河東哲夫の発言 (外交防衛委員会)
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○参考人(河東哲夫君) 河東でございます。よろしくお願いします。
今日は、最初に、今回のウクライナ情勢について、どうしてこういうことになっているのかという、これからどういうふうになり得るかということについて、十五分ぐらいでお話し申し上げたいと思います。
お手元にこの地図から始まる資料があると思いますので、これに従ってお話し申し上げたいと思います。
この地図なんですけれども、これではよく分かりませんけれども、元々ウクライナというのは古い歴史を持ったところであります。これの右側の方に、キエフのところにドニエプル川が走っているんですけれども、ここを使ってバルト海とそれからコンスタンチノープルを結ぶ通商路として発展したのがキエフであります。ですから、スラブ民族なんですけれども、スラブの本家はむしろウクライナの方にあるわけですね。ロシアはロシアが本家だって言っていますけれども、むしろウクライナの方が本家であります。
それから、そのウクライナにはコサックという連中が東側の方にいますけれども、コサックはこれはロシアから逃げてきた連中であります。だから、必ずしもそういった人たちはロシアに戻りたいという意識は持っていないわけです。東ウクライナは分かれております。
それで、今回の情勢なんですけれども、これは二つの言葉でくくることができると思います。一つは、一九九一年十二月のソ連の分裂の後始末というのか、それから起きた論理的な帰結であります。それからもう一つは、ソ連の分裂に応じてNATOがどんどん拡大してきたということの一つの帰結であります。クライマックスですね。まあそういったところであります。
今回、ロシア軍は、この地図の北方のミンスクの方から、北方のベラルーシの方向からキエフに向かって攻めてきたのと、それから右側のハリコフ、ハリコフの方に攻めてきた人と、人というか軍と、それからその右下のマリウポリですね、そこに攻めてきた軍の大体三方に分かれていました。総計が最初は十万人ぐらい。十万人をその三つに割ったわけですから、随分兵力が分散しました。それから、南方のヘルソンとオデッサには、これは海から攻めたし、それから、まあクリミアからだと思いますけれども、陸上でも攻めているということであります。
次の紙の方なんですけれども、なぜこうなったかということでありますね。プーチンの頭の中なんですけれども、それについて想像してみたんですけれども、やっぱり、その括弧一ですけれども、ウクライナというのはソ連時代、ソ連第二の共和国でありました。これは、GDPからいっても、人口からいっても、ソ連第二の重要性を持ったところであります。ですから、ロシアと不可分の経済関係にあります。今でもそうであります。
特に、軍需関係ではウクライナがソ連全体に対して非常に重要な意味を持っていたわけですね。例えば、今、中国が持っている遼寧という航空母艦、これは元々はクリミアで造られた、ウクライナで造られたヴァリャーグという航空母艦でありましたし、それから、ロシアが今も持っている最大のICBM、アメリカ向けのICBM、SS18、これもウクライナで組み立てられたものであります。それから、ヘリコプターのエンジン、それから軍艦のエンジン、これもほぼウクライナが独占供給していたのが切れていると、そういう状況であります。
あと、ロシア軍自体にウクライナ人が非常に多いというそういうこともあるんですけれども、切っても切り離せないというふうにロシアは思っているわけですね。これを西側に取られますとロシアは矮小化するというふうにロシアは思っております。それだけではないので、安全保障上の脅威になるわけです。
プーチンはウクライナが現在核兵器を開発しているというふうに思っておりまして、多分そういう情報があるんだと思います。ですから、今回、ロシア軍はチェルノブイリとそれからザポロジエの原発を占拠しておりますけれども、これは多分、そのウクライナによる核開発を止めようと思ったのか、それとも核開発の証拠を握りたいと思ったのか、証拠がなければでっち上げようと思っているのか、いずれかであると思います。
それから、プーチンが自分で言っていることなんですけれども、ウクライナがNATOに入って、それによってそのNATO軍、米軍のミサイルがウクライナ領に配備されると、これはロシア、モスクワにとって直接の脅威になると。ハリコフ辺りからは七、八分でモスクワに届くんだというふうに言っております。ハリコフからは本当に至近距離ですから、そういうことになります。
それから、括弧の二なんですけれども、それよりも更に直接の問題というのがありました。それは、二〇一四年、クリミア半島だけではなくて、ドネツ、ルガンスクの一部もロシア軍が、親ロシア軍が押さえたことであります。最初のその地図を御覧いただきたいんですけれども、右側の方に色が変わっておりますけれども、ここがロシア軍が押さえているところであります。そこにルハンスク、それからドネツクと書いてございますけれども、その二つの州の一部を押さえたわけです。全部を押さえたわけではないということを意識する必要があります。
そういうわけで、そのクリミア半島を制圧して以来、この二つの州、ドネツ、ルガンスクの州の一部を押さえてきたわけなんですけれども、これをウクライナが取り返す勢いを増やしているわけですね。
括弧の三ですけれども、これは二〇二一年、ウクライナ軍が、二〇一四年は十万人ぐらいしかいなかったのが、現在は二十六万人に増えております。それから、NATO側から、NATO、米軍からいろんな兵器の供与を受けて強くなっています。これがドネツ、ルガンスク奪還の勢いを示していたわけです。例えば、トルコからドローンを輸入して、ドローンをその停戦地域を越えて親ロシア支配地域に送り込んで爆撃したりとか、そういうことを始めました。それによって、プーチン、ロシアは危機感を持ったということですね。
さらにもう一つ、もっと大きな情勢なんですけれども、NATO拡大ですよね。バルト三国であるとか、その前には東欧諸国に拡大しましたし、それに対抗してロシアは欧州正面の兵力を強化したわけです。そうすると、それに対抗して今度はNATO、米国も強化して、双方が挑発行動を最近は繰り返すようになっておりました。ロシア、ロシア空軍はノルウェー至近距離とかそういうところに飛ぶし、それから米軍は、クリミア半島のセバストポリというロシアの軍港がありますけれども、そこの至近距離に迫ってミサイルを発射する訓練をしたりとか、そういう非常に危ない挑発行動を双方が繰り返すようになっていたということがあります。そういうことがあって、プーチンの危機感をあおっていたと思います。プーチンの頭の中では、今やらなければじり貧になるという意識があったのではないかと思います。
次の二ポツなんですけれども、じゃ、戦況はどういうふうに展開しているかというと、今、ロシアに不利に展開しているというふうに言われておりました、おります。
一つには、連絡が悪かったんですね。プーチンがそのウクライナに攻め込むんだぞということを下部に徹底させたのが、まあ数日前ぐらいではなかったかというふうに思われております、数人は知っていたかもしれませんけれども。それによって、中堅幹部であるとか現場は全然用意ができていなかったし、兵隊に至っては、自分がウクライナに行くとは全然思わずに、演習に行くんだと思ってトラックに乗ったらウクライナにいたんだって言ったりとかですね、それは兵隊ではあり得ることなんですけれども。
それから、もう一つ致命的なことは、ロシアの、ロシア軍の通信能力が不備であったということであります。これは、この十年ぐらい掛けて通信装置を随分近代化してきたというふうに言っているんですけれども、実際には機能していないんですよね。ですから、そのモスクワの本部はウクライナでロシア軍の第何師団がどこで何をやっているかというのを極端に言えば把握できていないという、そういうことを言うその内部の人もいます。これでは戦えないわけです。
特に空軍が使えていないというのが、みんなが指摘するところであります。これは昼なんですけれども、昼はロシアの空軍はほとんど活動してこなかったんですね。なぜかというと、多分撃墜されることを恐れていたんだろうと思います、ウクライナ側に。それから、友軍、ロシア軍の方に撃墜されることも恐れていたんだと思います。通信が不備ですから、飛んでいる飛行機がどこの飛行機か分からずに撃墜するということがありますから。それは、二〇〇八年の八月のあのジョージア、グルジア戦争のときに起きたことであります。空軍が使えていない、夜間は使えますけれども。
それから、その司令機能がどうなっているか分からないわけですね。第二次世界大戦、米軍は、欧州方面をアイゼンハワー、太平洋方面はマッカーサー総司令官がいましたけれども、今回、ウクライナ方面の総司令官がロシア側には見当たらない。しかも、そのショイグ国防相とゲラシモフ総参謀長、この二名が数日前まで二週間ぐらい失踪しておりました。
それから、括弧の二なんですけれども、戦術がいかにも悪かったということであります。先ほど申し上げましたように、当初十万の兵力を三方に分散させて侵入するというのは、これはもう相手を見くびって、最初からウクライナが降参するのを見越して、占領軍として入ったとしか思えないわけですよね。
括弧の三なんですけれども、ウクライナ軍の兵力を見くびったと。これは、二〇一四年クリミア併合のときの経験がありますから、見くびったわけです。
そこにはスティンガーとかジャベリンという兵器の名前が書いてありますけれども、これは技術的なことで省きますけれども、非常に面白い兵器であります。これは、スティンガーというのは、たった一人で持って、そのスティンガーの筒先を飛行機に向けて飛行機が飛んでいく方に振りますと、振ってから発射しますと、ミサイルが飛んでいって、自動的に相手の飛行機をトラッキングして撃ち落としてくれるというものであります。ただ、射程が限られています。ジャベリンは、戦車に向けて同じようなことをやる、これも一人で扱える兵器であります。トルコ製のドローンも入ったと。
そういうことがあって、そのウクライナ側はかなりの戦果を上げております。そこに書いてございますけれども、欧州正面二千四百両って書いてあるのは間違いで、昨日、専門家の小泉氏に確かめたんだけれども、全国で、全国で二千四百両の戦車なんだそうであります。そのうち四百両弱をもう既に破壊されています、と思われます、三週間で。
それから、そこに書いてありますけれども、五、六名もの将官が戦死しています。大将、中将、少将、大佐クラスぐらいまで六、昨日七名目かな。このウクライナ正面に割かれている将官が合計で二十名なんだそうでありまして、そのうちの三分の一が既に戦死したんだそうであります。
これは、まあ通信の不備もあって、偉い人が現場に出ていかないと、その命令権、司令権を持っている人がほかにいないんだそうですね。そうすると、どうしてもその将官が前線でさらされるので、そこで死んでしまうと。それから、昨日の亡くなった人は部下に裏切られて、ほとんど意図的に殺されたんだということもインターネットには書いてありました。
それと、士気の低さ、補給の悪さ、そういった問題があります。
三ポツのこれからどうなるということなんですけれども、あとしばらくでやめますけれども、おととい、おとといだと思いますけれども、ロシアの軍の参謀次長、参謀次長、参謀長は相変わらずいないんですけれども、参謀次長が記者会見をして、これからロシア軍は転進すると、まあ転進という言葉は使いませんけれども、方向を変えるということを言っております。これまで、先ほど申し上げたように、三方から攻めていた、四方から攻めていたんですけれども、これを東ウクライナの確保に重点を置くということを言っています。
まだキエフ方面、それから南方から撤退したという話は確認できていないんですけれども、もし東ウクライナに集中した場合、戦況はロシア有利に展開する可能性はあります。というのは、ウクライナ側は、東ウクライナになると、今度は守るんじゃなくて攻めなきゃいけないんですけれども、攻める方の兵備はウクライナの軍は足りないんではないかと思われます。それから、特にウクライナは空軍をもうかなり失っているんだと思います。
ただ、もしその東ウクライナからロシア軍が押し出されそうになったときに、ロシアは戦術核兵器を使う可能性が高いですね。それから生物化学兵器も使うでしょう。生物化学兵器というのはウクライナにも開発の拠点はたくさんあるし、それからロシアにも開発の拠点はたくさんあるので、どっちが使ったかは分からないんだけれども、まあ使われるでしょう。
それから、最悪の場合には、何かのはずみで米軍が乗り出しますと、米軍が乗り出すとロシアの方が沸き立つわけですよね。ロシアは全てのことにアメリカを見ますから、アメリカ軍が出てきたということになると、もう本当に大祖国戦争、防衛戦争になっちゃって、プーチンは絶望の余り核に手を掛ける可能性もあるかもしれません。そうすると、我々にとっても危ないことになり得る可能性は一%ぐらいはあると思います。
あとは、我々にとって問題なのは、括弧の二なんですけれども、二〇二四年、ロシアで大統領選挙がありますけれども、これに向けてプーチンの地位はどうなるんだというのが非常に大きな問題ですね。二四年までもつのかどうかということですよね。もったとしたって、誰が次になるんだろうということであります。もし民主勢力が出てくると、ロシアは物すごく荒れますね。ロシアは民主主義で治めることはできない国であります。かといって、保守主義が治めることももうできなくなっている、そういうことですね。
最後になると思いますけれども、括弧の三なんですけれども、最悪の場合にはロシアは中央権力が空洞化して分散傾向を強めることがあり得ます、これはソ連の末期には実際にあったことなので。
分散傾向というのはどういうことかというと、地方が税収をモスクワに送らなくなるようになるわけです。それから、地方の知事は大統領だというふうに名のって、地元で選挙をやって、そこで選ばれた大統領だというふうに言って威張るようになります。そうしますと、ロシアって広い国ですから……