原田仁希の発言 (厚生労働委員会)

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○参考人(原田仁希君) 首都圏青年ユニオンという労働組合で執行委員長をしております原田と申します。
 本日は、御発言の機会をいただき、本当にありがとうございます。
 私からは、コロナ禍の労働者の実態を踏まえたと、そういう視点で話をさせていただければと思います。
 我々首都圏青年ユニオンは、二〇〇〇年に発足した、一人から、どんな働き方でも入れる労働組合です。差別的な待遇だったり所得補償制度がないことで貧困と隣り合わせにある、そういった困窮した労働者とともに会社や国と闘ってきました。毎年平均三百件ほどの労働相談が寄せられていますが、コロナ禍で労働相談が三倍以上に増加しました。
 中でも多い相談が、飲食業界などで働く非正規労働者からの、働ける時間が削減されたのに企業が休業補償してくれないと、こういった相談が八割以上を占めました。二〇二〇年四月以降、組合としても六十社を超える企業と団体交渉を行って、そういった背景もあり、組合員も増えているような状況です。
 一つ事例を紹介しますと、カフェだったり定食屋、居酒屋を経営する大企業のフジオフードシステムでは、休業要請、時短要請等によって従業員の労働時間が減った際に、正社員には休業手当を出したんですけれども、非正規には出ないと。そういった非正規差別が行われて、同社でパートで働く組合員の方々は休業手当を出してほしいと団体交渉の場で要求しましたけれども、シフト制で働く労働者には休業手当を出す義務がないからと要求を拒否されました。この件は裁判にまで発展しています。
 この間、政府は、非正規労働者に休業手当を出す企業のために緊急雇用安定助成金を創設、拡充していますが、そもそも対象労働者に休業手当を出さないため制度を活用しないと、こういった企業が幾つもあります。そこで、国が直接補償する制度としていわゆる休業支援金がつくられましたが、申請に企業の協力が必要であったり大企業の労働者が対象外になっていたりと、非常に使いづらい制度でした。
 私たちも厚生労働省に何度も要請を行い、国会質問でも取り上げられ、菅前首相にも組合員が直談判した結果、大幅な制度改善を実現してきました。詳しくは、資料の記事もありますので、後ほど御参照していただければと思います。
 現状、この休業手当が支払われないシフト制とは、半失業状態を生み出す不規則で不安定な働き方です。シフト制の問題点や事例は、また資料にあるんですけれども、青年ユニオンとその弁護団で作ったシフト制労働黒書というものにまとまっています。この黒書を基に厚生労働省に要請を行っていますけれども、まだ実効性のあるルール作りがされていません。
 シフト制労働のルールが整備されない限りは、休業支援金をコロナ禍に限らず恒常的な制度として維持していくべきだと考えています。シフト制労働者の休業時の所得保障制度として休業支援金を維持していくためにも、しっかりと国が財政負担することが重要です。
 また、私たちは、労働相談に限らず失業手当の申請手続の支援も行っています。離職票に書いてある情報は不十分なことが多く、会社都合として扱うべきケースも、多くの離職者が会社都合扱いとなる要件を知らないために自己都合となって扱われてしまうと、そういったケースが多くあります。この自己都合離職ということなんですけれども、支給までに時間が掛かります。支給日数も短くなってしまいます。そのため、我々は、実際にハローワークに同行して失業までの経過説明を手伝ったり複雑な申請の手引きをしたりして、適切に会社都合扱いとなるように支援しています。
 また、活動として、フードバンク活動も行っています。利用者の八割以上が女性で、半分以上がシングルマザーの方です。子育ての合間を縫ってパートで働いているという人がほとんどですけれども、月十万円前後のパート収入であっても生計に欠かせなくなっています。コロナ禍で休業や失業が生じたときにアクセスできる所得保障制度がほとんどないことが、こういったフードバンクの利用増加の状況を生んでいます。
 雇用保険制度についてですけれども、先ほど紹介したフードバンク、第三回目、二月に開催したんですけれども、百七十八人が利用されました。その半数以上の七十九人が、コロナ感染拡大始まった二〇二〇年四月以降に失業を経験していました。けれども、失業手当を使わなかった人は七十九人中六十八人です。使わなかった理由としては、自己都合離職だから次の仕事を見付ける方が早かっただったり、そもそも雇用保険に入れていないなどがありました。二月に行った第三回では百七十八人が利用されたんですけれども、そのうち八割以上が女性で、五割以上がシングルマザーです。現在働いている人が百七十八人中百二十五人と、働いているという人は多かったんですけれども、そのうち非正規が九十一人と、七三%を占めました。この結果なんですけれども、我々としては雇用保険制度の欠陥をよく反映しているものだなというふうに思っています。
 雇用保険制度の第一の問題として、先ほども言ったように、自己都合離職の場合には給付制限期間として支給まで二か月も待たなければいけません。受給資格の決定や待期期間も含めると合計で三か月も掛かってしまいます。そのため、申請を諦めてしまう人が多くいます。この離職理由による給付制限をなくさなければ、民間求人情報サイトに載っている実態が不明瞭な求人だったり低賃金、低処遇の求人であっても、ないよりはましであると応募してしまう、働いてしまう、これをいわゆる労働力の窮迫販売といいますけれども、これが続いています。安売りをしてしまうということですね。労働力の窮迫販売の拡大で、低賃金で劣悪な労働条件の雇用の広がりの要因になっています。
 第二の問題としては、そもそも雇用保険に加入できない人が多くいるという問題です。
 週二十時間以上働いていることが加入義務が生じる条件となっていますが、実態としては、週二十時間未満で働いているような月の収入が十万円行くか行かないかくらいの人たちであっても、その収入を失えば生活が苦しくなってしまう実態があります。
 そして、週二十時間未満で働いている人はこの三十年間で急増しています。就業構造基本調査によれば、二〇〇七年から二〇一七年にかけての十年間で、不規則就業と週二十時間未満就業は合計で二百五十万人ほどに増えています。今や雇用者のうちの一五%以上が短時間、不規則労働者ですが、失業しても何も保障がない労働者がこれだけ増えているということです。
 また、ここには先ほども言ったシフト制で働く労働者が多く含まれていると思いますが、シフト制の場合、週二十時間以上働く時期があったとしても、労働時間が変動するからという理由で雇用保険に加入できていない、こういった方が多くいました。さらに、一方的にシフトを減らされて雇用保険から外されてしまうと、こういった事例もあります。要件は満たしていても、単純にパート、アルバイトであるからという理由で雇用保険に入れてもらえないというケースも多くあり、事業主も労働者も双方も加入しなければならないという、短時間労働者については加入しなければならないという認識が足りず、加入漏れが広がっています。
 したがって、雇用保険制度の側も、週二十時間未満やシフト制でも生計のため働いている短時間労働者も含めて、多くの労働者が加入できるように抜本的な加入対象の拡大が必要だと思っています。我々としては、加入対象を週十時間以上に引き下げるなど抜本的な引下げが必要ではないかと思っています。そして、短時間、非正規労働者も含めて、多くの人が雇用保険に加入するということが当たり前の状況になっていけば、労働者の雇用保険の加入というのは規範化、社会的に規範化されて、加入漏れというのもなくなっていくというふうに考えています。
 この短時間労働者を念頭に置いた雇用保険をつくるには当然国庫負担は不可欠になってくるため、国庫負担の引下げではなく、むしろしっかりと国庫負担を引き上げていくというふうに考え、必要があると考えています。
 第三の問題として、やっぱり支給水準が低過ぎます。
 雇用調整助成金のコロナ特例の場合だと、助成対象となる休業手当の日額上限は一万五千円でしたけれども、失業手当になると、若い世代だと日額七千五百円から六千七百円というふうに上限とされていて、支給日数も、自己都合離職だと多くの場合三か月、九十日だけになってしまいます。
 こういった支給日数、日額についても抜本的な引上げが必要ではないかというふうに考えています。
 次に、職業安定法の改正についてですけれども、今回の改正案のうち職業安定法の部分では、求人情報サイトを運営する企業、いわゆる求人メディアを募集情報等提供事業者として位置付ける案が出されています。そして、募集情報等提供事業者に対して募集情報等の正確性や最新性を保つための措置などを義務付けるとともに、行政による指導監督を可能とするという提案があります。
 この方向での改正そのものは前向きなものだと捉えていますけれども、募集情報の正確性を保つための措置を義務付けるという点が具体性に欠けていると。というのも、求人情報サイトに掲載されている情報と契約時の内容が異なって、後に労働問題を引き起こすケースが多くあります。
 例えば、最近うちで扱ったケースとして、医師や薬剤師のための求人サイト、エムスリードットコムキャリアに掲載されたある求人で、雇用期間について定めなしという求人が掲載されていたんですけれども、契約書には半年間の有期雇用にされていたというケースだったり、無期雇用、試用期間ありという求人に応募した組合員が採用内定を得たんですけれども、契約書には三か月の有期雇用とすると記載されていたケースだったり。
 こうした労働者の混乱を避けるため、求人メディアに対しては、求人情報の掲載に当たって実際の契約書のチェックも行う義務を課すべきです。そもそも、求人情報を掲載する際、求人者がどういった企業であるか、求人メディアがまともに確認していないであろう事例もあります。
 求人サイト、インディードには、株式会社ITソリューションズという企業の求人が載っています。この求人に応募したシステムエンジニアの方々が、実際には株式会社サクセスという全く別の会社で雇用契約を結ばされる。このサクセスという企業はSEを派遣する事業をやっているんですけれども、その派遣の許可も取っていない。また、労働者に自社のプログラミングスクールを受講させ、まともに授業もやらないのに代金を支払わせたり、派遣先をだますために労働者に経歴詐称を強要する、残業代を支払わない、そういった詐欺や違法行為を繰り返しています。求人に載っていたそのITソリューションズという会社を調べたけれども、登記もされていません。実体のない企業だったんですね。この企業の情報をインディードが載せたのかと驚きました。
 この被害者がユニオンに十人ほど駆け込んでいますが、組合からの要求も会社は全て無視しており、残業代不払の点で進めていた労基署への告訴が先日受理されました。とりわけ悪質な事例なんですけれども、実体のない企業ですら求人を出せてしまうのはまずいのではないでしょうか。
 先月、これも厚労省に要請したのですが、今回の法改正に当たって、求人メディアには、求人者の登記の存在や、労働保険手続が済んでいるか、やっている事業の許認可があるかをチェックする義務を課すべきです。チェックして、登記や必要手続を取っていない企業の情報は載せないようにさせる。求人メディアが果たしている社会的な役割を考えれば最低限の義務です。それだけでなく、掲載する労働条件をハローワークと同等のものとすることも求職者の安心、安全のために必要だと考えています。
 最後になりますけれども、コロナ禍に我々の組合に駆け込んでくる相談者や組合員の多くは非常に追い詰められています。まず、貯蓄がありません。皆さん、住居確保給付金だったり緊急小口資金などの制度をフル活用して、何とか生き延びています。そして、そのような状況に置かれている多くが女性の労働者です。女性のパート労働者の収入というのは家計補助的なものだとみなされてきましたけれども、なくても影響は、家計に影響が少ないと思われていましたけれども、実態はパート労働者の収入も家計を維持するものとなっています。重要な部分になっているんですね。五万円や十万円の収入がなくてはならないものになっているのが実態です。
 女性の非正規率が高いことは周知の事実ですが、このような構造的な差別の是正には、パートなどの短時間労働者に対しても雇用保険の対象にしていくと、そういった手だてが必要です。ジェンダー平等という観点からも、雇用保険制度の抜本的拡充が検討されるべきです。
 以上、非正規労働者が増大し、その中でもシフト制など極めて不安定な働き方が蔓延している現在、雇用保険制度を充実させることは最も重要な課題です。特に、非正規労働者にとって使いやすい雇用保険制度にすることが非常に重要です。安心して失業できて、確かな情報を基に仕事を選べる、そういった環境づくりのために、現段階の改正案では到底足りていないので、より広い視野での検討が必要だというふうに考えており、私からの意見とさせていただきます。
 以上です。ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 原田仁希

speaker_id: 1052

日付: 2022-03-25

院: 参議院

会議名: 厚生労働委員会