隈本邦彦の発言 (厚生労働委員会)

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○参考人(隈本邦彦君) 江戸川大学の隈本です。
 私は、元々NHKで記者をしておりました。社会部の厚生省担当として薬事行政を取材したこともあります。現在は、医薬品監視のNGOである薬害オンブズパースン会議のメンバーとして活動しております。
 今日は、お手元にお配りしたこのスライド資料に沿って、同時にお配りした緊急承認制度に対する我々の意見書の趣旨を説明させていただきます。
 このスライドの下の方、スライド番号二を御覧ください。
 緊急時に例外的な制度が必要なことは分かります。しかし、それが抜け穴になってしまわないようにするために、主に三点、承認ではなく使用許可とすべき、例外的制度が通常になってしまわないような仕組み、歯止め、そしてさらに、例外を認めるのであれば、その分、安全性確認と被害救済にも例外的な対応をしてほしいというのが我々の考えです。
 一つずつ詳しく述べたいと思います。次のページのスライド三を御覧ください。
 まず、名前を使用許可にすべきという理由ですが、薬として承認されると、国民の多くが国が有効性、安全性を保証したと受け取るおそれがあります。また、医療現場も、承認薬があるんだったらそれを使わないとという状況になり得ます。私の友人の元厚労省の医系技官のお医者さんが、経口コロナ薬のモルヌピラビル、ラゲブリオについて、個人的には効かないと思うんだけれども、お年寄りが入院してきたら使わないわけにはいかない、もし亡くなってしまったら、それがコロナが原因じゃなかったとしても、重症化リスクがあるのになぜ承認薬を使わなかったと責められるからと嘆いていました。
 この下のスライドの四、御覧ください。
 現状でも、少ないデータで承認する例外的制度あります。海外で販売されているものを認める特例承認、条件付承認制度等々ですね。いずれも厚労省の通知だけで始められて、その後に国会の審議があって法制化されるという経過をたどっています。しかし、制度の結果の検証が十分なされないままに前例だけが積み重ねられているというふうに感じています。
 次のページのスライド五を御覧ください。
 先ほど紹介したラゲブリオの例ですが、去年十月の中間解析の段階では、重症化を約五〇%減少させた期待の薬と報道されました。しかし、最終的な治験の結果は約三〇%の減少にとどまりました。その経過を下のスライドに、グラフに表しました。一番左のグラフ、中間解析の時点では、確かに重症化率はプラセボに対して半分に下がっています。一番右側のグラフを見てください。治験全症例では約三〇%の減少にとどまっていて、統計的な有意差はぎりぎりでした。その途中を見てみますと、六百四十六例についてはむしろラゲブリオ群の方が重症化率が高かったんですね。今回の緊急承認制度では、治験第二相の少ないデータでも有効性は推定できるというのが政府答弁です。まさにそれが裏切られたのがこのラゲブリオだということですね。つまり、一番左の中間解析の七百六十二例だけでは薬の実力は分からなかったということです。
 次のページの上を御覧ください。
 治験の第三相ではこんなデータもありました。被験者が新型コロナ抗体を既に持っていた場合、重症化率は二・九%とプラセボ群と全く変わりがなかったんですね。下の八を見ていただくと、まとめますと、つまりこういうことです。この薬は、治験の後半は成績が振るわず、しかもコロナ抗体を持っている人、つまり既に感染した人やワクチンを打った人には無効かもしれないというデータが出ていた。ですから、重症化率が低いオミクロン株が流行して、国民の多くが二回接種を終えている日本で本当に効くのかということについてはよく分からない、疑問だと言っているんです。ところが、去年十二月に特例承認されて、先月十五日までにもう十五万人に使われています。そして、市販直後調査では、二千八百件余りの副作用が報告され、うち三百四十三件が重篤です。そして、このうち三十二人が亡くなっています。しかし、その詳細は公表されていません。メーカーに問い合わせても、詳しいことは教えられないということでした。問題だと思います。
 私が疑問なのは、このスライドにあるような有効性の限界とか副作用のデータが患者さんに適切に伝えられて、患者さん自身の選択でこの薬を投与しているのか。それについてはそうは思えないんですね。やはり、国が承認しているから使うべきだと思っていらっしゃるんじゃないでしょうか。
 次の九ページを、スライド九を御覧ください。
 一方で、今回の緊急承認のモデルとなったアメリカのEUAはあくまで緊急の使用許可であり、政治的、恣意的な運用をされないように徹底的な審議の公開とか、審議会メンバーの利益相反管理が行われているということです。そして、ここ大事だと思うんですけど、インフォームド・コンセントに関して、希望する患者にはファクトシートを渡すことが制度として決められています。この下の方に書いてあります、これがファクトシートの実例です。ラゲブリオのものですが、一番上に患者に渡すシートですと書いてあります。
 次のページの十一を御覧ください。
 これはあくまで試験的性格の薬であるということ、未承認の薬だということも強調されています。それから、下の方には、EUAとは何かという説明もこの患者さんに渡すシートの中に書いてあるんですね。
 このEUAでは、新たなデータが出たら迅速に取消しあるいは使用中止ということが行われています。トランプ前大統領が推していたヒドロキシクロロキンも今現在取消しです。それから、ソトロビマブなどの抗体薬も、効かないというデータが出ると、今FDAのウエブサイトを見ますと、これは全米どこの地域でも使えないと書いてあります。
 一方、日本では、このうちゼビュディとロナプリーブは特例承認されていますが、まだそれは取り消されていませんし、通知などで使う患者を限定するというふうな対応をしているだけで、国民がすぐに見て分かるようなウエブサイトには何も書いてありません。
 まとめますと、通常承認と誤解されることのないように別の名称とし、取消し、中止なども迅速に行うことが期待されます。
 次のページの上、十五を御覧ください。
 意見書の趣旨の二番目ですが、この例外的制度が抜け穴として使われないように歯止めをしっかりとという点をお願いしたいと思います。
 かつてサリドマイド薬害が起こった頃、日本では海外で流通する有名な薬は簡易な検査でいいということになっていました。サリドマイドの審査も一時間半ぐらいだったと言われています。その結果、三百人以上の被害児が出ました。その後、スモン、薬害エイズ、薬害肝炎などの苦い経験を基に、日本の薬事制度は科学的になり、曲がりなりにも米国、EU並みというふうに言われるようになりました。
 その下の十六を御覧ください。
 ところが、最近、例外的な制度の前例だけが積み重なってきていると先ほど申し上げました。薬害の歴史を考えれば、薬事承認というのはより慎重にやるというのが国民のためであったし、そうやって実践してきたのに、今は逆に前のめりで、何でも認めるのが国民のためというふうに誤解されているんではないかと感じています。
 次のスライドの十七番、御覧ください。
 例えば国内企業の画期的新薬を優先審議するという先駆け審査指定制度、この第一弾にゾフルーザというのがあります。市販された翌冬のシーズンに爆発的に売れまして、推定四百二十七万人に使われました。その結果、三十七人の死亡症例が報告され、これはほかの抗インフルエンザ薬のレベルをはるかに上回る頻度でした。それから、耐性ウイルスも高率に発生しました。そのことは全部後から分かってきました。
 また、条件付・期限付承認制度ではステミラックが認められましたが、対照群を置いていない少数の症例だけで認めたことが非科学的であるとして、ネイチャー誌に強く批判されました。
 私たちは、この事例にその都度、意見書、要望書を出して、国内企業を過度に優先するということの危険性を指摘してきました。その典型がアビガンです。
 次の十八を御覧ください。
 抗インフルエンザ薬アビガンがコロナに効くかもしれないというレベルのデータに基づいて、政府主導で未承認薬を観察研究という形で異例の形で国民に提供して、もう既に一万五千人に投与されています。ところが、この観察研究では、入院時に酸素投与が必要なかった方、軽症患者ですね、この方の致死率が、一か月以内の致死率が三・九%とこれは非常に高かったんです。治療法を問わない全国のコロナの入院患者を登録したCOVID―19レジストリー研究というのが比較対照になるんですけれども、その場合は軽症患者の致死率は〇・四%ですから、約十倍ということになります。
 次のページの十九にそのグラフを載せました。
 観察研究は中間報告で一報、四報と出ていったんですが、その間、一年半の間、軽症患者の致死率はずっと高い状態が続いていました。この間、何度も我々は意見書を出したんですが、藤田医科大も国もそれを止めようとはしませんでした。去年の年末にようやく止まりました。
 今回の緊急承認制度では、承認を与えた後、検証的臨床試験ができない場合にはいわゆるリアルワールドデータでもいいというのが政府の答弁です。でも、このアビガン観察研究って、まさにリアルワールドデータです。投与してみたらどうだったということです。軽症患者の致死率が高いという、こういうシグナルが出続けているのに、プラセボ群と比較していないから、また藤田医科大がその後の安全性の解析をしていませんので、結局この研究は自分たちの力では止めることができませんでした。リアルワールドデータの限界を示す実例ではないかと思います。
 下の二十を御覧ください。
 厚労省もリアルワールドデータのガイドライン、基本的な考え方というのを明らかにしていますが、その中で、御覧のように、恣意的な解析が可能なので注意が必要だと厚労省自身が言っているんですね。
 次のページの二十一を御覧ください。
 じゃ、有効性はということは、国内の三つの治験第三相でいずれも有効性の証明に失敗しています。それから、国内のやり直しの治験も今組入れが中止になったことは皆さん御存じのとおりです。
 下の二十二を御覧ください。
 このような前のめりの薬事政策の結果、妊娠していた可能性のある女性が飲んでしまった事件がありました。それから、外来で使われていたという事件も発生しました。しかし、国は規定方針どおり百三十万人分の追加備蓄なども行い、多額の税金を企業に払っているというのが現状です。
 次のページの二十三を御覧ください。
 我々も日本企業には頑張ってほしいと思っています。しかし、それは科学的でフェアな戦い方であってほしい。ひいきの引き倒しは困ります。例えば、今一部報道されていますが、経口コロナ薬で日本の企業が、条件付承認制度で駄目なら新しくつくられる今度の緊急承認制度でいこうかという話があるそうです。もしこんなことが実現したら、日本の薬事行政は国際的な信頼を失うことになりかねません。
 下の二十四を御覧ください。
 二番目の論点のまとめですが、とにかく例外が通常になって、抜け穴になってしまわないように、第三相の臨床試験は承認後に必ず出してもらうこと、そしてリアルワールドデータで代替することは不十分だということを強調したいと思います。
 次の二十五を御覧ください。
 三番目の論点です。これまでの政府答弁では、一定期間に高頻度で生じる副作用は治験の第二相で見付けることができる、それで大丈夫だと、安全性は確認できるということですが、じゃ、現状なぜ第三相の安全性チェックをしているんでしょうか。本当は、第三相で見付けられる副作用というのも当然あるはずです。第三相なしで認めるんだったら、その分市販後の安全性チェックを厳しくしないとバランスが取れません。
 具体的な方法については、第二相までの生データを公開させる、市販直後調査の早期公開だけではなくて、それを患者に伝えることを義務付ける、さらには、今安全対策にはほとんど生かされていない患者からの副作用報告を確実にこの安全対策に使う、こういうことを考えていただきたいです。そういう意味で、現状の特例承認は考え方が逆行しているんじゃないかと思います。
 次の二十六、下の二十六を御覧ください。
 特例承認された新型コロナワクチン、これまでに接種後千六百三十五人の方が亡くなっています。この全てが因果関係が認められないか評価できないということで、安全性に重大な懸念はないということで今も進められています。厚労省が依頼した専門家がその因果関係をそう評価したと言うんですけれども、じゃ、その専門家というのがどこの誰かということは公表されていませんし、その基準も明確ではありません。
 次のページの二十七を見てください。
 これは、二〇一〇年、当時新型インフルエンザワクチンで百三十三人の接種後死亡報告があった頃の資料ですが、その頃は、下の二十八にありますように、評価した専門家の名前も、その個別の内容も公表されていました。
 こうして、なぜ十年前には公表していたのに今公表しないのかということを、政府答弁では、公表すると公正、中立な審議に支障が出るからと言っているんですが、意味分かりませんね。やましいことがなければ、堂々と名前を出して、専門家としての意見を出すべきなんです。今はそれをやっていないんですね。特例承認なんだから、なおさらのことです。
 次のページの二十九を御覧ください。
 少ない安全性のデータで認めるなら、被害救済の方も幅広く認めるべきだと思います。しかし、現状では、新型コロナワクチン接種後に死亡した事例は保留されていまして、死亡事例についてまだ補償されたことが一例もありません。死亡以外のものだけが補償されているのが現状です。
 因果関係の明確に否定できないものを補償するというのがこの予防接種健康被害救済制度の趣旨です。厚労省もそれを公に出しています。それに沿った運用をしていただきたい。判定会議に患者や薬害被害者代表を入れるといった改善策も必要だと思います。
 ここの下にありますこの三つ、この三つのことを強く求めまして、私の意見表明といたします。
 御清聴ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 隈本邦彦

speaker_id: 1834

日付: 2022-05-10

院: 参議院

会議名: 厚生労働委員会