関根泰の発言 (資源エネルギーに関する調査会)
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○参考人(関根泰君) 本日、このような、閉鎖系の地球における適材適所のエネルギーと物質というタイトルでお話をさせていただきます。(資料映写)
一部、吉野参考人のお話とかぶるところございますので、そこは割愛させていただきながら、私のお話を進めてまいります。
まず、宇宙から見ると、御存じのとおり、地球というのは閉鎖系であります。宇宙空間には、一立方メートルにせいぜい数個しか分子がない。ところが、地球空間、今私たちが吸っている空気一立方メートルに二・五掛ける十の二十五乗個もの、空気の中の酸素、窒素、アルゴン、CO2、水蒸気、こういった分子が飛んでおります。言わば、宇宙から見ると、宇宙空間にはほぼ何もなくて、地球上には密に物質がある、そしてそのやり取りはほとんどないということになります。そのような閉じた宇宙船地球号という中に、私たちは、四十数億年の歴史の中で三億年ぐらいの生物の歴史の営みの遺産である化石資源、これにこれまで頼ってきました。
この三億年の化石資源は、当然ながら有限です。植物性のプランクトンが育ち、海の底なりそういったところに沈み、そして、長い時間を掛けて、ケロジェンと呼ばれる石油根源岩を経由して、最終最後、背斜構造と呼ばれるような地質の構造を作り、そして、それを我々が油田やガス田、炭田という形で見付けて使っている。これが現在の化石資源の利用ということになります。
当然ながら、永続性という点では、穴を掘って燃料を取り出し、火を付けてエネルギーとして使い、最後はCO2と水になりということになりますから、閉じた地球の空間の中でこれをやり続けるというのは、温暖化を引き起こし、物質としてのサステナビリティーを担保できないということになります。
じゃ、どうしたらいいだろう。本当は、私たちは、閉じた空間に対して外部から入ってくる太陽のエネルギーというのを使うことができます。しかしながら、現在これをきちんと使っているとは到底言えない。この現状は後で御説明申し上げます。
地球を眺めたときの問題点として、プラネタリーバウンダリーズという考え方が広く知られています。
この中でも、近年、気候の変動、それから窒素の循環、それから生物の多様性、この三つは特にクリティカルだということが今から十二年前に言われて、この図はオリジナルのものでありますが、どんどんとアップデートされながら、この考え方は広く広まってきています。
また、IPCCは、回を重ね、どんどんと世界の科学者のユニークボイスをまとめ上げ、一トンずつのCO2排出がまさに今温暖化を進めているんだというメッセージを発しています。
また、三千九百四十九ページにわたるAR6の中で、私は全ページに目を通しましたが、繰り返し出てくる図の中にこの図がございます。この図の一番上を御覧ください。
濃い青、薄い青、これは窒素酸化物と硫黄酸化物が今年一年間出した量に対して、十年後に地球が毎年何度暖まるかというインパクトを示した図です。真ん中より左側は冷える側、真ん中より右側は暖まる側、黄色がCO2の寄与、暖まる側です。その隣にオレンジが大きくあるのが御覧いただけます。これはメタンです。更にその右にN2Oということで、十年後の地球を考えると、今日出してしまったCO2も大変ですが、ほぼそれと同じぐらいメタンも大変、N2Oも量は少ないながら寄与が大きいということが分かります。
こういった点から、これからの閉鎖系において、CO2を出す問題プラス、メタンとN2Oというのも同時に排出規制を考える必要があるということは、IPCCのこのレポートから明確に示されています。
一方で、メタンはきちんと使って燃やしてしまえば害はないので、そういう点では、例えば合成燃料としてのメタン、これはもちろん、悪者ということではありません。自然界に放出される、あるいは化石資源掘削、こういった場から出るメタンというのが良くないということになってきます。
こういった地球上での物質の循環を考えるときに、私たちは二つの系を考えてみる必要があります。
一つは、人工物の循環。鉄や鉱物、それから紙、プラスチック、こういったものは、自然界と交わり合うことが余りありません。ここに一本のペットボトルがありますが、これを我々が、仮に悪い人が自然界に廃棄をしたとすると、ほぼ姿形を変えず、数年、数十年、このまま自然界に残ってしまいます。
プラスチックがうまくリサイクル機能しないというのは、実はシステムの問題、社会の問題でありまして、例えばこのペットボトルのキャップはポリプロピレンという材料でできています。この外のぺらぺらのフィルムはポリエチレンという材料でできています。中のこの水の入っているボトル自体はポリエチレンテレフタラートという材質でできています。分解する温度も違い、それぞれの持つ特徴も全く違います。ただ、どれか一つにするというのは便益の上ではできない。こういった分離とか社会のシステムとしてこういうものはしっかり考えなくてはいけない。科学技術の問題ではないということになります。
一方で、右側の方、これはCとHとNとOが複雑に入り交じる、自然と人間が織り成す循環の世界。例えば、大気中の窒素を集め、石油化学から作られた水素と反応させて肥料を作ります。年間一億九千万トンのアンモニアを介して肥料を作り、これを大量に施肥をして私たちは農作物を得て、そして農業から上がってきた食料を手にして、それを最後、下水、自然界に排出、排せつとして出すというサイクルがあります。このように、自然と人間、工業と天然のものが複雑に入り交じる世界、これが炭素、酸素、窒素、水素の循環の世界ということになります。
この世界においては、私たちは今までキープレーヤーとして化石資源に頼ってきました。しかしながら、これからは、先ほど閉鎖系の地球における永続性を担保するには化石資源からの利用の脱却を考えないといけないと申し上げました。
よく脱炭素とおっしゃる方が多いです。概念としてはよく分かります。ただ、私が今着けているマスク、この隣にあるパーティション、今のペットボトル、全部炭素の構造から作られています。プラスチックスは炭素の集まりです。炭素が駄目なのではなく、CO2を化石資源から出すという作業が良くないんです。それは三億年の遺産を火を付けて外に出すという作業であるからです。すなわち、止めるべきは、化石資源の消費を減らし、地上資源の利用を進める。これが、CO2を集め太陽の光で再度燃料に戻しまた使う、あるいは植物をうまく使い倒す、育てて、エネルギー、物質として使う、こういうサイクル。穴を掘らずに地表のものだけでうまく回していくということが大事です。
じゃ、地表のものは何があるか。この緑の枠の中にあるものが私たちが未来永劫、普遍的に手に入れることができる地表のものということになります。ただ、残念ながらそのままエネルギーや物質になるようなものはほとんどありません。水であったり二酸化炭素であったりバイオマス、植物ですね、廃棄物、こういったものはどこにでもあるわけですが、これらはほとんどそのままでは工業には使うことができません。
そこで、閉じた系に唯一入ってくる太陽のエネルギー、これは電力であり熱であり、こういったものをうまく使いながら、これら使い勝手が悪い地表の地上資源を今まで私たちの便益としてさんざん使ってきたこの左側のようなものに転換していくということがこれからの喫緊の課題ではないかと考えます。そこには、移動体の燃料であったり化学産業の原料であったり、こういったものを供給する、これがサステナビリティー、カーボンニュートラルを実現するためのキーとなることであると考えております。
こちらが、我が国のエネルギーの統計を基にした一年間の一次エネルギーから利用形態までを、縦の厚みはエネルギーの量です。単位はエクサジュールという単位です。ジュールというのは熱の単位でして、これのエクサというのは、キロ、メガ、ギガ、テラ、ペタの上ですから、十の十八乗、ゼロが十八個、こういう単位で日本はエネルギーを取り込んで、一億二千数百万の方が毎日使っている。
大体、一次エネルギーとして半分弱が石油です。四分の一が天然ガス、四分の一が石炭、その残りの緑色のところが再エネということで、トータルで二十エクサジュール弱のエネルギーを一年間に私たちは手に入れています。国民全体で、民生、産業全部含めてです。その四割を燃料に持ち込み、四割を発電に持ち込み、一割、一割を化学産業と鉄鋼産業に持ち込み、最終最後、電力セクターに入ったのの約四割弱が電気になり、そして右側の運輸、家庭あるいは業務、それから産業、こういうところにエネルギーとして使われ、最後は熱になって捨てられていくということです。これだけの膨大なエネルギー、二十兆円を超えるエネルギー、これを今はほとんど化石資源に頼っていることがこの図からお分かりいただけると思います。
電力のセクターの中の再エネだけに注目すると、意外とパーセントは分母、分子でいうと大きくない、見えます。ただ、燃料のセクターは、今現在再エネはゼロです。鉄鋼、化学、ここもゼロです。そういう点で、全産業、全人口のベースで見ると、私たちはまだ再エネにはほとんど頼れていないという悲しい現状があります。ここを、先ほどのように、地上資源を使いながら再エネを使い倒して、化石資源から脱却し、この青とえんじ色と黒を全部緑に変えていくという作業が、これからの数十年、二〇五〇年カーボンニュートラルまでの必要なこととなります。
現在、このカーボンニュートラルに向けて、電力と非電力の世界それぞれ、グリーンイノベーション、私も座長として関わっておりますが、そちらでこういう議論がされておりますが、その中には、炭素、酸素、窒素、水素、この四つの元素の循環というのが一つ重要な役割も持っております。
グリーン成長戦略、この中でも、十四の重点分野というのが示されているとおりであります。
さて、ここから残った時間で、エネルギーの世界、物質の世界における適材適所という話を少々御紹介したく思います。
今申し上げたように、地上資源だけで、太陽の光で私たちが暮らしていくすべを考えましょう。その際には、いろいろな物質がある。もちろん、電気にしてそのまま使う、これが一番よろしゅうございます。
これからの再エネの時代、一次エネルギーは、ゼロ次エネルギーが太陽としますと、一次エネルギーは電力ということになってまいります。今までは化石資源が一次エネルギーでした。今度は、再エネの時代は、電力が一次エネルギー、そして、そこから作る水素や合成燃料やアンモニアのようなもの、これは二次エネルギーということになってきます。かつ、昼に安くて夜に高い電力という今までと全く違うパラダイムシフトが起こってくることでしょう。
そんな中で、電力をそのまま使うことができれば一番ハッピーです。ただし、電力は、風力や太陽光を考えると、例えば太陽光の場合は昼しか使えない、風力の場合は、島国日本では風況のいいところが余りなく、夕なぎ、朝なぎの時間は沿岸部での海洋、陸地の間での風は起こらない。常に吹く偏西風のようなところであればいいんですが、沿岸とかですと朝夕は風車が回らないということが起こります。
そういった中で、私たちは、じゃ、どうしたらいいだろうか。時間、空間をシフトしながら電力を蓄えたり、それを違う形で使おうということを考えると、例えば水素にする、例えば合成燃料にする、電池にためる、そういったオプションがいろいろあります。
決め手は何か。密度です。すぐ使うのでしたら、水素が一つのオプションでしょう。それから、時定数が短い、ぱっとためてぱっと使う、こういったケースというのは電池が一番いいと思います。一方で、備蓄とかカントリーリスクのヘッジ、長距離輸入、こういうものにはこの二つは余り適していない。そういう点では、合成燃料、アンモニアや有機ハイドライド、あるいはEフューエル、SAF、こういうものに変えて持ってくるということが重要となるでしょう。
また、電化しやすいものとしにくいものと、あるいは水素化しやすいものとしにくいものというのがあります。これも適材適所。
路線バスは、同じところを同じ決まったダイヤで回りますから、いつ水素が空になり、いつ電池が空になり、そしていつ充電するかをプログラムすることができます。一方で、観光バスは、どこに行くか分からない、そういった点では、日々いろんなところを動きながら充電できるか、あるいは水素入れられるか分からない運用の中で、なかなか電化や水素化というのは難しいでしょう。
という点で、路線バスや例えばタクシーのようなもの、そういうものは電化や水素化がしやすいでしょうし、観光バスや大型トラック、こういうものは電化や水素化が難しい。ましてや航空機の大型のものというのは、電化をすると、密度の観点から、やはり空を飛ぶということは重量や体積に非常にシビアになりますから、液体の炭化水素燃料、すなわちSAFのようなものが非常に重要になってきます。
ここからは、先ほど水素の話ございました、エネルギーキャリアの話も吉野参考人からございました、この中で一つだけ付け加えますと、先ほども申し上げたように、カントリーリスクをヘッジするために、いろいろなエネルギーをいろいろな国から買ってこないと、日本の中には再エネの余力というのはそう大きくありません。かつ、そのリスクをヘッジするためには備蓄をすることも重要でしょう。現在の苫東や例えば福井や、いろいろな、沖縄から全国津々浦々、石油が大量に備蓄、原油が大量に備蓄されています。
これが水素の時代、合成燃料の時代、電気の時代になったときに私たちはどうやってそのリスクをヘッジするか、どうやってためておくか。数十日分の一億数千万人分のエネルギーをためておく必要があると、こういったときに、例えばふだんは使い勝手が余り良くないような有機ハイドライドのようなものは備蓄には非常に向いていると思います。そういう点で、いろいろな技術を複線的なシナリオで考えながら適材適所で使っていくということが非常に重要なのではないかというふうに考えます。
この図は、オレンジの左側が現在のエネルギー、右側が未来のエネルギーですが、水素で代替が利くところ、電化をすれば済む、これは是非そこでそういう形で使えばいい。一方で、水素、電化が利かない場所もあるということは申し上げたとおりです。こういうところは合成燃料のようなものを、左に対応して右の合成燃料を作っていくということになります。
このように、地域やスケールでも使い分けが重要でしょう。ノートパソコンやスマホは電池で動く以外のオプションは絶対にないです。大型トラックや飛行機は合成燃料で動かすのが一番いいでしょう。そうすると、軽自動車ぐらいまでは多分電化した方がよくて、大きくなっていくと合成燃料がいいとか、あるいは水素がいいと、いろいろな使い分けがあると思います。
最後に、CO2の再利用ということで、二つケースを分けてお話をしたいと思います。
二酸化炭素を再資源化しよう、エネルギーの観点からはばかばかしいことです。しかし、地上資源に頼って便益として合成燃料を動かしていこうとなると、やはり回収しないといけません。
大きく分けて二通り。昨日まで出しちゃったものを集める、これは大変です。あした以降出す予定のものを集める、これはインセンティブの問題だけです。お金が掛かるからやりたくないというところにうまくカーボンプライシングのようなことを考えながらアシストしていけば、ここは可能であるというふうに考えます。そこからの技術は、既に百年の触媒化学のような技術ということで、十分に対応できる技術ばかりということになります。
時間参りました。最後にまとめたいと思います。
私たちは、閉じた地球という空間の中で三億年の遺産の化石資源を日々使っています。行く行くは、太陽光に頼る、そして地上資源に頼る時代をつくっていかないといけません。そのためには、電気、水素、合成燃料、これをうまく適材適所で使いながら、かつ、備蓄やカントリーリスクといったものも視野に入れて、複線化したシナリオで適材適所で使っていくことが期待されるというふうに思います。
以上でございます。ありがとうございます。