加藤泰浩の発言 (国際経済・外交に関する調査会)

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○参考人(加藤泰浩君) 御紹介いただきました東京大学工学系研究科の加藤泰浩でございます。
 本日は、国際経済・外交に関する調査会、こういう貴重な場においてお話をさせていただく機会を与えていただきまして、心より感謝申し上げます。
 私からは、海洋環境の保全及び海洋資源の持続可能な利用への貢献の在り方ということで、特に私たちが今、南鳥島の排他的経済水域で開発を目指しているレアアース泥という資源について中心にお話をさせていただきたいと思います。
 資料が大変に多くなっておりますので早口で話をさせていただきますが、どうぞ御容赦ください。
 早速一ページ目を御覧ください。
 左上に、レアアースという資源はこれからのSDGsというものの鍵になる資源と言われております。
 右側を御覧ください。米国は、サプライチェーン強化へ向けた取組として、特に重要鉱物資源であるレアアースのサプライチェーンについて脱中国化を模索していますが、これは現時点では不可能というふうに考えております。これは後ほどお話しします。
 下側、日本の経済安全保障におけるサプライチェーンの重要性、これは先生方御存じのとおりですが、三点ほど書かせていただいております。日本は米中の両経済圏で事業を展開しているために、経済安全保障のリスクのコントロールが非常に難しいと。二点目は、日本企業はサプライチェーンの分断、混乱を懸念していて、レアアース製品産業はまさにその典型例と言えるものであります。現在、政府が検討中の経済安全保障推進法案の重要戦略分野にもレアアースが明記されていて、サプライチェーンの強靱化が強く求められているわけであります。
 そうした中、今日私からお話しさせていただくのは、南鳥島レアアース泥を開発することによって、レアアースのサプライチェーン問題一気に解決し、世界に大きく貢献するということをお話しさせていただきたいと思います。
 二ページ目を御覧ください。
 レアアースという資源は、レアアースとはそもそも何か。左上に書いております元素の周期表のうち第三族、Scと書いてあります緑色に塗られているところ、スカンジウム、その下のイットリウム、更にその下にランタノイドというのが十五元素あります。それは全て欄外に横倒しになっているんですが、これら十七元素の総称をレアアースといいます。このうち、質量数の軽い方を軽レアアース、重い方を重レアアースといいまして、産業用途上は重レアアースが非常に重要である、さらに希少性が高いという特徴があります。
 真ん中上、御覧ください。
 こうしたレアアースは、LEDやハイブリッドカー、電気自動車、燃料電池など、まさにこれからの低環境負荷社会に必須の資源というふうに言うことができます。また、レアアースというのは基本的にはハイテク産業の生命線と言われるものですが、ハイテク産業の一番行き着いたところは軍事に結び付いていて、これがアメリカなんかにとってみると、レアアースというのは国家の安全保障の観点から最も重要な資源と言われているわけであります。
 右上を御覧ください。
 現在、日本はレアアースの原料を中国から五百億円分輸入しています、年間。それを使って、磁石、発光材料、触媒などレアアースの製品を作っていますが、その産業規模というのは年間五兆円です。GDPの一%に相当する非常に大きなものになっています。
 ところが、この資源は、左下御覧ください、大きな資源問題を抱えております。二〇一〇年の時点で中国が九七%独占していた。今現在は中国は六一%に下がっているように見えますが、二位、三位のアメリカとかミャンマーの鉱石は、これらは中国で運ばれて、製錬、分離、精製されております。つまり、最終的には八〇%以上が中国から出てくる。だから、今の時点でアメリカが中国外のサプライチェーンを構築しようというのは、どだいこれは無理な話であります。真ん中に、レアアースの資源、鉱山が世界中に分布しているというのを書いてありますが、これはほとんど全てが軽レアアースです。重レアアースと言われる希少性が高い資源は、中国南部のみしか出てきていません。これがまた非常に頭の痛い問題です。
 そして、更に深刻な問題というのは、右下に書いております。この軽レアアースという資源、鉱山は、軽レアアースの資源が取れると同時に、必ずウラン、トリウムを伴います。そのために、開発すると最終的には放射性廃棄物の処分の問題が起こってしまうという非常にややこしいものであります。また、中国で重レアアースを取る際には、大地そのものに酸をまいてレアアースを回収しているという非常に荒っぽい、もう環境を度外視したような開発をしておりますので、深刻な環境汚染が引き起こされています。陸上レアアース鉱山は非常に環境負荷が高いというものと言うことができます。
 三ページ目を御覧ください。
 そうした中、私たちが、陸上のレアアースの資源とは違うタイプのものが海の底にあることを見付けました。二〇一一年に、タヒチの東側の海域あるいはハワイの周辺海域に、中国で取っているもの、レアアースの資源って四〇〇ppm、〇・〇四%レアアースが入っていると資源というふうにして取っているんですが、それを超えるようなものが非常に分厚く、タヒチ沖だと十メートルぐらいの厚みで、それからハワイ周辺だと七十メートルぐらいの厚みで積もっていることを我々が見付けました。
 その後、二〇一三年に、日本の排他的経済水域である南鳥島の周辺、南鳥島の排他的経済水域において二〇一三年に、私たちとJAMSTECが調査を行うことによって、超高濃度レアアース泥というのを見付けました。ハワイ、タヒチというのは大体一〇〇〇ppm、〇・一%レアアースが入っているんですが、南鳥島で見付けたものは七〇〇〇ppmに到達します。非常に濃度の高いもの。なぜそれだけ濃度が高いかということを、私たち、泥をつぶさに研究したところ、泥の中に入っている魚の歯や骨、それがレアアースを高濃度に濃集している、大体平均で一万五〇〇〇ppmもあります。これだけ濃集しているものは世界中にはないわけでありますが、こういった貴重な資源を見付けることができました。
 四ページ目を御覧ください。
 このレアアースの、レアアース泥と言っているものの特徴、長所ですが、五つほど書いております。レアアースの含有量が高いだけではなくて、実はバランスが物すごくいい。これは、希少性の高い重レアアースが何と五〇%入っています。軽レアアースも五〇%、全て入っていてバランスが極めていいというのが一つ目の特徴。二つ目が資源量膨大です。陸上のレアアースの埋蔵量の優に千倍はあります。三つ目が資源の探査。どこにどのくらいの資源があるかというのを見付ける、見極める作業を探査というわけですが、これが非常に簡単にできる。何でかというと、このレアアース泥というのは、遠洋海域というところで、環境の安定しているところに地層としてたまるので、広い範囲に安定して存在しています。そのために、例えば千平方キロメートルで探査を行う場合には、三十二キロ掛ける三十二キロ、その四隅に今現在ピストンコアラーという十五メートルの長さの金属管を海に落としています。それによって泥を取って探査をしている。非常に簡単にできます。こういった探査が非常に容易にできるというのが大きな特徴。
 そして、四つ目が一番重要です。陸上のレアアースの鉱山ではトリウム、ウランということに非常に苦しんでいたわけですが、この泥の資源はトリウム、ウランなどの放射性元素をほとんど全く含みません。そのために極めてクリーンな資源だと。
 五つ目が、これも重要なポイントですが、普通私たちが鉱山から資源を取るといったときには岩石で取る、それで岩石を一度粉にしなくちゃいけないんですね。粉にして、そこからメタルを取り出すんですが、これは元々粉なんで、そういったことをする必要もなくて、酸につけているだけで簡単に抽出できる。まさに四拍子も五拍子もそろった夢のような資源と言われているわけであります。
 五ページ目を御覧ください。
 そうした中、私たちは、南鳥島の排他的経済水域、これは南鳥島を中心に半径三百七十キロメートルの範囲を排他的経済水域といいます。その中で、南鳥島から南に二百五十キロの海域において調査を展開しました。二千五百平方キロメートルで、先ほど言ったピストンコアラーというのを二十五本落としました。それによって、真ん中の上に書いてあるこの濃淡じまは何かというと、レアアースが濃いところ、海底から十メートルの範囲です、十メートルの範囲にレアアースがどう分布しているのかを明らかにしました。その結果、そのB1エリア百五平方キロメートルだけで日本のレアアースの需要の五十年から八百年分を賄うことができる。さらに、スカンジウムというのはめちゃくちゃ高い金属なんですが、現在世界でたった十五トンしか供給されていません。これの二千四百倍があるということが分かりました。重レアアースとスカンジウムが同時に取れる世界で唯一の資源と言うことができます。
 そして、先ほど魚の歯や骨にレアアースが濃集していると言いましたが、これが、魚の歯や骨というのが泥のほかの粒々よりも粒径が大きいんですね。粒が粗い。そのために、この真ん中下に、何かダイソンの掃除機じゃないですけど、これをぐるぐるぐるっと回すと、粒径で粗いものと細かいものをうまく分けることができます。物理的に選別ができる。それをやることによって品位を劇的に上げられます。また、余計な泥は一切揚げないで、資源として活用できるところだけを持っていこうということを今考えているわけであります。
 六ページ目を御覧ください。
 それでは、こういった資源を引き揚げることができるかどうかということですが、今現在、レアアースを引き揚げる技術というのは、深海の石油の開発技術を応用することになります。これはどういうように揚げるかというと、泥を吸い込む管に対して、周りから、三か所ぐらいから圧縮空気を注気します。圧縮空気を送り込むことによって、泥と海水が混ざった、混合したものをスラリーといいますが、スラリーとして吸い上げるということを検討しております。吸い上げた泥は船の上で、もうリーチングといって、レアアースとそれ以外の泥の部分を分けます。そのときに、濃い塩酸を持っていって、船の上で海水で希釈して、薄めてリーチングというのをやります。南鳥島は絶海の孤島なので真水が手に入らないので、海水を使ってできるかというチェックをやっていて、これもうまくいくことが分かっております。
 リーチング液、レアアースを含んだリーチング液を貴液といいますが、貴液と残った泥に分ける。残った泥は南鳥島の埋立てに活用することを検討しています。これはスコップ一杯の泥も無駄にしないという考え方でやっております。
 左下に、今、JOGMECの委託研究で東大の高木周先生という方が非常に精緻な実験をやっています。二百メートルの立型水槽を使って、泥を引き揚げる技術開発ということが非常にうまくいっているということが報告を受けております。
 七ページ目を御覧ください。
 先生方は特に、こういった資源開発、経済性ないんではないかというふうに思われるんですが、そういうことはなくて、実は経済性評価は今まで経産省、JOGMECが二〇一六年に行いました。そのときから五年たって、私がつくっている、後ほど説明しますが、レアアース泥開発推進コンソーシアムというところで新たにいろいろな条件が改善されております。それを全部込みにしていくと、実は経産省の報告書では経済的には苦しいと言われていたんですが、それが一気に改善しております。
 次のページ、八ページ目を御覧ください。
 これで見ていただくとより分かりやすいんですが、レアアースの価格が、二〇〇六年から二〇二一年まで価格を示しております。このとき、先ほどの経産省の二〇一六年の報告書では、レアアースの価格がピークに達している二〇一一年にしか経済性がなかったということになっていたんですが、今私たちがいろんな条件を改善することによって、どの価格帯であっても経済性があるということが分かってまいりました。
 九ページ目を御覧ください。
 先ほどお話しした二千五百平方キロメートル、その範囲においてどのくらいの資源量があるかというのを見積もっております。そこにはレアアースが千六百万トンある、これは一〇〇〇ppm以上の泥が千六百万トンあるんですが、私たちは、開発するときには五〇〇〇ppmを超える、五〇〇〇ppmを超える品位の高いところから開発します。そうした場合に、日本の今レアアースの輸入量、年間二万トンですが、その三十年分の六十万トンが五〇〇〇ppm以上になります。それから開発して、順次技術を上げていって、二〇〇〇ppmも一〇〇〇ppmも資源として活用できるようにすることを考えております。
 それを加味すると、実は、今現在、世界のレアアースの埋蔵量が、下に示しておりますが、右下を御覧ください。日本の今言った二千五百平方キロメートルで確認されている千六百万トンを入れ込むと、実は日本は世界第四位のレアアース大国になります。先ほど言った二千五百平方キロメートルというのは、実は南鳥島の排他的経済水域のたった〇・六%です。南鳥島の排他的経済水域、ほかにもいろいろ資源があること確認しておりますので、これはそういう意味では中国を抜いて圧倒的な一位に出るというようなポテンシャルを持っております。
 それから、十ページ目を御覧ください。
 ここが一番重要と言っても過言ではありません。先生方、皆さん、海洋環境、生態系にどういうインパクトがあるんだということを非常に気にされる。これはある意味では当たり前であります。
 そうしたときに、実は固有種がいるかいないかってすごく重要です。開発するときに固有な種がいると開発が非常に難しくなってしまう。先生方も海底熱水鉱床については既にお聞きになっていると思うんですが、海底熱水鉱床は非常に固有種が多いという特徴がある。それに対して、レアアース泥があるところは遠洋海域という、どこに行っても同じような環境が実はあるんですね。なので、普通種のみしかいません。固有種がいなくて普通種のみしかいない。だから、採掘後に生態系が速やかに復元するというふうに期待しております。
 それから、泥そのものは全く無害です。これは、よく女性が泥を顔に塗ったりする。それはどういう効果があるのかは私は分かりませんが、泥そのものは全く無害ですので、顔に塗ってももちろん全然大丈夫です。
 それから、効率的なエアリフトで吸い込むことを考えるので、基本的には拡散したりとかそういうことが起こらないことを考えていて、それは抑制は可能だろうと考えております。
 こうしたクリーンな資源の開発を目指す我々の姿勢が評価していただいて、私たちは、手前みそになりますが、二〇一八年に日経地球環境技術賞の最優秀賞をいただくことができました。環境、生態系への影響は最小限にとどめることが可能だと考えております。
 十一ページ目を御覧ください。
 万が一拡散してしまったときにどうなるかも精緻な実験とシミュレーションを行っています。泥が巻き上がったときにどのくらいのスピードで落ちるのか、さらに、深海の海流がどういう方向にどのくらいのスピードで流れているか、全て加味して図にしたものが右側です。開発したポイントから拡散して、これは泥が十メートル巻き上がるという普通ではあり得ないぐらい巻き上がったときにどうなるかということを示していますが、ほとんど二、三十キロで、これが排他的経済水域外に出るということは全くありません。環境負荷の少ない開発が実現可能だというふうに考えております。
 十二ページ目を御覧ください。
 私は、二〇一四年に東京大学にレアアース泥開発推進コンソーシアムというのをつくりました。これは、日本を代表する企業に入っていただいて、左側にいる方が資源の実開発、真ん中にレアアースの製錬、そして右側の方にはトヨタ自動車を始めレアアースを使うユーザー企業に入っていただいています。これはマーケットサプライチェーン全部つなごうということで、こういったコンソーシアムをつくっております。
 こういった企業の期待があって、今まさしくレアアース泥の開発に大いに期待が集まっているというものであります。
 十三ページ目を御覧ください。
 今現在、SIPでこのレアアース泥の採泥・揚泥技術開発というのが行われております。左下に目標が書かれております。当初の目標は水深六千メートルからレアアースの泥を一日三百五十トン揚げることを目指していたんですが、それが今現在は、右下を御覧ください、現在は三千メートルの海域から六十五トン揚げると。規模は縮小してしまっていて、これはもう少し頑張っていただければというふうに思っております。
 十四ページ目を御覧ください。
 そうした中、実は昨年末に非常にいいニュースが私たちのところに飛び込んでまいりました。経産省、資源エネルギー庁がレアアースを鉱業法に組み込み、南鳥島レアアース泥の権益保護や実開発を可能とする画期的な取組が開始されたと。こういったことが鉱業法に組み込んでいただくと活性化する、この開発が活性化すると期待しております。
 そこで、私の方から、右下御覧ください、レアアース泥開発に向けた提言として三つ書いておりますが、これはお願いというか、こうしていただけると更にいいということを書かせていただいております。
 南鳥島レアアース泥開発には、民間会社による鉱区の取得が必要であると。鉱区が設定できれば、おのずと揚泥や選鉱、製錬などの技術開発が進むことが大いに期待されます。真ん中が重要なんですが、実は南鳥島のEEZ内においてJOGMECやSIPが探査データをかなり蓄積しております。これは全て非公表になっています。ただ、これを厳重な守秘義務を課した上で我が国の民間企業に開示可能となるようなルールを作っていただきたい。そういったルールを作って開示していただければ、もちろん管理をしっかりして開示していただければ、興味を持つ企業はどんどん出てくると考えております。最後は、鉱区申請、探鉱に先立つ初期探査においても国の支援が受けられるような仕組みづくりを是非つくっていただきたいということであります。
 ちょっと時間なくなってきましたので、十五ページ目。
 今各国の海底鉱物資源に関する興味を書いております。真ん中、パプアニューギニアのところに、海底熱水鉱床の開発を目指していたノーチラス・ミネラルズが残念ながら経営破綻しました。今割とホットなのは右上のハワイ沖で、EUの加盟国二十か国を中心にマンガンノジュールを非常に中心にやっております。実は、中国がレアアース泥を一番熱心にやっているということが資料には書かれております。
 十六ページ目を御覧ください。
 ちょっとここだけ説明させていただくと、中国が、実は南鳥島のEEZに接したところにマンガンノジュールの鉱区、コバルトリッチクラストの鉱区を取っております。ところが、マンガンノジュールの鉱区として取っているもののうち、右側の黄色く塗られたところは、これはマンガンノジュールを目的としたものではないというふうに私たちは科学的に推察しています。これについては御質問いただければ答えたいと思います。
 十七ページ目を御覧ください。
 私たちは、南鳥島レアアース泥の開発を実現して海底鉱物資源開発産業を日本に起こしたい、さらに、ハイテク素材産業を起こすことによって採掘から物づくりまで国家戦略として一連のサプライチェーンを構築したいと考えております。
 十八ページ目、これが最後のスライドですが、十八ページ目の右上に、私たちは、南鳥島のレアアース泥を使ってLEDを作りました。これは、泥を取ることさえできれば物を作るところまで一気通貫にもう行けます。行けるということを示したくて作ったわけですが、それ以外にも革新的な新素材、いろいろ出てきています。まさに国産資源を活用した次世代のレアアース産業を創出し、今現在年間五兆円ですが、それを年間十兆円産業にしていきたいというふうに考えております。海洋から、海から世界のレアアースサプライチェーンを新たに構築して、持続可能な未来に大いに貢献していきたいと考えております。
 私からの発表は以上になります。

発言情報

speech_id: 120814305X00320220216_007

発言者: 加藤泰浩

speaker_id: 32000

日付: 2022-02-16

院: 参議院

会議名: 国際経済・外交に関する調査会