山縣文治の発言 (厚生労働委員会)

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○山縣参考人 皆さん、おはようございます。参考人の関西大学の山縣と申します。
 本日のテーマに関するものとしては、現在、厚生労働省で、社会的養育専門委員会の委員長、それから、通称ですけれども、子供虐待死亡検証の委員長をさせていただいております。また、これらに関連するものとして、昨日、今日、ここ数日間ですかね、新聞、テレビで話題になっております、熊本市に設置されている「こうのとりのゆりかご」ですね、これの委員及び委員長を十四年間、昨年の四月末までさせていただいておりました。
 本日は三法の改正に関する意見陳述ですけれども、私に関連するものとしては、児童福祉法改正を中心にお話をさせていただきます。スライドの方にあります四つの項目、子供虐待等深刻な子供家庭福祉問題への対応以下、四番目の、皆さん方ここで議論いただきました二〇一六年の児童福祉法改正の検討事項、この四つに分けてお話をさせていただこうというふうに思います。
 まず一点目ですけれども、子供虐待等深刻な子供家庭福祉問題への対応を強化する必要があるということです。
 社会的養育専門委員会における現状及び課題認識につきましては、スライド三の方を参照ください。
 児童相談所及び市区町村の子供家庭相談を受け付ける窓口ですけれども、子供虐待相談対応件数が非常に増加しています。グラフも示していますように、二〇二〇年度には、児童相談所で二十万件、市区町村で十五万件を超えました。とりわけここ五年間では、面前DVに関する警察から児童相談所への通告件数が非常に増加し、急勾配を生んでおります。
 このような状況に対して、市区町村に子ども家庭総合支援拠点及び子育て世代包括支援センターの設置が進められているわけですけれども、二〇二一年四月現在の設置数は、子ども家庭総合支援拠点が六百三十五自治体ということで、三分の一ということになりますけれども、一方で、子育て世代包括支援センターは千六百三ということで、二〇一六年の法改正後の非常に短期間で、少なくとも九割以上の地方自治体にはどちらかが最低設置されている。とりわけ子育て世代包括支援センターですね、こちらの母子保健中心のセンターが非常に設置率が進んでいるという状況にございます。
 一方で、残念な状況もございます。例えば、死亡検証報告書によりますと、そもそも御家庭が相談機関を含め公的なサービスにつながっていないということです。
 母子保健担当のグラフも入れておりますけれども、そこに見られますように、母子保健担当部署に係属していたとしても、そもそも虐待事案として認識していない、つながっているけれども虐待と捉えていないということによる子供の犠牲というのが起こっていたり、さらには、母子保健担当部署と子供家庭福祉の担当部署が異なる場合には、そこの連携が十分取れていないというふうな状況もございます。
 私自身が虐待死亡検証で訪れたある自治体では、母子保健担当部署が虐待として認識していたにもかかわらず、庁内協議の方、虐待ですから子供家庭福祉の方の担当部署が中心になりまして、結果として、虐待という形で対応せずに亡くなってしまったという事案もございました。
 児童相談所と市区町村、児童相談所と里親あるいは施設等、主従関係が生じやすい、本来は対等なんですけれども主従関係という意識が生じやすい場面では、主たる主体の判断に抗し難いという現実は決して珍しくないということです。
 加えて、虐待死亡の中には、妊娠の届出をせず、専門家の立ち会わないいわゆる孤立出産、自宅出産、これが多くあり、それがゼロか月以内の死亡だということになります。お子さんが亡くなっているというわけではございませんけれども、「こうのとりのゆりかご」でも孤立出産で一週間以内に預け入れというものが多く、このような保護者への支援、危険な出産、養育というような支援が必要なんだというふうに考えます。
 第二は、予防的視点での地域における身近な相談体制の構築です。
 専門委員会の認識については、同じくスライド六の方を御覧ください。
 子育て家庭の七割くらいが何らかの負担がある、子育てに負担があると言っています。多くの母親が、交流機会や相談相手が必要であるということでございます。児童相談所等行政の相談機関は重要ですけれども、日常的に利用する場ではないということです。現行制度では、地域子育て支援拠点事業がこれに最も近いと考えられますし、保育所、認定こども園、幼稚園等にも、法律で子育て支援の機能が重要だということが位置づけられています。
 専門委員会の報告書にもありますように、身近にアクセスできる子育て支援の資源などが、これを利用していない家庭も含めて、身近な相談先としての機能を果たしていくことが引き続き重要というふうに考えます。また、保育所等に属していない子供の養育家庭については、かかりつけ相談機関のようなものが検討に値すると考えられます。
 現状の対策で困難なのが、公的相談機関を忌避される家庭です。「こうのとりのゆりかご」の利用者やゼロ日児死亡に至る家庭などがこれに近いんですけれども、現行制度は届きにくいということになります。これについては、民間によるSNS相談あるいは匿名相談、場合によっては内密出産なども検討する必要があるかもしれません。
 加えて重要なのは、相談に応ずる人の専門性です。生活者として本人を捉え、生活全体を視野に入れた支援を行う、ソーシャルワークの視点を持った人の配置を積極的に進める必要があるというふうに考えます。
 第三は、児童相談所の機能強化と社会的養護経験者やその家庭への継続的支援です。
 この問題に関する委員会の認識は、スライド八の方に記載しております。
 二〇一六年以降、児童福祉法の改正で、児童福祉司の増員のみならず、介入担当と支援担当の分離、弁護士の配置など、児童相談所の機能強化が図られております。これらの成果は少しずつですけれども表れているというふうに認識しています。
 一方、この法改正を受けた新しい社会的養育ビジョンでは、少なくとも家庭養護委託率を三年、五年、十年かけて上昇させるという目標値を立てていたわけですけれども、残念ながら、まだ十年後の目標値、昨年の、社会的養育推進計画、都道府県の推進計画の積み上げによっても、学齢期以降の場合は四割ぐらいの目標値ということですので、十年かかってもまだ目標値には到達しないというふうな状況にあるというのが現実でございます。
 里親やファミリーホームへの委託は法的には児童相談所の業務ですけれども、それを進めていくには、児童相談所の機能は無論のこと、その周辺で重要な役割を果たす里親支援機関や、施設に配属された里親支援専門相談員などの活動の充実も必要となります。
 さらに、里親や特別養子縁組家庭の開拓においては、住民の方と直接向き合って仕事をしておられる市区町村の役割も非常に重要だというふうに考えます。
 一方、気をつけておく必要があるのは、里親や養子縁組の下で生活する子供が増えると、施設養護以上に、児童相談所等が支援すべき個別事案が増える可能性が高まるということです。この点からも、児童相談所の機能強化が重要だということになります。
 次に、社会的養護経験者への支援です。
 子供の貧困と教育歴との関係が取り沙汰されています。高校進学率は一般と大きな差がないレベルまで上昇しましたけれども、大学進学率は、一般家庭が五割強であるのに対して、児童養護施設の子供は二割に満ちません。さらに、就職した場合、短期間での退職率も高く、居所を確保、住所を確保した上での進学支援、進学しなかった者や中退した者への相談支援体制の整備や、住宅保障を含む支援が必要と考えられます。
 一方、検討が必要なのは、社会的養育の枠組みで支援をいつまで続けるのかということです。
 周知のように、児童福祉法は十八歳未満の児童を対象とするものですけれども、制度的には、段階的に引き上げられ、現在では二十二歳までの支援が可能になっています。二十二歳以降も支援が必要だという認識はしておりますけれども、いつまでこの子供の枠組みでやるのか、むしろ、子ども・若者支援法との関連を強化した方がいいのではないか、いろいろなことが考えられると思います。
 最後は、二〇一九年の児童福祉法改正時の検討事項です。
 これは、社会的養育専門委員会の中心的関心事でした。ここでは、スライド九に示す三点が、法律に検討事項として明示されていました。今回の改正案は委員会の検討結果を踏まえたものとなっているというふうに認識しております。
 スライド十には、改正法が成立した場合の更なる課題と私自身が感じていることを記載しております。
 第一の、一時保護の措置の手続の在り方については、保護者の同意が得られない場合には、一時保護の迅速化のために、家裁等において、申請に基づき一時保護状を発行するという新しい制度を導入することになっています。目的の一つが迅速化と安全を確保した上でのアセスメントであることを裁判所の方に十分認識していただかなければ、かえって時間がかかる可能性があります。一方で、児童相談所が安易に裁判所に依存し、ソーシャルワークによる支援をおろそかにしないということも求められると思います。
 第二の、意見表明権、こちらについても今度の法改正でかなりの部分が対応されるということになっております。第三者性というところがここでは重要になるかと思います。
 最後は、専門職の問題ですけれども、専門委員会の報告書では、実務経験のある方に対して必要な研修を実施した後に試験を実施するという取りまとめで、法案もその枠組みに従って作られておりますけれども、これにつきましては、資格取得に向けての動機づけ策、現役学生への対応が早急に検討される必要があると思います。とりわけ、保育士を含め、福祉職に対する人気が若干低下している、非常に残念なんですけれども、少子化の中で、学生数、入学生も減ってきておりまして、こういう方々を含めて、どう今後対応するのかということが重要ではないかと思います。
 以上で私の意見陳述を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)

発言情報

speech_id: 120804260X01820220511_002

発言者: 山縣文治

speaker_id: 29017

日付: 2022-05-11

院: 衆議院

会議名: 厚生労働委員会