國重徹の発言 (憲法審査会)

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○國重委員 公明党の國重徹です。
 安全保障に関する我が党の意見につきましては後の自由発言において行いますので、私からは、デジタル社会と憲法について意見を申し上げます。
 急速に進展するデジタル社会において人権や民主主義をどのように守るのか、この極めて重要なテーマについて、憲法審査会で議論をすべきという意見が今国会では多く述べられてきたように思います。私もその旨述べてまいりましたが、デジタル化の進展による社会経済構造の大きな変化に対応するための憲法論議、デジタル社会において人権保障や民主主義をどう強化していくのか、このことを含んだ未来志向の憲法論議を深めていく必要があると考えます。
 まずは、当審査会において、この問題に詳しい有識者を参考人として招致し、御意見を伺うことを改めて提案したいと思います。
 憲法論議においては、時代や社会の変化を踏まえた上で、個人の尊重原理を始め、憲法的価値が実社会で反映されているのかどうか、この視点で検討を行うことが重要です。この点、デジタル技術の飛躍的な進展は、社会の持続可能性を妨げる根本的な諸課題を改善し、一人一人が人間らしく幸福に生きられる社会の実現に寄与する反面、これまでになかった憲法上の様々な論点を生じさせていると指摘されています。
 例えば、AIは、個人そのものではなく、その個人が属しているセグメント、共通の属性を持つ集団を見てその個人を判断するところ、このようなAIによる評価のみによって人生が左右されることになると、十三条の個人の尊重が侵害されるおそれ、AIが読み込むデータの偏りやAIのアルゴリズムのブラックボックス化によって、十四条の平等権が侵害されるおそれがあるという指摘があります。
 また、AIのプロファイリングに基づいたマイクロターゲティングによって自律的な意思決定が脅かされ、十九条の思想及び良心の自由が侵害されるおそれ、そして、これが政治的に利用された場合には、選挙や国民投票の公正性が脅かされ、民主主義に悪影響を及ぼすおそれがあるといった指摘もあります。
 さらに、デジタル社会においては、デジタルを使いこなす能力が個人の生き方や在り方に大きな影響を与えることになります。そのため、国家には、デジタル社会における個人の生き方などをサポートするインフラの確保や権利の整備を行う責務があるといった指摘もされています。
 このような指摘に対し、憲法的価値が実社会に反映されているかという観点から検討し、反映されていないのであれば、その状況を正していかなければなりません。その際、課題は何か、どのような対策が考えられるのか、その対策において憲法改正は必須なのかという思考経路で検討することが有用と考えます。
 情報自己決定権や自己情報コントロール権を例に考えてみたいと思います。
 先ほど述べました個人の尊重原理が侵害されるおそれなど、これらの課題への対策として、情報自己決定権や自己情報コントロール権の確立が必要であるという指摘があります。私も大いに議論していくべきと考えます。
 ただ、この議論は、憲法改正に必ずしも直結するわけではありません。情報自己決定権や自己情報コントロール権は、憲法十三条後段の幸福追求権の解釈から導くことができるという見解もあります。当審査会においても、オンライン国会に関して、憲法五十六条一項の出席概念の解釈が議論されたところです。
 まずは、このような解釈について議論をし、それでは不十分と考えられる場合に、憲法上、新たな根拠条文をどのように創設するかを検討すべきであります。そして、課題の具体的な解決は法律レベルで図られることから、憲法上の情報自己決定権、自己情報コントロール権を考えるに当たっても、個別法を含めた法体系の全体像を踏まえた議論をしていかなければなりません。
 そこで、まずはその全体像を整理するために、憲法上保障された権利、憲法的価値とデジタル関係の法制がどのように結びついているのか、デジタル関係の法体系をマッピングすることが必要になります。
 その上で、情報自己決定権や自己情報コントロール権について、憲法解釈で導くか、憲法に新たな規定を創設するかにかかわらず、基本法のような、憲法附属法あるいは憲法具体化法を新たに制定して憲法上の権利を具体化する、そして、その下に個別法で具体的な解決策を図る、こういった法体系を構築することも検討していきたいと考えています。
 この点、EUでは、本年一月に、デジタル時代に必要となる権利等を掲げた、二十一世紀の人権宣言とも評価される、デジタル時代のデジタル権利及び原則に関する宣言案が公表され、今後、欧州議会等で審議される見込みです。この宣言案には、自己情報コントロール権が明記されているほか、人間をデジタルトランスフォーメーションの中心に置くことなどが掲げられています。
 このような諸外国の取組を参考にして、デジタル社会においても守られるべき国民の権利を明確にしていくことを検討していきたいと思います。
 以上申し上げたとおり、個別法を含めた法体系の全体像を踏まえて憲法レベルの議論を行い、その上で憲法上の権利を具体化する、このステップを踏んで検討を進めるのが適切と考えます。
 デジタル技術の進展は、人権保障や民主主義にとってこれまでになかった危険をもたらすと同時に、人権保障や民主主義を深化、強化させていくためのチャンスにもなります。このことを強く意識し、引き続き、当審査会において真摯な議論を行っていくことを申し述べ、私の意見表明といたします。

発言情報

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発言者: 國重徹

speaker_id: 6432

日付: 2022-05-19

院: 衆議院

会議名: 憲法審査会