村上陽子の発言 (厚生労働委員会)
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○参考人(村上陽子君) ありがとうございます。
連合で副事務局長を務めております村上です。本日は、参考人としてお招きいただき、ありがとうございます。
本日は、雇用保険法等改正法案について、働く者の立場から意見を述べさせていただきます。
初めに、雇用保険法についてです。
御承知のとおり、いざというときに働き手を守る重要なセーフティーネットである雇用保険制度は、労働者と使用者、そして国の共同事業です。提出資料二ページのとおり、労使折半の保険料と国庫負担を財源として政府が運営しています。このうち、雇用調整助成金などが含まれる雇用保険二事業については使用者負担の保険料のみで運営されています。
雇用保険の給付面については、閣法では、失業等給付と求職者支援制度に係る各種暫定措置の継続などが盛り込まれています。特に、雇い止めによる離職者の基本手当の給付日数に係る特例を引き続き三年間延長することは評価しています。
雇用保険二事業については、現場からは、雇用調整助成金の特例措置によって雇用が辛うじて守られているという切実な声も寄せられています。特に、地域特例、業況特例については、まだコロナ禍の影響が残る産業、地域の労働者の保護の観点から、今後も状況を踏まえ、必要な水準を維持することが重要であると考えます。
また、労働者本人の意思を前提として、在籍型出向を活用した雇用維持も促されるよう、出向先企業の開拓や産業雇用安定助成金の制度周知の強化はもとより、産業雇用安定助成金を雇用調整助成金に劣後しない支給水準とすることも検討すべきです。
一方で、三ページのとおり、令和三年度末時点で約一兆三千百億円ある失業等給付の積立金の残高が次年度にほぼゼロに近い残高となる見込みであるなど、雇用保険財政は危機的状況にあります。そこで、閣法における財政面の改正について三点申し上げます。
一点目は、失業等給付についてです。
連合は、労働者の失業時の生活の安定を図ることは国の責務であり、国庫負担は当然の道理である旨、労働政策審議会を始めとする場で強く主張してきました。
しかし、四ページのとおり、閣法には国庫負担割合の本則の見直しが盛り込まれており、雇用情勢及び雇用保険の財政状況が悪化している場合のみ四分の一とし、それ以外の場合には四十分の一とする、別途国庫から機動的に繰入れ可能な制度を導入するとされています。
本来、失業等給付の国庫負担割合は四分の一とされているところ、暫定的な引下げ措置によって四十分の一が適用されています。この点、雇用保険部会においても労使双方から原則への回帰を求める意見が相次ぎ、本年一月に取りまとめられた雇用保険部会の報告では、失業等給付に係る国庫負担については、本来、国の財政の状況等に左右されることなく、現行制度の原則的な負担割合である四分の一に戻すべきであるとの意見が明記されました。
また、閣法では、令和四年度の雇用保険料率を、年度前半は現行どおり〇・二%、後半は〇・六%へ引き上げることとしています。新型コロナウイルスに配慮した雇用保険料率の設定とすることは大きな意味がありますが、労使の雇用保険料率を引き上げる前に、まずは失業等給付の国庫負担を原則に戻すことが必要です。
二点目は、雇用保険二事業についてです。
失業等給付の積立金からの借入累計額は、令和三年度末時点で約二・六兆円に達する見込みです。現行の規定では、雇用保険二事業の収支に剰余が生じた場合には、その全額を返済することとされています。
閣法では、剰余の二分の一までの雇用安定資金への組入れ及び雇用保険の財政状況や雇用保険二事業の状況に応じた返済必要額からの控除を可能とすることとし、令和六年度までを目途に、控除の在り方について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるとの検討規定が盛り込まれています。
失業等給付の積立金からの借入額には、労働者が負担する保険料が積み上がったものも含まれるため、資金がしっかりと保全されることが大前提です。したがって、単純に返済必要額から控除するのではなく、一般会計から雇用安定資金への直接的な繰入れを行った上で、それを返済に充てる形とすべきです。
また、財源についても、国の政策が失業のみならず休業とも関係が深いことから、雇用安定事業に国庫負担割合を設定することや、能力開発事業に一般会計や他省庁予算を活用することも検討し、財政基盤を整えるべきであると考えます。
三点目は、育児休業給付の在り方と、その財源についてです。
育児休業給付は、雇用保険で運営しており、被保険者のみが対象となります。子育てと仕事の両立の大変さは、フリーランスなど雇用によらない働き方をしている方についても変わるものではありません。
この点、閣法では、令和六年度までを目途に、雇用保険法の規定による育児休業給付及びその財源の在り方について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるとの検討規定が盛り込まれています。
子育て支援における国の責任を踏まえれば、フリーランスを含め、育児休業期間中の経済的支援は一般会計で実施されるべきであると考えます。
なお、育児休業に関しては、この十月から産後パパ育休と呼ばれる男性の出生時育児休業が施行されます。男性の育児休業取得が進まない背景には、固定的性別役割分担意識が根源にあると考えられます。そのため、その払拭や、職場の理解と協力の下に、労働者本人が安心して希望する期間を取得できるための支援が必要です。
今後、労働政策審議会において雇用保険財政の在り方についての議論がなされた際には、法律案要綱の答申に付された意見を踏まえ、公労使の意見を最大限に尊重していただきたいということを申し添えたいと思います。
次に、職業安定法について申し上げます。
連合は、前回の職業安定法改正のときから、募集情報等提供事業が法の対象ではないこと、したがって、規制が不十分であることを指摘してきました。今回、新たな形態のサービスも加える形で募集情報等提供事業者の定義を拡大した上で、職業安定法の対象とする改正が行われることについては、一歩前進だと考えています。
その上で、五ページのとおり、リコメンド及びフリーランス保護について申し上げます。
まず、募集情報等提供事業者のリコメンド機能についてです。
リコメンドの実態においては、職業紹介における情報の選別又は加工に極めて近いものもあるのではないかと考えております。情報技術が発達し、現在はAI等も含めた様々なサービスが提供されています。
指針において、職業紹介事業と募集情報等提供事業との区分の判断基準を明らかにするということですが、判断基準を明確にするためには、AI利用も含めたリコメンドの実態を明らかにする必要があるのではないでしょうか。
次に、フリーランスに係る募集情報について申し上げます。
フリーランスは労働者ではないとされているため、職業安定法の対象ではないとされています。しかし、求職者として情報の的確性や最新性が担保される必要があることは労働者と変わりありません。
政府は、昨年三月にフリーランスガイドラインを策定し、ワンストップの相談を実施しています。相談だけではなく、的確で最新の情報が掲載されるよう、実態を踏まえたフリーランス保護の在り方について検討が必要と考えます。
最後に、職業能力開発促進法について申し上げます。
職業訓練は、在職中の労働者及び求職者が就職活動やキャリアアップを行うに当たり、必要な知識、スキルを習得するために極めて重要なものです。その中でも、公共職業訓練においては、労働者や求職者と企業のニーズが合致する訓練コースの充実や、今後、あらゆる産業で加速化、主流化するDXやGXに対応する人材育成が必要と考えております。
六ページのとおり、今回の能開法改正では、法定化される新たな協議会には、労使などに加え、新たに教育訓練機関や民間職業仲介機関等も加わることで、今後、地域や企業の求める人材・訓練ニーズがこれまで以上に職業訓練に反映されることを期待したいと思います。
一方、そうしたニーズに加えて、受講者属性なども踏まえた訓練の設定、また、訓練コースの改善につなげる効果検証は、引き続き重要であると考えます。さらに、求職者などが職業訓練受講後に自身が希望する仕事に就けるように、求職者などの希望を踏まえたキャリアコンサルティングの充実や就労支援の強化を同時に図ることも重要です。
次に、キャリアコンサルティングについてです。
七ページのとおり、キャリアコンサルティングの責務規定が整備されますが、キャリアコンサルティングは基本的に企業や労使の取組などの実態に即した対応が重要です。
また、キャリアコンサルタントの活用に関しては、個々の企業や労働者の状況を踏まえた上で、今後はDXやGXなどの新たな変化や産業動向も想定したコンサルティング能力が求められます。そのため、専門的な知識の習得など、専門性を高めていくことが必要と考えております。
加えて、労働者や求職者自身が望むキャリア形成支援の更なる充実は当然のことながら、今後は、障害者、母子家庭、生活保護受給者など多様な背景や事情を抱える求職者なども含めて、キャリアコンサルティングをより充実させることも必要と考えております。
結びに、やや個人的な所感も述べさせていただきます。
二〇〇一年から二〇〇二年頃、ITバブルの崩壊などにより完全失業率が五・五%になるなど、雇用情勢が非常に悪化した時期がありました。当時、ハローワーク前で求職者の方に対面でのアンケートを行い、突然仕事を失い困惑しているとの声や、仕事がなかなか見付からないという声を多く伺いました。そうした中で、失業中の生活を支える糧になるのは雇用保険の失業給付であるということを、文字だけではなく現実のものとして実感いたしました。
二〇〇八年のリーマン・ショックの際には、労働相談活動を行う中で、労働者派遣で働く皆さんが当時雇用保険に加入できていなかったなど、雇用保険のカバー率の低さを認識いたしました。一方、雇用調整助成金が雇用維持に大きな役割を果たしました。東日本大震災のときも同様です。そして、今回のコロナ禍においても雇用保険の仕組みはフル活用されるに至っています。このような重要な機能を持つ雇用保険制度を今後も堅持しなければならないという思いを強くしています。
大きな経済ショックがあっても雇用を支え、やむなく失業しても生活を支える、働く人の重要なセーフティーネットを是非守っていただきたいということをお願い申し上げて、私の意見陳述を終わります。
御清聴いただき、ありがとうございました。