植松光夫の発言 (国際経済・外交に関する調査会)
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○参考人(植松光夫君) 本日は、国際経済・外交に関する調査会でお話しする機会を設けていただき、ありがとうございます。
私は、植松光夫と申します。現在、海なし県であります埼玉県環境科学国際センターの総長を務めております。とはいえ、埼玉県の河川の面積の割合は三・九%、日本一、二を争う川を通して陸を海につなげている重要な県であります。
前職の東京大学大気海洋研究所では、化学を使って、空と海の間の物質循環、気候変化と海洋生態系が大気を通して密接にリンクしているというような研究をしておりました。
本日は、主にSDG14における国連海洋科学の十年暫定諮問委員会の世界で選ばれた委員十九名のうちの一人として、海洋環境の保全等に向けた海洋科学が果たす役割について、国際的な取組、この現状と、我が国で何をすべきか、話をさせていただきたいと思います。
じゃ、二枚目、お願いいたします。
これは、十七あるSDGsの目標をウエディングケーキに例えたものです。図の下の方、水とトイレ、そして気候変動、海の豊かさ、陸の豊かさが生物圏として一番の土台となって、その上に社会、そして経済の目標を支えております。
三枚目。十七のSDG達成度を国別で見てみますと、二〇二一年が十八位と我が国は年々順位を下げております。右側の図、二〇一九年の日本でのSDGsの達成度を示しています。貧困、健康、教育、そしてエネルギーに関してはその達成度は極めて高いのですが、SDG14、海を豊かには達成度が最下位とショッキングな結果になっています。何でこんなことになったんやというふうに思うんですが、この順位付けはドイツのベルテルスマン財団及び持続可能な開発方法ネットワーク、SDSNの報告によるものです。
順位を付けられるとどこの国でも気になりますし、我が国でも、地方自治体でも一喜一憂するものであります。SDGsの全てのターゲットに即した指標がない、一つ一つのターゲットについて進捗評価をするのは非常に難しい状況です。多くの箇所で日本のデータの不備、それから古いデータを使っているというのが目立ちます。情報発信が欧州に比べて足らないかもしれません。
二〇二〇年の世界の海洋科学の現状報告書を見ても、外洋域への研究船による調査は米国に次いで第二位ですが、日本の女性海洋科学者の割合は低く、海洋科学支出額は相対的に削減されているとされています。これからは、あとは順位を上げるだけの活動があるのみだというふうに思います。
四枚目。そんな中ですが、SDG14は他のSDGと密接な関係を保っております。SDGsの目的とターゲットの進捗のフォローアップ、各国が自主的に各国の主導で行い、各国は自国の国益の実現を図りながら達成に努力すべきだというふうに思います。
五枚目。改めて、海とはです。海は、陸のように平面ではなく三次元で生活でき、生物の八割が生きており、地球表面の七割が海に覆われております。そして、太陽からの熱の九三%を吸収しています。人間の呼吸する酸素の半分は海洋植物からですし、海のたんぱく質は、魚のたんぱく質ですね、食料としても重要であるということは言うまでもありません。国際貿易の九〇%は海上輸送ですし、鉱物資源の八〇%が海にあります。
六枚目。改めて、平成十九年、二〇〇七年ですね、海洋基本法が公布されました。海洋については科学的に解明されていない分野が多いことを鑑み、海洋に関する科学的知見を充実しなければいけないとされています。これは自然科学だけではなしに、人文社会科学も含むと考えます。
七枚目。このような、地球は温暖化が進んでいます、皆さん御存じだと思いますが。でも、地球全体が同じように気温が上がっているわけではありません。相対的に、御覧になっても分かりますが、気温が下がっている、相対的にですから、そういうような海域もあります。
八枚目。太陽から来る熱のほとんどが海水がためています。
九枚目。事実、地球上の表面海水はこの百年間に〇・五度上昇しています。気温が〇・五度上がるより海水は三千倍熱をためるということになります。
十枚目。二酸化炭素が増え続け温暖化が進みますが、海は二酸化炭素を吸収します。それと同時に、海のpHが下がります。しかし、海水のpHは約八程度でアルカリ性であり、酸性化するといっても海水が酸っぱくなるわけではありません。よく間違えられます。
十一枚目。地球上で大気中の二酸化炭素が増えると、同時に酸素が減ります。人間も酸素を吸って二酸化炭素を吐き出しています。
十二枚目。地球上、二酸化炭素と酸素濃度を測り続けると、化石燃料起源の二酸化炭素の五五%が大気に蓄積し、四分の一が海に、五分の一が陸上生物に吸収されているという報告があります。
十三枚目。温暖化で海水温が上昇し、温かい水が海洋表面を覆い、酸素が海水に溶けづらくなります。沿岸からの栄養塩の過剰な流入で生物が増え過ぎて、腐るときに酸素を消費して、貧酸素状態が沿岸域にも外洋域でも広がりつつあります。
次の十四枚目を御覧ください。このままでは、二〇五〇年には海洋プラスチックの重さが魚の重さを超えるかもしれないというショッキングな有名な報告されています。しかし、よく考えると、プラスチックも、海水中を沈んだり、生物のふんとなって海底に除かれる過程、こういったプロセスも考慮する必要があると思います。我が国も、自分の庭先だけきれいにするだけじゃなしに、世界の海、ワンプラネット、ワンオーシャンのつもりで取り組むべきだと思います。
十五枚目。SDG14では、今まで述べてきたような十のターゲットを挙げております。
十六ページ。そんな中で、ユネスコの政府間海洋学委員会、IOC、国際オリンピック委員会とよく間違われるんですが、SDG14への貢献に取り組んでおります。
十七枚目。IOCは現在百五十か国加盟しており、日本は執行理事国であります。日本ユネスコ国内委員会のIOC分科会がこれに対応しております。
十八枚目。この図は、IOCと国連機関のつながり、そして海洋関係の数多くのプログラムがIOCと関わっているということを示しております。
十九枚目。IOCの西太平洋に関する政府間地域小委員会、WESTPAC、これは現在、海洋研究開発機構の安藤健太郎氏が共同議長をされています。ほかにあと二つ、カリブ海、それからアフリカに小委員会が設けられております。
二十一枚目。こんな中で、IOCが中心になり、SDG14への貢献を目指し、持続可能な開発のための国連海洋科学の十年をスタートさせました。ここで言う海洋科学、オーシャンサイエンスは、自然科学、社会科学、人文科学などの分野からの参加者による分野横断的な新しいコミュニティーの創出です。
二十二枚目。十年後、我々の海がどんな海であることを望んでいるのか、その成果を七つここに示しています。特に七つ目の、夢のある魅力的な海にしよう、これはセカンドエディションで付け加えられたものですけれども、ついつい私は加山雄三の海の歌というのを思い出します。詳しくは事前資料の七十五、七十六ページを御覧いただければと思います。
二十三枚目。その望むべき海の実現のために十の挑戦課題が設定されました。
二十四枚目。ジ・オーシャン・ウイ・ハブ、今の海を見て海洋データ、情報、知識をつくり出し、それをよく理解して海の知識をうまく使いこなし、十の挑戦課題を我々が、ザ・サイエンス・ウイ・ニード、必要とする科学で行動し、七つのジ・オーシャン・ウイ・ウオント、望む海を利害関係者とともにデザインして実現する流れになります。ただ科学的事実を集めるだけではいいというわけではありません。
二十五枚目。国連海洋科学の十年の国際推進体制をここに示しております。ここでは、特に我々にとって重要なのは各国の国内委員会ということになります。
二十六枚目。我が国では二〇二〇年八月に国連海洋科学の十年研究会を立ち上げ、他国に先駆け、二〇二一年二月に国内委員会を設立しました。各省庁、学会、大学、研究機関、企業及び産業界、市民団体、それから地元の知恵の保有者など、各分野の意見を反映する体制で進めています。海洋科学により地球規模の課題にしっかり応えていくということは、科学技術外交の観点からも非常に期待できます。
二十七枚目。現在、二十四か国で国連海洋科学の十年の国内委員会が設置されています。
二十八枚目。では、具体的に国連海洋科学の十年、どう取り組まれているのかということになりますが、太平洋や大西洋をベースに大規模で長い期間行う大型プログラム、それを支援するプロジェクト、各研究機関が取り組む支援研究活動、そしてこれらを支える資金援助活動から成り、これらの申請を諮問委員会で審査する手順になっております。
二十九枚目。これは、第一回のオーシャンディケードの公募の結果です。大型プログラムへの申請は二百十三件、うち三十一件が採択され、その後も暫定諮問委員会のコメントを基に修正が行われ、IOCにあるコーディネーションユニットが判断することになっていました。
三十枚目。最初の公募で採択されたプログラムは、七つの海にほぼ偏りなく取り組まれています。今年一月末に締め切られました二回目の公募では、海洋汚染、海洋生態系、地球温暖化へのプログラムの申請を推奨していました。我が国からも、日本というよりも他の国々、それからいろんな国際機関と今までにない新しい国際共同を構築するということが重要かと思います。例えば、日本からでは、黒潮域の調査研究、深海生物多様性研究など、プログラムやプロジェクトが申請されています。
三十一枚目。さて、問題は資金です。採択されたプログラムの必要な資金の四分の一しか現在確保できていません。各国の財団などからも既に支援が始まっております。
三十二枚目。そんな中で、我が国は、国連海洋科学の十年に関係して既に取り組んでいる活動があり、それを事例集としてまとめてあります。これを基に、これからの活動に何が足りないのか、何を重点的に取り組むべきか、国民にもっと身近に海洋科学の十年を感じてもらえることを願っています。もっと事例が増えてこの冊子が分厚くなることを願っております。
三十三枚目。特にIOCや我が国が取り組む課題を挙げました。すなわち、海洋観測網の強化、海洋汚染、海洋酸性化の影響の取組、海洋技術の移転、海洋科学研究への人材育成などです。
三十四枚目。例えば海洋観測網の強化で、長期にわたる太平洋での観測。日本は、船舶観測、漂流フロート観測、係留系観測で多大な貢献をしてまいりました。
三十五枚目。こういった形で展開をしているわけですが、中国は急速に彼らの海洋プロジェクトを太平洋にも拡大してきております。
三十七枚目、あっ、三十六枚目でしたね、失礼しました。海洋汚染についても海上保安庁などがモニタリングを進めております。
三十七枚目。気象庁は、一九八〇年代から日本と赤道の間の海域で海洋定線観測を続け、三十八枚目、四十年にわたり、世界にもまれな長期観測データ、海水中の二酸化炭素やpHなどを測定し、その経年増加を明らかにしています。
気象庁、水産庁、各県の水産試験場などが行ってきたこと、気象庁や水産研究・教育機構の長期モニタリングが、北太平洋海洋科学機関、PICESといいますが、表彰されております。継続は力です。しかし、その維持が大変困難な状況になりつつあります。
また、センサーの技術開発や無人海洋観測手法、SDGの時代であったノー・ワン・レフト・ビハインドを念頭に、発展途上国へ向けた安価で効率的、効果的な観測技術の開発も不可欠です。できれば我が国も、アメリカ海洋大気庁、NOAAといいますが、そのような海洋や大気の調査研究を推進する統一された機関があればというふうに思っております。
二十九枚目、違う、三十九枚目でした。
以上、この国連海洋科学の十年を機会に、基礎研究の強化、科学と政策の密な協力、海洋リテラシーの普及、若手研究者の育成にも力を行きたいと願っております。この国連海洋科学の十年では、アーリー・キャリア・オーシャン・プロフェッショナル、ECOPプロジェクトというものが、海洋科学にまつわる専門経験が十年以内の若手研究者の活動も支援しております。日本からも参加していますが、次の時代を担う国際的な視野を持つ人材が育つことを願っています。
コロナ禍で海洋観測は研究調査航海も非常に大きな制限を受け、現在、ある程度回復力を示していますが、その全体への影響はいまだ不明です。また、二〇二二年は持続可能な発展のための国際基礎科学年とするということで、国連総会で決議されております。基礎科学の重要さを改めて強調させていただきます。
四十枚目。あと九年、二〇三〇年には、誰もがその明確な成果に共感し、人と海洋の調和が実現でき、更に変貌を続ける地球環境に適応できる社会になっていることを願っています。私も、あと九年ぼけないように、その魅力的な海を見たいと願っています。
どうも御清聴ありがとうございました。