遠藤典子の発言 (経済産業委員会)
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○遠藤参考人 おはようございます。
私、最後になりましたが、意見を申し上げさせていただきます。
今回の五つの法律改正の目的は、二〇二一年十月に閣議決定されましたエネルギー基本計画を実現するための制度整備でありまして、この改正自体に特に異論を挟むものではございません。
しかしながら、この法案が策定された二〇二一年末までにはロシアによるウクライナ侵略は起きておらず、脱ロシアを図るグローバル市場の混乱とか、またエネルギー資源を輸入に依存する我が国日本への影響については、この法案に反映されていません。今後、長期化が予想されるエネルギー需給逼迫、価格高騰を踏まえた追加的な制度措置が必要であることは申し上げるまでもないと考えております。
その上で、今回改正対象となっております供給構造の転換に資する高度化法及び安定供給の確保に資する電気事業法の改正案について、私の方から意見を申し上げさせていただきたいと思います。
一点目、需要サイドはもちろんなんですが、供給サイドにおいても、非化石エネルギーへの転換というのは、グローバルな地球規模課題解決に向けて取り組む我々先進国としての責務であると思います。また、カーボンニュートラルとエネルギー自給率の向上のためには、そういう観点では、再生可能エネルギーの拡大を唱える声も大きいと思っております。
しかしながら、蓄電池の技術の高度化、あとは普及による価格の低廉化がなされていない現状においては、再生可能エネルギーを発電源として使用した場合、今再エネの主力であります太陽光、風力などの変動の再生可能エネルギーの調整力は火力発電が担っているというのが現状であります。
その意味では、今回、この高度化法の枠組みの中に、水素、アンモニア、CCS火力を非化石エネルギー源として認めることというのは非常に合理的であると考えております。今は水素、アンモニア、CCS火力という区分なんですが、水素、アンモニアを混焼する火力についても非化石電源としてカウントする設計が追加的に必要であるというふうに考えております。
ちょっとアンモニアを例に取りまして御説明したいんですが、アンモニアは、製造とか輸送とか貯蔵において既存の技術を活用することができます。仮に石炭火力発電に二〇%のアンモニアを混焼して発電をした場合の価格というのは、試算がされておりまして、十二・九円、キロワットアワー当たりということになっております。石炭火力の発電価格の約一・二倍ですので、これは吸収し得るコストかなと思われると思います。
今時点で大手の電力事業者が検討しているアンモニアの混焼は二十七基、二千百八十万キロワットです。皆様よく御存じの、東京電力と中部電力の発電の合弁会社であるJERA、これが二〇二〇年後半に運用開始をするというロードマップを示しています。
もっとも、この二十七基が二〇%の混焼を実施した場合なんですが、年間一千万トンのアンモニアが必要になります。現在、世界市場で流通している、貿易されているアンモニアの量というのは二千万トンなので、その半分を僅か二十七基で使い切ってしまうということになってしまうんですね。
つけ加えれば、現状は、もちろん再生可能エネルギーからアンモニアを作ることもできるのですが、今は天然ガスが主に使われています。ということですので、今回のウクライナの侵略を経た第一・四半期、つまり三末のアンモニア価格というのは、二〇二〇年の夏に比べて、アジアで二・七倍、北米で四倍、欧州は五倍に跳ね上がっています。
ですので、つまるところ、水素、アンモニア、CCSへの転換、重要なんですが、ここにはやはりまだ、コストの圧縮であるとか技術革新であるとかサプライチェーンの確保など、乗り越えるべき課題というのはまだまだ山積しているという認識でございます。
二点目、安定供給につきまして、先生方のお手元に、私、図をお送りしております。
最初のページの、ベースロード電源が供給逼迫の構造要因にというチャートを見ていただきたいんですが、これは先ほど大橋委員も御指摘をされておられましたが、この間の、二〇二〇年の年末から始まった需給の逼迫を経てどういうことが起きているのかということを調べたものなんです。
これはデュレーションカーブといいまして、一年間八千七百六十時間の需要を大きい順に並べてあります。もちろん、供給力は平均補修でカウントしているので、実際の需給というものとは異なるんですが、よく電力会社の方が稼働状況を把握したり燃料の調達のための状況把握のために使うデータです。
右側は、震災前、二〇〇九年の状況のバランスです。ベースロードとして原子力、そして水力、石炭が機能しているというのがよく分かっておられると思います。再生可能エネルギーが入ってきたときの調整力、先ほど申し上げました、負荷の調整を行うためにLNGが活躍しておりまして需給を調整しているという、これは原子力が三十四基動いていた状況のときのデュレーションカーブです。
左側は、二〇二一年一月現在、原子力が四基しか動いていないときの状況なのですが、ベースロードに石炭がここは出ていかなくてはならない、それはなぜかというと原子力が動いていないからということで、しかも、LNGがベースロードまで入り込んで、全体の四二%の活躍をせざるを得ない状況になっている。LNGへの負荷が非常に高まっているということがお分かりいただけるのではないかというふうに思っております。
これが電力の需給の状況なんですけれども、二枚目の資料を見ていただきますと、これは調査室の方からも出されているものでございますので、だんだん火力発電の供給能力が減少傾向にあって、石油の火力発電所の廃止が継続しているということと、LNG、石炭においても廃止火力というものがどんどん出てきている。稼働率は稼働率で、再生可能エネルギーが入ってくる分、下がってくるわけですけれども、何よりも、電力自由化、電力システム改革が行われる中で、やはり電力事業者も効率化を求めるということで、ある種、老朽火力であるとか採算に満たないような火力の停止がどんどん進んでいく状況にあるということです。
二〇三〇年には、国内の石炭火力の約三〇%が運転後四十年を迎えます。ですので、四十五年経過した電源は廃止と仮定するという前提でこの表も作られていますが、廃止の設備というのはどんどん増えていくという状況になります。
また、これも先ほど大橋委員の方から御指摘がありましたけれども、今年の冬の深刻度は、先生方も大変強い危機感を抱いておられると思うんですが、深刻でして、夏は東北、東京、中部で三・一%ということですが、二〇二三年の一月の東京というのは、予備率がマイナス一・七です。中部以西も二・二%です。
電力の自由化の前は、これが効率的だったかという話にもなるんですが、予備力というのは、大体一〇とか、そのぐらいあったわけですね。今、三%で、これはよかったねという話になっているのですが、三なんていう数字も、極めて綱渡りの状況にあります。
これも言うまでもありませんけれども、電力供給の途絶というのは、国家的な危機でありますし、国民の生死に関わります。そういう状況を今迎えているということで。
今申し上げている数字は、ウクライナ侵略後の燃料調達リスクを反映されたものではありません。ですので、LNGの争奪戦に、それこそ、今、天然ガスをパイプラインでロシアから供給を受けていた欧州がLNGの調達にシフトしてくる中で、マーケットはLNGを中心に非常に逼迫をしていくということになってくる中で、この影響度というのはもっと深刻なものになってくるというふうに予想されます。
ちょっと三枚目を見ていただきたいんですけれども、これはJERAに提供いただきました数字です。
LNGの長期契約の量というのが、左が日本、中国になりまして、市場がこの五年間ぐらい非常に安定をして、低位安定をしておりましたので、当然ですけれども、長期契約というものを結んでいないというふうな状況が続いておりました。一方の中国なんですが、これはウクライナの侵略をまさか分かっていたのではないのかと思われるぐらいに、二〇二一年に長期契約を積み増しているという状況です。
つまり、今後のエネルギー資源の需給の逼迫が考えられる中で、日本の安定供給に資するような資源の調達サイドでも危機感がますます増しているというふうな状況になっております。
短期的には、やはり、休止予定火力の運転を要請するとか、原子力再稼働に向けた新規制基準適合審査を加速していただくとか、そういったような追加の供給力の対策が急務だと思います。
長期的には、非化石電源であり自立電源である原子力発電のリプレースを含めて、エネルギーのインフラ投資が着実に、電源開発投資が着実に行われるための制度設計が必要であるというふうに思います。
スリーEプラスSというのは、エネルギー政策の要諦ということで、私もエネルギー政策を専門にしておりますので、いつもそれが非常に、金科玉条のようにあるわけですけれども、経済が縮小してしまえば、CO2の排出量というのは抑制されます。そういう意味では、最も優先されるべきは安定供給であります。
去年の十月にエネルギー基本計画というのを策定されたんですが、私は、エネルギーの安全保障戦略というものを別途緊急に策定、構築すべきであるというふうに考えております。イギリスなどは既に、その安定供給の戦略を打ち出したばかりです。
やはり、具体的には、戦略的予備力を確保するための、総括原価に類似した事業予見性を確保する制度、現実的な非化石電源移行のためのいわゆるトランジションのファイナンスの確立をするということ、それで原子力のリプレースのための諸制度を整えるということ、これが非常に重要な課題になってくるというふうに思っておりますので、また、今回の改正にとどまらない議論を先生方には是非お願いをしたいというふうに考えております。
私の方からは以上でございます。(拍手)