浅岡美恵の発言 (資源エネルギーに関する調査会)

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○参考人(浅岡美恵君) 本日は、お招きいただきまして、ありがとうございます。
 それでは、申し上げます。(資料映写)
 昨年のCOP26におきまして、一・五度の目標に向かってこれを保持するということを確認いたしまして、二〇三〇年までに排出量をほぼ半減させると、そして、すなわち、これからの十年のその削減の取組が決定的に重要であると、そのためにアンアベーテッド、排出削減対策が取られていない石炭火力の段階的削減が必要であると、こうしたことが確認をされました。
 私たちはこうした国際交渉をフォローしてまいりましたので、その観点から今日はお話しさせていただきたいと思うのですが、残念ながらこのような今回のCOP26の大きな論点が政府のCOP26の報告の中には反映されていないという現状がございます。
 この一・五度の目標に向かってこの十年ということが何度も強調されておりますように、非常に時間の制約があると。このことを踏まえながら、いろいろお話しいただきました技術が大変重要ではありますけれども、先ほどもお話ございましたように、様々な場所の適材適所を使うと、そういう観点からのイノベーションこそが、それに向けました時間枠を考えながら選択される、そして、それを実現するために社会経済のシステムのイノベーション、これこそが今大事だということを今日申し上げたいと思います。時間も限られますので、特に石炭のところにつきまして後半で申し上げたいと思っております。
 グラスゴーのCOP26に私も現地で参加をいたしましたが、大変熱気にあふれた会議でございました。そこでパリ協定と一体となる極めて重要なCOPの決定、これをグラスゴー気候合意と呼ばれておりますけれども、それが採択されたわけでございます。
 御案内のように、現在、地球の平均気温は約一・一度上昇して、大変な気候災害を既にもたらし、気候危機と言われているわけでありますが、今後そうした災害は頻発しますし激甚化する、これはもう確実なこととされております。
 二度の気温上昇がその影響は大変甚大であるということから、一・五度を目指すと、抑えるということの決意を示したわけでありましたけれども、こうしたグラスゴーの合意の中で大変一貫していることは、科学の重要性、そして対策の切迫性であると、この点を特に申し上げておきたいというふうに思います。
 すなわち、もう既に気候変動問題は不確実なこととかねて言われていたようなことではなくて、確実性を持って全ての国が対応しなければならない問題なのだと、そういうことであります。
 この表はそうしたグラスゴー合意をまとめたものでございますので、ちょっと割愛させていただきまして、このCOP26の決定に至ります背景につきまして少し申し上げたいと思います。
 国連環境計画、UNEPは、毎年こうした温度目標に沿いました各国の目標との対応をギャップレポートという形で出してまいりまして、COP26の前には二・四度までしか届いていないということを示されておりました。そこで、カーボンニュートラルを早めていく、そして二〇三〇年の目標を各国が引き上げていく、こうした大きな課題があったわけであります。
 特に重視されましたのが、残余のカーボンバジェットということでございました。二酸化炭素の累積的な排出量と世界の平均気温の上昇がほぼ比例しているということは既に明らかにされておりますけれども、このことはすなわち、温度の目標を決めるということ、温度目標が定まりますと今後排出できる残余のカーボンバジェット量が決まる、炭素予算とも呼ばれておりますけれども、こうしますと、実質的にゼロにしなければいけない時期というものもおのずと定まってくると、そんな世界に今いるわけであります。
 ここの表にありますように、最新のAR6の数字をここに、併せてここに入っておりますけれども、六七%の確率で一・五度に抑えるというための世界の残余のカーボンバジェットは四百ギガトン、四千億トンでございまして、現在、三百三十五億トンぐらい世界で排出されておりますので、もう大変少ない。このAR5からの八年の間にももう大変急速に削減したんだと、減っているのだということを特にこのグラスゴーの合意の中で確認をしているわけであります。
 日本の対策をどうするかということを考えますときに、世界のカーボンバジェットは日本では幾らになるのかと、これを考える必要がございます。多く見積もっても、人口比で考えるということではないかと考えられますが、日本の人口は一・六%ほどでございますので六十四億トンか五億トン程度。すなわち、日本で現在、年に十億二千九百万トン以上CO2が出ているわけでありますから、もう六年分もないと。そういう切迫性の中で日本の対策が考えられなければならないということを申し上げたいと思います。そして、これが、そうしたIPCCの報告をまとめて日本のバジェットの量を示したものでございます。
 こうした考え方は、科学に基づきまして、今世界の裁判所で、科学に基づくこの気候変動の影響は人権の問題だというふうに捉えられていることをお伝えしておきたいと思います。
 詳しく申し上げる時間はございませんが、二〇一九年十二月、オランダの最高裁判所が、二〇二〇年の目標について国に二五%削減に引き上げるよう命じをいたしました。それは、温暖化による危険な気候変動は国民の生命、健康への切迫した脅威であると、この切迫性というのは時間的な先を言うのではなくて将来生じることが確実であるというものを含むのだと、それを、こうした危険から国民を守るのは国の責務だとしたものでございます。政治の課題であるとともに人権問題であるから、裁判所もこうして関与しているのだということであります。
 この判決の後、アイルランドの最高裁判所も、翌年、削減計画がパリ協定に整合して、ものになっていないということで差戻しをいたしましたし、昨年はフランスでも同様の判決が出されているところであります。
 ドイツの憲法裁判所が、昨年ですけれども、こうしたカーボンバジェットを踏まえた判決をしております。ドイツでは、気候変動法という法定の削減目標を定めた法律が、ヨーロッパの国の中では遅かったのですけれども、制定されましたが、二〇三〇年まで五五%というところと二〇五〇年カーボンゼロというところが、ネットゼロということが入っていただけでありましたが、これは、十代の原告らの世代間の公平を欠いているということを訴えたものに応えたものでございます。ドイツの残余のカーボンバジェットに照らせばこうした世代間の公平を欠いているということで、二〇二二年末までに三〇年以降の削減目標をちゃんとしなさいということを議会に命じたわけでございます。その直後にドイツの政権は極めて迅速に対応いたしまして、御案内のように、二〇三〇年目標を六五%に引き上げ、四〇年には八八%とし、ネットゼロの時期も二〇四五年に前倒しをしたのであります。
 さらに、企業も、そうした同じような考え方が裁判所で企業に対しましても示されております。昨年六月には、ハーグの裁判所が世界の石油メーカー、事業者でありますシェルのグループに対しまして、二〇三〇年までに四五%、二〇一九年比ですが、それが最も多かったからですが、削減するように命じました。これが世界のコンセンサスのある水準であると、今日の企業が守るべきデューティー・オブ・ケア、日本の法律的な言葉で言えば善管注意義務に当たると。さらに、下の方に、左下にちょっと図示をしておきましたけれども、シェルの直接の排出だけではなくて、上流及び下流でのスコープ3と呼ばれるものにつきましても同じように削減の努力をせよということになったものでございます。
 こうした、裁判所で認められるようになっているような現状におきましてグラスゴー合意がなされた中で、一・五度の目標に向けて動き出したときに、先駆的なビジネスの世界はより明確な方向性を持って動き出しております。世界の産業界、マーケットの動きというものは確たるものになってまいったと思います。
 そして、こうしたサプライチェーンの中に日本の企業もございますので、既に日本の企業も再エネ一〇〇の要請に応えるために大変御苦労されているということが、朝日新聞の最近の記事では、京都に本社があります村田製作所、日本電産、島津製作所などの御苦労が紹介されているところであります。本当に、先ほどから御案内ございましたように、再エネを拡大していくための方策、これは待ったなしになっているというふうに思います。
 さらに、COP26で大変顕著でありましたのは、こうした発電以外のセクターの中でも脱炭素の動きは大変顕在化しておりました。メタンについての宣言もございましたし、石油やガスの生産廃止の同盟が立ち上がりましたし、一〇〇%ゼロエミッション自動車、バンなどの移行の宣言とか、二〇五〇年までにゼロエミッションの海運、船ですね、についての宣言とか、電化が困難だと、先ほどのお話にありました電化の困難な領域でも大変うねりとなっているということが見えます。これを更に後押ししているのが、世界的にも機関投資家や金融機関の動きであることは御案内のとおりでございます。
 これまでも石炭火力を早く止めるようにということがございました。これから少し石炭についてお話ししたいと思いますけれども、この十一月四日、会期中でありますけれども、四十六か国が参加した、石炭からのクリーンな電力への移行声明というものが発表されましたが、そこには、アジアの国でもベトナム、インドネシア、フィリピン、シンガポール、韓国、またポーランドなども含まれております。アジアでもこの動きは座視することはできないという空気があることを見て取らなければいけないと思います。
 この図は、二〇二一年五月に公表されたIEAの二〇五〇年のネットゼロに向けたセクター別ロードマップでございます。これは大変役に立つものだと思います。この削減の、申し上げたような切迫性の時間枠、そして技術のイノベーション等を統合し、セクター別にいつどうしていくのかということを大変細かくまとめておりまして、二〇二一年にはもう石炭火力を新設廃止、三〇年には先進国はCCUSのない石炭火力が廃止、二〇三五年には先進国は全て電気を脱炭素化、二〇四〇年には世界の電気を脱炭素化する、このようなロードマップが示されているわけであります。そうしたことの、これまでのような話も受けまして、世界の先進国が、大半、ほとんどが石炭火力発電所を廃止していくと、その流れが確定をしてきているというところに、日本が石炭火力が一九%、二〇三〇年に今予定をされております。現在の政策ではこれはもっと増えかねないという懸念がございます。
 と申しますのも、現在日本は既に四千八百万キロワットもの石炭火力があり、今でも建設中でございまして、このほんの最近の数年の間に建設、稼働を始め、又は今建設工事中のものが、USC、超超臨界という高効率であると呼ばれているものだけでも一千万キロワットも新たに加わります。小規模の亜臨界のものも、十八基、百四十万キロワットもできたところでございまして、古い発電所はフェードアウトするということが言われたのですけれども、なかなか具体化しておりません。それがこれからどうなっていくのか。これまでどう積み上がったのか、これからどのように積み上がるのか、この赤い部分というのは大変懸念されるもとになっているわけでございます。
 こうしたことがございまして、第六次エネルギー基本計画では、アンモニアの混焼、専焼を火力の脱エミッション化というふうに申しまして、電力の政策の中枢に、中核に据えられているというのが現状ですが、これは投資回収のための延命策だというふうに海外から見られても仕方がないというものだろうと思います。
 そしてさらに、今年に入りまして、経済産業大臣はこの計画を前倒しをするということを表明されておりますが、二〇三〇年までにCCS導入を取り組む、二〇三〇年までにアンモニアの専焼の技術の実現に向けて目指すと大変前倒しになっていて、グリーンイノベーション基金もここに投じられているわけでありますが、しかし、こうした石炭火力に対するアンモニアの混焼、専焼というのは大変多くの問題があります。
 技術自体も、二〇三〇年までにこれから、二〇%混焼に向けてこれから数年掛けて実証実験を始めるというふうなものでございますし、そして、そもそもアンモニアのもとになります水素は、石炭火力、天然ガス火力の火力から作るというグレー水素と呼ばれるものであります。それはCCS等で対応しなければなりませんし、さらに、アンモニアを作るというところで大変なエネルギーを必要といたしまして、削減効果は大変僅かだということに算定されております。
 このまま、現在石炭火力から排出されているCO2量は二億六千万トンありますが、このまま十年間いきますと二十六億トンも出ることになります、もう三十億トン。ということは、日本の残余のカーボンバジェットの過半がここに費やされてしまうと、そのようなことであります。さらに、コストも高いものでありますし、CCSには適地がない、コストが高いという問題を抱えております。
 さらに、こうした事情を見ますと、このような政策は、二〇三〇年までに排出量を半減させなければならないという世界の一・五度を目指すというものと全く整合しないという点を御理解いただき、本当にここにマーケットがあるというものではもうないのだという御理解をいただく必要があろうかと思います。コストも大変高いものだということであります。
 実際、これはIEAの試算の中でも示されておりまして、IEAの石炭火力の削減のこの具体的な性能別のロードマップで見ましても、アンモニア混焼というのは〇・五%しか勘定されておりませんし、それも二〇三〇年までのことではございません。これはコスト的にもタイミング的にも間に合わないと言われているものでございます。
 もう一つの問題は、このようなアンモニア混焼、専焼というものは、国際合意の中で登場いたします排出削減対策が取られている石炭火力発電所とはみなされていないということでございます。このように解釈しているのは本当に日本ぐらい、このようなことを考えてやろうとしているのは日本ぐらいと、こういうことを御理解いただきたいと思います。
 で、間もなく公表されるということのようですが、トランジション・ゼロという研究団体の方が日本のこの電力における石炭問題につきまして詳細な研究をまとめておられるんですが、ここでも、本当に削減効果がなく、そして大変コストも高いと、政府の中でも高いことが承認されております。ちょっと補足は割愛させていただきます。
 そして、先ほども資料の中にございましたけど、このグリーンイノベーションの中で技術大変重要で、取捨選択されるというんですが、どちらかといえば、やっぱりこのような、アンモニアが登場するように、技術に偏り過ぎているのではないだろうかという目で私たちは考えるところでございます。
 やはり、先ほどのお二人の先生方のお話にもありましたように、やっぱり現在もう既に歴史的な経過のある商用化された技術というものは十分うまく活用できる、そのための社会経済システムのイノベーション、これが大変重要なのだと。それを実現していくためには、国においても自治体においても、一・五度を目指すという世界の流れをちゃんと認め、そして二〇三〇年に向けた削減目標、再エネの目標ももう一度見直し、そしてその目指すところを国民によく伝えると、共有、社会的に共有していくということでございます。
 そして、その排出量取引制度とか炭素税とか炭素の価格付け政策というのも、炭素国境税なども出てきそうなところでございますから、もう避けては通れないところに来ているかと思います。
 再エネをどのように増やしていくのかという点につきまして多く御説明もいただきましたところ、加えますと、デマンドレスポンスとかEVとの組合せというのは大変重要だと思います。そうしたセクター化というのを進めていくとか、それから、再エネへのいろいろな問題はゾーニングの欠落でありますし、地元、再エネを産出する地元を優先し、地元の人々の人材を育成していくと、地域を活性化させていくと、そういう住民、国民に対する知識、経験等のアドバイスの体制も取っていくと、このようなことが本当に急がれていると思います。
 また、日本は特に住宅建築物の省エネ対策の強化が大変遅れております。今回、不十分ながらですが法案が提出が予定されていたと聞いておりましたけれども、先送りになるらしいとお聞きいたしましたが、高排出構造がビルトインされないように、これも急がれるところでございます。
 さらに、このような大きな産業構造の転換にとりまして、労働者の人たち、あるいはそれに依拠してきた地域社会が大きく転換をしていく、そのための公正な移行と呼ばれることについて正面から取り上げ、そしてそれをサポートしていくと、これも大きな国や先生方のお役目として期待されるところでございます。
 このように、技術だけではなくて多くのイノベーションが期待されているところでありますし、時間枠を考慮しながら、本当に優先順位を見極め、それぞれのイノベーションに御尽力いただきたいと考えております。
 以上でございます。

発言情報

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発言者: 浅岡美恵

speaker_id: 8173

日付: 2022-02-02

院: 参議院

会議名: 資源エネルギーに関する調査会