赤池昭紀の発言 (厚生労働委員会)

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○参考人(赤池昭紀君) よろしくお願いいたします。
 和歌山県立医科大学薬学部の赤池と申します。本日は、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律案に対する考え方を御説明する機会をいただきまして、誠にありがとうございます。
 私は、厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会の部会長代理として、昨年末に緊急承認制度の方向性につきまして取りまとめに関わりました。元々の専門分野は薬理学でございますが、現在は薬局や薬剤師の将来的な在り方に関する研究に従事しており、厚生労働省の薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会の薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関するワーキンググループの座長も務めております。
 私は、本改正案に賛成の立場から、主に三点、緊急承認制度、リアルワールドデータ活用、電子処方箋につきまして、考え方を申し上げたいと思います。
 まず、緊急承認制度についての考え方です。
 緊急時に極めて迅速な医薬品等の承認を行うということは大変重要です。これまで新型コロナウイルスワクチンや治療薬につきましては、感染拡大防止のため、特例承認や優先的な審査等により、早期の薬事承認に最大限に取り組まれてきました。しかし、承認の更なる早期化を実現するために、緊急時における薬事承認の必要性が高まってきています。より速い速度で、いわゆる迅速に審査ができるような体制を整えていただきますよう、是非お願いいたしたいと考えています。
 制度自体が迅速な審査を可能にするようにと法律が改正されましても、制度の施行後に、結果として薬事承認の速度が速まらなければ意味がありません。実際の審査及び薬事承認の迅速化を実現するためには、制度と並行して緊急時の薬事承認に関わる審査体制の整備なども進めることが重要であると考えます。
 また、緊急時の薬事承認であっても、対象となる医薬品等の安全性についてはきちんと確認するということが重要です。医薬品医療機器制度部会におきましても、緊急時であったとしても、安全性は通常の薬事承認と同等の水準で確認することを前提とするとの議論がございました。これまでの現行制度、例えば特例承認等において審査対象となる医薬品等の安全性が確認されていますが、そこで見られている安全性の確認のレベルが緊急時の承認でも維持される必要があると考えます。
 次に、より効率的な有効性、安全性の評価を行うためのリアルワールドデータの活用について申し上げます。
 リアルワールドデータを収集する場合に、どれだけ信頼できる臨床データをできるだけ効率よく漏れなく取れるかということが非常に重要であると考えます。そのためには、データ収集に向けた体制の整備、また、リアルワールドデータを医薬品等の安全性や有効性に活用する情報として生かすための体制の整備が重要です。
 安全性評価に当たっては、これまでの個別事例の因果関係の評価に基づいた安全対策に加えて、より効率的な安全性の評価のために、リアルワールドデータの活用や集積する事例を統計的に解析した上での安全対策にも重点を置くことが望まれます。
 さらに、緊急時承認では、例えば検証的臨床試験、いわゆる第三相臨床試験になりますけど、こういった試験が完了していない場合でも、入手可能な臨床試験の成績に関する資料を基に有効性が十分に推定でき、さらにその有効性に比して安全性が確認できる場合には申請が可能となると考えられます。
 このようなケースでは、本承認に向けて更に有効性及び安全性に関する臨床データの蓄積が必要となってまいります。本承認に向けたリアルワールドデータの審査体制につきましても、これから整備していく必要があると考えられます。
 例えば、緊急承認制度の対象には、ワクチン以外の医薬品、医療機器等も入ってくることが考えられます。これらの製品が緊急時承認を受けた後、本承認を受ける際には、従来の制度に戻って本承認に持っていくというよりは、臨床データをデータベースとして構築していき、リアルワールドデータとして有効性と安全性を確認し、審査にかかるような形に整えていくということが重要と思われます。今後、薬事審査を担うPMDAにおきまして、リアルワールドデータの活用について検討を行い、ガイドラインなどを示していただくことが重要だと考えております。
 最後に、電子処方箋について申し上げます。
 電子処方箋を含む医療のデジタルトランスフォーメーション、いわゆるDXの背景として、まず、医療機関や薬局は極めて多忙であり、時間的なゆとりを持つためのツールの一つとしてICTの活用が極めて重要であるということがあります。
 薬局を例に取りましても、ICTを活用した対物業務の効率化による服薬指導の時間の確保、あるいは電子処方箋を活用した医療機関への効率的なフィードバックなど、様々な効果が期待されます。厚生労働省の薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会のワーキングにおきましても、薬局薬剤師のDXの観点から、電子処方箋の導入については高い期待が寄せられました。
 二〇一五年に取りまとめられました患者のための薬局ビジョンにおいて、対物から対人業務にシフトしていく薬局のあるべき将来像が示されましたが、一方で、これまで薬局の薬剤師が対人業務に必要とする医療情報を取得するための情報基盤が十分に整っていなかったということもありまして、薬局に来局した患者さんからの聞き取り等の断片的な情報に基づいて対人業務に従事せざるを得ないということが多いという状況にあります。必ずしもこれだけが原因とは申せませんが、このような状況もありまして、薬局ビジョンに示された薬局の価値が十分に発揮されているとは言い難い状況となっています。
 他方、世界的に見れば、コロナ禍でオンライン診療、服薬指導を始め医療分野のDXに対して飛躍的に関心が高まってきており、海外ではコロナ以前から電子処方箋を含めてDXの取組が先行しています。このような医療のデジタル化や医療情報ネットワークの構築が進んでいる米国、英国、カナダあるいはエストニアなどの北欧諸国では、既に電子処方箋が導入されています。
 一方、日本ですが、国が主導する形で医療データ情報基盤が整いつつあり、ウエアラブル端末等から得られる情報も急増しています。昨年十月には、レセプト、薬剤情報や特定健診情報等のマイナポータル経由での閲覧が可能となり、オンライン診療、服薬指導の恒久ルールについても昨年度策定されました。また、PHRに関わるコミュニケーションツールとして、電子版お薬手帳アプリの利活用推進についても取組が進んでいる状況です。
 こういった状況を踏まえ、さらに、電子処方箋、オンライン服薬指導、マイナポータルを通じた各種医療情報の共有等のデジタル技術の進展を踏まえるとともに、さらに、諸外国のDX動向も踏まえまして、医療機関や薬局薬剤師のデジタルトランスフォーメーションに取り組んでいくべきであると考えております。特に、調剤後の患者フォローアップ情報を収集、分析することや、個人にオーダーメードしたヘルスケアサービスを提供し、必要に応じて受診勧奨を行うことについては、地域の薬剤師が中心となって担っていくべき重要な役割と考えています。その際、患者さんから収集したフォローアップ情報だけではなく、IoTデバイス等の活用により得られるPHR情報も含めた種々の情報を薬剤師が関わる医療及び健康サポートに有効活用するとともに、薬剤師自身も医療データ利活用できる人材に生まれ変わっていく必要があると考えています。
 来年一月に予定されている電子処方箋の導入については大いに賛成いたしますが、関連して、特に二点申し上げたいと思います。
 一点目は、サイバーセキュリティーについてです。
 最近、マルウエアやランサムウエアなどの悪意のあるプログラムによる攻撃が医療機関にも来るようになってしまっています。電子処方箋導入に当たり、ここをどのように守っていくか、現在システム設計中だと承知していますが、セキュリティー確保については万全を期すようにお願いいたします。
 二点目は、電子処方箋に加えて、医療情報の更なる共有についてです。
 薬局が電子処方箋や電子カルテ情報の共有を通じて病名や検査値を含めた患者さんの医療情報にきちんとアクセスできるということは非常に重要です。地域によっては、医療情報ネットワークに薬局が参加して実際にそういったことが実現できているところもございます。例えば、長崎のあじさいネットですとか福島のキビタンネットがあり、また、和歌山にも青洲リンクという医療情報ネットワークがありまして、これらの地域では多くの薬局が参加して医療情報をネットワークから取得しています。そういったネットワークから薬局が必要となる医療情報を取得して、服薬管理、さらに指導に生かしていくということは非常に重要なことであり、当然、患者さんの利益になることであります。
 将来的には、処方箋情報だけではなく、電子カルテを含めた包括的な医療データの共有、連携の在り方につきましても検討を加速して取り組むよう、お願いいたします。
 以上が、簡単ではございますけれども、今回の改正法案に対する私の認識でございます。将来の有事への備えとして、本改正案の速やかな成立、施行をお願いいたします。
 御清聴、誠にありがとうございました。

発言情報

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発言者: 赤池昭紀

speaker_id: 19543

日付: 2022-05-10

院: 参議院

会議名: 厚生労働委員会