小林正典の発言 (国際経済・外交に関する調査会)
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○参考人(小林正典君) 皆さん、こんにちは。笹川平和財団海洋政策研究所主任研究員をしております小林正典と申します。
本日は、参議院国際経済・外交に関する調査会でこのような陳述の機会をいただきまして、大変ありがとうございます。昨年、後ろに来てくださっている角南理事長が海洋プラスチックごみについて陳述をさせていただいて、今回は海洋保全、それから資源管理ということでお話しさせていただくということで、大変うれしく思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
では、スライドを印刷していただいておりますので、二ページ目を見ていただきますと、私たち海洋政策研究所は、持続可能な海洋の実現に向けて国際海洋政策対話というものをずっと一つの事業の中心的な柱として進めてきております。二〇二〇年、コロナになってしまって、本来東京で開催されるべきサミットなんかもできなくなってしまったんですが、オンラインでつないで、そのときは日本財団の笹川会長、それから角南理事長が当時の大統領、レメンゲサウ・パラオ前大統領と一緒にオンラインで持続可能な海洋に向けて政策対話をさせていただいたりしております。
また、その秋には国連総会で生物多様性サミットというのがありまして、そこで角南理事長が、ここにあるチャールズ皇太子と一緒にオンラインでやはり議論をさせていただいたり、また、右側の方にありますのは、ノルウェー政府が持続可能な海洋経済のためのハイレベルパネルというのをつくりまして、安倍総理、菅総理、そして今、岸田総理にメンバーになっていただいているんですけれども、ノルウェーの首相とそれからパラオの大統領が共同議長を務めるというところで、二〇二〇年、政策提言を発表しまして、当時の菅総理にはビデオメッセージを寄せていただいて、パラオと世界を、日本と世界を結んで政策対話を行ったりしています。
また、二日前なんですけれども、角南理事長の後を継いで所長に就任した阪口秀所長が、フランスのブレストというところでマクロン大統領が主催したワンオーシャンサミットというのに参加してきまして、そのときにも世界の要人の方々と持続可能な海洋に向けた対話をさせていただいたり、あと、私と、後ろに来ている渡邉主任研と二人で、例えば二〇一八年のケニアで、ここでもブルーエコノミーに関する世界会議というのに出まして、私たちの研究成果を発表させていただいております。
三枚目なんですが、重要な課題として今考えられているのが、いかにして海洋経済を、海洋環境を守りながらその漁業を含めた海洋経済を推進していくかという、この両方を両立していくというのが重要になっていまして、昨年、イギリスがコーンウォール・サミットというのを主催したんですけれども、そのときに、二〇三〇年までに世界の海洋の三〇%を保護区化しようという目標が採択、合意されているというところがあって、これ、今年の生物多様性条約で具体的に決定していかなければいけないんですけれども、この表にありますとおり、先進国の多くがもう既に三〇%の目標を達成しているという現状がございます。
日本の場合は、二〇二〇年の十二月に、小笠原の周辺海域の海底の部分、そこで海底資源の掘削ですとか底引き網をする場合には許可を取らなきゃいけないというような一定の制限を設けて、そのときに九%、一〇%を超えていなかったんですが、そこの小笠原の海底海域を保護区化したことによって一三・三%まで、愛知目標の一〇%を超えるということが実現できています。
ただし、ほかのアジアの国々、やはり三%とか四%とか、とても三〇%に届くような状況にはなく、いかにして海洋保護区をまず増やしていって海洋生態系を守っていくかというのが一つの重要な課題となっています。
もう一方で、四枚目になるんですけれども、やはり漁業というところと抵触する、どういうふうに折り合いを付けていくかというのが課題になっていまして、日本の漁業、今、漁民の数も減っている、それから高齢者も進んでいる、漁業の担い手が減っているというところがあって、漁獲量も減っている、いろんな理由で減っているというふうに言われていますけれども、世界の漁獲量というのは、今、同じようなレベルを維持しているというような形になっていて、日本の場合、一九八〇年ぐらいまでずっと右肩上がりで上がっていって、その後、どんどんどんどん減ってきちゃっているんですけれども、世界の漁獲量自体は横ばいをずっと続けているというのが今の世界の漁獲量になっています。
昨日も、実はノルウェーの関係者と二日間オンラインでセミナーをやったんですけれども、ノルウェーの場合も漁民の数は減っているんですが、漁民当たりの収量、それはどんどん増えていると、それから収益も増えている。
私も、十二月にちょっと沖縄の方に行かせていただいて、現地の漁業をやられている方とお話ししたんですけれども、やはり私も漁業を研究しているのであればマグロの船とか乗ったらいいといろんな人に言われるので、ちょっとそんな話もしたりしたんですけど、いや、なかなか厳しいところだからちょっとやめておいた方がいいんじゃないかみたいなことを言われたりして、なかなかその漁業の担い手というのが、収量も減っているというところもありますけれども、やはり一定の過酷な労働条件にあったりとか、あとは長期に家を空けなければいけないとかということで、やはり養殖、モズク養殖とかホタテガイの養殖だとか、そっちの方にシフトしているという傾向もあるようです。
ですので、世界のトレンドとそれから日本のトレンドというのがちょっと違うところがあるんですが、いかにしてこの持続可能な漁業と海洋保全というものを両立していくのかというところが重要になっているというところがございます。
五枚目、見ていただけると、先ほど申し上げた生物多様性条約という二〇一〇年に名古屋であったあの大きい会議の条約なんですが、そこで生態学的、生物学的に重要な海域というのを幾つかの条件を基に選んで指定しています。
御覧いただけると分かるとおり、太平洋とか、それからインド洋に広くそういう、私たちEBSAと呼んでいるんですけれども、略称で、それが広がっています。これが海洋保護区を規定していく上での土台になるんじゃないかというふうに言われているんですけれども、なかなかこういうところについて、特に公海になると沿岸国の管轄権の外になってしまうので、どうしてもなかなか各国、関係国の合意形成というのが難しいという現状があります。
六ページ見ていただくと、これが現在ある海洋保護区なんですが、先ほどの地図と比べていただきますと、本当にごく一部が海洋保護区になっているということがお分かりいただけると思いますので、いかにして漁業、持続可能な漁業を維持しながらこの海洋保護区をつくっていくかというのが一つの国際的な課題になっているというふうに考えています。
なので、これを七ページのところで少し図式化してみたんですけれども、やはり持続可能な海洋を実現するためにはそのやはり海洋管理というのが必要で、そこを支えるものとしては、その持続可能な漁業と資源管理というのをどう進めていくかということと、それから海洋保護区と海洋管理をどう進めていくかという、これをうまく両輪として進めていく必要があるだろうと。
そのときに重要なのが、私たちシナジーとか呼んでいる相乗効果をどうつくっていくか。要するに、海洋保護区をつくりながら漁業資源も増やすみたいな、逆に言うと、二律背反、トレードオフと書いていますけど、海洋保護区を増やしたら漁業が減ってしまうという、それはなるべく避けるというか最適化する。一時期は減っちゃうかもしれないけれども長期的にまた増えていくような、そのタイムスパンの中で最適化していくようなそのシナジー、コベネフィット、相乗効果とか共通便益を増やしつつ、トレードオフを減らしていく、あるいは最適化していくという、そういう取組が必要だというふうに考えています。
八ページ見ていただけると、私たちが関わっている国際的なネットワークでは、例えば左側、世界経済サミット、ダボス会議をやっているところですね、そこで今、角南理事長がフレンズ・オブ・オーシャン・アクションという国際的なネットワークのメンバーになっていただいているんですけれども、そこでもこの漁業資源の保全というのが重要なんですが、重要視されているのがIUU漁業、つまり違法、無報告、無規制漁業、これをどういうふうに取り締まっていくかというのが一つの重要な課題として挙げられています。
もう一つ、右側のハイレベル・パネル・フォー・ア・サステナブル・オーシャン・エコノミーというのは、先ほど申し上げた持続可能な海洋経済構築のためのハイレベルパネルというもので、ここでもIUU漁業、これをどういうふうに撲滅していくのか、年間百億ドル―二百三十五億ドルのその損失があって、二千六百万トンに相当するような漁獲の損失があるというふうに言われていて、これをどういうふうに減らしていくのか、廃絶していくのかというのが課題となっています。
九ページ見ていただきますと、私たちも、ニューヨーク・タイムズの記者の方が「アウトロー・オーシャン」という、これは昨年、日本語訳も出ているんですけれども、IUU漁業についての本を出版されていて、ここでは、漁業資源の管理を損ねるIUU漁業ということに加えて、人権侵害、要はまあ半分拉致ですよね、犯罪組織が陸上の人たちを連れてきて、船の上で一年間、二年間拘束して過酷な労働を強いるという、場合によっては突き落として溺死してしまったというような事例も報告されたりとか、資源管理だけではなくてその犯罪行為、人権侵害を防止する、そういった観点からもIUU漁業の撲滅というのが必要だというふうにも言われております。
私たちも、国内、海外の人たちと対話を行っていて、右側の方のページの左上はコロンビアのジュネーブの大使なんですけど、今、WTOの有害漁業補助金、要はIUUに直結、関連するような漁業補助金を廃絶していこう、乱獲につながる漁業補助金を廃絶しようという取組が進められていて、その議長をやられています。その方にも入っていただいて政策対話を行いました。
十ページ。ちょっと簡単に、図を使う方もいらっしゃるので御紹介すると、正規に漁獲量を報告してやっている漁業者の方々の利益というのが左側の黒塗りの四角のところで、これにそのIUU漁業の水産物が入ってくると、要は供給量が増えるわけですよね。だから、供給量がQ1からQ2に増えていくと価格がどうしてもP1からP2に下がってしまって、正規に漁業した人たちの収益というのが、IUU漁業由来の水産物が市場に出回ってしまうことゆえに自分たちの取り分が減ってしまうと、そんなようなところも指摘されています。
こんなようなところで、IUU漁業の撲滅というのがいろんな意味で重要だということが言われています。そこをちょっと解説したのが十一ページに当たります。
十二ページが漁獲量上位八か国の推移を示しているもので、御覧のとおり、幸か不幸か、日本の場合は世界でトップだったんですね、一九九〇年。これが今、八位になっているということですね。誰に抜かれたかというと、もちろん中国に早々と抜かれて、ペルーに抜かれ、それで、最近はインドネシアとか、それからベトナム、そういった国、インドにも抜かれているわけです。ですから、今、日本は水産国として水産物を我々消費していますけれども、漁業の担い手になっている国はもうここ二十年、三十年の間に大きく変わってきていて、今インドネシアが中国に次いで二番目の漁業大国になっているということです。
十三ページ。その漁獲した水産物、どこに行っているのかと。中国で消費されているかというと、どうも統計上必ずしもそうなっていなくて、漁獲量が増えた分、輸出量も増えているんですね。つまり、中国の場合、漁獲を増やして、それを第三国に輸出している部分も増えていて、十四ページ御覧いただくと、その行き先が日本、韓国、アメリカ、こんなふうになっているということです。
十五ページ見ていただくと、その輸出量、輸入量、それから輸出額、輸入額、こういうのを見ていただけると、輸出量が断然多かったんですね。ところが、二〇〇〇年代になってからは今度は輸入する量、輸入額も増えてきて、結果的には中国がこの水産物の国際貿易において重要な役割を占めているというのがお分かりいただけるのではないかと思います。
十六ページ見ていただけると、この漁業管理をしていく上でその漁業資源がどういうふうに動いているのかというのをしっかり見極める必要がある中で、先ほど申し上げたIUUというのが介在すると、その資源管理がうまくいかないということになってしまうわけです。
このIUUを取り締まるために、例えばこの図では、オーストラリアがオーストラリアの海域内で違法漁業に従事していたインドネシア漁船を拿捕したという事例を挙げていて、十七ページは、これパラオ国内で中国漁船が拿捕された事例を挙げていて、ここに書かせていただいたとおり、船内に現金があったり、アルコールがあったり、たばこがあったり、それは乗組員が消費するものじゃないんですね。その取締りをしている人たちに、まあいろんな意味で渡して、逃がしてもらうという、そんなようなことがあるということも報告されています。
十八ページは、これ北朝鮮、日本海側で、中国漁船が北朝鮮で操業して、北朝鮮を追いやられた北朝鮮の船が日本海側に流れてしまうというような、そんな事例が報告されていたり、あとは十九ページ、これ国際的に問題になったんですけれども、中国漁船で働くインドネシア人が死亡した例が報告されたりとか、そのIUU漁業とそれから人権保障というのが関連しているというところがあって、二十ページ、これ日本の国内でも必ずしもこういった事例が、違法漁業がないかというとそうでもなくて、漁獲物が行き場が分からなくなってしまったり、漁獲統計上不透明なところが起きてきたりということが報告されているわけです。
二十一ページ。ここで、国際的に取組を進めていく上で、IUU漁業撲滅に向けた条約作り、制度づくりというのも進んでおりまして、二十二ページにある国際的な機関で協力を進めていって、先ほど申し上げたIUUを行っているような漁船についてはリストを作ってその撲滅を図っている、入港させないという、そういう水揚げさせない措置をとっています。
二十四ページ見ていただくと、寄港地措置協定の概要というのが載っておりまして、ただ問題なのは、その二十五ページにありますとおり、この締約国に入っている国がまだ全世界的になっていないと。一番右端の例えばAPEC、アジア太平洋経済協力のグループの中で、主要な漁業国も含めた国がこの締約国になっていないということで、その国際的な取組が進まないという事例がございます。
ですので、二十六ページに、これはヨーロッパ、アメリカ、で、日本も二〇二〇年に新しい法律を制定して、魚種のトレーサビリティー、追跡性を確保するという取組を進めようとしております。また、認証制度なども二十七ページにおいて紹介させていただきました。
なので、この二十八ページにある国内のEEZに加えて、公海での生物多様性保全の今条約作りが進んでいて、私も二〇一九年はパラオの代表団のアドバイザーとして参加させていただいております。
ですので、この二十九ページにある世界の公海、これが非常に大きいところがありますので、ここを、三十ページにあるような、インドと太平洋をつなぐインド太平洋構想の枠組みの中でこのブルーエコノミーを推進していくということが我々は重要だというふうに考えており、今後の課題というものをそこで示させていただきました。
私の陳述、以上で終わりとさせていただきます。
御清聴ありがとうございました。