岡崎慎吾の発言 (憲法審査会)

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○憲法審査会事務局長(岡崎慎吾君) 私からは、参議院定数訴訟における一連の最高裁判決について、これまでの動向を概観しつつ、本日のテーマとの関係から、合区制度の導入や都道府県を選挙区単位とすることに対する裁判所の判断について御説明させていただくとともに、定数較差の現状等について、簡単ではありますが触れさせていただきたいと存じます。
 資料一ページを御覧ください。
 表一は、参議院定数訴訟の最高裁判決の一覧でございます。古くは昭和三十九年の大法廷判決がございますが、後に触れますように、昭和五十八年の大法廷判決が参議院定数訴訟のリーディングケースとされております。
 参議院では、これまで違憲判決はございませんが、平成八年大法廷判決は、最大較差六・五九倍の投票価値の不均衡について、違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態が生じていたとして、いわゆる違憲状態の判断を示しました。その後も最大較差は五倍前後で推移し、平成二十四年と平成二十六年の大法廷判決では、再び違憲状態の判断が示されました。その後、合区制度導入後に施行された平成二十八年と令和元年の選挙について、最高裁はそれぞれ合憲の判断をしています。
 以下の御説明におきましても、適宜この表を御参照いただければと思います。
 資料二ページを御覧ください。
 裁判所は、選挙制度の憲法適合性について、まず、投票価値の不均衡が違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態に至っているか否かを判断し、これが認められる場合に、選挙までの期間内に是正されなかったことが国会の裁量権の限界を超えるか否かを検討する判断枠組みを採用しています。最高裁は、こうした判断枠組みは、憲法秩序の下における司法権と立法権との関係に由来するものであると説明をしています。
 このため、憲法適合性の判断では、国会が選挙制度の決定に幅広い裁量権を有することを前提に、是正措置がなされなかった期間の長短だけではなく、是正措置の内容や検討を要する事項等の諸般の事項を総合考慮して、国会の裁量権行使の在り方が相当と言えるか否かという観点で評価がなされています。
 資料三ページから四ページを御覧ください。
 最高裁昭和五十八年判決は、参議院定数訴訟のリーディングケースとされており、投票価値の平等を憲法上の要請と認め、国会の裁量権との関係を示した衆議院定数訴訟の最高裁昭和五十一年判決の趣旨を踏襲しています。この五十八年判決で示された基本的な判断枠組みは、累次の参議院定数訴訟を経て、直近の令和二年判決まで、その趣旨が踏襲されています。
 五ページに掲載した平成二十九年判決でも、昭和五十八年判決で示された投票価値の平等と国会の裁量権行使の関係などに関する基本的な判断枠組みや、参議院の性格と機能などを選挙制度に反映させるための国会の合理的裁量などについての基本的な立場が踏襲されています。
 資料六ページから七ページを御覧ください。
 表一で御説明いたしましたとおり、平成八年判決では参議院定数訴訟では初めて違憲状態の判断が示されましたが、五倍前後の最大較差が継続する中で、最高裁の判断も次第に厳格化し、各判決では反対意見が多く付されるだけでなく、多数意見からも国会に対して厳しい指摘がなされるようになりました。
 平成十八年判決では、国会において、これまでの制度の枠組みの見直しを含め、選挙区間における選挙人の投票価値の較差をより縮小するための検討を継続することが憲法の趣旨に沿うものである旨の指摘がなされ、平成二十一年判決では、最大較差の大幅な縮小を行おうとすれば、現行の選挙制度の仕組み自体の見直しが必要となることは否定できず、国会において、速やかに適切な検討が行われることが望まれる旨の要望がなされました。
 そして、平成二十四年判決及び平成二十六年判決では、再び違憲状態の判断が示されました。
 資料九ページから十ページを御覧ください。
 平成二十九年判決は、合区を導入した平成二十七年の法改正について、これまでにない手法を導入して行われたものであり、都道府県を各選挙区の単位とする選挙制度の仕組みを改めて、長年にわたり大きな投票価値の不均衡が継続してきた状態から脱せしめるとともに、更なる較差の是正を指向するものと評価できる旨の判示をしました。
 また、令和二年判決は、平成三十年法改正における立法府の検討過程に対して、合区の解消を強く望む意見も存在する中で、合区を維持して僅かではあるが較差を是正して、平成二十七年改正法における方向性を維持するよう配慮しており、参議院選挙制度の改革では、憲法が採用している二院制の仕組みなどから導かれる参議院が果たすべき役割等も踏まえる必要があるなど、事柄の性質上、慎重な考慮を要することに鑑みれば、その実現は漸進的にならざるを得ない面があり、較差是正を指向する姿勢が失われたと断ずることはできない旨の評価をしました。
 資料十ページから十四ページを御覧ください。
 昭和五十八年判決は、参議院地方選出議員の選挙の仕組みについて、都道府県が歴史的にも政治的、経済的、社会的にも独自の意義と実体を有し、一つの政治的まとまりを有する単位として捉え得ることに照らし、これを構成する住民の意思を集約的に反映させるという意義ないし機能を加味しようとしたものであると解しました。
 しかし、その後、最大較差五倍を違憲状態と判示した平成二十四年判決は、都道府県を参議院議員の選挙区の単位としなければならないという憲法上の要請はなく、その仕組みを維持しながら投票価値の平等の実現を図るという要求に応えていくことは、もはや著しく困難な状況に至っている旨の認識を示しました。
 さらに、同様に違憲状態の判示をした平成二十六年判決も、より適切な民意の反映が可能となるよう、単に一部の選挙区の定数を増減するにとどまらず、都道府県を単位として各選挙区の定数を設定する現行の方式をしかるべき形で改めるなどの具体的な改正案の検討と集約が着実に進められ、できるだけ速やかに、現行の選挙制度の仕組み自体の見直しを内容とする立法的措置により違憲状態が解消される必要があるとの認識を示しました。
 もっとも、合区制度導入後に施行された平成二十八年選挙についての平成二十九年判決では、具体的な選挙制度の仕組みを決定するに当たり、一定の地域の住民の意思を集約的に反映させるという意義ないし機能を加味する観点から、政治的に一つのまとまりを有する単位である都道府県の意義や実体等を一つの要素として考慮すること自体が否定されるべきものであるとは言えず、投票価値の平等の要請との調和が保たれる限りにおいて、このような要素を踏まえた選挙制度を構築することが直ちに国会の合理的な裁量を超えるものとは解されないとの判断が示されました。
 また、先ほど御紹介した平成二十四年と平成二十六年の最高裁の判断については、都道府県を各選挙区の単位として固定することが投票価値の大きな不平等状態を長期にわたって継続させてきた要因であると見たことによるものにほかならず、各選挙区の区域を定めるに当たり、都道府県という単位を用いること自体を不合理なものとして許されないとしたものではないと判示しました。
 また、直近の令和二年判決においても、平成二十九年判決と同様に、具体的な選挙制度の仕組みを決定するに当たり、一定の地域の住民の意思を集約的に反映させるという意義ないし機能を加味する観点から、政治的に一つのまとまりを有する単位である都道府県の意義や実体等を一つの要素として考慮すること自体が否定されるべきものであるとは言えず、投票価値の平等の要請との調和が保たれる限りにおいて、このような要素を踏まえた選挙制度を構築することが直ちに国会の合理的な裁量を超えるものとは解されないとして、その立場を再度確認しています。
 以上が、これまでの最高裁の判断に関する御説明でございます。
 資料十五ページから十六ページを御覧ください。
 選挙区間の定数較差の現状につきましては、最近の数値をお示ししてございます。いずれの数値に基づきましても選挙区間の較差は最大で三倍を超える状況となっており、前回通常選挙時より僅かではありますが拡大している状況にあります。
 また、十七ページから十八ページは、合区導入前後における選挙区での都道府県別投票率の推移を示したものでございます。
 さらに、十九ページから二十ページは、同様に合区導入前後における選挙区での無効投票数及び無効投票率の推移を示したものでございます。
 二十一ページから二十三ページは、平成二十七年法改正による合区の導入を契機に、毎年、全国知事会などから合区に関連する決議や提言が出されておりますが、その主な状況と内容の一部を御紹介いたしたものでございます。
 二十四ページ以下には、一部ではございますが、本件テーマに関連性のあると思われる有識者の御意見を御紹介しております。
 また、三十ページ以下には、参議院定数訴訟の直近の最高裁判決である令和二年判決について、反対意見を含む全文を掲載しておりますので、御参照いただければ幸いでございます。
 私からは、以上でございます。

発言情報

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発言者: 岡崎慎吾

speaker_id: 34776

日付: 2022-05-18

院: 参議院

会議名: 憲法審査会