土肥潤也の発言 (内閣委員会)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○土肥参考人 本日は、参考人として発言をさせていただく機会をいただきましたことに、まずお礼を申し上げたいと思います。
私の資料をお配りしておりますので、資料を追って説明させていただければと思います。
まず、こども家庭庁の創設において、様々な議論がされていますが、私が一番画期的だというふうに考えているのは、子どもの権利条約の理念にのっとり、こどもまんなかの国づくり、社会づくりを掲げていることにあると考えています。
これまで、子供は未熟な存在であり、教育あるいは保護をしなければいけない対象であるという認識が一般的でした。しかし、こども家庭庁では、子供観を大きく転換したというような印象を受けています。
例えば、昨年十二月に定められた基本方針の基本理念では、子供視点に立った政策立案が目指されており、子供自身を自立した個人として自己を確立していく主体と捉えています。
こうした理念から、子供の意見表明や参画にも踏み込んだ議論が行われていることは、我が国の子供、若者施策において重要な転換期にあると感じています。つまり、未来や次世代を担う子供ではなく、今の社会を主体的に参画する子供へと変わりつつあると考えています。
また、私自身、まだ二十代の若者であり、私のような若者を参考人としてこの場に呼んでくださったことからも、今回のこども家庭庁は今までにない組織になっていくことを大きく期待しております。
資料一ページ目をめくっていただきますと、私のプロフィールがあります。
私は、NPO法人わかもののまちという団体の事務局長をしています。この法人は、大学三年生のときにつくったもので、子供や若者が一人の市民として参画できる社会づくり、町づくりにこの七年ほど取り組んできました。
わかもののまちは、若者の町づくりの中間支援やネットワークづくりを行う組織です。具体的には、静岡県内を中心に、静岡市、名古屋市、菊川市、磐田市など、様々な自治体の子供、若者の町づくり参画事業を行政からの依頼を受けて実施をしております。
子供の意見表明の重要性というのは、子どもの権利条約第十二条においても保障されていると同時に、その重要性は欧州の若者政策からも学ぶことができると思います。
欧州の若者政策の考え方というスライドまで飛びますが、欧州の若者政策では、先ほど古賀先生の方からもお話があったように、子供期から成人期、つまり、大人になる移行期を若者期として定め、様々な若者政策に取り組んでおります。
次のスライドですけれども、工業化社会においては、大人になるというプロセスは、とてもシンプルで、働くとか、仕事をし始める、就職をするというのが大人になることでした。しかし、ポスト工業化社会に突入をして、社会が不安定になっていくと、大人になるこの移行のプロセスがジグザグになっていくということが起こりました。ここでニートや引きこもりなどの問題も浮上し始めています。
その中で、欧州においては、若者の雇用政策ということも取り組まれましたが、それとともに、若者参画政策も始められることになりました。これは一九九〇年代のことです。なぜ参画かというと、不安定な社会、未来が見えない社会を自分の頭で考え、主体的に解決していく、参画していく存在としての若者像が求められるようになったからです。つまり、人生の主体、社会の主体としての能力を身につけるための参画という概念が生まれ、子供、若者の参画は欧州において重要な施策になっていきました。例えば、スウェーデンの若者世代の投票率は八〇%を超えるというデータもありますが、まさにこれは若者参画の政策の成果とも言えるのではないでしょうか。
では、我が国においてはどうかということを、私どものNPOで調査をしてまいりました。ページでいうと七ページ目の、子供議会、若者議会の調査のところになります。
私たちNPO法人わかもののまちと早稲田大学の卯月盛夫研究室の共同で、子供議会、若者議会に関する自治体調査を実施しました。調査では、全体の六割の自治体が子供議会、若者議会に取り組んでいる、又は取り組んでいたと回答しています。事業の開始年度を見てみると分かりやすいように、次のページですけれども、この六、七年で事業を開始したという自治体が非常に増えているということが分かるかと思います。
この要因を分析してみますと、次のページになりますが、我が国の子供の意見表明、参画を取り巻く年表は大きく三つの時期に分類ができると思います。
まず、一九九四年というのは子どもの権利条約を批准した年であり、この前後の三期になりますと、大きな転換期になったのは二〇一五年以降になっています。二〇一五年は選挙権年齢の引下げが行われ、主権者教育、投票教育の一環として類似事業に取り組む自治体も増えました。さらに、まち・ひと・しごと創生法の公布で、人口減少対策としての子供、若者参画を進める自治体も非常に増えています。このように、子供、若者参加事業は様々な背景を持って取り組まれています。最近では、新学習指導要領の改訂による総合的な探究の時間も始まり、学校内においても、アクティブラーニングや町づくりについて考える取組が非常に増えてきております。
先ほども申し上げたように、これまでの子供、若者というのは保護や支援の対象でしたが、意見表明する主体ではありませんでした。しかし、こども家庭庁の創設によって、子供が積極的に社会に参画する環境づくりが行われていくことを期待したいと思っています。
最後に、私の具体例の活動として、静岡市高校生まちづくりスクールというのを紹介したいと思います。
これは、静岡市からの委託事業でもう五年ほど実施をしているんですけれども、大人からテーマを与えるのではなく、高校生たちの身近な興味や関心を言葉にし、プロジェクト化していくスクールです。この高校生まちづくりスクールは菊川市でも取り組まれ始め、静岡県内各地に波及をしています。
振り返ると、この事業が私たちのNPOのスタートとなった事業で、私が大学生のときに、静岡県の人口減少率が全国第二位だったということを受け、政策提言の活動を始めることになりました。人口減少が進む静岡は若者の声を聞かないで町づくりをするから若者が流出をしていくんじゃないかというふうに主張しまして、十三歳から二十五歳の若者の署名二千人分を集め、静岡市長の元に政策提言を行いました。その結果、次のページのところにありますように、静岡市は地方創生総合戦略の重点事業として「わかもののまち」推進事業を盛り込むこととなり、現在の高校生まちづくりスクールの原点となっております。
こんなふうに、自分の意見が政治や社会に反映されたという成功体験が今の自分自身にもつながっているというふうに感じています。
高校生まちづくりスクールでも、スクールという名はついていますが、高校生に、自分たちでも社会は変えられるんだ、あなたの意見は貴重なんだと感じてもらえるような思いを持って取組を行っています。例えば、実家が林業をしていて林業の未来を考えたいという高校生もいれば、LGBTQのことが気になるという子たち、将来看護師になりたいから高校生からできる地域医療に取り組みたいという子たちもいました。
こうしたスクールに参加した高校生からは、憧れる大人を見つけることができたとか、静岡に対する考え方が変わったとか、高校生でも社会は変えられると感じたと様々な感想をもらっております。
つまり、社会や町への参画体験というのは、高校生自身の自分の人生の主体としての意識を育む効果も体感しています。自分で町を変えられるという体験が、自分自身の人生も自分自身で変えることができるんだというふうな体験になり、自己肯定感や自己有用感につながっていくというふうに感じます。
最後に、まとめのスライドに、一番最後のスライドですね。
まず一つ目、お飾り、形だけの参画から真の参画へ。子供、若者を見せ物にするような参画、きちんと真の参画にしていかなければいけないと思っています。
子供、若者の身近な課題は、身近な社会、町にあります。今回のこども家庭庁の創設がただのスローガンにならず、自治体と連携をして実態を伴うものにしていく必要があると考えています。
子供の意見表明や参画に関する取組は、エリーティズム、つまり、エリートな子供たちが参加するだけじゃないかと批判されることがよくあります。そこにない声はどんな声なのかということを考え、マイノリティーの子供たちの声を聞くこと、様々な場面、様々な形での意見表明の機会の保障が求められます。
最後に、子供の参画は段階的で連続的に取り組まれることも重要です。選挙権年齢が引き下げられ、若者の政治への興味のなさが叫ばれることもありますが、いきなり政治に関心を持てと言われても、難しいものがあります。
例えば、学校の学級会や生徒会など、身近な政治への参画があって、その上に社会や町への参画があります。年齢に応じた参画の仕組みを構築していくことが必要だと思います。
子供が主体的に参画することで、子供が社会を共につくるパートナーになる社会へなっていくことを願っています。こども家庭庁の創設がその大きな一歩になることを期待しています。
これで終わりたいと思います。ありがとうございました。(拍手)