加山弾の発言 (国民生活・経済に関する調査会)

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○参考人(加山弾君) 東洋大学の加山でございます。
 本日は、このような貴重な機会を頂戴いたしまして、感謝申し上げます。
 前回までの調査会では、実践者の方々からの各論的な話題が取り上げられてきたというふうに伺っておりまして、本日は、研究の立場から横断的な話をというふうに仰せ付かっておりますので、主に私の調査研究で得たものや、日頃、実践者や政策立案者の方々と接する中で言われているようなことについてお話ししたいと思います。
 困難を抱えた方々を支援につなぐ方策というふうに題してございます。(資料映写)
 まず、前提となりますのは、言うまでもなく、社会の変化がつながりの変化をもたらし、結果として多様なリスクを生んでいるということであります。従来のような地縁や同質性に基づくつながり方は敬遠される傾向にありまして、より選択的で非物理的なものも含めたものにつながり方が多様化しているというふうに思われます。その結果、社会的孤立、社会的排除と言われるような問題群が複合的かつ複雑な様相で発生するようになり、かつ、他人と関わらない風潮によって潜在化しやすくなってきているというふうに考えられます。こうした背景から、御承知のように、地域共生社会の実現に向けた政策が推進されておりまして、とりわけ重層的支援体制整備事業を柱とした法整備も進められているところであります。
 このようなことから、本日は、支援困難事例というふうに呼ばれる問題群への福祉的なアプローチについて、それからその解決を担っているコミュニティーソーシャルワーカーの専門職と機能について、そして重層的支援体制整備事業の新たな展開について、それぞれの課題等も踏まえてお話しさせていただきたいと思います。
 第一の話題は、支援困難事例がどのような構造や様相で生起しているか、どのようなアプローチで支援が行われているかというものでございます。
 福祉の支援者から見て、既存の制度やサービスだけで解決しない、あるいは支援につなげることのできないケースは支援困難事例というふうに呼ばれることがありますが、先行する知見では、ここに挙げられたような十八種類のような問題が指摘されています。いずれも、周囲との人間関係が希薄であり、既存の制度的サービス、これらは対象別で基準に照らした個別給付が基礎となっておりますので、そうした既存の制度的な給付サービスに合致し難いという特徴がございます。
 こうした問題を抱える方々に対する実践の軸として五つ示されておりますけれども、例を挙げますと、ごみ屋敷での生活が長く、周囲から孤立しているような方の場合、自己肯定感をなくしていることが多いわけですので、まずは存在を尊重すること、あるいは尊厳を守るということから始めなければうまくいきません。また、本人の友人など社会関係を活用すること、本人の眠っている主体性、これは生きる希望ですとか日々の困り事に対してこうありたいと欲する力を喚起していくこと、そして現実を見ていけるようにして、ちょっとした変化も見逃さず支えていくこと、こういったアプローチが重要になってまいります。
 本日の参考資料の資料一にも付けておりますが、私は数年前、社会福祉協議会、社協の方々との共同研究で、支援困難事例と思われるものを集積して分析いたしました。既成の社協の事業で解決できない問題を百二十七ケース集約しまして傾向をつかもうと、そういう狙いの研究でございました。
 図の左側はその支援困難事例の発生要因ですけれども、よく言われていますように、制度外の問題、いわゆる制度のはざまの問題であること。そして二番目に、個人や世帯に問題が重複して起きていることがまずは要因ですけれども、それ以外にも、外的要因といいますか、見守り、支援をする上での障壁があること。例えば、情報共有の壁があって民生委員さんが見守りが必要だと思う対象者にアクセスできないということですとか、支援側が声を掛けても本人や家族が介入を拒否するといったようなことがあります。
 住民の志向性、偏向性と書いておりますのは、ボランティアの住民のことを指しておりますけれども、専門職と違って職務ではありませんので、当然関わりの濃淡が生じてしまうことがあります。例えば、困り事を抱えていそうであっても、近所ともめている人には声を掛けないとか、ごみ屋敷や引きこもりの人のことは見て見ぬふりをするといったようなことは熱心なボランティアの方でもあり得ることでございます。
 最後に、組織体制の問題というのは、人員不足や予算主義によって支援の必要性を認めないこと。例えば、ある福祉施設で働いている職員が近隣住民の問題に気付いて何かしなければというふうに思っても、制度外のことはしてはいけないと、利用者のサービス以外はしてはいけないというふうに組織が止めてしまうようなこともございます。
 これらを整理しますと、問題そのものがそもそも難しいということ、それから支援対象側から拒否があるということ、そして支援する側にも組織的な問題があることなどによって支援困難化しているというふうに捉えられます。
 こちらの表はその社協の方々と集めた百二十七ケースの分類でございますけれども、複数抱える問題のうち中心的な問題は何かということで重み付けをして、上位に位置付けて集計したものになります。
 御覧のように、経済問題に関わるものが最多となっていました。二番目の障害といいますのは、手帳を所持しないいわゆる障害疑いの方が多く、既存の障害者向けのサービスにつながっていない方で在宅の方に社協が対応していることが多いです。虐待、DVは、もちろん被害を受ける方を擁護しなければいけないのは当然のことですけれども、虐待、DVをする側にも精神疾患等の問題を抱え込んでいることが多く、双方支援対象というふうに捉えております。その他、居住の問題、家族関係の不調等が続いております。
 各ケースでは、医療、福祉、就労支援等の社会資源とのつながりが乏しいこと、友人や近隣との関係が希薄であることなどが顕著でありまして、つながりがゼロ件から一件という人が大半でありました。百二十七ケースそれぞれが非常に緊急性が高く、また個別的で、一ケース一ケース問題の組合せが違うような状況でございました。
 代表的な二つのケースを資料に載せております。時間の関係でケース一だけ御説明を簡単にいたしますが、発達障害を持つ三十代男性の方のケースです。
 かつて両親からの虐待を受けていましたが、今は音信不通で離れて暮らしていらっしゃいます。派遣の仕事をしていますが、解雇されていらっしゃいます。この方の場合は、発達障害とか家族関係の経緯なども踏まえた包括的な支援を提供しなければうまくいかず、仮に就労支援サービスだけを提供しようとしても不調に終わるようなケースであります。
 このような状況を受けまして、先生方御承知のように、孤独・孤立対策担当室が設置されましたけれども、昨年末に出されました重点計画においても、つながりを実感できるための施策の拡充ですとか、右上にあるように居場所の確保等の方向性が示されています。小地域単位での包括的支援体制とかアウトリーチなども書かれておりますので、これはまさしく地域共生社会政策の進行に歩調を合わせて体制整備を図るということが肝要かなというふうに考えております。
 二つ目の話題といたしまして、そうした問題を抱えた方々の発見、支援を担っていらっしゃる専門職としてコミュニティーソーシャルワーカー、いわゆるCSWについて取り上げたいと思います。
 主として市町村社協に配置が進んでおりまして、自治体によってコミュニティーソーシャルワーカーという名称を使う場合と地域福祉コーディネーターという場合があります。
 各地区単位に一人から二人のCSWを専任で配置するのが望ましい配置の仕方であろうと思いますけれども、予算が絡んでくることですので、実際にはそこまでやっているところは少なくて、実際には兼務で置いていらっしゃるところも多いですし、全地区でなくて一部のモデル地区だけにCSWを配置する社協さんですとか、それから自治体圏域、自治体の全域を担当するCSWを置く場合もあります。また、CSWを置かないで地区担当制をしいてやっていらっしゃる社協さんもありまして、これは、各職員の方々それぞれ担当業務があるんですけれども、それとは別に担当地区を持って住民活動を支援するような体制をしいているところも見られます。
 また、社協以外にも、現在は社会福祉法人の地域公益活動が活発に進められておりますので、社会福祉施設や事業所等にCSWを配置し、利用者以外の地域の生活課題に対応する、そういった例も見ることができます。
 CSWの活動理論は、ソーシャルワークの個別支援と地域支援の一体的活用ということが土台になっておりますので、CSWの方々は、極めて重篤なケースを発見、支援する個別のケースワークをやりつつ地域支援、具体的には当事者の居場所づくりですとか当事者を支える体制づくり、不特定多数の当事者や活動者を組織するようなことですね、あるいはそれらを事業化するといったような、そういったコミュニティーワークを同時に連動させようというふうに尽力しておられます。支援困難な方のケースにCSWを介入いたしますので、初期段階から相当な時間や労力を掛けておられます。
 例えば、長年孤立状態にある人に声を掛けても、ドアを開いてくれるまで三十回、四十回と通うといったようなこともよく聞きます。会えないうちは手紙を残すなどしながら何とか関係を構築しようというふうに努めておられます。あるCSWの方がおっしゃるには、自分は困っていないからほっといてほしいというふうに当初言うような人とたくさん出会ってきたけれども、最終的に本当に困っていなかった人は一人もいない、みんな何かしら生きづらさとか挫折を抱えていらっしゃるということをお聞きしております。
 関係が構築うまくできた後は、相手の方の心情とか個別的な事情に丁寧に寄り添い、本人の強みとかニーズを引き出しながら支援をしていかれます。
 一例を挙げますと、ごみ屋敷で長年暮らしていて地域から疎ましく思われているような高齢男性の方がいらっしゃって、周囲の方がごみを捨ててほしいというふうに言っても応じず、また健康を心配した支援者の方が呼びかけをしても拒否をする、そういう男性の方だったんですけれども、CSWの方がずっと何回も時間を掛けて通って接していくうちにその方が書道が特技だというふうに分かりまして、書道でボランティアしてくれませんかというふうに社協のイベントでお手伝いをお願いすると来てくれたということがありました。
 得意な書道で役に立つ経験、すなわち役割獲得を繰り返すことで徐々に社会性をその方は取り戻し、最終的にはごみも片付けて社会関係も徐々に再構築する、そういう例でございます。この方の場合は、自己肯定感とか社会的承認を取り戻すということでうまくいったというふうに言えるかと思います。
 関係形成後は、既存の支援につなげるなど、伴走型支援によって長期的に見守りながら支援するということが一般的なやり方になっております。
 囲みはA区の事例ですけれども、引きこもりの方のアウトリーチ支援を令和三年度から始められまして、これは区の行政に引きこもり相談窓口を設置し、区社協のCSWに委託で、引きこもりのアウトリーチ支援をCSWの方がやっているというようなケースの報告を受けております。なかなか本人に会えない、支援に結び付かないケースばかりですけれども、長く根気よく関わりを続けまして、変化のタイミングを見逃さないように寄り添いながら支援を続けているというふうにCSWの方からは伺っております。
 そのようなアウトリーチは、政策的にも、今はアウトリーチや参加支援、伴走型支援といったようなことを含めて、地域共生社会政策においてもとても重視されるようになっております。
 このアウトリーチに関しましては、従来からの路上生活者等に対する伝統的な夜回りのような形もそうですし、それから今のごみ屋敷の方のお話のように孤立者の自宅を訪問するような従来からあるようなアウトリーチも今日でも重要ですし、一方、最近ですと、SNSとか違法サイトなどを実質的な居場所としているような若い方も多いですので、そうした情報空間まで探しに行くということもアウトリーチとしては重要になっているんではないかなと思います。私は、それらを総称して探索型というふうに呼んでおります。
 また、最近広がっているのが相談を受け付ける窓口を置くタイプで、ワンストップ型の相談窓口を、総合相談窓口を地区ごとにアンテナのように張り巡らせるようなタイプも今日増えています。ほかにも、いのちの電話などでやっておられるような電話相談、そしてネットやLINEでの相談なども一般的になっております。
 このように、アウトリーチといいましても広く捉えまして、網を張り巡らせて心配な方を見逃さない、そしてつながっていくきっかけにするということが重要かというふうに考えてございます。
 こちらは富山県氷見市の社協でやっておられるアウトリーチのフローですけれども、時間の関係で割愛させていただきたいと思います。
 このように重要な役割を果たしておられるCSWの方々ですけれども、課題としては以下のようなことがあるかというふうに考えております。
 まずは、人員配置の拡大という量的課題があると思います。
 CSWはまだまだ足りておらず、支援を要する問題が量的にも質的にも拡大していることを鑑みても増員が求められるかというふうに思います。また、もちろん兼任よりも専任が望ましいことは自明であります。日本学術会議などでもこのことは議論に出されていまして、各自治体にCSWを配置すべきだ、それから日常生活圏域に一人CSWが必要だといったような意見があります。
 また、CSW一人ではそうした困難な問題は解決できませんので、まずは行政の方のバックアップ体制の強化、その専門の部署や専門の方を増やすなどのバックアップ体制の強化、そして他機関との連携体制の促進、それから、CSWを支える大勢の住民をサポーターなどとして組織しているところもありますので、そうした多くの住民の方々によるCSWのサポート体制などが効果的だというふうに思います。
 また、個別支援と地域支援それぞれがかなりのウエートの仕事でございますので、個別支援担当、地域支援担当というふうにそれぞれ分業、CSWの分業をすべきだという声もありますし、実際それに近い形で配置されているような社協さんもございます。
 一方、質的な課題としまして、専門性向上の問題があります。
 元々、かなり複雑な問題を抱えた方々を支援していかなければならない上に、相手の方が外国籍住民であったり刑余者であったりというようなこともございますので、各々の専門機関などとも連携を強めつつ、高い専門知識やスキルを持ったCSWの対応がもっと必要になってくるかというふうに思います。
 また、個別的な状況に合わせた自由度が発揮されることが効果的だというふうに思いますので、現場での裁量の権限が担保されるといったことも大切ではないかというふうに思っております。
 それらのための教育プログラムや研修、そしてスーパービジョンなどの拡充も併せて進めていく必要があろうかと思います。一部職能団体ですとか教育機関でその新しい視点の研修などが開発されてきておりますけれども、そうしたものが更に発展していく必要があると思います。
 今般、重層的支援体制整備事業が創設されたことで、その実施に合わせてCSWの増員を進めている自治体も幾つかありますので、これを機に支援体制を拡充していく、そうした契機にしていくことが期待されるかと思います。
 最後に、一昨年創設されたその重層的支援体制整備事業の展開に関して申し上げます。
 御承知のように、これは市町村が実施主体ですので、従来の対象別の関連施策をより体系的、総合的なものに再編成する大きな転換となります。行政の縦割りをなくすという意味ではなく、風穴を空けて横断的な運用をしやすくなる、するということが期待されます。
 これまでも、各自治体や地域で連携しながらの地域づくりをどの地域、自治体でも工夫してこられていますので、そこで目指していた我が地域のありようやビジョンをこの事業で一気に前に推し進めるということだというふうに思っております。これによって、困難な問題を抱える方々を包括的に支援をする、そういう支援につなげやすくするという効果、またコロナ禍で顕在化した諸問題への対応も進んでいく、そういったことが期待されるかと思います。
 こちらは、来年度からの事業実施、この重層的の事業実施に向けて今移行準備事業を進めておられるB区の構想を少し修正したものです。
 申し訳ございません。表の右上のA区となっているのはB区の間違いです。失礼いたしました。
 社会福祉法のこの重層的支援体制整備事業の規定の各号に既存の施策それぞれがどういうふうに当てはまるかといったものを対応関係を示したものでありますけれども、この重層的が、全く新しい事業を導入しようということではなく、むしろ各関連施策の横断的な運用を目指しているといったようなことがお分かりいただけるのではないかなというふうに思います。
 この法規定の枠組みとして、いわゆる三つの支援があります。断らない包括的な相談支援、社会参加の必要な方の参加支援、そして地域づくりの支援、この三つでこれらを連動させていくということが重要です。
 例えば、商店街の活性化という地域づくりの課題があるとしまして、元々、生活支援体制整備事業でその居場所づくりなどを進めていて、空き店舗を使って地域の居場所をつくろうとしていると。そこに、この重層的で引きこもりの方の参加支援のための居場所をつくって当事者参加の受皿をつくったり、あるいは、その居場所にボランティアの方々も集うようなことがあると。さらに、その居場所にCSWが巡回をして相談にも対応できるようにして、言わば相談機能付き活動拠点のようなものをつくって、支援を要する方々の情報をキャッチしつつ相談したり支援につなげていく。そうしたことが既に各地で見られておりますし、更に促進される必要があるかなと思います。
 こうした取組の先駆的な事例を二市取り上げておりますが、時間の関係で省略させていただきたいと思います。後ほど御質問がございましたら御説明したいと思います。
 最後に、このような重層的支援体制整備事業の課題について意見を申し上げます。
 引きこもりや若者の支援が手薄であったというふうに指摘されてきましたが、そこの底上げが今回かなり進みつつある一方、懸念されることとして、従来のような対象別事業に拘泥されてしまうのではないかということがございます。それから、各事業が連動することで包括的な支援が可能になるようにすることがこの事業の理念であり柱だというふうに思います。
 また、任意事業ですので未実施の自治体があること、また、実施自治体でもプログラムの質や量に違いがあるのが前提ですので、自治体間格差が懸念されています。できることなら、どの自治体でも実施するにこしたことはないというふうに思っております。
 この事業で高齢、障害、子育て、生活困窮などの各分野の風通しは良くなるというふうに思いますが、外国人や刑余者、性的マイノリティーといった各分野の支援団体等との連携もこの機会に強めていかないと、こうした問題がいつまでも福祉から切り落とされたままになってしまうとよくないかなというふうに思いますので、こうした点に留意していく必要があるかと思います。
 これらを勘案すると、既にどの地域でも官民の取組の潤沢な蓄積がありますので、それを一つの大きなシステムにする役割を担う市町村行政に専門性の高い方を多く配置するとか、交付金等を主体的に活用して独自性を発揮するようなことが鍵を握っているかと思います。
 これから全国でこの事業はたくさん実績が出てきますので評価はそれからになりますが、このような視点で注視してまいりたいと思っております。
 以上でございます。大変長くなり失礼いたしました。私からは以上とさせていただきます。御清聴どうもありがとうございました。

発言情報

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発言者: 加山弾

speaker_id: 18309

日付: 2022-02-09

院: 参議院

会議名: 国民生活・経済に関する調査会