赤嶺政賢の発言 (憲法審査会)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。
緊急事態条項について、幾つか意見を述べます。
今、大規模災害や感染症の大規模な蔓延を理由に緊急事態条項が必要だという議論がされていますが、東日本大震災でもコロナ禍でも、憲法に緊急事態条項がなかったから対応できなかったという事態は起きていません。
東日本大震災で被災した四十二自治体の首長に行ったアンケートで、憲法に緊急事態条項がなかったことが人命救助の障害になったと回答した方はいませんでした。むしろ、震災の教訓は、災害時には地方にこそ人、金、権限が必要だということです。
コロナ対策も、地域の感染状況をよく知っている自治体が対応し、国は財政や物資といった支援を行うことが重要です。現場の医療スタッフからは、緊急事態条項があれば感染対策や命を救う仕組みがどう機能するのか、具体的な道筋が見えないと疑問が出ています。災害や感染症対策のために緊急事態条項を設け、国に権限を集中するというのは、筋違いの議論であります。
内容も問題です。
まず、内閣による緊急政令や財政処分です。
これは、国会の立法権を奪い、内閣に巨大な権限を与えるもので、三権分立や基本的人権の保障など、憲法の原則を脅かす憲法停止条項です。国会が関与できるようにすればよいという議論がありますが、憲法に例外を認めることは常に濫用の危険があるというのが歴史の示すところです。
戦前、最も民主的だと言われたワイマール憲法は、大統領の非常権限も停止できる人権条項を明示し、国会が要求すればその効力を失うとしていました。しかし、時の政権がこれを拡大解釈し、連発することで、国会は立法権を奪われ、機能不全に陥り、ナチス独裁政権を誕生させることにつながりました。
明治憲法の緊急勅令も、公共の安全を保持し又はその災厄を避くるため緊急の必要がある場合、発することができ、議会が承認しなければその効力を失うとしていました。田中義一内閣は、これを濫用し、議会での反対により審議未了で廃案になった治安維持法の重罰化改正案を、議会が閉会した後に勅令によって成立させたのであります。
緊急事態条項は常に濫用の危険と隣り合わせだというのが歴史の教訓であります。
次に、国会任期の延長についてです。
日本国憲法十五条一項は、「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。」と定め、国民が国政に関する最終的決定権者であると、その国民主権の原理を徹底しています。
そして、衆議院の任期を四年、参議院は六年とし、三年ごとの半数改選とすることで、定期的に民意を国政に反映させ、権力を民主的に統制することを求めています。国会議員の任期延長を認めることは、国民の参政権を侵害し、国民主権と民主主義をゆがめることにつながります。
災害や感染症などで選挙ができなくなることを想定し、任期延長が必要だという議論について、先ほど法制局の説明にありましたマッケルウェイン教授は、次のように言っております。国会議員の任期延長は、緊急時に対応できず、国民の支持を失った政府が政権を維持することを可能にしかねないという本質的な危険がある、このように指摘しておられます。ましてや、内閣の一存で任期を延長できるなど、権力の統制を幾重にも幾重にも緩め、時の政権の延命を認めようというものであり、許されません。緊急時こそ、国民が信任した政権の下で対応することが重要であります。
法制局の資料にあるように、各国の緊急事態条項は、主に戦争を対象としたものです。特に議員任期の延長については、例えば、ドイツ、イタリア、カナダ、リトアニアなど、多くの国が戦争時に可能であるとしています。
歴史的にも、国会議員の任期延長は、戦時に挙国一致体制をつくるために用いられてきました。日本では、戦前、一九四一年に、衆議院の任期が一年延長されました。その理由は、国民を総選挙に没頭させることは、不必要な議論、摩擦競争を誘発し、甚だ面白くない結果を招くため、今日の緊迫する時局において総選挙を行うことは適当ではないというものでした。その下で戦争翼賛体制がつくられ、太平洋戦争へと突き進んだのであります。
この反省から、日本国憲法は、政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意し、制定されたのであります。この歴史の教訓を重く受け止めるべきです。
以上で発言を終わります。