吉田奨の発言 (憲法審査会)
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○吉田参考人 ただいま御紹介にあずかりました一般社団法人セーファーインターネット協会専務理事の吉田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
本日は、このような厳粛な場に参考人としてお招きいただきまして、誠に光栄に存じます。私の知見がお役に立つようであれば幸いでございます。
最初にお断りしておくこととして、当協会は、インターネット広告に係る問題は取り扱っておらず、知見を有しておりません。そのため、今回の招致をお受けするに際し、広告に関する御質問を頂戴してもお答えできない旨、事務局を通してあらかじめお伝えしているとおりでございます。この点、御承知おきください。
さて、スライド三枚目でございます。
インターネットが出現した意味の重要なものの一つは、それまでマス、つまり広く一般大衆を対象としたメディアに限られていた言論公表の場を個人にもたらしたということであって、原則的には民主主義にとって非常によいことであると捉えております。ただ、表現の自由を大前提としつつも、この後御説明いたしますように、他の法益との調整を要する場合があり、インターネットの自由な言論空間を守るために、当協会はその悪用を抑える活動を広範囲に行っております。
近年の具体的な活動ですが、海賊版サイト対策における著作権権利者と情報通信事業者との民間協力を推進する取組、こちらは通信の秘密に抵触するブロッキング以外の施策での解決を模索しております。また、誹謗中傷投稿に関する被害者ホットラインの運営及び任意開示の促進施策を手がけております。
そして、ディスインフォメーション対策フォーラムを二年間にわたり開催し、この三月に報告書を公表いたしました。ここでの考察が憲法審査会の議論にも資すると考えましたので、これに即して御説明申し上げます。
次のスライドに、ディスインフォメーション対策フォーラムの構成員を記載しております。
御覧のとおり、プラットフォーマーを含むインターネット事業者だけではなく、憲法学者、社会学者、弁護士、行政府、ユーザーの皆様など様々な方々に御協力を賜り、オブザーバーとして、日本新聞協会様、日本放送協会様、日本民間放送連盟様にも御参加いただき、それぞれの立場から忌憚なき御意見を頂戴しながら、議論を深め、時には公開シンポジウムなども開催しながら、公明正大に、透明化を図りつつ報告書を取りまとめ、対策の方向性を確立したものです。
スライド五枚目でございます。
ディスインフォメーション対策フォーラムの報告書では、既にプラットフォーマーが自主的に取り組んでいる施策について触れています。ニュースポータル、SNS・交流サイト、インターネット検索においては、コロナワクチンについてのデマの横行を契機に、科学的に正しい情報をいかに国民に効果的に届けるか、各社が競い合うように工夫を凝らしました。例えば、インターネット検索においては、ワクチンに関する用語を用いて検索をした際に、通常の検索結果とは別に、その上部に、厚生労働省による情報や信頼できる医療専門家が提供するコンテンツを配置しています。
インターネット上に情報があふれていても、人々が自由に使える時間が限られている中では、いかに目立つところに正確な情報を載せるかということ、いかに自然な動線の中に正確な情報に触れる機会を現出できるかが肝要となります。また、一口にインターネットといっても情報摂取のパターンは多様ですので、それぞれのサービスの特徴に即した方法を模索する必要があります。その意味で、これらはいまだ確立されたものではなく、試行過程にあるというふうに考えております。
スライド六枚目でございます。
フェイクニュースに対抗するための今後の展開についてでございます。
一つ目は、情報空間の健全性向上施策です。適切なファクトチェックの実施、ファクトチェック記事の配信。二つ目は、国民のリテラシー向上施策。三つ目は、これら施策の担い手をどう育てるかについて言及しています。とりわけ、先ほどのスライドで、正確な情報を確実に届ける方法について御説明いたしましたが、ファクトチェックした結果の記事についても、その届け方を工夫する必要があります。ファクトチェックについては、この後、FIJ様から詳しく御説明があるものと承知しております。
最後のスライドでございます。
これまでの情報環境は、報道機関、マスメディアの皆様に担っていただいており、相対的には安定したものであったと思います。インターネットが出現して、玉石混交の状態になった中で、とりわけ近年、世界的には民主主義の脅威となるようなフェイクニュースの横行が報告される中で、日本も社会を構成する各機関が協力して、偽情報に強い社会の実現を図っていく必要に迫られていると考えます。
フェイクニュース対策の主眼が、コロナ禍のワクチンデマなどからウクライナ情勢を契機とした安全保障論に移り、今また国民投票時の情報の在り方という視点が出てきたかと考えます。スライドの五枚目でお伝えしたような正確な情報を的確に届ける工夫は、一つの方策として機能するのではないかというふうに考えます。同様に、しかるべき時期が到来すれば、ファクトチェックの重点対象項目の一つとすることも考えられるのではないかと思います。
国民投票や憲法改正に係る正確な情報についても、こういったスキームを活用することによって対策とすることができると思いますが、どういったサイトに誘導することが最も適切なのかについては、実際にこのような仕組みを実施するか否かも含めて、最終的に各民間事業者が自主的に判断することとなります。この点、我が国においても、プラットフォーマーによる施策の透明化の促進は潮流となりつつありますので、社会的なコンセンサスに従うよう、公明正大な議論と手続を経て実施に至るものと考えております。
これらの活動に共通することとしては、何か一つの担い手や一つの策で、副作用なく問題だけを一〇〇%解決するという手法は存在しないということです。常にもどかしさを覚えながら、日本国憲法で保障された国民の表現の自由を確保しつつ、他の法益との調整を図っていかねばならないというふうに考えます。
私からは以上でございます。