蔵治光一郎の発言 (国土交通委員会)

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○参考人(蔵治光一郎君) そうしましたら、この度、参議院国土交通委員会で意見を述べる機会を与えていただきまして、ありがとうございます。
 私は、東京大学の大学院農学生命科学研究科で森林と水循環、あるいは森林と災害の研究をしております蔵治と申します。
 宅地造成等規制法の一部を改正する法律案について意見を述べさせていただきます。お手元にホチキス留めの資料がございますので、これに沿って御説明いたします。
 まず、この度の立法案が熱海の災害を契機としているということから、熱海の災害は森林の中に盛られた盛土を原因の一つとして起きたものでございますので、まずその森林の中の盛土というもののイメージを一旦持ってもらうために何枚か写真を用意させていただきました。
 この写真にあるような場所というのは、日本の森林の至る所で見られるものであります。例えば、この写真にあるように、山の中の道を走っていると、こういうような景色が目に飛び込んでくるわけでございます。
 次めくっていただきますと、もう少し近寄るとこのような形になっておりまして、面積的には小規模だとは思いますが、森林の中にあります。こちらの盛土は、後で述べます山地災害危険区域の中でございまして、かつ、この土砂が仮に移動して下流に流れると、そこには土砂災害特別警戒区域、また警戒区域も存在しているというような場所でございました。
 一枚めくっていただきますと、この場所をグーグルの衛星画像で見ますとどんな形になるのかというのを示してございますが、右側に見えている少し太めの道がいわゆる基幹林道といいまして、舗装されていて大きなトラックが通れる道ですけれども、そこから枝線で一歩入った細い道のところにこのように設けられていると。これは、衛星画像で見ると、このような形で確認できるということでございます。
 次に、その下の六、スライド六番の写真でございますが、こちらも盛土の例なんですけれども、こちらについては、一枚めくっていただくと、この盛土の先の方に川が見えまして、その先には町もちょっと見えていると思いますが、このような山の下に町があるようなところの上で行われておりまして、その次の下の写真になりますと、自動車が写っているものでありますが、この盛土は亀裂が既に入っているということが見て取れるかと思います。これは、雨水が集中して流れて削られていっている跡でありまして、このように、一旦盛られたものも自然現象によって徐々に崩れていくということがあるようであります。
 めくっていただいて、次の写真ですと、こちらも右側に、少し曲がりくねっておりますが、太い道がありまして、この道は観光客が山の上に登っていくときに使う道なんですけれども、この道からは盛土は見えないところにあるんですが、少し枝道を入ったところに存在しているというような様子が分かるかと思います。
 続いて、その十番の写真ですけれども、こちらは下に川と自動車が、道路がありますけれども、こちらはかなりきちんと管理された盛土という印象がある例であります。
 めくっていただいて、次の十一ページは、これは、道がぐるっと回っていて谷筋になっているわけですけれども、その谷筋を埋め立てた形の盛土になりますが、こちらは排水設備がちゃんと造ってありまして、谷筋というのは本来水が流れているわけで、その上に盛ってしまっているんですけど、その水を流す排水処理をする設備が付けられております。
 最後に、十二番の写真は、これは林業の現場でして、人工林の皆伐が行われていまして、植林した木を全部切ってそれを運び出しているわけですが、その作業の中で土をこのように盛るケースというのがあるということでございます。
 それでは、十三枚目のスライドをめくっていただいて、十三枚目のスライドから私の意見を申し上げます。
 この度の立法の目的は、住民の生命及び財産の保護ということが目的でありまして、そのためにはいろんな手段があると思いますけれども、この立法はその一つであろうと思います。
 熱海の災害は、市街地や集落から離れていて見えないところですけれども、地形等の条件から人家等に危害を及ぼし得る斜面のエリアに盛土が存在して、それが崩落し、谷筋を流下し、下流の人家等に到達して住民の生命及び財産に被害が発生したわけでありますが、このようなエリアというのは、仮に盛土がなかったとしても土砂災害の危険が元々高いエリアであって、そこにもし盛土や捨て土があれば危険度は更に高まるということであります。また、近年、気候変動等で大雨の規模、頻度、増加しているということもあり、このような災害が更に懸念される状況です。
 そのための手段の一つとしての法改正になっているわけなんですが、基本的には、これまで比較的緩い規制しかされてこなかった森林、農地等のエリアに宅造規制区域に準ずる特定盛土等規制区域というものを設定して全国一律の厳しい規制を掛けようとしているということですが、この特盛区域については、おおむね盛土がなくても土砂災害の危険が高いエリアになるだろうというふうに認識しておりまして、例えば、山地災害危険地区、それから砂防指定地等の区域、それから土砂災害の特別警戒区域及び特別警戒区域に土砂が到達するようなエリアということになりますけれども、もちろんこの中で重複するものはあるわけですが、何十万か所という箇所が既に特定されているということでございます。
 めくっていただいて、まず論点の一として、こういう新しい制度を特に森林のエリアに拡大するということについての実効性ということですけれども、森林の面積というのは国土の三分の二でありまして、非常に広いところで、そういう場所がたくさんあるというところで、これまで既に保安林、林地開発許可、砂防指定地等という制度が運用されてきて規制掛けてきていますが、これはこのまま運用を続けながら並行して新しい制度をつくるということなんですけれども、自治体の立場からすると業務が純増になるということもあり、十分な箇所数を速やかに指定できるのかということが気になるところです。指定の数や面積が絞られてしまっては元も子もないんですけれども、そういうおそれとか、あるいは、そのキー・パフォーマンス・インディケーターについても、指定する自治体数だけではなくて、やはり箇所数がきちんとあるかということが大事になろうと思います。
 それから、既に申し上げた既存の制度を活用するということも必要で、その中で特に、保安林と砂防指定地という制度は私権の制限が掛かる制度で、これは明治三十年に創設されてはいるんですが、現代の防災においても有効に活用すべき制度であると思っていまして、この特盛区域に指定されるであろうエリアというものはこういう制度も活用しながら考えていかなきゃいけない。特に、熱海の災害の教訓では、あそこは保安林や砂防指定地ではなかったと、それから、開発面積が一ヘクタール以下だったので林地開発許可対象外だったということがありますので、活用が必要だというふうに考えます。
 続きまして論点二ですけれども、やはりその専門性ということが非常に気になっておりまして、例えば、森林法で既に林地開発許可制度というのが保安林ではない普通林については適用されるんですけれども、これは一ヘクタールを超える大きな面積のものだけですが、学識者等で構成される審議会の意見を聴くことになっています。
 現在議論されている法律案では、科学的知見に基づいた技術的基準というものを作り、それに適合した安全対策が行われるかどうかを審査するということだと思いますけれども、ここには審議会等の意見を聴く仕組みはないわけなんですけれども、やはりその森林というのは非常に複雑でかつ多様なものでありまして、山地森林での土砂の移動現象というものはとても地域性、個別性が強いものであって、画一的な技術基準にどうしてもならざるを得ないもので個別の現場を一つずつ適切に判断できるかということが危惧されるところです。
 もしそういう学識者の意見を聴かないんであれば、それこそ都道府県、政令市、中核市等に土砂災害を専門とする技術職の公務員を配置するということがどうしても必要ではないかと思うんですけれども、現状なかなかそうもなっていない中で運用ができるかということです。
 その技術基準の例として、現在、宅造法の施行令の中でどういう技術基準が定められているのかを抜粋でお示ししているんですけど、恐らくこのような施行令が特盛区域、おおむね森林のエリアでも作られる、今後作られていくということなんではないかと思いますが、現在の宅造法の施行令でも、必要に応じてとか、その他の措置とか、例えば、著しく傾斜しているとか、支障なく流下させることができるという言葉があるんですけれども、まあこれ、どちらかというと曖昧な言葉でありまして、その裁量の余地みたいなのが残っているんですけれども、こういうものを誰かが判断しなきゃいけないということで、誰がその必要性だとか、著しいのかどうかとか、その他の措置が妥当かとか、その排水施設に流木、土砂が詰まる可能性等を判断できるのかということです。
 今、その排水施設のことを申し上げましたけど、一枚めくっていただくと、その排水施設の例をお示ししているんですが、森林内における盛土あるいは捨て土というものは、沢筋を埋め立てて造るような場合というのがかなりありまして、そういう場合は、その沢、元々大雨のときに水が流れる沢になっていますので、その沢を流れている水を排水しないとその盛土が不安定になりますので、排水施設を造りまして、例えばこれはコンクリートの管を入れているわけなんですけれども、この写真はどういう状況かというと、結局この排水施設がうまく機能しないためにそこが詰まって、それをオーバーフローして水が流れてきたような場所であります。
 オーバーフローしますと、当然そのオーバーフローした水が排水施設を無視して盛土を削り取って下流に流してしまうということになりますので、その排水施設というものが非常に重要なものになるんですけれども、そういうものを審査していかなきゃいけないということが現場では予想されるということであります。
 最後に、論点三として、やはり原点として、この法律の目的は住民の生命及び財産の保護でありますから、それが果たして実現できるのかということが最も重要なことなんですけれども、やはりそれにはたくさんいろんなことをやらなきゃいけなくて、広大な山地森林の中に無数にある危険なエリアというのがあって、それを全て抽出し監視し続けるというのは、いろんな技術の進歩はありますけれども、やはり時間、手間、コストが掛かることにならざるを得ないかなということです。
 それから、これは非常に残念なことであるんですけれども、その上流の土地に規制を掛けても、それをかいくぐろうとする方というのは必ず出てきてしまうということもあります。
 ですので、そこには一定の限度があるということを踏まえた上で、住民の生命、財産を守るためにはやはり住民側の意識というのも高めていただく必要があって、その住民側が自分たちが盛土を上にされてしまうと危険な場所に住んでいるんだよということを知っていただくという、知っていただいた上で大雨、地震が起きたようなときに適切な行動を取っていただくということが命を救うためには必要だというふうに思います。
 現在の法案では、工事主が当該土地に標識するということが雑則の中で、四十九条で書かれておりまして、これはとてもいいことだというふうに思うんですけれども、私が冒頭で示した写真でも標識は一切ないわけで、この盛土はどこの誰がということは分からなかったので、それはとてもいいことなんですが、一方で、それだけではなくて、特盛区域がもし指定されましたらすぐに、その下の住宅に住んでいらっしゃる方が見えるところにも、ここの山の上に特盛区域が指定されましたというのは標識した方がよいのではないのかなというふうに思います。
 最後に、ハザードマップというものが住民の方々の意識の喚起に必要ですが、それ、現時点でも既に災害危険区域であるとか様々な情報が一つのハザードマップ上にまとめられつつあると思いますけれども、更にそこにも特盛区域を重ねていって、全てを一目で分かるようにしていただくということが有効ではないのかなというふうに考えているところです。
 以上です。ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 蔵治光一郎

speaker_id: 28533

日付: 2022-05-17

院: 参議院

会議名: 国土交通委員会