國重徹の発言 (憲法審査会)
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○國重委員 公明党の國重徹です。
まず、憲法改正国民投票のネット広告規制について簡潔に意見を述べます。
現行の憲法改正国民投票法には、テレビやラジオのCM規制はありますが、ネット広告に対する規制は全くありません。もっとも、ネット広告費は、令和元年にテレビ広告費を上回り、令和三年には、マスコミ四媒体と言われるテレビ、ラジオ、新聞、雑誌の広告全体を上回る市場規模にまで至っています。ネット広告の影響力は、法制定時に比べ、格段に大きくなっています。
このようなことなどから、ネット広告にも何らかの規制が必要ではないかとの意見があり、その問題意識は共有します。
他方で、事業者に対して法的な規制をするとしても、広告主の広告がネット上の媒体に掲載されるまでの間に多数のレイヤーが介在し、その中には海外事業者やアウトサイダー事業者もいることから、その実効性には課題が残ります。
また、インターネットは、テレビとは異なり、各個人がいつでも自由に発信できるという特性があるため、国民投票においてネット広告のみを規制しても、インターネット全体で見たときに、その効果は限定的ではないかとの疑問も生じます。
このようなことも踏まえ、ネット広告に関する論点を整理し、集中して議論した上で、一定の結論を出す必要があると考えます。
さらに、このような国民投票におけるネット広告規制等の問題は、デジタル社会において民主主義をいかに守るかという点で、国民投票に限定されない、大きな観点からの議論につながります。
デジタル技術の進展に伴い、利用者の閲覧、購買履歴等のデータから、当該利用者の感情や認知傾向などをAIによって詳細に分析し、個々人に合わせたネット広告を配信したり、それぞれの利用者が見たいであろう情報を優先的に表示するような手法が取られています。
このようなことにより、個人の自由な意思形成過程が実質的にゆがめられたり、多様な意見、情報に触れることができなくなる結果、選挙や国民投票の公正性が損なわれ、民主主義に悪影響を及ぼすのではないかといった懸念が指摘されています。
また、デジタル化の進展は、人権保障の点でも新たな懸念を生じさせております。
例えば、憲法十三条の個人の尊重に関して、個人の意思形成過程への働きかけによって自律した個人が崩されるおそれ、十九条の思想及び良心の自由に関して、自由な意思形成過程が誘導されるおそれ、さらに、二十一条の表現の自由に関して、健全な言論空間を維持できなくなるおそれなど、憲法に規定された権利が真に保障されているのか、立ち止まって検討しなければなりません。
この点、欧州では、デジタル社会における人権や民主主義を守るための様々な取組がなされています。例えば、EUの憲法と言われる欧州連合基本憲章には八条で個人データの保護を定め、GDPRでは、この個人データの保護を前文で引用した上で、プロファイリングに対して異議を唱え、中止させる権利など、明確に規定しています。
また、アメリカは、表現の自由を手厚く保護してきた伝統から、言論に対し国家は極力介入すべきではないという考えの下、プラットフォーム事業者に対する規制にも消極的であると理解されてきました。しかし、近年はプラットフォーム規制が議論されるようになり、変化が見られます。
このような世界の状況、潮流も踏まえ、日本においてどのような対応を取るべきなのか、憲法の観点からの議論を今まさに行うときであります。
この点に関して、デジタル社会において個人の自律性を維持するためにも、人間中心のデジタル化の推進を確実にするためにも、情報自己決定権や自己情報コントロール権といった権利の憲法上の位置づけ等を明確にすべきと考えます。
憲法十三条の規定の中に情報自己決定権のような権利を読み込むことができるという議論もあるでしょうし、現行憲法で読み込めるとしても、権利を明確にするために改めて規定すべきという考え方もあり得ます。この辺りは当審査会において、デジタルと憲法に詳しい有識者を参考人として招致するなど、議論を深めていく必要があります。
その上で、情報自己決定権を憲法に規定する、しないにかかわらず、憲法上保障された権利、憲法的価値を法律レベルで具体化し、デジタルに関する法制を体系化することが、国民の権利の保護、ひいては民主主義を守ることにつながるのではないでしょうか。
この点、例えば、個人情報保護法では個人の権利利益を保護することを目的とすることが定められていますが、この個人の権利利益の内容は不明確であると指摘されています。この個人の権利利益に情報自己決定権を読み込むように捉え直し、個人情報保護法をデジタル関係法制の憲法、基本法と位置づけて、デジタルに関する個別法全体の指導理念とすることも可能かもしれません。また、デジタル社会においても守られるべき国民の権利を明記する基本法を新たに制定し、情報自己決定権などを規定することも考えられます。
このように、法律に規定することによって権利保障の実効性を高めていくことも併せて検討していきたいと考えております。
データの利活用等によるデジタル社会の推進は、日本の諸課題の解決や国民の生活の質を向上させていく上で極めて重要です。他方で、デジタル化の進展に伴い、憲法に規定されている権利が損なわれている状況があるのであれば、その状況を正していくのも当然であります。データの利活用と権利保護とのバランス、この視点から、今後も真摯に検討を重ね、当審査会における議論を深めていくことを最後に申し添え、私の意見表明といたします。