石橋哲の発言 (原子力問題調査特別委員会)
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○石橋参考人 石橋哲でございます。本日は、発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。
今、画面に出していただきますけれども、先生方のお手元にも資料をお配りいただいております。
今日は、二〇二二年五月十日。東日本大震災から四千七十八日、国会事故調の発足から三千八百六日、国会事故調報告書の御提出から三千五百九十六日経過しました。前回、当委員会で発言の機会をいただきましてから三百七十八日目でございます。
私、当委員会で発言の機会を頂戴するたびに申し上げているところでございます。国会事故調報告は、結論と提言の中で、問題解決に向けて今なお多くの犠牲を伴って進展、拡大している人災である福島原発事故を起こした真因、組織的、制度的問題を指摘して次のように述べております。
これらの背後にあるのは、自らの行動を正当化し、責任回避を最優先に、記録を残さない不透明な組織、制度、さらにはそれを許容する法的枠組みであった。また、関係者に共通していたのは、およそ原子力を扱う者に許されない無知と慢心であり、世界の潮流を無視し、国民の安全を最優先とせず、組織の利益を最優先とする組織依存のマインドセット、思い込み、常識であった。
当委員会は、事故原因を個々人の資質、能力の問題に帰結させるのではなく、規制される側とする側の逆転関係を形成した真因である組織的、制度的問題がこのような人災を引き起こしたと考える。この根本原因の解決なくして、単に人を入れ替え、あるいは組織の名称を変えるだけでは再発防止は不可能である。
この真因である組織的、制度的問題の解決に向けて、様々な意思決定プロセスの透明性、公開性を確保、担保し、再び規制する側がされる側の規制のとりこにならないよう、七つの提言を申し上げております。
国会事故調について言われる憲政史上初とは、立法府が行政府を監視する機能を初めて発動させたというものであります。
この原子力問題調査特別委員会は、国会事故調報告の提言一に基づいて設置されたと聞き及びます。提言一は、原子力安全規制当局に対し様々な規制のとりこの力を及ぼした行政府、電気事業者の動き全体を立法府として監視すべきであると提言しています。監視対象は、行政府、電気事業者の動き全体です。
当委員会設置当初の与野党申合せでは、当委員会の監視対象は原子力規制委員会であるとされたと聞いております。この監視対象は、行政府、電気事業者全体を対象とする提言一の趣旨と異なります。いつ、どこで、なぜ、提言の趣旨がずれた申合せがなされ、そのままそれが維持されているのか、私としては理解に苦しむところでございます。
国会事故調報告では、原子力安全規制が再び規制のとりこに陥らないように行政府を立法府が監視するために七つの提言を行いました。
これら憲政史上初と言われる仕組みをつくるのは容易ではないことから、実施計画を速やかに策定し、その進捗を国民に公表することも求めております。これは、国権の最高機関である国会が自ら透明性を確保し、公開性を担保する第一歩であると思います。私は、本委員会で発言の機会をいただくたびに申し上げて、前回、二〇二一年の四月二十七日にも申し上げたとおりでございます。先生方におかれましては、既に十分御承知のことと思います。
事故から九か月後、当時の衆参満場一致で成立した東京電力福島原子力発電所事故調査委員会法に基づいて設置された国会事故調は、調査期間を約六か月と法定され、七つの提言を含む報告書を国会に提出したのは二〇一二年の七月の五日でございます。
冒頭に申し上げましたとおり、それから約百十四か月。少なくとも、前回私が発言の機会をいただいてから三百七十八日が経過いたしました。
前回発言の機会をいただきましたのは、昨年の四月の二十七日です。それ以降本日まで、当委員会は十回開催されました。その開催時間は合計で五百七十四分です。開催時間を確認いたしましたところ、実質的な議論が行われたのはそのうち三回、ほか七回は特別委員会としての設置手続でございました。
衆議院ホームページにあるインターネット審議中継の整理によりますと、実質審議三回のうち、当委員会の先生方による審議は計五百三十分でございました。なお、この五百三十分の中には、更田原子力規制委員会委員長の御発言八分を含んでおります。
各先生方の御発言を確認させていただきましたところ、七つの提言の実施計画の策定、ましてやその進捗状況の公表についての御議論は一言もございませんでした。
当委員会、先生方、国会職員の皆様、この百十四か月と同じことを、これからも、あるいは一体いつまで続けられるのでしょうか。これまでも、また先ほども申し述べたとおりでございますが、当委員会が基づいて設置されたとする国会事故調提言一、その趣旨をいま一度振り返っていただきたいと強く思います。
そのためには、国会事故調の調査資料をいま一度確認するということも大変重要だと思います。政府事故調では、ヒアリング記録の開示に向けた、ヒアリングに協力をいただいた方々の開示意向の確認が進められているというふうに理解しております。国会事故調資料についても同じことができるはずでございます。この取組はいつになったら始まるのでしょうか。
これまで何度も申し上げているとおりでございますが、国会事故調は、机と卓上電話しかないオフィスからスタートし、調査人員の調達やPC等の備品の調達、報告書の印刷作業も含めて、たかだか半年強の調査期間しかございませんでした。扱えなかったことはたくさんございます。検討すべき課題も多岐に及びます。この後御発言されるアドバイザリー・ボード会員の佐藤先生、鈴木先生からも御指摘があるというふうに思います。
国会事故調は、原子力安全規制行政が再び規制のとりこに陥ることのないよう、広く電気事業者、行政府に対して立法府が監視を行うことを提言しております。そのために必要な国会による立法手当て、国会による実行も含めた七つの提言を行っております。
これら七つの提言は、事故の根源的原因であった制度的問題の解決を目的としております。透明性の確保と公開性の担保の両立が核心になるということは言うまでもございません。
二〇一一年三月十一日当時、私たちの社会は、人災の真因となった制度的問題を抱えた状態で福島原発事故の発災を迎えました。以降様々な事象が起こり、今もたくさんの方々が様々に対峙しておられます。再発防止のためには、この真因である制度的問題の解決が不可欠であると国会事故調は述べています。このことは繰り返し申し述べたいと思います。
私が学生のとき、先生からイェーリングという方の「権利のための闘争」という本を御紹介いただきました。十九世紀の本でございますけれども、引用いたします。
私権に関する個人の権利感覚が鈍感、臆病、無気力であり、不公正な法律や劣悪な制度に遮られて個人が自分の力を自由に力強く発揮する場がなく、支持と助力を期待してしかるべき場合に迫害が行われ、その結果、不法は耐え忍ぶもの、どうにもならないものだという見方が慣れっこになっているとしよう。そんな卑屈な、いじけた、無気力な権利感覚が、一たび個人ではなく全国民の権利が、例えば国民の政治的自由の圧殺、憲法の違反、破棄、外国の侵寇によって侵害されるや否や突如として敏感になり、精力的な行動に転ずるなどと誰が信じられようか。
外国から敬意を払われ、国内的に安定した国たらんとする国家にとって、国民の権利感覚にも増して貴重な、保護すべき宝はない。国民各個人の健全で力強い権利感覚は、国家にとって自己の力の最も豊かな源泉であり、対内的、対外的存立の最も確実な保証物である。権利感覚は一本の樹木の根である。砂れきに張った根が枯れてしまい、役に立たなければ、その木はウドの大木のようなもので、風が吹けば根こそぎにされてしまう。しかし、根が地中にあって目に見えないものであるのに対し、幹やこずえは人に見てもらえる。
不公正な法律や劣悪な制度が国民の倫理的力に及ぼす破壊的な影響はいわば地面の下で効いてくるのだが、世の政治評論家どもがこれに注目することはない。彼らは見事なこずえを仰ぐだけで、根からこずえに上ってゆく毒については知らぬが仏である。しかし、専制者は木を倒すにはどこに手をつければよいのかを心得ている。したがって、専制者に立ち向かうには何よりもこの段階で対応することが必要である。
時機を失してから歴史の教訓を理解するというのは我々が悪いのであって、歴史が適切な時点に教訓を与えてくれないわけではない。歴史はいつでも大声ではっきりこう教えているのだ。国民の力は国民の権利感覚の力にほかならず、国民の権利感覚の涵養が国家の健康と力の涵養を意味すると。
今日は、国会事故調報告から三千五百九十六日です。国会議員の先生方、先生方を選出し代表と頂く私たち国民は、一日一回として、三千五百九十六回、毎日、再発防止を放棄してまいりました。
今、世界では極めて不幸な状況が報告されています。その状況に敢然と立ち向かう国があります。私は、この国が外国から敬意を払われ、国内的に安定した国であってほしいと強く望みます。
国権の最高機関である国会、その構成員であり、私たち国民の代表者である国会議員の先生方には、大木の幹やこずえに関する議論で事足れりとするのではなく、地中の根っこ、人災であった原子力安全規制当局に対する規制のとりこの発生、その真因である制度的原因にこそ着目し、原発事故が再び起こることのないよう取り組んでくださることを強く望みます。
提言の実現に向けた実施計画、その進捗状況の国民への公表について、今日、どのような御議論が展開されるのか、お聞きしてまいりたいと思います。
ありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。(拍手)