森昌平の発言 (厚生労働委員会)
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○参考人(森昌平君) 日本薬剤師会の森でございます。
本日は、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律案に対する考え方を御説明する機会を頂戴し、ありがとうございます。
私は、厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会委員として、昨年末に緊急承認制度の方向性についての議論に参画しております。また、現在、日本薬剤師会の役員として、現場の薬局薬剤師として、新型コロナウイルス感染症対応に日々従事しております。
令和二年一月より始まった新型コロナウイルス感染症は、現在になってもなお完全な終息を見通すことができず蔓延し、関係行政、団体、医療機関、薬局等も含め、必死の対応を続けているところであります。
薬局薬剤師は、感染症の蔓延期にも徹底した感染防止対策に努め、自宅・宿泊療養者など、様々な環境にいる地域住民へコロナ治療薬を始めとする必要な医薬品の提供、手洗い、換気、消毒などの感染防止対策の普及、ワクチン接種への協力、医療用抗原定性検査キットの販売、ワクチン・検査パッケージに基づく無料検査事業などに取り組んでまいりました。
本日は、現場の薬剤師として、本改正案に賛成の立場から、主に三点、緊急承認制度、安全対策、電子処方箋についての考え方を中心に申し上げたいと思います。
まず一点目、緊急承認制度について申し上げます。
今後の有事に備えて、緊急事態のときに国民の生命、健康を守るために、必要性が高い医薬品等に国民がアクセスできるための制度構築は必要です。平時と異なるために、法制化をした上で、具体的な承認審査や安全対策を含め、運用面での要件、基準等をしっかりと政府としても決めていただく必要があると思います。パンデミック時には多くの患者が必要な医薬品に迅速にアクセスできることが求められます。治療薬が存在するかしないかという視点のみならず、たとえ治療薬が存在していても、国民への供給の観点も踏まえて、治療の選択肢を拡大し、治療等が必要な患者に迅速に対応できるよう、複数の選択肢を確保できる体制が不可欠だと考えます。
現在、コロナウイルス感染症の治療薬やワクチンはそれぞれ何種類か流通しておりますが、中には飲み合わせが悪い薬が多く、使用できる患者が限られているものがあります。また、この薬は併用薬の確認に時間を要し、パンデミック時、医療提供体制が逼迫しているときに現場の負担となり得る要素も含んでいます。その他にも、投与方法が点滴のため、自宅での治療や短期間に多くの患者さんに投与することが難しいもの、マイナス九十度からマイナス六十度での輸送、保管が必要で、輸送はもちろん、現場での保管についても特別な設備、対応を求められるワクチンなどあり、これらは短期間、多人数に使用する観点から、利便性が高いとは言えません。
今後のパンデミック発生時に国民の生命を守る上で迅速に対応できるよう、治療薬が既に承認されている場合でも治療の選択肢を拡大できる体制整備が不可欠だと考えます。
次に、各種特例の中で、容器包装等の特例措置についてです。
医薬品の容器包装等を通常承認と同様に対応するためには生産ラインの整備、変更などの必要があり、非常に時間が掛かります。そのため、緊急承認に伴う生産ということから特例措置の配慮は必要だと思い、賛成いたします。ただし、医療現場で医薬品を扱うことになるので、医療安全の点から、必要かつ最低限の情報は容器包装等に載せていただくようにお願いします。
また、現在、添付文書は電子化されておりますが、医薬品は情報があって初めて安全に使用できます。そのため、医薬品と情報は一緒に動くことが不可欠です。医療現場で安全に医薬品が使用できるよう、添付文書は緊急承認された医薬品と共に届くようにお願いします。
次に、供給体制です。
緊急承認後すぐに大量に生産することが必要となることが考えられ、今般のコロナワクチン治療薬では国が買い上げ、流通を主導しておりますが、緊急承認制度で承認された医薬品についても同様に国主導で届けるような体制確保が必要になると考えます。たとえ大量に生産できても、現場へ必要な医薬品が迅速に届かなくては治療はできません。
さきに述べましたが、薬局薬剤師は徹底した感染防止対策に努め、自宅・宿泊療養者など様々な環境にいる患者へコロナ治療薬を始めとする医薬品の提供を行ってきました。医療機関、薬局、卸が機能して初めて緊急時の対応が可能となります。日本の医薬品卸は、毛細血管型の流通網を整備して、必要な場所に品質を確保して迅速に確実に供給する機能を有しており、緊急時にも医薬品卸の協力が不可欠です。製薬企業のみならず、サプライチェーン全体への支援もお願いします。
次に、二番目の安全対策についてです。
これは、薬剤師として非常に重要だと思っております。通常承認された医薬品でも、承認前には捉えられなかった未知の重篤な副作用が出現したり、予測できなかった頻度で副作用が発現したりするおそれがあります。そのため、薬剤師としてふだんから積極的にフォローアップを行い、市販後安全対策に取り組んでおります。
緊急承認された医薬品は、特に注意深い使用を促すとともに、市販後の調査、評価が不可欠だと思います。未知等のリスクに加えて効果についてのフォローと評価が必要で、例えば今回の新型コロナウイルスワクチンの先行接種で行ったように、使用直後は一定期間全例調査することなども検討する必要があると思います。
また、使用後の評価ではリアルワールドデータを質、量共に増やしていく必要があり、そのため、副作用報告を含め、薬剤師が積極的に患者のフォローアップを行い、更なるデータ収集、報告に取り組んでまいります。また、薬によっては特に厳格な使用を求められるものや残薬の管理、回収が必要となってくるものもあり、そのことへも積極的に取り組んでまいります。
承認後、新たに既知化されたリスクが重大なときや、その時点でリスクがベネフィットを上回ると認められたときにはすぐに承認を取り消すような措置も必要で、その際にはちゅうちょなく取り消す運用をお願いします。
現在、国は新興感染症に対応できる医療提供体制の構築を目指しています。第八次医療計画に向けた議論の中でも、今後の新興感染症等の感染拡大時にも機動的に対策を講じられるよう、医療計画の記載事項に新興感染症等の感染拡大時における医療が追加されています。
繰り返しになりますが、今後の有事に備え、緊急時に国民の生命、健康を守るため、必要性が高い医薬品等に特別に使用を認め、国民が必要な医薬品にアクセスできる制度の構築が必要で、そのための今回の法改正だと思います。
続いて、三番目、電子処方箋についての意見です。
現在、国はマイナンバーカードの保険証利用を推進しており、薬局でもオンライン資格確認システムの導入を進めております。来年一月には、オンライン資格確認システムの基盤を活用した電子処方箋の運用がスタートします。日本薬剤師会でも、薬局薬剤師業務のデジタルトランスフォーメーションに積極的に取り組んでおり、薬局では、オンライン資格確認の基盤を活用した電子処方箋を伝達する仕組みを活用し、より安全で有効な薬物治療の実施に取り組んでいきたいと考えています。
ただ、処方情報、調剤情報は非常に機微な情報であること、偽造処方箋が電子処方箋を伝達する仕組みに入ることや電子処方箋の内容が書き換えられたりすることがないよう、また、薬剤師が調剤時にそれらを確認できるように、セキュリティーを含めた安全、安心な仕組みづくりが不可欠であり、その上で効果が十分に発揮できるような仕組み、体制整備が必要だと考えます。電子処方箋の運用を開始するに当たっては、十分に安全性の検証を行ってからスタートしていただきたいと思います。
国民、患者にとっても、これまでと大きく仕組みが変わります。国民、患者は、長年、医療機関で診察を受けて、薬物治療の必要があるときには医師から治療の説明を受けて処方箋を交付され、自身でも処方内容を確認し、処方箋を持って患者が選んだ薬局に来局しています。法改正事項の一つに、医師が電子処方箋を支払基金等に提供すれば患者に交付したものとみなすという規定があります。電子処方箋となっても、患者が処方内容を確認できる仕組み、フリーアクセスを担保する仕組みが必要だと思います。
これらのためには制度としての位置付けが不可欠で、そして何よりも患者、国民に混乱、不利益をもたらさないために国が責任を持って体制整備を進めることが必要で、そのための法改正が必要と考えます。
次に、医療現場への負担軽減です。
電子処方箋のメリットは十分理解しており、薬局側の導入意欲は大変高いものがあります。医療情報化推進基金三百八十三億円で、医療機関、薬局のシステム改修の一部補助をいただけると承知しておりますが、この補助金をいただいたとしても、導入する資金的な体力がない地域の薬局も存在します。できるだけ多くの薬局が導入することで電子処方箋のメリットが多く発揮できると考えておりますので、薬局が電子処方箋の受入れをちゅうちょすることがないように、一層の支援拡充について御検討をお願いします。
以上、法改正関連事項について述べましたが、最後に、法改正そのものではありませんが、昨年末から後発医薬品の生産、流通体制に大きな問題が生じていて、医薬品への信頼が大きく損なわれるとともに、医療の現場では非常に混乱を来しております。平時のみならず、緊急時の医薬品の安定供給のためには、サプライチェーン全体への支援とともに、現場への供給状況の把握、情報提供、代替薬の確保の調整など、デジタル技術の活用を含めた対応を是非お願いしたいと思っております。
以上、簡単でございますけれども、今回の法改正案に対する私の認識でございます。本改正案の速やかな成立、施行をお願いいたします。
御清聴、誠にありがとうございました。