原一郎の発言 (内閣委員会)
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○参考人(原一郎君) 今日はこのような機会をいただきまして、ありがとうございます。
お手元に、二月九日付けの経団連のロゴマークが入った私どもの意見が配られているかと思いますが、これは二月の一日に公表されました政府の方の有識者会議の提言を受けてまとめたものでございます。経団連の提言、したがいまして、法案の閣議決定前に公表したものでございますので、この提言内で法案への言及はございませんけれども、適宜口頭で補足しながら説明をいたします。
一枚めくっていただきまして、目次が出てまいりますが、この目次のローマ数字のⅠの部分、今次法制化に関する意見というところを中心に御説明申し上げます。この中身は、今回の法案に盛り込まれました四分野、これについてそれぞれ意見を申し述べておりますので、これを目で追いながらお聞き取りをいただければというふうに思います。
まず一ページ目でございますけれども、最初のパラグラフにございますように、法案の必要性に関することが書かれております。経団連の認識といたしましても、経済と安全保障、これを切り離して考えることはもはや不可能になっていると考えております。
第二パラグラフでございますが、政府は既存の法律に基づいてできることは既に着手されているわけでございますけれども、我々の認識といたしましては、急ぎ法制上の手当てが必要な事項を盛り込んだのが今回の法案であって、それが今次国会に提出されたということであります。その方針を経団連としても支持いたします。
次のパラグラフは、有識者会議の提言について書いてございます。全体として、経済活動の自由あるいは国際ルールとの整合性に配慮した内容になっていると考えております。この提言を踏まえまして法案が閣議決定されましたわけですから、したがいまして、法案につきましても全体として経済界の重視している点に配慮した内容になっていると考えております。
法案全体を通じて、政令以下の下位法令あるいは政府としての基本方針、四分野それぞれの基本指針で決定される部分がありますので、それぞれについては経済界の意見を申し述べる機会をいただきたいというお願いをしております。
ここまでが全体を通じた基本的な認識でございます。
以下、四分野ごとに基本的な考え方と留意すべき点を申し上げたいと思います。
二ページを御覧いただければと思います。特定重要物資の安定的な供給の確保、すなわちサプライチェーンの強靱化でございます。
サプライチェーンは、企業が経済合理性の観点から構築しているものであります。その強靱化も、一義的には企業自ら主体的に取り組むべきものと考えます。したがいまして、安全保障の観点から強靱化に取り組むに当たりましても、規制的な手法ではなく、企業の主体的な取組を後押しするような形を基本とすべきと考えます。企業がまずサプライチェーンを自己点検し、その結果、ある対応を取ろうとしているのを政府にインセンティブで後押しいただきたい、そういう考え方でございます。
この考え方に立てば、政府による支援の対象となる物資は、国民の生命を脅かすおそれが大きく、また国民生活及び経済活動に多大な影響を及ぼす重要物資全てを対象とするのではなく、重要物資のうち、生産拠点が特定の国、地域に集中している、あるいは調達先が特定の企業に限定されている、あるいはそもそも生産量が限られているために供給途絶リスクが高い物資に限定する必要があると考えます。法案ではそうした物資は政令で指定することになっておりますが、その際も十分に絞り込むことが求められます。法案ではこの点十分配慮されていると考えておりまして、すなわち、まず先ほどの考え方で重要物資を整理した上で、その中で特定重要物資ということで供給途絶リスクも勘案しながら決めていくということになっています。
そのような形で決定された特定重要物資につきましては、調達先、生産拠点の多元化を基本とすべきと考えます。ただし、多元化だけでは回避できないリスクがあると思いますので、その場合には国内生産基盤を整備、強化する、あるいは供給の途絶が一刻も許されないような場合は、国が備蓄するといった幾つかの選択肢の中で考えていくべきだと考えます。この点、法案を拝見しますと、まず国内生産ありきということではなく、多様な選択肢が考えられていると評価しております。
最後に、このサプライチェーンを強靱化するに当たって政府が調査を行うということになっておりますが、先ほど申し上げた重要物資あるいは特定重要物資を絞り込むに当たり、政府による調査を行うことになっております。法案でいえば、報告徴収ということになります。法案においては、政府の調査権限についてきちっと規定されています。法的な権限が曖昧な形で調査をされても企業としては対応に困りますので、そこは我々の意見どおりになっているかと思います。
事業者の応答につきましては、我々としては、義務付けということではなく、調査対象をできる限り絞り込むことによりまして、調査される側が調査の目的、意義を十分認識できることが、形が望ましいと申し上げてまいりました。法案では努力義務という形になっております。実際の調査の範囲が現時点では決まっておりませんので、できるだけ我々の意見に沿った形で調査が行われるよう、今後も注視をしていきたいと考えております。
企業のサプライチェーンは、非常に広く複雑化しているのが現状でございます。また、秘密保持契約が結ばれている場合などでは、情報を出したくても出せないといった現状がございます。そういった点も勘案していただければ幸いでございます。
次、四ページを御覧ください。特定社会基盤役務の安定的な提供の確保、すなわち基幹インフラの安全性、信頼性の確保です。
率直に申し上げまして、四分野の中で一番規制が強い制度だと思っております。規制色が強い制度だと思っております。これは、サイバー攻撃等々のリスクを事前に排除するということで事前規制が導入されておりますが、我々からするとやむを得ないと考えております。
今回規制を入れることによりまして、一定期間の後に知見が積まれてくると思いますので、その暁には、水際で管理することがあってもよいのではないかと考えております。先ほどの白石先生のワードをお借りすれば、信頼できる相手あるいは信頼できる設備というのはどういうものかというものが分かってきますとこういったことが可能になるのではないかと思っておりまして、これは今後の課題になると思います。要は、できるだけ、規制する側、規制される側のコストを最小限にするという趣旨であります。
制度の対象につきましては、基幹インフラの事業、事業者、重要設備が今後指定されることになっております。法案成立の暁にはということでございます。
事業については、法案で十四分野の外縁が示されております。どの事業者、設備が対象になるかはそれぞれの業所管省庁が省令などで定めることになっております。この内容がどうなるかは今後も注視していきたいと思っております。
特に重要設備、すなわち、どの設備を規制の対象にするかは非常に重要な問題でございまして、所管省庁と事業者の対話が非常に重要であると思っております。下位法令の規定ぶりを注視していきたいと思っておりますし、できるだけ必要最小限の規制ということで、政府として統一した対応を行っていただきたいと考えております。
サプライチェーンあるいは再委託先の情報も事前に届け出る、計画書の中に盛り込むことになっております。繰り返しになりますが、どこまで情報として出せばよいのか、出せる情報の限度の問題もございます。事業者の負担にも配慮した形で運用がなされていることを今後も注視していきたいと考えております。
次に、ページでいきますと五ページになりますが、特定重要技術の開発支援の点でございます。
実際にどう運用されるかをこれも見ていきたいと考えております。そのときに肝になりますのは、産学官のエコシステムをうまく形成できるか、この点にあると考えております。
支援対象となります先端的な重要技術については、限られた財政資源を有効活用する観点から、十分に絞り込む、分野を選び集中投資することが重要だと思っておりますし、社会実装に重きを置いた形で取り組む必要があると考えます。
プロジェクトごとに設置されます官民の協議会では、政府から安全保障上の具体的なニーズに係る情報が産学との間で共有されることが期待されます。ただし、その際の守秘義務が課される範囲が余り広過ぎますと、産業界としては参加しにくくなるのではないかと考えます。
また、シンクタンクにつきましては、既存の政府機関や企業等が何らかの形で関与するなどして、我が国としての知見を集約することを期待しております。
最後に、特許出願の非公開についてでございます。これは、ページになりますと七ページになります。
我が国では、特許は年間三十万件程度出願されていると聞いております。企業はこの制度を前提にビジネスを行ってまいりました。今回、この制度に変更が加わることになります。制度の必要性につきましては、機微な発明の流出防止の観点から十分理解できると考えております。非公開によって、安全保障上の観点から特許出願を諦めざるを得なかった発明者が過去にいたとすれば、今回、新しい制度により、特許法上の権利を得る道を開くことにもなるかと考えております。
非公開の対象となる発明、あるいは八ページにございますような外国出願の制限の対象につきましては、できるだけ絞り込んでいただきたいと考えております。特にデュアルユースにつきましては、言葉どおりに軍事利用ではない民生利用ができる技術でございますので、それが幅広く非公開化の対象となりますと、産業活動に制約が及びます。また、外国出願も制限されますので、この範囲をできるだけ絞っていただきたいと考えております。法案も基本的にはそういう考え方に基づきまして成り立っているものと考えております。
審査のプロセスも迅速に行っていただきたいと考えております。特許につきましては、迅速化の努力が今まで行われてきました。そういった努力が無駄にならないように迅速なプロセスを維持していただきたいと考えます。一次審査は三か月以内とされておりますので、この点は評価をしております。また、外国出願ができない期間は十か月とされていますが、できるだけ迅速に早めていただきたいと考えております。
非公開となった対象の実施につきましては、許可制になることはやむを得ないと考えますが、安全保障上問題がない限り、最大限活用できるような形でお認めいただきたいと考えております。
補償につきましては、通常生ずべき損失が適正に補償されるよう、これも具体的な制度設計を注視していきたいと考えます。
以上が法案に関する我々の基本的な考え方、あるいは今後留意すべき点でございます。
ありがとうございました。