稲垣照哉の発言 (農林水産委員会)

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○稲垣参考人 ただいま御紹介賜りました全国農業会議所の事務局長の稲垣と申します。
 本日は、このような機会を与えていただきましたことにつきまして、本当に御礼を申し上げたいと思います。
 全国農業会議所は、御案内のように、全国の農業委員会を支援、お手伝い、そういうことをしている機関でございます。四月一日現在、全国には農業委員会が千六百九十七委員会ございます。そこに、約二万三千人の農業委員さん、そして約一万七千人の農地利用最適化推進委員さん、合わせて約四万人の委員さん、そして、それを支える事務局の職員さんが約八千人、こういう体制で農地の仕事をさせていただいております。
 本日は、そういう皆様の声を少しでも先生方にお届けすることができ、審議の参考になるお話ができればと思って参上した次第でございます。具体的には、今回の法律改正の意義と課題に絞ってお話をさせていただきたいと思います。
 御案内のように、農業委員会組織は、平成二十七年の農業委員会法の改正を踏まえ、新たな法令必須業務となりました農地利用最適化活動につきまして、今回改正法案として上がっております農業経営基盤強化促進法などをフル活用して、組織を挙げて取り組んでまいりました。そして、毎年、成果とその課題を明らかにして各種の政策提案を取りまとめ、先生方にお届けしてまいりました。
 今申し上げましたことはこちらの資料の方に載っておりますので、また後ほどお目通しをいただきたいと思います。
 以上を踏まえまして、本日は、四つの点について意義と課題を申し述べさせていただきたいと思います。
 一点目は、人・農地プランの法定化についてであります。二点目は、農地バンクさんの運用の抜本見直しについてであります。三点目は、活性化法に象徴されます多様な農地利用の問題についてでございます。そして四点目は、農地法の下限面積要件の撤廃の問題でございます。
 まず、人・農地プランの法定化の意義でございます。
 これにつきましては、地域における話合いの結果が地域の農業の将来の在り方、農地利用などについて法律に根拠を持つものとなり、その意義は大変大きなものがあると思っております。そして、その際、この基盤法に、「効率的かつ安定的な農業経営」、これは基盤法の本旨でございますが、それに加えて、「農業を担う者」というワードを明記していただいたことが非常に大きな意義を持っていると思います。
 この間、人・農地プランの話合いを現場で進める際に、これは担い手のためにやっているのかとか、農地の出し手の方にすると、俺に農業をやめろと言うのかみたいな、やや感情的というかそういう議論があったわけですが、今回、地域の農業を担う者というものを位置づけていただいたことで、効率的かつ安定的な、いわゆる担い手と地域が一丸となって取り組める契機になると認識しております。
 そして、基盤法の二十一条で、地域計画の実現に向け、農業委員会が農家の皆さんに積極的に働きかけることを法律に明記いただきました。
 現在、農業委員会は、法律上は、農家の皆さんから申出があってから農地の利用関係の調整、売買、貸借のあっせんに動くという受動的な立場でございますが、今回の改正で、能動的に地域のためにアクションを起こせるということが非常に重要な点と認識しております。
 課題としましては、法定化の取組に当たっては、基盤法の十八条に、農業者などによる協議の場の設定、これが決定的に重要だと思っております。これは、市町村のリーダーシップの下、JAさんの農業生産や販売の問題、土地改良区さんの農地整備などの知見を持ち寄って地域のグランドデザインを描けるか否か、それが成否を握っていると認識しております。
 それを踏まえて、私ども農業委員会では目標地図の素案を作るとされておりますが、現場の委員会の中には、不安というか、どきどきしているわけであります。本当に令和七年度までに自分たちだけで作り上げることができるのかという不安でございます。地域の農業の実態、また農業委員会の体制など、様々な市町村、農業委員会の実態を踏まえますと、農業者の今後の営農意向や農地の貸借意向を地図に落とした、粗い、そういう素案を作る委員会から、地域の農業を担う者ごとに利用する農地、農地の利用が明確になった、ほぼほぼ完成版に近い地図の素案ができる農業委員会まで、幅広く存在するということを御認識いただきたいと思います。
 そして、農業委員会によっては、事務局の職員が一人しかいない、又は皆さん兼務で専門の職員がいない、そういう事務局が少なくございません。目標地図の作成に当たっては、市町村の農政部局と農業委員会の事務局、この連携体制をいかに構築するかということが一丁目一番地だと思っております。
 そういうことを踏まえましても、法律の施行当初は、JAさんの農作業受委託なども活用して順次目標地図の完成度を上げて練り上げていくということになると思いますので、これは息の長い取組になるというふうに考えております。
 二番目の農地バンクの抜本的見直しにつきまして、意義でございますが、基盤法の第二十二条で、農地バンクの事業推進に当たっては、「地域計画の達成に資する」と明記されたことを私個人的には非常にうれしく思っております。地域計画の達成に資するということになれば、バンクさんは、農業委員会、市町村など現場の関係者とともに計画の実現を目指す同志的な、より身近な存在になることを強く期待しているところでございます。
 また、バンク法の第十八条で、農地バンクがバンク計画の策定に当たって農業委員会の意見を漏れなく聞くと位置づけられました。これによって、農業委員会は、バンク計画について、現在の極めて限定的な関与から全面的な関与が可能となり、農業委員会とバンクさんの一体的な取組が進むものと期待しております。
 一方、この課題については、市町村の基盤法による利用集積計画を新たなバンク計画である農用地利用集積等促進計画に統合、一体化することについて、農業委員会を始め現場では戸惑いと不安があることも事実でございます。この課題は二点ございます。
 一つの課題は、農地バンクさんが本当に農地法三条以外の農地の権利移動に遺漏なく対応できるのかということであります。農地バンクさんが間に入ることによって、農地の権利設定の手続について、全て都道府県の知事さんが扱うことになります。これに伴う手間や時間の発生を考えたり、また、小作料の収受などの問題がございます。これに対して、農水省さんは事務の抜本的な簡素化などをうたっていらっしゃいますので、一刻も早くその姿をつまびらかにしていただきたいと思うわけでございます。
 二つ目の課題は、市町村の利用集積計画による利用権設定がなくなることへの戸惑いでございます。一九八〇年、農用地利用増進法、基盤法の前身の法律でございますが、そこで、耕作権の強い農地法三条に基づいて、一旦農地を貸したら戻ってこない、そういう不安を払拭するために、期間の定めのある賃借権である利用権を設けることによって、期間が満了すれば農地が確実に戻って、安心して再設定ができる、これを繰り返して、現場に果たしてきた役割は非常に大きなものがございます。
 この制度がなくなってしまうということに対して、やはり現場では戸惑いがあるということでございますが、しかし、今般の改正で、バンク法の第十八条第十一項に基づいて、農業委員会がバンクさんに対して農用地利用集積促進計画を要請できることを明記いただいております。
 これと農用地利用集積促進計画に関する都道府県知事の認可権限を市町村長に移譲することをセットで運用いただければ、現在のように毎月市町村で利用集積計画を決定、公告しているのと同等、むしろ現行の利用権設定にバンク特約がついたと認識、運用すれば、農地バンクへの農地集積が促進されて、地域計画への取組と一石二鳥の効果をもたらすと思慮しております。何とぞ、政府におかれましては、このような取組について前広に御指導いただけたらと思うわけでございます。
 三点目は、多様な農地利用でございます。
 多くの農業委員会では、農地利用の最適化に取り組む際に、担い手に直ちに集積できないいろいろな条件の悪い農地、また、遊休農地を解消する上で直ちに非農地判断できない農地、そういう農地に苦慮しているわけであります。これらの農地に時間とコストをかけて圃場整備がすぐにできるわけもないわけでありますので、暫時遊休化したり、遊休化の度合いが増して対応に苦慮しているわけであります。
 しかし、今般、活性化法で、農用地保全として放牧、鳥獣害緩衝帯、ビオトープなどなどの取組が明らかにされ、補助事業にもつながるということで、地域計画と取組をうまく活用して、地域全体の効率的かつ総合的な取組と持続的な土地利用の実現に資するものと思っております。このような、圃場整備のように多額のコストと時間を要する手だてに代わり、コストをかけずに農地保全を行える手だてが講じられたことの意義は大変大きなものがあると思っております。
 ただ、農地法や基盤法に比べ、活性化法は、私ども農業委員会、場合によっては地元の周知がまだまだ低いと思いますので、そのPRなり周知、指導方が非常に大きな問題となります。
 この法案の課題があるとすれば、基盤法で進める地域計画とこの活性化法の活性化計画、二つの計画があるわけですが、これが現場で調和して取り組めるようなことが大事であり、競合したり、間にぽてんヒットで落ち込んでしまうような、また、二度手間、手戻りがないような整然とした運用が大事かと思っております。
 最後に、農地法の下限面積要件の撤廃について申し述べます。
 意義としては、やはり農業者の減少、高齢化が進行する中で、農村の定住、活性化、また野菜、果樹など多様な新規参入、さらには半農半Xの方を推進していく上で、また、特に中山間地域の振興を図る上では意義があると思っております。
 ただ、課題としては、現場の農業委員会におきましては、この下限面積要件は農地法第三条による権利移動を判断する際の有力な根拠条文になっていることは明らかなわけであります。ただ、下限面積要件がなくなった場合、その場合、やはり投機的な農地取得が行われるのではないかなどの不安があるわけであります。
 一方、下限面積要件を廃止しても、農地を全て効率的に利用する、常時農業に従事する、地域の調和要件、周辺の農場に悪影響を及ぼさない、こういう要件は残るわけであります。
 また、今般の地域計画の目標地図に基づいて農地の集約化を進めていくことになります。こうした動きと半農半Xなどの農地利用について、いかに調和させていくのか。地域計画の中で、農地の権利取得に当たってのルールづくり、その運用の徹底を期していただきたいと思うわけでございます。
 以上、この法案について、その意義と課題を申し述べさせていただきました。
 参考資料にもございますように、農業委員会系統組織におきましては、市町村、農業委員会、農地バンク、関係機関が一体となって人・農地プランの作成に取り組めるよう、その法定化を要望してまいりました。また、それを見越して、本年度の事業推進も計画しておるところでございます。
 そういう意味では、全国の委員さんは、この国会の審議を瞠目、刮目して、固唾をのんで見守っていらっしゃることと思います。どうか、四万人の農業委員が伸び伸びと、そして誇りを持って仕事ができるよう、枝ぶりのよい法律をお作りいただきますことをお願い申し上げまして、私の発言とさせていただきます。
 今日はありがとうございました。(拍手)

発言情報

speech_id: 120805007X01020220413_004

発言者: 稲垣照哉

speaker_id: 9532

日付: 2022-04-13

院: 衆議院

会議名: 農林水産委員会