桃井貴子の発言 (環境委員会)

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○参考人(桃井貴子君) 気候ネットワーク東京事務所の桃井と申します。
 この度は、本委員会での発言の機会をいただきまして誠にありがとうございます。
 私が所属します気候ネットワークは、市民の立場から気候変動対策に取り組む環境NGOです。原発に頼らず、化石燃料による温暖化もない、持続可能な社会を構築することをミッションに活動をしています。
 さて、この度審議されている地球温暖化対策法改正案については、新たな規定として、株式会社脱炭素化支援機構を創設し、脱炭素社会に資する事業を推進するものと理解していますが、この方向性については賛成です。
 しかし、現状では懸念点や課題もあります。地域に寄り添った形で再エネが普及することや、それによって地域で資金が回る仕組み、さらには再エネ事業者などが事業をなりわいとして雇用が拡大することなどが期待されていますが、それを下支えする政策的背景があるのかという問題です。再エネが普及するために必要な条件がそろっていなければ、ファンドがあったとしても活用されないからです。
 また、現在のエネルギー政策では、脱炭素社会に資するといいながら、水素、アンモニア、CCUSなど、まだ実用化もされておらず、一・五度目標には全く整合しないような事業が推進され、石炭火力などが温存され続けていることなどがあり、今般の改正温対法でも、こうしたいわゆるイノベーション事業を含み得ることが懸念点としてあります。
 こうした懸念を持つ立場から、現在の気候変動をめぐる関連の論点について四点ほど述べさせていただきたいと思います。
 まず、国の目標についてです。四ページ目を御覧ください。
 日本は、温室効果ガスの長期目標として二〇五〇年の実質排出ゼロを掲げていますが、これは気温上昇を一・五度に抑えるための必要条件であって十分条件ではありません。
 先日、世界気象機関、WMOが、今後五年間のうち少なくとも一年は、一時的に産業革命前と比べ一・五度以上の上昇を記録する確率が五割になったということを発表しました。二〇三〇年を手前にして、一・五度の上昇に到達する可能性が以前に増して高まっているという警告です。日本の二〇三〇年目標、一三年比四六%削減は不十分であり、更なる深掘りが必要です。
 また、石炭火力を二〇三〇年に全廃することも一・五度目標の達成に求められています。この観点からも、温対法改正は現行の目標の見直しとともに議論をされるべきではないかと思います。
 次に、カーボンニュートラルに向けた日本の政策についてです。
 二〇二〇年に首相がカーボンニュートラル宣言をして以降、カーボンニュートラルを目指した成長戦略、エネルギー政策が策定されています。しかし、その中身を見ますと、再エネ、省エネへの転換というよりは、電源構成では再エネ、火力、原子力の構造がこれまで同様に維持される形となっています。さらには、グリーンイノベーションとして水素、アンモニア燃料、CCUSを推進し、多額のエネルギー関連予算が計上されたり、二兆円のグリーンイノベーション基金が創設されたりしています。
 しかし、水素、アンモニアは基本的に化石燃料由来で製造されていますので、ほとんどCO2削減につながっておらず、その上、コストは非常に高額になることが明らかになっています。CCSも同様で、日本の地理的条件、経済性、環境性などの観点から実用化には程遠いのが現状で、二〇三〇年までの対策にはなり得ません。水素、アンモニア、CCSなど、将来性のない技術を当てにして、既存の石炭火力の維持、温存にもつながっています。こうした問題については、資料の六から八ページ目に示しましたので、御覧になっていただければと思います。
 次に、九ページ目を御覧ください。
 エネルギー基本計画で示された二〇三〇年の電源構成では、石炭一九%と非常に高い割合を占めています。多くの国が二〇三〇年までの脱石炭を掲げる中、日本の気候変動対策の遅れを象徴するような内容です。
 しかし、問題なのは、この数字すら達成できない可能性が高いということです。十ページ目に示したとおり、今年三月にOCCTOが公表した供給計画取りまとめによると、二〇三一年、十年後の見通しとして石炭火力が電源構成の三二%も占めることが明らかになっています。一方で、再エネは二九%と、エネ基で示された三六から三八%に全く届いていません。
 このことは、省エネ法のベンチマーク制度で発電効率の基準が設けられながら、バイオマスなどを混焼すれば見かけ上効率が高くすることができる仕組みが導入されていたり、容量市場の創設によって、発電所を維持すれば事実上の補助金を受け取ることができるという仕組みが導入されたりするということで、石炭火力を維持、温存する方向で政策がつくられていることによる当然の帰結とも言え、一・五度目標に整合する形でエネルギー政策全般を抜本的に見直していく必要があるのではないでしょうか。
 また、日本最大の発電事業者であるJERAや電源開発も、二〇五〇年のゼロエミッションを掲げながら、足下では新たな石炭火力発電所を建設したり、老朽火力を更に維持させるためのアップサイクル計画を打ち出したりと、石炭火力を畳む方向は見えてきません。
 今国会では、アンモニアや水素を非化石エネルギーと位置付けて推進する改正省エネ法が可決、成立しましたが、これは非常に問題で、石炭火力にグレーアンモニアを二〇%混焼したとしても約四%のCO2削減にしかならないと試算されます。しかも、現時点では一か所の石炭火力発電所で僅か〇・〇二%の混焼をするという実証試験をしているだけにとどまります。
 なお、十七ページに示しましたように、電源開発が現在、長崎県の西海市松島で老朽火力を一部ガス化するGENESIS松島計画の環境アセスを始めました。この計画が実現すると、CO2の大量排出が長期にわたって固定化されるとともに、九州や四国などで再エネの出力制御が現在増えている状況下では再エネ普及の足かせとなりかねません。
 現在、Jパワーに対しては、次のページにありますとおり、大手機関投資家が株主提案を行い、科学的根拠に基づく計画の策定や公表、設備投資が削減目標に整合するかの評価や報告などを求めており、インパクトを持って社会にも受け止められました。今、この時点で政治の側からもこうした計画を中止するよう促すべきだと思います。
 次に、地方公共団体における二〇五〇年実質排出ゼロ宣言についてです。
 現在、環境省の呼びかけに応じて、多くの地方公共団体が二〇五〇年実質排出ゼロを宣言しています。その中には、十九ページに示していますが、現在石炭火力発電所の建設が進んでいる地域を含んでいます。いずれの発電所も今後稼働すれば大量のCO2を排出するもので、地域全体の排出削減努力が全て相殺されても余りあるような規模です。
 市民の多くは地元での石炭火力建設に疑問を持ち、計画が中止されることを望む声が高まっています。そのような中で、自治体が二〇五〇年実質排出ゼロを宣言したことについては歓迎されましたが、実態としては全く伴っていない、建設が着々と進んでいるというのが現状です。
 また、武豊町や横須賀市などでは、温暖化対策実行計画を作成するに当たって、削減計画に石炭火力の事業者分をカウントせず、事業所での所内利用分を含めて不算入としています。これは、環境省が実行計画の策定マニュアルの中で、大規模事業者について、具体的な対策、施策については事業者の取組に委ねることを認める記載をし、不算入を認めているからです。
 一方、神戸市は、二〇三〇年六〇%の削減というのを目標に掲げているのですが、その内実は、神戸製鋼の高炉が廃止されたことによって総量大きく減るということで、これを算入し、六〇%削減を見積もっているにすぎないということです。
 本来であれば、大口排出事業者分も地域の計画の中に位置付けて、地域全体での削減を進める具体的な施策を講じなければ、都合の良い数字合わせに終始し、実質ゼロは絵に描いた餅で終わりかねません。
 なお、その次のページに示しました神戸市の事例ですが、水素スマートシティ神戸構想というのを打ち出され、水素を対策の柱としています。しかし、これもオーストラリアの褐炭という低品位の石炭を原料とした水素で、製造段階でCO2が排出されていると考えられますが、これに関しては何ら触れられていないということです。
 また、二十一ページに示しましたように、石炭火力発電所の建設が進む横須賀市は、今年四月の広報で、二〇二六年の横須賀の絵姿ということでイラストを描いています。それを御覧いただくと、イラストの中に、本来であれば久里浜という辺りに石炭火力発電所の建設地ですのであるんですけれども、そこに太陽光パネルが描かれてしまっており、石炭火力は全く描かれていませんでした。石炭火力は描きたくない未来だからでしょうか。しかし、現実には存在し、計画が進めば横須賀市全体の三・八倍ものCO2を排出し続ける可能性があり、地域での対策が促されるべきだと思います。
 大きな事業所を抱えるような地方公共団体は、石炭火力に限らず、ほかにもたくさんあります。地域が主体となって温室効果ガスの早期削減策を講じるとともに、産業構造の転換などにより地域経済や雇用にも大きな影響が出ることを想定し、公正な移行のプロセスを地域で図ることが求められ、こうしたこと全体を環境省は支援していくべきではないかと思います。
 次に、二十二ページを御覧ください。化石燃料を延命し、再生可能エネルギーの普及を阻害する様々な問題について最後に述べたいと思います。
 これまで述べてきたとおり、日本のエネルギー政策では、石炭火力を維持、温存する方向で様々な政策が打ち出されてきました。一方で、再エネにはブレーキが掛かるような構造上、制度上の問題があります。
 第一に、大手電力会社が支配的な構造にあるゆがんだ電力市場になっているという点です。再エネ事業者や再エネ新電力にとって不利な状況が見られます。
 第二に、再エネが十分に普及する前にFITが終息というか、大きく姿を変えている点で、二〇一二年に制度が創設された当初は太陽光などの普及拡大につながりましたが、現在は調達価格も下がり、一定の規模が確保されていないと市民共同発電などの展開が非常に厳しい状況となっています。今後は、地域が主体となり、再エネ拡大を目指していくためにも、地域できめ細やかに再エネを普及できるような方向でFITを再活用することが必要だと思います。
 第三に、容量市場の導入です。この制度は、再エネがほぼ対象外で、原子力や火力は維持されるインセンティブが働いていますが、再エネを選んでいる人もこの費用を結果的には負担することになっているような不条理な制度です。これも問題だと思っています。
 第四に、とりわけ九州電力や四国電力管内で頻繁に起き始めているのが発電量が需要を大きく上回る再エネの出力制御です。再エネ事業者にとってはこれが大きな打撃となっており、モチベーションの低下を招きかねません。原発や石炭火力の存在がそれに拍車を掛けていると思います。
 第五に、政府による再エネ一〇〇%は無理だという前提で今政策がつくられていること、それから、再エネに対する負のイメージのプロパガンダが横行しているということです。エネルギーのうち、発電部門に関しては一〇〇%再エネにするということは可能だというシナリオが様々な機関からも発表されているところです。再エネを地域で普及するためにも、こうした点でエネルギー政策を全体を見直していくことが求められていると思います。
 最後になりますが、現在、ロシアによるウクライナ侵攻とかエネルギー価格の高騰など様々な情勢を見て改めて思いますのは、気候危機を回避するという観点からだけではなく、エネルギー安全保障の観点からも化石燃料や原発からできるだけ早く脱却し、再エネを増やし、エネルギー自給率を高めていくということが日本にとって極めて重要ではないかということです。脱炭素社会に向けては、実用化に程遠いような未知の技術に過度に期待して予算を投じるのではなく、既に技術的に確立した省エネ、再エネに予算を集中させ、化石燃料や原子力からの転換やその移行に向けた措置をとっていくべきで、政治家の皆様には大きな期待を寄せて、私の話を終わりたいと思います。
 本日はありがとうございました。

発言情報

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発言者: 桃井貴子

speaker_id: 16309

日付: 2022-05-19

院: 参議院

会議名: 環境委員会