大島堅一の発言 (原子力問題調査特別委員会)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○大島参考人 龍谷大学の大島と申します。
 本日は、貴重な機会をいただきまして、誠にありがとうございます。
 二枚目を御覧ください。
 本日は、原子力発電をめぐる諸課題を踏まえつつ、原子力規制行政に関する意見を四点述べさせていただきます。
 まず、三ページ目、原発事故処理、廃炉について述べさせていただきます。
 二〇二二年で東京電力福島第一原子力発電所事故から十一年がたちました。周辺はいまだに放射性物質で汚染されている地域が広がっています。いまだに多くの人が避難を強いられています。福島には原発事故の影響が色濃く残っています。また、福島第一原子力発電所そのものの処理、廃炉、後始末の課題が残されています。
 事故を起こした原発そのものの処理の基礎となっているものは、廃炉・汚染水・処理水対策関係閣僚会議が二〇一九年に策定した東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所一から四号機の廃止措置等に向けた中長期ロードマップ、いわゆる中長期ロードマップです。
 ところが、この中長期ロードマップに関しては重大な問題があります。それは、ステップ2完了、すなわち二〇一一年十二月を起点にして、三十から四十年で廃止措置を完了するとしている点です。
 一F廃炉に対し、原子力規制委員会は、特定原子力施設監視・評価検討会で、東京電力が行っている様々な廃止措置の取組を評価、検討しています。ところが、原子力規制委員会は、東京電力が行う作業の大本になっている中長期ロードマップそのものについては評価、検討を行っておりません。
 現実的に考えれば、三十から四十年、残り十九年から二十九年で廃炉するということは不可能です。むしろ、無理なスケジュールをそのままにしていることが様々な問題を引き起こしているというふうに考えます。
 廃炉に要する期間について、ごく簡単に申し上げます。
 早稲田大学の松岡俊二教授は、昨年、二〇二一年に、一F廃炉についての論文を発表しています。この論文では、スリーマイル島原発事故を参考に、一Fの燃料デブリを取り出すのに要する時間を推計しています。推計の結果、燃料デブリの取り出しのみで、甘く見て六十八年、厳しく見て百七十年かかるとしています。この期間は、燃料デブリの取り出しにのみ要する期間です。膨大に発生する放射性廃棄物の処理処分は検討の対象外となっています。つまり、三十から四十年で廃炉するという中長期ロードマップは、もはや実現性のないものとなっております。
 費用面でも重大な問題が生じています。
 四枚目のスライドを御覧ください。
 東京電力は、燃料デブリの本格取り出しまでに一兆三千七百億円かかると発表しています。表にありますように、二号機の試験的取り出しと二号機での若干の規模拡大のみで一兆三千七百億円となっています。デブリ取り出しの規模の更なる拡大は、想定困難とされています。つまり、燃料デブリの取り出し費用は現時点で予測不可能というふうになっているわけです。
 もちろん、費用面以外の問題もあります。高線量の下での作業となりますので、被曝労働の増大や放射性物質拡散のリスクは払拭できません。また、膨大な放射性廃棄物の処分方法や、行き先が決まらないという状況もあります。一Fの安全な処理を進めるためには、まずは、中長期ロードマップそのものの見直し、再評価を行うべきです。
 私が座長をしております原子力市民委員会では、まずは、福島第一原子力発電所の安定化のために外構シールドを設置することを提唱しております。資料を配付しておりますので、是非後ほど御検討いただきますようよろしくお願いいたします。
 二点目、原子力規制委員会の独立性と不偏性について述べさせていただきます。
 五ページ目を御覧ください。
 原子力規制委員会設置法が可決、成立して今月で十年となります。改めて、原子力規制委員会の独立性と不偏性が確保され、更に発展させる必要があると考えます。
 まず、何について、何からの独立性かという点について絞って強調したいと思います。
 原子力規制委員会は、御承知のように、三条機関であります。つまり、原子力規制委員会に求められる独立性とは、専門的知見に基づく職権行為について、他の行政機関、大臣から指揮監督を受けないということです。
 加えて、国会事故調査報告書でも指摘されましたとおり、福島原発事故の原因となった規制のとりこに陥らないためにも、規制と利用推進が分離されていることが独立性の観点から極めて重要です。これは、原子力に関する安全を確保する上で極めて重要です。政治やその他の行政機関からの不当な圧力や要求に原子力規制委員会は応じてはなりません。また、政治やそのほかの行政機関においても、利用推進の観点から原子力規制の在り方にあれこれ要求するべきではないと考えます。
 六ページ目を御覧ください。
 一方、国会は国権の最高機関です。そこで、国会としては、何より、原子力規制委員会の目的である原発事故防止、安全性の確保の取組について厳重なチェックを行っていただきたいと考えております。
 加えて、独立性とともに、不偏性もまた原子力規制委員会には求められると考えます。不偏性は、単に制度があるだけではなく、運用面での改善により、日々向上させていくべきです。例えば、独立性や不偏性を担保するには、形式的に情報が開示されていたりプロセスが透明であったりするだけでは不十分で、広く一般国民や、原子力事業者とは直接関係のない専門家がチェックし、批判すること、また、原子力規制委員会がこれを受け取り、コミュニケーションを行う場が設定される必要があります。さらに、情報は単に公開、開示されていればよいというわけではなく、独立性、不偏性が外部から確認、チェックできるようにする必要があると考えます。
 なお、原子力規制においては安全性が何よりも優先される理由について申し上げます。
 一般の産業技術とは異なり、原子力発電は、一旦事故が起きれば、天文学的な被害がもたらされます。これが一般の産業技術とは著しい違いです。人が扱う技術である以上、一〇〇%安全はあり得ないのは当然のことですが、一般の産業技術であれば、事故被害は一〇〇%事故を引き起こした企業が賠償しなければなりません。そのため、一般企業では、事故を起こさないインセンティブが企業に働きます。ところが、原子力発電は、事業者に形式的な損害賠償責任はありますが、実質的には国民がその費用負担をしています。
 したがって、原子力発電では、安全を最優先させる経済的インセンティブが事業者にはほとんどありません。取り返しのつかない被害がもたらされる可能性があるにもかかわらず、損害賠償責任は実質的に一部免除されていること、これが決定的な違いです。であるからこそ、原子力においては安全規制が何よりも重視されるというふうに考えます。
 これらの点に関しましても、原子力安全の確保の観点から、今後御検討いただきたく思っております。
 三点目です。原発の高経年化、つまり老朽化と運転延長について述べます。
 七ページ目を御覧ください。
 まず、原則ですけれども、原子炉等規制法において原子力発電所の運転期間は四十年とされております。また、原子力規制委員会の認可を受けて、例外的に二十年を超えない期間で一回限り延長することもできるとされております。
 最近、六十年運転があたかも容易になってきているかのように政策議論が進められています。本当に六十年運転が世界の当たり前になっているのかということについて見る必要があります。
 確かに、アメリカでは、六十年の運転期間について、延長が出ております。ところが、実際には六十年運転を達成した原発は世界では存在しておりません。
 例えば、一枚飛ばしまして八ページ目を御覧いただきますと、許可された年数以前に原子力発電所の多くが廃止となっております。つまり、六十年の運転認可があったとしても次々廃炉されていくわけです。
 その理由は、ほとんどが、丸に囲まれましたマーケットコンディションズです。簡単に言いますと、原発が経済性を失って競争力を持たなくなったため閉鎖されていくというわけです。
 現在アメリカで運転されている最も古い原子力発電所は、七ページに戻りまして、ナインマイルポイント1という原子力発電所です。運転期間は今年で五十三年です。
 これらの既設の原発であっても経済性が失われていることが現実なので、運転延長を安易に進めることは経済性の観点からも合理的とは言えません。
 最後に、原子力発電と戦争の関係について述べさせていただきます。
 九ページ目を御覧ください。
 御承知のように、本年二月二十四日にロシアがウクライナに軍事侵攻を開始いたしました。ロシアは、侵攻当初から二つの原子力発電所を攻撃しました。特に重大なのはザポリージャ原発への攻撃でした。
 ザポリージャ原発には六基の原子炉があります。ヨーロッパ最大の原子力発電所です。三月四日以降、ロシアの管理下にあり、ウクライナのエネルゴアトム社が二基の原発を運転しております。五月三十一日には、エネルゴアトム社の総裁代理が、核の大惨事につながるおそれがあると警告しています。
 十ページ目の図は、ザポリージャ原発が事故を起こした場合、放射性物質がどのように拡散していくか、ウクライナ規制当局が評価した地図です。これに日本地図を重ねますと、その影響の広さが容易に理解できることと思います。
 これに加えて、武力攻撃を受けている最中に原発を運転していた事実も重大な事実です。
 十二ページを御覧ください。
 ウクライナの原発依存度は、二〇二一年に五五%でした。このような高い原発依存度のために、戦争中ですら原発を動かさざるを得ないという危険な状態にあります。
 したがって、日本の原子力規制に関して次の二点が指摘できます。
 第一点は、日本は沿岸に原発が集中立地しており、武力攻撃を受けた場合の重大事故発生の可能性が否定できません。そのため、早急に、武力攻撃を受けた場合のリスク評価を具体的に行う必要があると考えます。
 十一ページに戻っていただきます。
 かつて、一九八四年に、日本の外務省の委託で日本国際問題研究所が、原子炉施設に対する攻撃の影響に関する一考察というレポートを発表しております。改めてこのような検討を各原子力発電所について行うべきです。その上で、原子力規制の在り方や原子力利用の在り方について再検討を行うべきと考えます。
 第二に、福島原発事故という過酷事故を経験した日本としては、原発依存を続けることのリスクを改めて検討すべきです。SMR、小型炉ですけれども、検討が行われつつありますが、この原発というのは、小型である以上、経済性がないため、大量生産、大量設置ということが前提とされている原子炉です。人の住むところの近傍にSMRが大量に設置されれば、戦闘地域になった場合に非常に大きなリスクとなります。このようなことがウクライナでなくてよかったというふうに私は思っておる次第です。
 以上、簡単に四点を御意見申し上げました。
 この度は、貴重な機会をいただきまして、誠にありがとうございました。(拍手)

発言情報

speech_id: 120804194X00620220608_011

発言者: 大島堅一

speaker_id: 21033

日付: 2022-06-08

院: 衆議院

会議名: 原子力問題調査特別委員会