非常に安定したガスなので、一回大気中に排出されると、生態系に吸収されない限り蓄積されます。蓄積された濃度に応じて気温は上がるので、結局、予算があるわけですよね、これから排出できる。そのカーボンバジェットに沿った政策、これから温暖化対策をやっていくということがきちっと入ると本当に日本の本気度も世界に伝わりますし、かつ、政策の一貫性というのもできると思いますので。今のままだったら、一・五度の炭素予算は十年以内に使い切ってしまいます。一・五度に十年ぐらい後にはなってしまいますので、是非それを御検討いただきたいと思っております。
三十一ページ、一応、イギリスがカーボンバジェットを採用しておりますので、その例を出しております。
三十二ページには、今までお話しさせていただいた意見をまとめさせていただいております。
そのほか、カーボンプライシングとかGXリーグに思うところとか、いろいろ参考資料もつけさせていただいておりますので、よろしかったら是非御参考になさってください。
御清聴ありがとうございました。(拍手)