佐々木一成の発言 (経済産業委員会)

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○参考人(佐々木一成君) 九州大学の佐々木です。
 本日は貴重な機会いただきまして、委員長の石橋先生を始め委員の先生方に心より感謝申し上げます。
 実は私、今から八年前の二〇一四年の六月の二十三日でございますけれども、この参議院の経済産業委員会の先生方に脱炭素イノベーションハブである九州大学伊都キャンパスを御視察いただいて、対応させていただきました。誠にありがとうございました。
 今回の法改正に関しては、私が三十年以上専門分野としてきました水素などの脱炭素燃料に焦点を当てて御説明させていただきます。現在、総合資源エネルギー調査会の水素政策とアンモニア等脱炭素燃料政策の小委員会の委員長も務めております。
 お手元の資料で御説明させていただきますけれども、二ページ目を御覧ください。配付資料の右上にページ番号を付けております。
 エネルギーは国民の日々の暮らしに欠かせません。石炭の時代から石油の時代、そして現在は多くの天然ガスを輸入しております。近年、地球温暖化、気候危機を踏まえ、脱炭素社会、カーボンニュートラルの実現が世界的な課題になっております。
 ただ、このようなエネルギー需給構造の転換には数十年単位の時間が掛かります。例えば、資料の下の方に書いておりますけれども、我々が家庭で日々使う都市ガスは天然ガス由来でございます。これは、液化天然ガス、LNGを日本が半世紀以上前の一九六九年に輸入し始めたことで実現したものですが、輸入したクリーンなメタンガスが各御家庭に供給されるまでには各地域で二十年近く掛かっております。このように、エネルギーの需給構造の転換には長い年月が掛かりますし、官民の長期的な投資があって初めて実現するものでございます。
 現在のウクライナ情勢を踏まえて液化天然ガスの輸入をドイツなども急遽始めますが、日本が半世紀以上前から長期契約で確保してきたことは、エネルギー価格の高騰の抑制にある程度貢献していると思います。
 次の三ページ目を御覧ください。
 今回の法律改正の中で、水素などの脱炭素燃料が非化石エネルギーに位置付けられることになっております。
 二〇一四年十二月に水素自動車が発売された頃は、水素といえばFCVと呼ぶ水素自動車の燃料というイメージが強かったと思います。しかし、その後、欧州を中心に水素に対する考え方が変わってまいりました。つまり、再生可能エネルギーをより使いやすくし、社会全体を脱炭素化するためには炭素を含まない燃料が必要で、それが水素でしょうという認識が広まってきました。
 大規模に再生可能エネルギーを使えるようにし、その図の②にありますように再エネ由来の水素を非電力部門でも使えるようにし、③と書いておりますけれども、再エネのバッファー機能も果たせるようになります。さらに、右側に書かれておりますように、運輸部門、産業用エネルギー、住宅用熱電供給の脱炭素化、さらに回収炭素を水素と合わせて工業原料化できるのが水素という認識が広まってまいりました。
 つまり、社会全体を脱炭素化するためには、再エネの電気を増やすだけではなくて、電力と燃料と原料、これらを全て脱炭素化すると、それができるのが水素だということになります。
 次の四ページ目を御覧ください。
 このような認識は、我が国のエネルギー戦略にも反映されてきております。この図は、二〇二〇年一月に策定された革新的環境イノベーション戦略の概要をまとめたポンチ絵でございます。
 左上にありますように、再生可能エネルギーを増やすということは国民全体の思いです。余剰の再エネを水素に変えると燃料や原料に使えるようになります。
 二つ目ですけれども、ただ、地方圏と異なりまして、例えば大都市圏の東京のエネルギー需要を東京の再エネだけで賄うことは残念ながらできません。他方、海外では、再生可能エネルギーが大量に入手でき、化石資源と同じか安い地域が出てきました。海外からは日本まで再エネ電力を送電線で運んでくるわけにはいきませんが、図の右上にありますように、水素や水素キャリアを船で安く大量に運べるようになれば海外の再エネを日本でも使えるようになります。
 さらに、図の右下にありますように、回収したCO2から合成燃料や工業原料となる炭化水素を作るには、CO2を出さずに作った水素が必要になります。
 このように、脱炭素社会をつくるための炭素を含まない化学的なエネルギー媒体、これが脱炭素燃料の水素や水素キャリアになります。
 次の五ページ目を御覧いただければと思います。
 二〇五〇年のカーボンニュートラルに向けて世界は大きく動き出しております。我が国は二〇三〇年の高い目標も既に立てています。
 電力につきましては、エネルギー基本計画では、二〇三〇年には一%、将来的には二〇五〇年に一〇%を水素や水素キャリアの燃料アンモニアで賄うことが考えられています。一%というのは少ないように見えますが、水素換算で年三百万トンを発電用燃料などに使うことになります。いずれも流通量は現在はまだ限られておりますので、新たな供給網、つまりサプライチェーンを国内外につくっていく必要があります。また、非電力では、電化できないところで水素などの脱炭素燃料が必要になってきます。
 このように、脱炭素燃料は、電力と非電力の両方でカーボンニュートラルの実現に重要になってまいります。
 次のスライド、六ページ目を御覧ください。
 この水素技術は、エネルギー資源に乏しい我が国が地道に技術開発を積み重ねてきた分野でございます。我が国は世界に先駆けて水素戦略を策定し、水素閣僚会議も日本が主導して開催されています。
 ですが、この数年、その価値が世界的に認知され、追われる立場になってきました。このページにはドイツや米国、EU、フランス、中国の状況がまとめられていますが、各国とも国家戦略や普及目標を策定し、多額の資金を投入し、本格普及に注力しています。日本が世界をリードするとはとても言えない状況になってきて、まさに猛烈に追い上げられているというのが現状です。ですので、我々も更に数歩先を行く必要があります。
 最後の七ページ目を御覧ください。
 代表的な脱炭素燃料である水素は、ここに書いておりますような価値や課題があると言えると思います。このリストは本委員会の先生方が九州大学にお越しいただいた頃に作ったものでございますけれども、今でもこれらの価値や課題は変わっていないと言えます。
 特に、国の存立にも関わるエネルギーを特定の資源や資源国に依存することの危険性、これは今日のウクライナ危機から我々がまさに学んだことでございます。ガソリンは中東からの原油価格に連動しますが、水素ならば国内外の安い多様な資源から作ることができます。さらに、日本が輸入する鉱物性燃料は、貿易統計では毎年十兆円を大きく超えております。時間が掛かるとは思いますけれども、国産の水素を将来増やすことで、エネルギーの輸入代金の一部でも国内に還流させて福祉や教育などに使えるようにしたいところであります。
 我が国には、北海道や東北、四国、九州など、再生可能エネルギーが豊富な地域があります。地方圏がエネルギーで自立することは地方創生にもつながります。
 ただ、このような未来社会を実現するためには多くの課題があるのも事実です。これらの脱炭素燃料は、化石燃料よりもまだまだ高いのが実情です。既存の化石燃料の場合はインフラが既にありますが、新たな脱炭素燃料のインフラや供給網の整備はこれからです。インフラを造りながら、化石資源由来のいわゆるグレー水素から、CO2を回収したブルー水素、そして再エネ由来のグリーン水素に着実に換えていくことで水素の製造時のCO2排出も減らせます。これはアンモニアなどでも同じです。
 また、輸入水素から国産水素に少しずつ換えていくことで、脱炭素燃料の国産化率、つまりエネルギー自給率を上げていくことが可能です。
 また、国民に水素を安心して使っていただけるように、国民の皆様方に御理解をいただく不断の努力が欠かせません。
 最後になりますけれども、グリーン分野は、二〇五〇年に向けて成長が期待され、世界各国で官民の投資競争が加速しています。今回の法律改正で水素、アンモニアなどの脱炭素燃料が非化石エネルギーとして位置付けられることは、エネルギー需給構造の高度化に向けてその価値が明確になります。脱炭素社会に向けた投資も拡大し、グリーン成長の加速につながり、エネルギーの安定供給にも寄与します。本法律案は、カーボンニュートラルに向けて社会全体が動き出す大きな一歩になると考えます。
 私の説明は以上です。

発言情報

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発言者: 佐々木一成

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日付: 2022-05-11

院: 参議院

会議名: 経済産業委員会