谷口信雄の発言 (経済産業委員会)
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○谷口参考人 本日はこういう場にお呼びいただきまして、本当にありがとうございました。谷口と申します。
今日、私が申し上げたい点は、実は一点だけです。
資料の一番裏をめくっていただけましょうか。この資料の一番裏側ですね、ここに書いてあることなんですけれども、国が、地域に裨益する大きなプロジェクトを支援する政策をデザインすることが、今後の再生可能エネルギーの目標の達成のために、私はとても重要だというふうに考えております。今日はその説明をさせていただきたいと思います。
資料の一枚目、ここには一、二とあって、再生可能エネルギーの実現可能性と、また、専門的視点からの意見ということで、二番目は一番最初に申し上げたことです。
一番目については、経済産業省等が非常に詳細なデータを示しておりますので、私の方では、簡単にここはお示しするだけにさせていただきます。
まず、政府の野心的な目標である三六から三八%の実現可能性についてですけれども、これは、まず、そもそもそういうポテンシャル、賦存量若しくは利用可能な量があるのかというのを確認する必要があります。さらに、今現在の技術的なレベルからいってどの程度まで可能かというところがございます。また、加えて、社会的制約、経済的制約、これらを全て加味する、このスライドの下の方に書いてありますけれども、一と二と三と四を掛け合わせると、実は、こういった制約を踏まえた上でも目標達成は可能だというふうに考えています。
詳しい話は次のページ、再エネはどれだけあるのかというところから入っていきたいと思うんです。
これは、下に、日本には潤沢な再エネがあるという書き方をしていますけれども、エネルギーの需要というのは、右側の下の小さいところですね、一兆キロワットアワーぐらいになるんですけれども、大体この程度のエネルギーの需要に対して、ポテンシャル、実際に日本にどのぐらいあるのかというのは、ここに書いてあるように、大体七倍ぐらいはあるんですね。こういうところは非常に日本は恵まれているので、これをどれだけ引き出せるかということが実は重要になるかと思います。
次に、では、どんな再エネが有効か。
先ほどのページでいうと、太陽光と風力で恐らく九割ぐらいを担っているんですけれども、先ほど話された、グリッドパリティーに達した太陽光発電というのがまず再生可能エネルギーとしては有効かなと。
このグリッドパリティーというのは、系統電力の価格に対して太陽光発電のコストが同等以下になるということを示していまして、ただ、系統電気の方も、低圧電気、高圧電気、特別高圧電気とありまして、それぞれにグリッドパリティーは変わってきます。今一番高いコストを支払っている家庭の低圧電気に関しては、ほぼグリッドパリティーが達成してきている、もう数年前から達成してきているというふうに言われています。ただ、そうはいっても、太陽光発電の価格自体に幅がありますから、一番安い商品を販売しているところではもう既にグリッドパリティーが起きていて、しかも、それがもうビジネスとなっているということになっております。
また、洋上風力発電は、リードタイムが長いんですけれども、量が莫大なものですから、これは是非取り組む必要があると思います。
次のページ、スライドですけれども、日本では風力発電が飛び抜けて有効。
これは、左側の縦のグラフにありますけれども、ここはちょっと小さいんですけれども、太陽光発電と比べても圧倒的に大きい。さらに、その右側に書いてあるグラフは風力発電の中で陸上風力と洋上風力を比べたものでして、青いのが陸上風力、真ん中の赤茶色のが洋上風力。これを見ましても、実は洋上風力が圧倒的に高い。要は、我々が目指すべき日本のポテンシャルは洋上風力発電だということが考えられます。
ところで、世界の洋上風力発電の動きを簡単に御紹介します。
ちょっと古いんですけれども、二〇一〇年に英国政府が、今後十年間、これは今でいう二〇二〇年をめどなんですけれども、洋上風力発電を三十倍にします、そして電力需要の四分の一を補います、こういう政策を発表しています。当時のブラウン首相は、これは四十年前の北海油田の開発の始まりにも匹敵するものだと。
これは同じことが日本にもそっくり言えるんじゃないかなと、先ほどの規模感からいうとですね。要するに、日本の規模感は北海油田開発規模の洋上風力発電を持っているんじゃないかというふうに言えます。ただ、こういうことをおっしゃる方はなかなかまだ、今のところいらっしゃらないように思いますけれども。
ちなみに、最新の洋上風力発電の導入実績は、そこにありますように三十五ギガワットになっております。これは陸上を入れるともう一桁増えて数百ギガワットにはなっておりますけれども、洋上だけで三十五ギガワットに今なっています。右側にちょっと細かい数字で書いてありますけれども、ここに何が書いてあるかというと、洋上風力発電の世界最先端、最も導入しているのはイギリスである、これで十ギガワット入っています、続いて中国、こういうことが書いてあります。
次の資料ですけれども、今、世界では洋上風力が実はラッシュになっておりまして、投資額がここに集中しています。北海で九兆一千億円の投資が入ります、こういうようなニュースが、これは昨年の三月のニュースでございました。
さらに、昨年の、これはちっちゃい字で書いてありますけれども、十月、ジョンソン英首相が二〇三五年までに全電力を再生可能エネルギーで賄うという発言をしています。この発言をしている場所は洋上風力協議会という、英国のそういう洋上風力の会で発言しています。要は、英国の洋上風力でもって全電力の多くの部分を担うという、非常に野心的な提案をしているところです。
次に、これはNHKの「サクサク経済Q&A」と書いてあって、ちょっと分かりやすいので、私、この表現が好きなので読ませていただきます。
「洋上風力発電に注目が集まっているのはどうして?」
海が最後のフロンティアだからです。
再生可能エネルギーは、太陽光や陸上での風力発電を中心に進みました。しかし日本の国土は山が多く、更に大規模に導入しようとすると、適した土地は限られ、周辺の環境への配慮も必要となります。
一方、海は障害物もなく、安定して強い風が吹きます。海に囲まれた日本にとっては、洋上風力発電は大きな可能性を秘めた再生可能エネルギーだと言えます。
とても分かりやすく、NHKがこんな解説をしていました。
それで、私が今日の結論で言った視点からいうと、そのために何が必要かというと、実は地域の裨益を前面に打ち出す政策デザインが必要ではないかなというのを逆に思っています。
なぜかというと、実は次の、現場でどうなっているか。
私は現場を回るのが好きで、元々私は地方公務員だったんですね、現場からいろいろ物を発想して、政府に提案なんかもしていたこともあったんですけれども、例えばメガソーラーに反対する運動というのは、もう全国的に、大幅に進んでいます。それどころか、運動ではなくて、反対するような、反対と言っては言い過ぎですけれども、抑制する条例があちこちでできているんですね。すごくそれに対して、私はある意味、危機感を持っています。
なぜかというと、地域が、もしかしたら、それだけ被害を受けるというのが違っているかもしれない、それはちょっと後で話したいと思うんですけれども、もう一つ、洋上風力発電についても同じでして、これも全国で反対運動が非常に起きています。
そして、どういうことが起きているかというと、再生可能エネルギーはそもそも地域に利益をもたらさないというような発想がありまして、それは利益をもたらさないというだけで済まなくて、そもそも再生可能エネルギー自体がおかしいんじゃないですかと。ここに書いてありますね、風力発電はエコでもない、クリーンでもないと。こういうメッセージすら出てきているというのが現実です。
これは非常に怖いことで、こういう方々が実は増加しているんですね。これは日本の再生可能エネルギーの展開にとても大きな問題をもたらすと思います。
何年か前ですけれども、青森県の風力発電の売上高が青森県のホタテガイの売上高と同じ程度だったんですね、たしか九十億円ぐらいで。ところが、そのうちの九割は東京資本なので、そこで上がった収益はほとんど東京に返ってしまう。これを東奥日報という新聞社がエネルギー植民地だということを書いていたんですけれども、やはり実際そうなってしまいつつある。そうすると、やはり地域から反発が起こるのは当然ですよね。しかも、それは地域が利益を得るチャンスを奪っているんですよね。
じゃ、どうしたらいいかということで、地域の再エネの開発をするときに地域裨益からどう考えるかというと、一つの例として、デンマークの、地域と地域社会を基礎とする方針、もう随分古い方針なんですけれども、これで、地元所有のルールがある。
これが非常に面白いんですね。所有する土地に吹く風のエネルギーを利用する権利は土地所有者のものですということを、政策として打ち出しているんですね。この背景には、元々、自然は地域の共有のものだ、そういう観念が地域にあったようですけれども。
次に、デンマークの方式はどうやったかというと、風車で発電した電気は高く買い取りますと。つまり、風力発電をやれば必ずもうかるという形にした上で、風車から三キロ以内の人しか建てちゃいけないです、とんでもないみたいな、こういうルールを作ったんですね。
その結果、どういうことになるか。一番下にあるような図にあるように、もう全国的にばらばらにくまなく風車が建っていった。もちろん、三キロ以内ですから、地域の人にはお金が落ちていくということをしたわけです。
似たように、ドイツでは、コミュニティーパワーという概念がやはり地域のために考えられて、地域の者が事業の大半若しくは全てを所有しているという所有権、それから事業の意思決定は地域の組織によって行われるという経営権、それから利益の大半若しくは全て地域に分配されるということの受益権、このうち二つを満たせればコミュニティーパワーと呼びますというメッセージを、ドイツの風力発電協議会というところでつくって、これを進めようとしたということがあります。
それが今進んできて、次の、二〇一六年、ウィンドパークへの自治体・市民参加法という法律が作られまして、メクレンブルク・フォアポメルン州という、バルト海に面した、リトアニアとか近いところの州なんですけれども、ここに、市民による風力発電への投資参加を促す法律が施行されました。
どういうことかというと、その次のページに詳細が書いてありますけれども、一番、風力発電の開発事業者というのは投資総額の約二割を地域出資に提供する義務というのをつくりました。
これはどういうことかというと、事業が来れば、風車から五キロ以内に住む人は出資に参加する権利を持つ、これは一〇%までの権利と、それから、五キロ以内に土地を持つ自治体に一〇%、合計二〇%を出資枠として提供するという制度をつくりました。
ただ、リスクがあるので、リスクを回避するために、風車から五キロメートル以内の自治体が毎年この風力発電事業で得られる利益の一〇%を受けるということでひとつ免除をしましょうとか、当該住民に、五キロ以内の住民にですね、貯蓄商品、これは言うと定期預金ですね、定期預金を作っちゃいましょうと。
例えば、風力発電事業者は、利益の一〇%を毎年適当な銀行に一旦預け入れ、その銀行は、該当する五キロメートル以内の市民がそこで定期預金を組むと、三年から十年で満期で返済、その利子を、毎年繰り入れられる風力発電の利子で賄う。非常に高い利子ができるのではないかというのを、条例で義務づけているものでさえあります。
これは多分、今のところ世界のトップランナーかもしれませんね。二割ぐらい地域に落としてもいいんじゃないかなということもあります。
さらに、これを地域自然エネルギー享受権といったもので条例化したのが神奈川県松田町で、地域の再エネを地域の利益とする地域主導型再エネルギー事業を位置づけています。こういう中で、先ほどのドイツのコミュニティーパワー原則を進めるものを、地域の自治体が支援しましょうという条例を作っています。
もう一つ、裨益の意味をもう一回かみ砕いて言うと、地域に裨益する取組とは、一言で言えば、事業の収益が地域にとどまることです。地域における投資で収益が出て、地域の中で所得として回すことが一番の根幹です。これは、経済的にも、乗数効果とかいって、非常に効果が高い。例えば、十億円の収益があったら、それが三十億円になっても地域で回っていく、そういうのが試算されています。
これのモデルとして、私、すばらしいなと思ったのは、経済産業省が地域共生型再生可能エネルギー事業顕彰というのをやっていまして、たしか、これの第一号かなと思うんですけれども、風の松原風力発電所というのが、秋田県の能代市で表彰されました。これは、何と百六十億円ですよ、事業費。これは、普通、地域の人ができるとは余り考えられないんですけれども、百六十億円の事業費を、地域の人だけの出資、エクイティーで賄い、地域の金融機関からの借入れ、デットだけで賄った、純粋一〇〇%地域資本の、地域借入れの事業でやっています。これぐらいできるんですね。
面白かったのは、二億円を、能代市民に限った出資で賄いましょうといったら、年利息が四%というすばらしい利息だったもので、募集の三・六倍、応募があったんですよ。これはもう市民が非常に高い関心を示すことができる。こういうものこそ再生可能エネの後押しになるんじゃないかなと思います。
実は、これは第二期が今検討されていまして、第二期は、市民から集めるお金を一桁上げて、何十億円、数十億円で計画しています。
こういうことで、地域に眠っているお金って非常に大きいんですね。メガバンクは日本の四割のお金を持っていますけれども、地方には全体の六割のお金が眠っていますから、それを引き出すことが、海外の投資家に侵食される前に引き出すことが重要かなと思います。
私の最後の結論ですけれども、こういった、風の松原風力発電事業で、地域の力で、地域に裨益する大きなプロジェクトも実施可能です、これは。たまたまここが例外的じゃなくて、こういうものは全国的に広げることは可能だということが実証されたと思うんですね。
こういったことを、国が、地域に裨益する大きなプロジェクトを支援する政策、こういったものをデザインすることが、今後、再生可能エネルギーの飛躍的拡大には是非重要かなと思いますので、是非皆様、よろしくお願いいたします。
ありがとうございました。(拍手)